栗美あい『白花繚乱 白き少女と天才軍師』第3巻 怪しい男と都で待つもう一つの戦い
「梁山伯と祝英台」ミーツ梁・北魏戦争というべき、少女漫画版『奔流』(田中芳樹原作)の第3巻は、一端最前線から離れて梁の都・建康が舞台となります。都の繁栄に驚く祝英台ですが、そこで待ち受けていたのはもう一つの戦い。知将でも及ばぬその戦いを前にした祝英台の想いは……
兄と慕う梁山伯を追って、北魏の名将・楊大眼が包囲した河南城に、陳慶之とただ二人駆けつけた祝英台。そこで陳慶之の神算鬼謀、そして守将の王茂と祝英台の武勇で楊大眼を退けたものの、しかし梁軍は河南城を捨てての撤退を余儀なくされます。
その混乱の中で姿を消した梁山伯に心を痛める祝英台。王に戦況の報告に戻る陳慶之は、梁山伯捜索を直訴しようと祝英台に告げて……
というわけで、北魏との戦いは雨季に入ることもあって膠着状態となり、その間に物語の舞台は建康に移ることになります。
前巻ではただ二人、敵の重囲の中に乗り込んだ陳慶之と祝英台は、今度は最前線から遠く離れた都を訪れるわけですが――その途中、馬車の中に半裸の女性を幾人も侍らした男に声をかけてられることになります。
陳慶之に何やら馴れ馴れしい態度を見せる、いかにも怪しいこの男こそは、梁の名将・曹景宗将軍――登場シーンからわかるように豪傑肌で型破りな男ですが、タイプは正反対の陳慶之を高く買い、何かと可愛がってきた人物であります。
ちなみにこの曹景宗、史実では後の梁王・蕭衍を支えて梁建国に大功のあった名将(やっぱり好色で知られたとのことですが……)。陳慶之も蕭衍に早くから仕えていたので、それが一つの縁というべきでしょうか。
さて、この曹景宗と共に建康を訪れた陳慶之と祝英台ですが、ごく普通の(?)山出しである祝英台は都の繁栄に驚くばかり。しかし、えてしてこういう繁栄には裏の顔があるわけですが――早速祝英台はそれを痛感させられることになります。
陳慶之と共に、梁王と対面の機会を得た祝英台。旧知の間柄の陳慶之に親しげに言葉をかけ、楊大眼を撃退した「英雄」祝英台に興味津々の梁王ですが――しかし梁山伯捜索の願いも、陳慶之の白馬の騎兵隊設立の願いも、王の周囲の高官たちの差し出口に阻まれてしまったのです。
そして曹景宗と共に宮中の宴に出ることになった二人を待つのは、もう一つの戦い――宴席にかこつけて、陳慶之たちを辱めようとする陰険な高官たちとの対決で……
というわけで、今回祝英台が巻き込まれることになった、これまでとは全く別の意味での戦い。それはこれまでの北魏の戦い以上に、祝英台にとっては未知の戦いですが、しかしここでも祝英台の怖いもの知らずが爆発することになります。
王を前にしても物怖じせずにズバズバと直言し、宴席でも高官相手に一歩も引かない祝英台。その姿はあまりに「漫画的」で、見ているこちらの方がヒヤヒヤしますが、しかし心からの言葉が人を動かすのはいつの時代も同じであります。
そして宴席では、また別の形で祝英台がきっかけとなって人の心を動かすのですが――このくだりは史実を踏まえているものの、祝英台がきっかけというのはもちろんフィクションではあります。しかしその史実を祝英台自身に重ね合わせて描くのは、なるほど納得できる趣向であります。
実は、原作では王との対面も宴席も、祝英台は参加しない――つまり、この辺りは完全に漫画オリジナルなのですが、しかし祝英台中心に展開するこの漫画版においては、これもアリでしょう。
そして力を合わせて(いや、陳慶之はあまり働いてないですが)難局を乗り切り、都に来た目的を果たした陳慶之と祝英台ですが――都ではまだ波乱がある様子。それがこの先、如何に二人に絡むかは、次巻のお楽しみであります。
と、実はこの巻で王茂が祝英台の秘密をついに看破するのですが、この秘密、それよりも先に巻頭の登場人物紹介にはっきりと書かれていたのにびっくり――というか、読み返してみたら第二巻の登場人物紹介に既に書かれていてまたびっくり……
(いやまあ、バレバレではあったのですが、それでも)
『白花繚乱 白き少女と天才軍師』第4巻(栗美あい&田中芳樹 秋田書店プリンセス・コミックス) Amazon
関連記事
栗美あい『白花繚乱 白き少女と天才軍師』第1巻
栗美あい『白花繚乱 白き少女と天才軍師』第2巻 援軍、将らしくない将と破天荒な快男児(!?)と
| 固定リンク
