倉田三ノ路『アサシンクリード チャイナ』(漫画版)
以前ご紹介した『アサシン クリード クロニクル チャイナ』の、『天穹は遥か』『薬屋のひとりごと』の倉田三ノ路による漫画化であります。ゲームの内容を踏まえつつ、ゲームになかった現代パートを加えることで、より「アサクリ」っぽさを感じさせる作品です。
16世紀、明の嘉靖帝(世宗)の時代――テンプル騎士団と結んだ宦官集団・八虎によって中国のアサシン教団は壊滅。そのわずかな生き残りであるシャオ・ユンも、伝説のアサシン・エツィオから託された「箱」を奪われることとなります。
マスターであるワン・ヤンミン(王陽明)も倒されたシャオ・ユンは、「箱」を取り戻し八虎を壊滅させるべく、孤独な復讐の道を行くことに……
という内容であった『アサシンクリード クロニクル チャイナ』。本作はその漫画化であり、ゲーム内の流れにほぼ忠実に、シャオ・ユンの戦いを描いています。石窟寺院から始まり、マカオ、紫禁城を経て、長城での決戦まで――正直なところ、ゲームのダイジェスト的な印象は否めないのですが、作中のちょっとしたアクションや場面に、ゲームをプレイしているとニヤリとさせられる部分があるのは、お約束とはいえ嬉しいところではあります。
この辺りは作者自身がシリーズのファンだという点が大きいと思いますが、冒頭に挙げたように中華(風)世界を舞台とした作品を描いてきた作者を起用したのは適材適所というほかありません。
しかしこの漫画版の特長は、原作再現のみにあるのではありません。むしろその最大の特長は、原作ゲームにない、しかしアサシンクリードシリーズにはお馴染みの要素――現代編を追加していることにこそあります。
現代編の主人公となるのは、ある事件がきっかけで学校を退学し、引きこもっている少女・黄里紗。自分の中の暴力衝動に悩む彼女は、世界的大企業アブスターゴ社が運営するクリニックで、DNAから遺伝的記憶(先祖の記憶)を探る装置・アニムスによる「治療」を受けることになります。
そしてその中で里紗が見たものこそが、彼女の先祖であるシャオ・ユンの戦いだった――というのが本作の基本構造となります。
実はテンプル騎士団の現代における隠れ蓑であるアブスターゴ社によってアニムスの被験者となったアサシンの子孫が、先祖の記憶を辿る――というのは、シリーズの定番展開。
しかし実は原作はシリーズの番外編的性格のためか、この現代編が存在しなかったものを、本作においては新たに描いてみせたというのは、これは原作プレイ済の人間にとっても、大いに気になるところであります。
正直なところ、ゲームをプレイしている時には別になくても(というかむしろない方が……)と思ってしまう現代編ですが、しかしこうして追加されると嬉しくなってしまうのがファン心理――というのはさておき、こういう形で漫画の独自性を出してくるのは大歓迎であります。
さらにこの現代編、シリーズのアメコミ版(現代編についてはゲームよりも実質こちらがメインになっている部分もあるので恐ろしい)で活躍した日本のヤクザアサシン、キヨシ・タカクラが里紗を導く役どころで登場。
また、里紗をアニムスにかけるアブスターゴの女性技術者・加賀美は、映画版で描かれた事件がきっかけで左遷された過去があったりと、ゲーム以外のメディアも複雑に絡んでいくシリーズらしい要素が満載されているのも楽しいところです。
もちろん本作の内容が正史と断言されたわけではないのですが、上記のとおり漫画の設定が公式となっている部分も多く、もちろん本作もUBIの監修を受けていることを思えば、公式となる可能性も大きいと思われます。
そしてそうしたマニア的な興味だけでなく、自分自身の存在に嫌悪感を抱いていた里紗が、ある意味自分のルーツであるシャオ・ユンの戦いを知ることによって自分自身を肯定し、新たな一歩を踏み出す――そしてそれはシャオ・ユン自身がアサシンとして復讐を超えた道を歩み出すのと重なる――のは、物語の結末として実に美しいと感じます。
そしてもう一つ、本作オリジナルのシャオ・ユンの弟子・小虎の父が実は日本の三浦氏の出身で、北条早雲との戦(油壺の語源になったあの戦)に敗れて中国に渡ったという設定があり、そして小虎が日本でアサシン教団を作るという展開が本作の結末では語られるのですが――この辺り、戦国時代の日本を舞台とする, ゲームの次回作に関わってくるのかどうか、というのも楽しみにしているところであります。
『アサシンクリード チャイナ』(倉田三ノ路&ユービーアイソフト 小学館サンデーGXコミックス全4巻) Amazon
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