冬野ケイ『神様の用心棒』第2巻
箱館戦争で命を落としながら、神使として甦った青年・兎月の奮闘を描く、霜月りつの『神様の用心棒』のコミカライズ第2巻であります。神使として活躍する中、失われていた記憶を取り戻した兎月。その一方で、その記憶と密接な関係を持つ刀を用いた事件が発生して……
箱館戦争から十年後、函館山の宇佐伎神社の祭神・ツクヨミによって甦らされた旧幕府軍の青年・兎月こと海藤一条之介。思わぬ状況に戸惑いつつも、兎月は氏子というべき函館の人々を助けるべく奮闘することに……
という基本設定を踏まえて展開する本作。人助けもあれば、怪ノモノ――函館山から降りてくる人の負の念が生んだ魔――との対決もありと、なかなかにバラエティに富んだ物語が展開される原作ですが、漫画版は、第一巻に引き続き、この原作に忠実に描かれています。
といっても、やはりダイレクトにビジュアルで描かれるのは、大きなアドバンテージであることは言うまでもありません。特に本作の場合、脇役も含めて個性的なキャラが登場するだけに、それがビジュアルで描かれるのはうれしいところです。
たとえばこの巻の前半のエピソード「狐のくれた赤ん坊」は、親に捨てられた赤子を預けられた兎月が、子育てに悪戦苦闘するという人情噺ですが――彼に赤子を預けたのが「狐」、つまり稲荷というのが実に本作らしいところであります。
そしてその彼女の様々な表情が画で描かれるのも楽しいところで、特に彼女が激した時に見せる「顔」たるや……(この辺りは素直に兎月に同情してしまいます)
しかし画の力をさらに強く感じさせるのは、後半のエピソード「剣の約束」であることは間違いありません。
元々、死から甦った際に記憶が一部欠落していた兎月。しかし復活から時間が経ったためか、ようやく記憶を取り戻した彼は、旧幕府軍で自分の「師」であった人物のことを思い出すのでした。
師といっても剣ではなく(剣も教わってはいたのですが)、俳句の師だったとくれば、ピンとくる方もいるでしょう。そう、その人物の名は土方歳三――今更言うまでもない超有名人であります。
そして兎月の記憶の中に土方が登場するわけですが、この土方が実に「らしい」ビジュアルであるのは当然として、本作ならではの姿を見せてくれるのが嬉しいところなのです。
土方の俳句については、史実ではあるものの、何というかその内容的なものもあって、フィクションの世界ではネタ的に扱われることがほとんどといえるでしょう。しかし本作においては、そこに意外とも言える形でポジティブな――土方自身のキャラクターとしても、兎月との関係性においても――意味付けが為されているのにまず感心させられます。
なるほど、これだけお馴染みの題材にもこういう描き方があったか! と思わされるこの土方の想いは、内容が内容だけに、画がつくことで、より印象的に感じられた次第です。
そして更に印象的なのはこのエピソード後半の展開なのですが――これは是非実際に見ていただきたいと思います。
この展開は画で見てみたい、と思わされた名場面が、まさに満を持して、というべき形できっちり画で描かれているのは、実に嬉しいところです。
(ちなみに前巻も凄かったカバー下のおまけ漫画は、今回それに輪をかけて凄いことに――これもやはり漫画でなければ描けない内容ではあります)
そしてもう一つ嬉しいのは、この漫画版が第二巻では終わらず、この先も続いているところであります。
原作第一巻『神様の用心棒 うさぎは闇を駆け抜ける』の内容は、この巻までで描かれていますが、現在は第二巻「うさぎは玄夜に跳ねる」分が連載されている模様。
基本的にシリーズもの小説の漫画化は、第一巻だけ扱ってそれまで、というパターンが非常に多いのですが、本作はそれを打ち破ってくれているというのは大いに嬉しくなってしまうのです。
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