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2023.11.22

青木朋『天上恋歌 金の皇女と火の薬師』第8巻 三人の別れ、歴史の分岐点!?

 意外な表紙キャラに驚かされるこの第八巻では、この数巻並行して描かれてきた、アイラと康王と白凜之の三人の想いの行方と、金・宋・遼の戦いの行方とが、いよいよ一つの区切りを迎えることになります。激闘の末に陥落した燕京を巡る金と宋の対立は、三人に思わぬ影響を与えることに……

 父・金皇帝アグダが病に倒れたために、祖母が倒れたと称して急遽帰国することになったアイラと、「祖母」の見舞いのために金を訪れることになった康王、そして童貫に睨まれたところを康王の通訳として同行することになった白凜之。
 金でも複雑に交錯する三人の想いですが、金に対して燕京を攻めあぐねる宋からの応援要請があったことから、三人は金の本営に同行することになります。

 過去の因縁を背負い激突する二太子・オリブと遼の英雄・ユドゥの激闘はオリブの勝利に終わり、ついに陥落する燕京。しかしそこに現れた童貫は、燕京の引き渡しを求め……


 と、自分は散々敗れて助けてもらったくせに、戦いが終わってからやって来てデカい顔をするという、最低ムーブをカマしてきた童貫。ある意味期待通りと言いますか、やっぱり童貫はこうでなくちゃ! と思ってしまうのですが、まだまだ童貫の最低っぷりには底があります。
 自分の意に沿わぬからと排除した白凜之が欠けたために新兵器・地龍が文字通り不発に終わったことを棚に上げ、敗戦の責任を工兵隊に押し付ける。工兵隊を救いたければ自分に従えと白凜之に迫る――いやもう、漫画みたいな(漫画です)悪役ぶりですが、童貫ならこれくらいやる、と納得させられます。

 もちろん、この窮地にアイラが黙っているはずはないのですが――ここでアイラが白凜之の窮地を知り、そして康王に助けを求める、これまでの展開を踏まえたシチュエーションが展開されるのは、見事というほかありません。
 そしてアイラの願いを受けて、政治向きのことから背を向けてきた康王が、童貫と対峙する(もちろんそれまでの仮面を有効活用するのですが、それもまた実に「らしい」)姿も、彼の――そして彼とアイラたちの関係性の変化を感じさせて、胸が熱くなるものがあります。


 しかしこの巻で真にグッとくるのはその後であります。宋に帰る白凜之に、(己の気持ち的な意味で)別れを告げたアイラ。そして自分も金に帰るアイラは、康王に別れを告げるのですが、ここで康王は――!
 これまでのドラマを思えば、ついにここまで来たか、と感慨深くなるこの場面、ひたすら初々しい二人の姿が実に微笑ましいのですが――しかし史実を思えば、微笑ましさばかりを感じてはいられません。

 あるいは、ここが歴史の分岐点だったのかもしれないと思うと、たまらなく切なくなる――というのは先を考えすぎですが、これまで以上に、この先の展開を早く読みたいような読みたくないような気分にもなるのです。


『天上恋歌 金の皇女と火の薬師』第8巻(青木朋 秋田書店ボニータコミックス) Amazon


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