『逃げ上手の若君』 第二回「やさしいおじさん」
諏訪頼重に保護されたものの、足利高氏側についた者たちの目は厳しく、鎌倉から出られずにいた時行。そんな中、時行は、兄・邦時が伯父の五大院宗繁の裏切りで捕らえられ、斬首されたことを知る。さらに自分をも捕らえようとする宗繁に対し、時行は頼重の言を受けて仇討ちを狙うが……
前回に引き続き鎌倉を舞台とする今回は、時行が新たに加わった郎党たちとともに、兄の仇・五大院宗繁を討つまでが描かれます。前回は時行の逃げ上手を描いたとすれば、今回はその逃げ上手の意味――逃げ上手が英雄の資質ともなる、その理由を描いたエピソードといえるでしょうか。
アニメとして、内容的にはもちろん原作をなぞりつつも、細かいエピソードやキャラクターの登場順を時に入れ替え、アレンジしたセリフやオリジナルのシーンを加える構成は前回同様ですが、それがメリハリの効いたアクション(省エネな場面もあれば、ラフなタッチで驚くほど動きまくる場面もあって)と相まって、アニメならではの、アニメだからこその面白さに繋がっていたと感じます。
そして今回のメインの敵となる「やさしいおじさん」五大院宗繁は、絵に描いたようなヒューマンダストなわけですが、それを鬼畜大賞(とは)受賞シーンで各分野総ナメで示す演出が楽しい(そんな中で知名度だけ信長に負けるところも。鬼畜大賞1333に信長? という気がしますが)。
宗繁は原作でおそらく初の漫画化だったということは、間違いなく初のアニメ化ですが、ここでは伊丸岡篤氏の怪演もさることながら、人生の双六を上がるには賽の目が足りない云々言っていたことからの「賽の鬼」を、原作では小ネタとして使われた未来の双六を思わせる描写を絡めて強調してみせるのが面白いところです。
面白いといえば、原作では第1話のラストで何となく仲間になっていた弧次郎と亜也子が、こちらでは仇討ちの前のタイミングで時行の前に現れるというのはなかなかケレン味があってよいアレンジだったと感じます(いきなり件の双六やってますが)。
ここで時行と対面した直後、雫・弧次郎との会話の中で時行のことを、亜也子が「かわいかった 持ち運びしたい!」「強くないなら守ってあげなきゃね」と評するのは、オリジナルながら如何にもこの子らしい表現(解釈一致というか)で、実に良かったと思います。
そしてオリジナルシーンがさらに光るのは、今回のラスト――時行に討たれた宗繁の首が、落ちてくる鞠に重なるようにかつての時行と邦時の会話に入り、その中で邦時が「がんばれ!」という言葉を(結構強引ではあるのですが)かけてくるくだりは泣かせてくれます。
(言うまでもなくこれは、宗繁に売られた邦時が、前回鞠が落ちるのと重ねて首を落とされた演出と対応しているわけですが)
このようにオリジナルを加えつつ、原作を外れすぎない程度に再構成している点は、原作読者として特に印象に残るのですが、もう一つ印象に残ったのは、焼け野原となり色彩が失われた鎌倉の姿です。
このシーンではほとんど水墨画のような背景を時行と頼重が歩くのですが――往時の鎌倉とはうって変わった廃墟の姿が、親兄弟も味方も全てを失った時行の心象と重なる中で、今回もう一人の「やさしいおじさん」である頼重の言葉に合わせるように、廃墟に光が差し込むという演出は、わかりやすくも象徴的で実に良かったと思います。
派手なアクションとともに、こうした静かな見せ方も織り交ぜてくる本作、この先も期待してよさそうです。
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