立沢克美『イクサガミ』第3巻
小説でも漫画でも金十万円を賭けた死闘は続き、漫画版『イクサガミ』もこれで第三巻であります。第二のチェックポイントを過ぎ、いよいよ「こどく」の容易ならざる状況を痛感することとなった愁二郎と双葉。謎の忍び・響陣と同盟を組むこととなった二人を待つものは……
金十万円を賭け、参加者それぞれに与えられた木札を奪い合い、京都天竜寺から東京まで七つのチェックポイントをクリアしていく「こどく」。このデスゲームに参加することとなった愁二郎は、武田の三ツ者の末裔・徳良三兄弟と石薬師宿付近で激突――辛くも勝利したものの、一対一の戦いばかりでなく、そして双葉を狙ってくる相手に一時も油断できない状況に、いよいよ危機感を強めます。
ここで思い出されるのは、京で同盟を持ちかけてきた柘植響陣の言葉。この同盟を受けることとした愁二郎と双葉は、四日市で響陣と再会、互いに「こどく」に参加する強豪についての情報を交換するのですが――愁二郎もその強豪の一人であると響陣は告げます。
かつて幕末の京で、土佐方の剣士・嵯峨刻舟として活動していた愁二郎。前巻でその一端が描かれた京八流の過酷な宿命を厭い、一人鞍馬から消えた彼は、灯台下暗しとばかりに京で活動していたわけですが――思えば本作の舞台は明治十一年、幕末の動乱の記憶がまだまだ新しい頃であります。
愁二郎だけでなく響陣も、そして貫地谷無骨も、この幕末にその力を振るっていた者たち。「こどく」の真実は、実にこの辺りに関わっている――というのはまだ漫画版では語られていませんが、こうした時代背景は、折に触れて本作で語られることになります。
さて、ここでは愁二郎の口から、京八流の継承執行装置というべき朧流の幻刀斎の存在が語られますが、半ば伝説のこの怪人についてはまだ謎のまま。先行きに不安を感じさせつつも、三人の同盟がスタートするのですが――しかしここで双葉が思わぬ提案をすることになります。人を殺さないで行くことはできないか、と。
デスゲームの趣旨に反発し、できるだけ人を殺さないように努める主人公というのは、ある意味定番ではありますが、しかしそれが基本的に無茶な道であるのはいうまでもありません。
もちろん、この「こどく」のルールが求めているのは、相手を殺すことではなく、相手の木札を奪うこと。そこから考えれば、不殺も必ずしも不可能ではないかもしれないのですが……
それしても、これは裏を返せば自分たちが死なずに「こどく」を抜けられないか、ということでもあります。そこで響陣が一つの調査を提案するのですが――この辺りのルールの限界を探り、その穴を突こうというのは、いかにもゲームもの的な展開であって、これはこれで本作ならではの面白さであることは間違いありません。
そして彼らとは全く違う形で、このルールを活用しようとしているのが、(原作では既に死んでいる)立川孝右衛門というのが、また面白いところであります。
しかしゲーム性の考察や、ましてや殺人の禁忌など全く関係なしに暴れ回る男が、貫地谷無骨――乱斬り無骨であります。
長州派の人斬りであった無骨は、立場的に幕末は激突することのなかった愁二郎を獲物と定めて襲撃。一方の愁二郎は「弟」の一人・祇園三助に双葉を攫われ、それどころではない状況ですが――それならばと、周囲の関係ない人間に凶刃を振るう無骨を阻んだものは……
愁二郎の戦いだけでなく、他の強豪同士の戦いが始まるというのは、いよいよこのバトルも本格化してきたことでしょう。
こうして「こどく」の戦いが激化する一方で、京八流の因縁もついに大きく動き出し、愁二郎と双葉の向かう先もまだまだ無明の闇なのであります。
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