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2024.05.30

冬野ケイ『神様の用心棒』第3巻 その先を描いた漫画版、ここに完結

 順調に原作小説が巻と版を重ねている『神様の用心棒』、漫画版の第三巻・最終巻であります。宇佐伎神社に祀られたツクヨミと、その神使――用心棒の兎月が、函館の人々を守るために繰り広げる活躍も、ひとまず見納めであります。

 箱館戦争で命を落としてから十年後、ツクヨミによって神使として甦った青年・海藤一条之介改め兎月。思わぬ状況に戸惑いながらも、函館で菓子屋を営む未亡人・お葉や店で働くおみつ、ドルイドの血を引く英国人商人・パーシバルといった人々と触れ合いながら、兎月は今を生きる人々のために、奔走することになります。

 そんな設定で展開する第三巻では――
 兎月が招かれたパーシバル邸でのクリスマスパーティーに、客の一人が古い鏡を持ち込んだことをきっかけに、残忍な猟奇殺人が連続する「フロイスの鏡」
 豊川に誘われて山中での花見に加わった兎月とツクヨミが、稲荷や天狗らと宴を楽しむ「花さかずき」
 この二編が収録されています。

 ここで原作既読の方は「おっ」と思われるかもしれませんが、これら二編は、原作ではそれぞれ別々の巻――「フロイスの鏡」は第二巻の「うさぎは玄夜に跳ねる」、「花さかずき」は第四巻の「うさぎは桜と夢を見る」に収録されているものです。
 これは第二巻の紹介でも触れましたが、実は原作第一巻「うさぎは闇を駆け抜ける」収録のエピソードは、この漫画版の第二巻までで全て収録済み。コミカライズの場合、第一巻分を描いたら完、というケースが非常に多いのですが、こうして本作がその先が描かれているのは、やはりそれだけ本作が支持されているということでしょうか。

 もう少し収録作品に触れますと、この巻の大部分を占める「フロイスの鏡」は、主な舞台がパーシバル邸、さらに函館の外国人居留者社会が背景となるという変わり種のエピソード。それだけでなく、かなり血腥い猟奇殺人が発生するという物語のでもあります。
 元々原作の時点で『神様の用心棒』という作品は、シビアな内容、重い内容も多く含まれており、それが魅力の一つでもあったのですが、このエピソードもその一つの現れであることは間違いないでしょう。

 そしてもう一つ、このエピソードにおいては、「外見」が実は大きな要素となっているのですが、それを描くのには漫画という媒体が相応しい、という判断もあるのかもしれません。
(ちなみにこのエピソード、原作と本作では、事件の中心となった人物の処遇が大きく異なるのですが――これはどちらが良いか、ちょっと悩ましいところではあります)

 また、もう一つの「花さかずき」は、分量的には短編ですが、稲荷や天狗たちとの花見という、実にビジュアル映えする内容ですので、これは漫画化にピッタリといえるでしょう。
 さらにビジュアル的な華やかさだけでなく、かつて箱館戦争で戦った(そして命を落とした)旧幕府軍の兵士という兎月の設定を踏まえた物語をここで改めて描くのは、この漫画版のラストに相応しいと感じます。


 というわけで、原作読者としても楽しい漫画版だったわけですが、冒頭に触れたように原作はまだまだ展開中。今回漫画化されなかったエピソードもいくつもあれば、魅力的なキャラクターも幾人もいます。いつかまた、この漫画版の続きにも会えたら嬉しい――そんな気持ちであります。


 ちなみに毎回カバー下のお楽しみだった、兎月の転生後予想図(?)ですが、今回ついに兎月大好きなあの人が参戦。しかしそのクオリティは――それでいいんか兎月! と笑顔でツッコんで終わるのも、またらしいかもしれません。


『神様の用心棒』第3巻(冬野ケイ&霜月りつ KADOKAWA 角川コミックス・エース) Amazon

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