さいとうちほ『輝夜伝』第13巻 月の使者迎撃を阻む人のエゴ!?
竹取物語をなぞるように、ついにかぐやのもとにやって来た月からの迎えと、それを迎え撃とうとする都の人々。万全のはずの備えが次々と破られる中、ついに繭の中から復活した月詠の姿とは――そして一つの苦難を乗り越えた先に待つ、さらなる混乱とは……
ついに竹速と結ばれた月詠が繭に包まれた後も事態は進行し、ついに次の満月の晩には月からの迎えがかぐやの元にやって来るという状況になった都。もちろんこれを人々が座視するはずもなく、北面と八咫烏は、月からの迎えを迎撃すべく、準備を整えます。
その中心となるのは、八咫烏の長老・金鵄が発案した、月からの迎えの目を眩ませ、天女の身代わりを連れ帰らせようという作戦――そしてその身代わりに志願したのは、元々月に帰りたがっていた艶であったことが、事態を大きく悪化させることになります。
艶が地上から去ることに大反対した治天の命によって、艶の代わりに身代わりに立てられることになった、かつて比叡山から月に帰った天女の末裔・琵琶。なるほど、彼女たちも天女の血を引いているのは確かですが、しかし彼女に想いを寄せている(?)凄王が黙っているはずもありません。
すったもんだの末、身代わりに選ばれたのは、ここしばらく妙なところで目立っていたあのキャラで――と、月の使いがやってくる前に都人側が自然崩壊しかねないエゴのぶつかり合いであります。
その果てに、ついにやってきた月の使者の前で、最悪の事態が最悪のタイミングで発生することになってしまうのですが……
と、竹取物語でいえばクライマックスの部分に差し掛かった本作ですが、あちらに比べて都人側も有効打を用意していたはずが、一体皆どうしたの、と言いたくなるようなエゴをむき出しにした結果、あわやという状況に至ることになります。
その窮地を打開できるのは――そう、主人公しかいません。繭を破って飛び出した月詠は、新コスチューム(表紙を参照)で大活躍、ついに月の使者たちを撃破するのですが――しかし、それはあくまでも一時しのぎにすぎません。何しろ月がそこにある限り、月の使者は満月のたびに訪れるのですから。それに対して都人側が今回と同じ手段で対抗できるとは思えません。
いやそれよりも何よりも、原典通り(?)の変貌を遂げてしまったかぐや姫が、新たな問題を引き起こします。
月の使者との遭遇の末に地上人への情をなくし、身も心も月の天女と化してしまったかのようなかぐや姫。しかし地上人への情をなくしたとしても、同じ天女に対しては――と、大変な方向に転がっていくのです。
その変貌ぶりについては、ついに月詠の前に姿を現した月の女王が語る、月の天女たちの生と性が一つの答えとなるのですが――いやはや、そのとてつもない真実の前には、艶様の暴走が可愛らしくみえるほどであります。
もちろんそれが彼女たちの持って生まれたものであれば、責めるわけにはいかないのですが――しかしこの真実を前にして、はたしてどのような解があるのか、途方に暮れるほかありません。
(それにしても、ここまで天女たちの存在を突き詰めた作品があったでしょうか?)
いや、解がないわけではありません。それは戦って相手を攻め滅ぼすことであります。その道を選んだかに見える都人の男たちは、月人に対する有効打に成り得る「武器」を手に意気あがるのですが――それが元は何であったかと思えば、とても一緒に喜ぶ気にはなれません。
八方塞がりにも見える状況の中、はたして皆が幸せになれる答えはあり得るのか? いよいよクライマックスであります。
『輝夜伝』第13巻(さいとうちほ 小学館フラワーコミックスアルファ)
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