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2023.12.26

音中さわき『明治浪漫綺話』第6巻

 明治の世を舞台に、没落華族の少女・十和と、異国から来たヴァンパイアの王・ルイスのロマンスを描いてきた物語も、ついに完結であります。実家の財政建て直しに十和が頭を痛める一方で、強制帰国の命が下ったルイス。別れの日が近づく中、二人の想いの行方は……

 十和を巻き込んだルイスとヴァンパイア・ハンターの戦いが終結した一方で、世間からは好奇の目で見られることとなった十和とルイス。そんな状況も意に介さず、そして十和の実家・日与守家への援助を申し出る婚約者の国門青年ですが、十和はやがてその真実を知ることになります。
 偽装結婚という国門の厚意にも甘えるわけにいかず、十和は自分の力で日与守家を立て直そうと考えるのですが……

 そんなわけで、ルイス側の――つまり吸血鬼側のドラマの大きな山は越えた状況(ルイスの強制帰国の問題はありますが)で描かれるのは、十和の実家の財政建て直しであります。
 この辺りはルイスの側に比べるとスケール的にはかなり小さく、正直なところここまでクローズアップされると思っていなかったのですが、十和の拠って立つべき場所であることを思えば、重要な要素であることは確かではあります。

 そしてその中で、十和たちが大ファンである作家・戀加波トメの正体が明かされ――と、こちらは読者の大半が予想していたとは思うのですが、そこからルイスの従者である東のドラマ、そして十和の実家いや彼女の母のドラマに繋がっていくのは、なかなか巧みな展開というべきでしょう。

 そしてその果てに十和が選んだ道は――これはこれで意外なものではあるのですが、しかし、十和自身が「家」という、自分が背負わされた宿命から二重の意味で自由になったと思えば、納得できるものがあります。
 思えば本作のメインキャラクターである十和もルイスも、己が生まれながらに背負ったものに縛られた存在であるという共通点がありました。そこから十和が自由になるのは、物語の結末に相応しいものであるといえるでしょう。


 もっともその一方で、ルイスの背負ったものは、決してどこかに下ろせるものでも、解決できるものではありません。そしてその救いとしてラストに描かれるものは、人間と吸血鬼――異なる時間の流れを生きる者同士の愛の物語として、非常に無邪気な結論とも感じられるかもしれません。
 そしてそれは、本作がパラレルワールド(首相が伊藤博文ではなく、彼の師匠が吉田松陰ではない)だからこそ、描けるものではあるのですが――しかしこういう考え方・受け止め方があったかと、ある種の感銘を受けるような、そんな結論であることも間違いありません。

 ラストでルイスの味わった驚きはこういうものであったか、と言ってしまうのは、ちょっと言いすぎではあるかもしれませんが……


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