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2024.01.09

木原敏江『完全版 白妖の娘』(その一) 驚きの描きおろし286ページ!?

 木原敏江が2018年から2019年にかけて連載した『白妖の娘』の完全版が刊行されました。平安時代を舞台に、一人の少女の復讐譚と九尾の狐伝説が交錯する名作ですが、今回刊行されたものは、連載版になんと286ページ描き下ろしという、まさに「完全版」の名に相応しいものとなっています。

 都の貴族に騙されて死んだ姉の復讐に燃える少女・十鴇と、彼女のために先祖が封印した禁忌の森の白妖の存在を教えた青年・葛城直。妖魔の封印を解いた末、十鴇は白妖の器としてその身を差し出して都に向かい、責任を感じて厳しい修行を積んだ直は、さらに腕を磨くため陰陽師・安倍泰親に弟子入りすることになります。

 直が京で出会った変わり者の青年貴族・藤原玄雪を後見人に、泰親の下で修行に励む一方で、玄雪の親友だった青年・五葉織草を仲間に引き入れ、復讐を果たした十鴇。
 しかし身分だけで他人を判断する貴族たちをひれ伏させるという十鴇の想いと、この国を混沌と恐怖で包もうという白妖の狙いが合わさり、十鴇は玉藻の名で法皇の寵姫にまで上り詰めることになります。そして雨乞い勝負で泰親を破った十鴇は、法皇を操り、女帝の座を狙うのですが……

 という物語自体は、この完全版においても、連載版(以下「旧版」)と全く変わらず、また物語における人々の去就も変わるものではありません。

 もとより本作は岡本綺堂の『玉藻の前』をベースにしつつも、十鴇と直をはじめとする登場人物たちを本作ならではの造形とすることにより、大きく踏み出してみせた作品であります。
 そしてそんな登場人物たちによる物語は極めてエモーショナルであって、そしてその先の結末は何度読んでも涙を堪えきれない、名作の名にふさわしい作品であります。


 しかし、本書が刊行されると聞いた時に思ったのは、「完全版」が刊行される理由もさることながら、どの辺りが完全版となるのか、ということでした。
 まことに失礼ながらこれまで完全版と銘打たれて刊行されたものを思えば、「雑誌連載時のカラーページを収録+数ページ描きおろし」という印象があります。しかも本作は四年前の作品。連載終了からわずかな期間の後に完全版が刊行されるとは――と、疑問に思っていたところに飛び込んできたのは、帯の「新規描きおろし計286p収録!!」の記載であります。

 これは思わず目を疑うほどの分量であります。何しろ、旧版の単行本が大体185ページ前後であったことを考えれば、つまりこの完全版は、単行本一冊以上の追加があるということなのですから!
 そして実際に読んでみれば、なるほどこの描きおろしの分量はもちろん偽りなしの大増版。描きおろしに伴い、それ以外の部分も相当手を加えていることにも驚かされます。

 しかしどの部分がこれほどまでに追加されているのでしょうか。それは――長くなりますので、次回に続きます。


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