2017.04.24

霜月かいり『Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀 乙女幻遊奇』 丹翡の目から見た懐かしき好漢・悪党たち

 本編第二期に外伝の映像化と、この先の展開も楽しみな『Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀』。本作にはそれらの映像作品だけでなく、周辺作品にも気になるものが幾つも存在します。その一つがこの『乙女幻遊奇』……霜月かいりの美麗な絵により、「乙女」の視点から描かれた物語です。

 大悪人・蔑天骸により兄を討たれ、先祖代々守護してきた天刑劍を奪われた少女・丹翡。彼女が謎多き美青年・朱鳥こと凜雪鴉、そして西の果てから来た風来坊・殤不患と出会ったことから、この東離劍遊紀という物語は始まります。
 そして本作はその丹翡……すなわち乙女の視点から再構成された物語なのです。

 本来であれば、聖地から外の世界に出ることなく、天刑劍を守って暮らしたであろう丹翡。その彼女のお人好しぶり、世間知らずぶりは、本編でもしばしば描写されていました。
 そんな彼女の目に、海千山千の好漢・悪党が、彼らと共に繰り広げてきた冒険の数々がどのように映るものか……それはなかなか興味深いものであります。

 もちろん、こうした構造ゆえ、基本的な内容は本編のそれをなぞる以上のものはないわけですが(尤も、後半にはオリジナル妖魔も登場する本作独自のエピソードもあるのですが)、それはファンにとってはむしろ望むところでしょう。
 凜雪鴉が、殤不患が、捲殘雲が、あるいは殺無生や刑亥が、丹翡の目から見ることによって、おなじみの、それでいてこれまでとは少しだけ違う姿で見えてくるのですから――
(狩雲霄のみほとんど登場しないのは、凜雪鴉を除けば彼のみ真の顔を隠していたからでしょうか)

 そしてそれを描くのが霜月かいりとくれば、これはもう言うことなし。いや、個人的な趣味を言えば、殤不患はもう少しむさく……いや男臭く描いて欲しかったところですが、それはさておき、原作の賑やかですらある美形キャラの群舞を描くのに、これほど適任はおりますまい。
 そして、決して強くはない者が、傷つきながらも強くあろうとする姿、そしてその傍らに在る者が不器用に手をさしのべる姿は、実に作者の作品らしいと感じるのです。

 ただし、原作に強烈に漂っていた武侠ものの香り――己の腕と剣のみを頼りに江湖を渡り、冒険に命を燃やす連中の心意気とでも言うべきものが、やはりほとんど感じられないのは、これもまた本作の構造上全く仕方ないところですが、やはり少々残念ではあります。


 こうした点を踏まえて考えれば、やはり一種のファンアイテムであることは否めませんが……しかし本編終了から半年が過ぎ、少々寂しくなってきた頃に、またあの連中に会えるというのはやはり嬉しいもの。
 新作までの飢えを和らげる作品として、気軽に楽しめる一冊ではあります。

 そしてこの世界のビジュアルとは相性抜群の作者とは、新作の時にも何らかの形で関わって欲しいとも、強く感じた次第です。


『Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀 乙女幻遊奇』(霜月かいり&Thunderbolt Fantasy Project 秋田書店プリンセス・コミックスDX) Amazon
Thunderbolt Fantasy東離劍遊紀 乙女幻遊奇 (プリンセス・コミックスDX)


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 『Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀』 第13話「新たなる使命」(その二) と全編を通じて

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2016.10.07

『Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀』 第13話「新たなる使命」(その二) と全編を通じて

 『Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀』の最終回の感想の続きであります。蔑天骸を相手に凜雪鴉が妙な追い込みをかけたおかげで復活した妖荼黎打倒の唯一の手段たる天刑劍が喪われ、万策尽きたかと思われた時――

 その時、ただ一人、妖荼黎の前に立つ殤不患。そうだ、我々にはこの男がいる! といっても彼は文字通りの徒手空拳と思いきや、彼は、俺たちは二本の腕と十本の指で道具が扱えると力強い宣言。そして道具には他に代わりがいくらでもあると……!

 そこで彼が取り出したのは一本の巻物。そこに記されたのは、いずれも西幽の名だたる魔剣・妖剣・聖剣・邪剣――なんと彼は蔑天骸も真っ青の剣コレクターだった!? そして妙にタブレットめいたスクロール操作で彼が取り出したのは一本の異形の剣、須彌天幻・劫荒劍であります。
 七支刀状に変形したその剣が生み出したのは平たくいえばブラックホール、その中に妖荼黎は瞬く間に吸い込まれ、あっさりと封印されてしまうのでした。

 実は西幽で争いの原因となる件の剣たちを集めていた殤不患。しかし集めも集めたり36本の剣の目録を付け狙う悪人たちが引きも切らず現れるため、剣の捨て場所を求めて旅するうちに鬼歿之地も超え、東離に辿り着いてしまった――いやはや、まさに大英雄の所業であります(というかレベルカンスト、アイテムフルコンプして追加ディスクに手を出したRPGの廃プレーヤーのような……)

 何はともあれ妖荼黎を飲み込んだ空間の穴が塞がるには百年かかるとのこと。そしてその剣の封印を守るのが、丹翡の、捲殘雲の「新たなる使命」。使命に燃える丹翡と、しっかり丹翡の尻の下に敷かれつつも幸せそうな捲殘雲の二人に別れを告げずに去る殤不患の前に、凜雪鴉が現れます。
 絶っっっ対ついてくんなよ! という殤不患に、第1話のお返しのように傘を差し出す凜雪鴉。その内心では、彼の目録に群がってくるであろう悪党の中にいるかもしれない極上の奸物目当てに、付きまとってやる気満々ですが……

 そんな殤不患の行く先は嵐の予感。彼は傘を路傍の地蔵にかけてやると、念白とともに一人飄然と去っていくのでありました。(完)


 ――というわけで文句なしの大団円を迎えた本作。(個人的には馴染み深いとはいえ)武侠という日本ではあまり広まっていない題材に、さらに馴染みのない布袋劇というメディアという、非常に冒険的な作品でしたが、最後まで非常に楽しませていただきました。
 最初のうちは少々キャラクターが類型的かな、とも思ったものですが、物語が進むに連れて次々に明かされていく彼らの意外な素顔には唸らされてばかりでしたし、特に主人公二人の「正体」が物語を牽引していく終盤の展開は大いに引きこまれた次第です。

 実は武侠ものと一口にいってもなかなか定義は難しいのですが(例えば本作のようにファンタジー世界を舞台にしたものも含まれるか、など)、本作は設定・舞台においてはその辺りをうまく最大公約数的に取り入れていたかと思います。
 そしてキャラクター造形においては、これぞ武侠! というべき、既成の権威権力に依らず、自らの道、自らの真実を貫かんとして江湖をさすらう善魔入り乱れた英雄豪傑たちの姿がきっちりと描かれ、それが最大の魅力になっていたことは間違いありません。
(先に述べたように、蔑天骸はじめとする玄鬼宗は類型的に感じられたのですが、それも計算通りであったと今では理解できます)

 唯一の不満は、まだまだ様々なキャラクターを出して欲しかった、そしてもっともっとたくさんのエピソードを見たかった……という点ですが、そこは続編決定ということで、そちらに期待しましょう。
 本作においてそのキャラクターが確立された殤不患と凜雪鴉、二人の好漢がどんな冒険を繰り広げてくれるのか――何よりもこの二人が再び顔を合わせた時のことを考えるだけで、思わず顔がほころんでしまうのであります。

 まずはその時を楽しみにしておくこととしましょう。


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Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀 4(完全生産限定版) [Blu-ray]

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2016.10.06

『Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀』 第13話「新たなる使命」(その一)

 天刑劍を手にした蔑天骸に対し、真っ正面から剣で立ち向かい圧倒する凜雪鴉。完全に勝利しながらも命を取ろうとしない凜雪鴉に対し、蔑天骸は天刑劍を破壊し、凜雪鴉を嘲笑いながら命を断つ。そんな中、完全に封印から復活する妖荼黎。唯一の対抗策が失われた中、ただ一人、妖荼黎の前に立つ者は……

 遂に最終回、いきなりクライマックスに相応しく、主題歌なしで物語は始まります。

 天刑劍を手にしてご満悦の蔑天骸の前で、物語が始まって以来初めて剣を抜き放った凜雪鴉。真正面からお前の天狗の鼻を折るという凜雪鴉を嘲笑い、蔑天骸は魅翼を召喚して相手をさせようとしますが、凄まじい速度で打ってかかった凜雪鴉が召喚の笛に傷をつけていたことで、逆に魅翼は蔑天骸に襲いかかります。
 もちろんこれはあっさり退けた蔑天骸ですが、この腕を見せられれば、凜雪鴉の剣を認めざるを得ません。しかし「それだけの腕を持ちながら殺無生から逃げ惑っていたのは何故か」と問われて「強者を求める相手を喜ばせてやる筋合いはない」と答え、「なぜ盗賊などやっているのか」と問われて「剣に飽きたから」と完全に舐めきった答えを返されれば、これまで大物ぶっていた蔑天骸もキレずにはおれません。

 美しい月光を浴びながら激しく切り結ぶ両雄。しかしその間も舌戦は止みません……というより一方的に凜雪鴉が攻め立てます。剣の道がたどり着く先は山の頂などではなく大海原のようなもの、極めるほどに果てが見えなくなる……ごもっとも。言うことはまさに達人のそれですが、凜雪鴉の場合、その道に嫌気がさして剣を捨てたというのですから、蔑天骸立つ瀬なし。
 ついにエフェクトで地球がぶっ飛ぶほどの(少なくとも蔑天骸には)最大奥義を繰り出す二人ですが、勝ったのは凜雪鴉――しかも、彼には蔑天骸の命を取る素振りもありません。邪道の輩は断たないでからかった方が楽しいからね、と鬼のようなことを言う凜雪鴉の前に、蔑天骸は完全敗北であります。

 正直なところ、善悪定め難い個性的なキャラクターが次々登場する本作の中では、定型的な悪役、世紀末覇王的なそれの域を出ない印象だった蔑天骸ですが、なるほどそれもこの時のため――凜雪鴉の人となりを示すための踏み台とするためであったか、というのは一面的な見方かもしれませんが、個人的には腑に落ちました。
 しかし視聴者までそんな風に思われては(?)蔑天骸も我慢できません。お前も絶望させてやるとばかりに天刑劍をひねり壊した蔑天骸、折れた天刑劍の刃に貫かれて血笑の中に息絶えます。

 さすがに妖荼黎を封印できる唯一の武器である天刑劍を破壊されて凜雪鴉も焦った――かと思えば、負け犬は負け犬らしく死ね、絶望したくせに笑いながら死ぬな卑怯者! ……と、そこ? とツッコみたくなる怒りっぷりですが、あれだけ小憎たらしいばかりの余裕を見せていた凜雪鴉の仮面を引き剥がしたのですから蔑天骸も以て瞑すべしでしょう。
 しかしそんなことをやっている間にも刑亥の儀式は進み、ついに妖荼黎が復活(そして祠が崩れる中に消える刑亥)し、人間界抹殺を宣言。そこに駆けつけた殤不患らは事の次第を凜雪鴉から聞き出しますが、殤不患の「妙な追い込みをかけたんじゃないだろうな!」というお言葉ごもっとも。

 しかし実際問題として天刑劍がなければ対抗手段がない。別の神誨魔械を持ってきたら、とすっとぼけた提案をする凜雪鴉ですが、道義的に問題があるし、そこにも魔神が封印されていたら洒落になりません。

 万策尽きたかと思われた時――長くなりましたので次回に続きます。


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2016.09.27

『Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀』 第12話「切れざる刃」

 玄鬼宗を撒いて丹翡・捲殘雲と合流した殤不患。あくまでも飄々とした態度の殤不患に苛立ち、「刃無峰」の二つ名をつける捲殘雲だが、その場に現れた玄鬼宗に対し、殤不患はその真の力を発揮する。一方、ついに天刑劍の柄と鍔を手に入れ、鍛劍祠で天刑劍の封印を解いた蔑天骸たちが見たものとは……

 いよいよ残すところあと2回。今回は主人公の一人である殤不患の真の力が明かされることとなります。

 前回あっさり正体を見破られて玄鬼宗に追われる羽目になった殤不患。ようやく玄鬼宗を撒いた彼は、刑亥と狩雲霄から逃れて傷の手当て中の丹翡と捲殘雲を見つけます。お互いの状況を確かめ合う三人ですが、凜雪鴉の策が破れてむしろイイ気分な殤不患に捲殘雲のイライラが爆発。窮地にあっても呑気に笑い、名誉も沽券も気に懸けないくせに厄介事には平気で首を突っ込む……そんな殤不患が気に入らないようです(しかし捲殘雲よ、それこそが「大侠」というものでは……)
 その挙げ句、殤不患に「刃無峰」――「切れない刃」という二つ名をつける捲殘雲ですが、むしろ殤不患はそれが気に入った様子であります。

 と、そこに現れたのは凋命率いる玄鬼宗の皆さん。凋命が殤不患に対して「大根役者」と呼びかけるのは、前回を思い出すと笑ってしまうのですが……それはさておき、武器を手にして戦うものの、やはり精彩を欠く丹翡と捲殘雲。捲殘雲を助けるため、自分の剣を投げつける殤不患ですが、それを手にした捲殘雲が見たものは――なまくらどころか、木の刀を銀色に塗っただけのいわば竹光。だとすれば、これまで玄鬼宗と渡り合い、岩石巨人を破壊した殤不患は……
 かつて殤不患の技を見て、気功は見るべきところがあるが、剣の切れ味は二流と判断した殺無生。しかしそれも道理、殤不患は初めから剣など持っていなかったのですから。全ては彼の気の力、その辺りの木の棒に気を込めるだけで、肉を切り裂き骨を断つどころか、岩をも砕く剛剣となるのであります!

 まさしく刃無峰の技で以て、玄鬼宗を一掃する殤不患。その彼を大根役者と嘲った凋命こそ哀れ、むしろ登場人物全てに真の力を隠してきた殤不患こそは千両役者! 凋命の命をかけた一撃をあっさりと打ち砕いた殤不患は、しかし相手の命を奪ったことには憂い顔を見せます。そう、彼が竹光を差すのは、いかに技を極めようと人を斬るのを当然とせず、己を縛める――のも面倒なので最初から武器を持たぬこととしてためなのですから。
 その辺りの殤不患の想いをどこまで理解したか、捲殘雲は新たな英雄の登場にワクワク顔……のように見えます。

 さて、そんな一幕の一方で、ついに天刑劍が封印されている鍛劍祠に現れた蔑天骸、そして狩雲霄と刑亥。ついに柄と鍔の両方を手にすると、あっさりと封印を解いて天刑劍をその手に収める蔑天骸ですが――その時、不気味な鳴動とともに天刑劍の台座が崩れます。台座の下の空間に潜んでいたのは、巨大な魔物。これこそは天刑劍に倒されたと伝承されていた魔神・妖荼黎――二百年前の戦いの後、唯一魔界に帰還していなかったという妖荼黎は、やはり倒されたのではなく、天刑劍に封印されていたのであります。

 それを知って慌てたのは狩雲霄、さすがに自分の生きる世界が魔神に破壊されては、と蔑天骸に矢を向けるのですが、彼ほどの達人が慌てていたのか、後ろから刑亥の鞭で首を絞められ、天井の梁にぶら下げられる始末。そのまま力を緩めぬ刑亥に抵抗の力も薄れ、偽者とはいえ一個の英雄だった狩雲霄も無惨に絶命することに……
 刑亥の真の目的こそはこの妖荼黎復活、邪魔するのであれば容赦はしないと鞭を向ける彼女に対し、むしろ妖荼黎復活を歓迎する蔑天骸。魔神復活により到来する乱世こそは剣の天下、俺の歩む道に相応しいと、テンプレ通りの世紀末覇者ぶりであります(その割りに、後で妖荼黎を倒せば救世主にもなれるというのが何というか)。

 かくてそれぞれ望みを果たして鍛劍祠を出た二人。と、蔑天骸の前に姿を現したのは、隠れて一部始終を見ていた凜雪鴉であります。蔑天骸から最強の剣たる天刑劍を奪い取り、その心を折ることこそ盗賊の本懐と語っていた凜雪鴉。しかしここに至り彼が知ったのは、真に蔑天骸が恃むのは自分自身の無敵の剣術、天刑劍はあくまでもそれに釣り合う得物に過ぎなかった……という事実でした。
 だとすれば、その蔑天骸の誇りを奪うのは簡単、ただ彼を剣技で以て破ればよい。そう言い放った凜雪鴉の手には、この物語が始まって初めて剣が――


 今まで溜めに溜めてきたものが大爆発した前半の殤不患の大立ち回りと、後半の(ある程度予想はできていたものの)意外な展開で盛り上がった今回。思想的には、凜雪鴉よりも殤不患の方が、蔑天骸を倒すのに相応しいようにも思いますが、さて……


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2016.09.20

『Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀』 第11話「誇り高き命」

 凜雪鴉に変装して蔑天骸とともに下山した殤不患。その間に天刑劍の柄を盗み出さんとする凜雪鴉だが、既に柄は蔑天骸が持ち出しており、殤不患の変装もすぐに見破られてしまう。一方、無垠寺に向かい、隠されていた鍔を見つけた丹翡と捲殘雲の前に、蔑天骸と手を組んだ狩雲霄と刑亥が現れる……

 気がつけば残すところ今回を入れてわずか3回。いよいよ事態が錯綜してきた今回、冒頭で描かれるのは、鍔の受け渡しのために凜雪鴉に化けて下山する殤不患と、玄鬼宗を率いて同行する蔑天骸なのですが……口調はいつも通りだわ、衣装や剣へのツッコミにもしどろもどろだわ、ガバガバの殤不患に頭を抱えたくなります。
 それでも何とか七罪塔を出発した一行ですが、一度使っているはずの魑翼の飛行高度にいまだ殤不患は馴れない様子。彼は怖さ紛れか、神誨魔械数ある中で何故天刑劍にのみ目をつけたのか――すなわち、何故天刑劍が最強なのか、蔑天骸に質問いたします。

 魔界と交信できると称する蔑天骸曰く、神誨魔械が魔神を滅ぼすというのは巷説で、追い返すのが関の山。魔界ではかつての大戦で人間界に現れた魔神たち、すなわち神誨魔械に倒されたはずの連中が健在であると――一柱、いまだ魔界に姿を見せない魔神・妖荼黎を除いて。その妖荼黎を倒したのが天刑劍であり、それが天刑劍最強の証なのだと……
 それは単に妖荼黎が人間界のどこかに封印されただけではないか、という気もしますが、殤不患の方も、魔神の何たるかを知っているかのような口ぶりなのも気になるところです。

 それはさておき下界に到着して玄鬼宗の下っ端が荷台に載せてきた金塊の箱に出迎えられる一行。ここで中身を確かめるように言われた殤不患は、一番上の一箱をチェックしてOKを出すのですが、これが罠でありました。金塊が入っているのはその箱だけでそれ以外は偽物、本物の凜雪鴉であれば荷車の沈み具合を見ただけで箱の重さが、すなわち中身がわかるはず! という理屈で正体が露見してしまうのですが……むしろここまで丁寧に正体を暴いてくれる玄鬼宗が丁寧すぎる。
 何はともあれ変装の必要がなくなた殤不患は、気合いだけでダイナミックに変装を吹き飛ばすと、豪快に玄鬼宗との立ち回りを始めるのでした。

 一方、七罪塔で隠密行動の凜雪鴉は、その途中で甲斐甲斐しく(本当にちまちま動いて可愛らしい)玄鬼宗が宴の後片付けをしているのを発見。食器の数から、蔑天骸の他に二人いたことを知った彼は、ここでも天刑劍絡みで何ごとか話し合われていたことを悟ります。それはさておいて、蔑天骸の金庫を開けたものの、そこに柄は既になく、蔑天骸が持ち出したことを凜雪鴉は知るのでした。
 さらに丹翡が何者かに助け出され姿を消したことから、殤不患が鍔の在処を教えたかと推理する凜雪鴉ですが……てっきり全て計算済みだったのかと思えば、彼がここまで尽く出遅れるのも珍しい。それだけ事態は錯綜しているということでしょうか。

 一方、七罪塔を脱出した丹翡と捲殘雲は、丹翡が見つけた気配を辿り、近くの霊木に丹翡が開けた霊脈(ワープゾーン)の入り口から、目的地の無垠寺までひとっ飛び。無事に鍔を見つけるのですが、そこに現れたのは刑亥と狩雲霄……蔑天骸と取り引きしたという二人は、丹翡たちの後をつけ、やはり刑亥の術で霊脈を通り抜けてきたのであります。
 そして始まる二組のバトル。丹翡対刑亥は比較的いい勝負ですが、心配なのは捲殘雲。一度だけなら咎めはすまいと意外と甘い狩雲霄の言葉を、あくまでも捲殘雲は拒絶します。ああ、よせばいいのに……と思いきや、ここで一皮むけたところを見せることになります。

 本物の誇りとは命と引き替えに手に入れるものだとというのならば、だからこそ、いつか誇り高く死んでいくためにも恥じるような生き方はできない! そんな啖呵を切った捲殘雲のバックについに念白が流れ、素晴らしい盛り上がりであります。
 が、片手で鍔を持った状態で狩雲霄とやり合おうというのはどだい無理、お互い奥義を繰り出すも狩雲霄に及ばず、その必殺の一矢が捲殘雲の頭を射貫いた……と思いきや、辛うじて顔を掠めただけですみましたが、その矢は彼の右目を奪っていたのでした。

 そして狩雲霄に奪われる鍔。それを見た丹翡も奥義を放つのですが――それは二人を倒すのではなく、逃走用の目くらましのため。鍔に拘泥せず、捲殘雲を連れて再起を期して脱出した彼女もまた、大きく成長したと言うべきでしょう。


 というわけで、ついに柄も鍔も蔑天骸側の手に落ちてしまったわけですが、だとすれば蔑天骸が次に向かう場所はおそらく物語の始まりの地……そして非常に格好いい次回予告の口上からすれば、次回はついに殤不患の正体が明かされる様子であります。
 今回シルエットで登場した妖荼黎も気になりますが、さすがに今から登場はないか……?


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 『Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀』 第10話「盗賊の矜恃」

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2016.09.16

『Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀』 第10話「盗賊の矜恃」

 自分の前に現れた殤不患に対し、凜雪鴉は彼を仲間に加えた真意と、自分が盗みに拘る理由を語る。天刑劍の柄を取り戻すため、やむなく凜雪鴉に協力することとした殤不患。凜雪鴉が七罪塔で柄を盗み出す間、彼に化けて蔑天骸に金と引き替えに天刑劍の鍔の元へ案内することとなった殤不患だが……

 ぼやぼやしている間に一週間遅れとなってしまい恐縮ですが、東離劍遊紀の感想であります。凜雪鴉の裏切り、殺無生の死と物語が大きく動き出した中ついに凜雪鴉の真意が語られることになるのですが……

 前回、殺無生が七罪塔に殴り込んできた陰で、凜雪鴉を探してうろつき回っていた殤不患(血塗られた剣は、彼が誰かを斬ったのではなく、拾いもの)。刃を突きつける殤不患に対し、凜雪鴉はいつもの如く油断できない調子で、彼を仲間にした真意を語ります。
 七罪塔までの関門を突破するのに必要な刑亥と狩雲霄。しかし彼らは極悪人、いつ出し抜かれたり襲われるかわかりません。そこで全く謎の第三者である殤不患を入れることで、彼らを警戒させ、彼らが謀を巡らす余裕がなくなるようにした……殤不患が言うとおり、要するに囮ですが、なるほど、悪人の猜疑心を利用したうまい策ではあります(ここで逆に、一人で二つの関門を突破できるほどの腕前があると何故言わなかった、と凜雪鴉が文句を言うのが実におかしい)

 さて、蔑天骸に渡した鍔は偽物であること、本物は廉耆と待ち合わせていた寺の石灯籠の中と教えられた殤不患ですが、しかし既に蔑天骸の手中にある柄を手に入れなければ剣を奪還したことにはなりません。そこで凜雪鴉は殤不患に再び協力を依頼します。他に手もなく、今度裏切ったらぶった斬ると言いつつ殤不患はその申し出を受けるのでした(不安……)。
 そして凜雪鴉は黄金五千斤で鍔を売り渡し、その在処まで(もちろん場所は事前に教えずに)案内するという約定を蔑天骸と結びます。その間に殤不患は丹翡の牢に向かい、剣と食料を渡すと、事が落着するまでここで待つように言うのですが……

 これからが凜雪鴉の策、七罪塔から蔑天骸を引き離した隙に、柄を盗み出そうというのですが、しかし蔑天骸を案内するのが凜雪鴉なら、盗み出すのも凜雪鴉。一体どうすれば……というところで殤不患に被せたのが、彼の顔になってしまうという不思議な頭巾(ここで二人分台詞を頑張る鳥海浩輔)。つまりは、盗賊スキルは必要ない案内役の凜雪鴉を、殤不患にやらせようというのであります(やっぱり不安……)

 ここで何故そこまで蔑天骸から天刑劍を盗むことに拘るのか問う殤不患に答える凜雪鴉。人生を娯楽ととらえる彼にとって最高のゲームとは、人を騙すこと。しかし善人はすぐ騙されるからつまらない、どうせ騙すならば己を恃むこと甚だしい、傲岸不遜な悪人がいい。その驕慢の鼻をへし折って屈辱にまみれさせることこそが人生の醍醐味だと――
 なるほど、被害者の刑亥や殺無生が根に持つわけですが、これはこれで大丈夫の見識。そしてこれがおそらく前回彼が蔑天骸の前で口にした「覇者の気風」なのでしょう。

 と、彼が盗賊の矜持を語っている間に密かに丹翡のもとを訪れたのは捲殘雲であります。兄貴と慕っていた狩雲霄がどうしようもない偽英雄だと知ってしまった以上、自分の正義感に従って丹翡を助けるという彼に、思わず鍔の在処を語ってしまった丹翡。彼女は殤不患の言いつけを守らず、二人で寺に向かうことに……
 大体、こういう真面目で正義感は強いが腕前がいまいちのキャラが女の子を助けようとすると(ひどいときは二人揃って)惨殺されるのがパターンなので、いつ矢が飛んできて彼の脳天をブチ抜くか心配しましたが、(今回は)大丈夫でした。

 そうとも知らず作戦を決行する二人。寺への出発の直前、服が破れたと嘘をついて、凋命に替えの服を持ってきてもらい(前回といいほとんどボーイさん状態)、その服を着て凜雪鴉の顔となった殤不患。
 いよいよ蔑天骸を連れて鍔の受け渡しに向かう殤不患ですが、さて、そう簡単にことが運びますかどうか。まさかここまで来てまた下界に戻るとは思いませんでしたが……


 ついに凜雪鴉の真意が明かされた今回。さすがに殤不患を仲間に加えた理由は思いつきませんでしたが、盗賊をしている理由は、思い切り要約すれば「冒険を愛するから」というもので、これはある意味定番でしょう。
 が、それを実際に行動で見せられると、コノヤロウ……という気分になること不可避で、この辺りはうまいところ作り手の掌に乗せられた感があり、やられたなあ、という気分なのであります。


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 『Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀』 第9話「剣の神髄」

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2016.09.04

『Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀』 第9話「剣の神髄」

 鬼鳥の正体が大盗賊・凜雪鴉であり、全ては天刑劍を奪うための謀であることを知った殤不患と丹翡。捲殘雲も尊敬する狩雲霄の真の姿にショックを受ける。一方、凜雪鴉は天刑劍の鍔を偽造し、蔑天骸に取引を持ちかけていた。そこに現れた殺無生は、己の剣に賭ける信念のために蔑天骸に刃を向ける……

 鬼鳥=凜雪鴉が、掠風竊塵すなわち「風を掠め塵を窃む」盗賊であることを知らされた牢の中の殤不患と丹翡。ということは、その凜雪鴉に声をかけられた刑亥と狩雲霄もまた、世間知らずの小娘を騙して天刑劍を奪うという企みに乗った同類ということであります。(ということは死んだ廉耆もまた……)。これは確かに、正体のわからない殤不患のことを、異常に狩雲霄が気にしたわけです。
 この辺り、武侠ものだから……というこちらの「侠」への固定観念を見事にひっくり返してみせた面白い仕掛けです。

 そしてこの企みを知らなかったのは、殤不患と丹翡、そして捲殘雲。特に捲殘雲は、狩雲霄を大侠と信じ、兄貴と慕ってきただけに大きなショックを受けております。しかし狩雲霄に言わせれば清濁併せ呑むのが英雄。生きて誇らしげにする者には必ず秘めた恥がある、手際よく恥を隠したものだけが武林に名を残すことが出来る……と一見正しいけれどもやっぱり駄目な大人全開の発言であります。
 そして恥を隠すというのが、今回の場合何を指すかは明確ですが――

 そんな一行が立ち去った後、あまりに世間を知らなかった自分自身を恥じ、殤不患を巻き込んだことを詫びる丹翡。その時、静かに内功を練っていた殤不患は、その黄金に輝く巨大な気の力で以って、素手で堅固な牢を粉砕! そして丹翡にかけた言葉が素晴らしい。
「騙されることを悔やんでもいいが、正しくあろうとしたことは悔やむんじゃない」
 ……これもまた大人の言葉ではありますが、しかしどちらの大人が望ましいか、そして何よりも格好いいか! 言うまでもありません。

 さて、その頃諸悪の根源二人は腹の探り合い。前回、丹翡から奪った天刑劍の鍔に不審を抱くような描写があった蔑天骸ですが、やはり鍔は偽物。十秒見れば贋作が、五秒触れればさらに素晴らしい贋作が作れるというのが凜雪鴉の特技だったのです。それでは本物の鍔はといえば……もちろんここに持ってくるはずがない。何とかして蔑天骸が持つ柄を奪うのかと思いきや、モノがモノだけに、本物の鍔を蔑天骸に売りつけた方がいいかも、というのが凜雪鴉のスタンスであります。

 しかし既に強大な力を持つ蔑天骸が、何故剣を、それも天刑劍を求めるのかと問う凜雪鴉に対して、この世で剣こそは力の証、生と死を分かつものの象徴であり、それゆえ最強の剣を求めると語る蔑天骸。
 そして逆に何故それだけの能力を持ちながら盗みに拘るのか、と問われた凜雪鴉の「覇者の気風」という答えも、禅問答のようで、あるいは蔑天骸の答えと通じるものがあるように感じますが……

 と、そこにほかの面子は置き去りに、単身殴りこんできたのは殺無生。もちろん凜雪鴉のに首を取り立てにやってきたのであります。闇の迷宮を突破したら首をやると言ったが、自分は結局迷宮を通らなかったし? と(予想通りの)言い訳をする凜雪鴉ですが、もちろん殺無生が聞くわけもありません。
 七罪塔の奥はどん詰まり、これより先に逃げようはないという殺無生には、なるほどこれを狙っていたのかと感心させられますが、しかし彼の刃が向けられたのは蔑天骸。強者と見れば斬りたくなる殺無生にとって、蔑天骸こそはそれに敵う強者、そして蔑天骸も、己の信奉する剣の体現者ともいうべき殺無生の挑戦を拒むいわれはありません。

 そして対峙する両者ですが、しかし二人の達人の目には、既に決着は、その道筋まで見えていました。わずか九手、それだけで決着――九手で詰むのは自分だとわかりつつも、歓喜の表情で剣を抜き、その通りに蔑天骸の刃に胸を貫かれた殺無生。「決して勝てぬと悟った以上は、実際に負けてみなければ気がすまぬ……」愚かと言わば言え、これもまた一つの見事な生き方でしょう。
 そんな殺無生に最大限の敬意を果たしつつも、自分の剣が無双である以上、武林で名を上げる必要はない、と蔑天骸も自分の道との違いを断言するのでした。

 そして与えられた部屋に戻り、手に入れた殤不患の刃を改める凜雪鴉。その刃はなまくら同然、そしてその持ち主である殤不患が、彼の後ろに立って……次回に続きます。


 ストーリーは佳境に入りましたが、それ以上に印象に残るのは、登場人物それぞれの生き様、人生哲学の発露(特にようやく蔑天骸のキャラが立った印象)。というよりそれこそが、本作という物語の中核なのでしょう。
 一体誰が正しいのか、などという問いかけは無意味かもしれませんが、しかし物語の結末には、それが見えるのではないでしょうか。


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2016.09.01

『Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀』 第8話「掠風竊塵」

 一行の態度に怒って飛び出した殤不患。その後を追った丹翡と鬼鳥は、殤不患ともども玄鬼宗の操る魑翼を使って七罪塔に潜入する。それを待ち受けていた蔑天骸と一騎打ちする丹翡だが、蔑天骸と思い込んでいた相手は別人だった。捕らえられた丹翡や殤不患の前に現れた狩雲霄らが語る鬼鳥の正体とは……

 前回のあまりと言えばあんまりな一行の手抜きっぷりに激怒して、俺はピンでやらせてもらう! と飛び出した殤不患。やはりあれは殤不患の真の力量を見極めるためにわざと手を抜いたらしく(そしてそれに乗って適当こいてた鬼鳥)、殤不患が怒るのも無理はありません。しかし、内勁は強力だが剣は一流ではない、おそらく真の技は掌法という狩雲霄らの評価はなかなか興味深い。金庸主人公的に、偶然物凄い強力な内功を手に入れたので技が追いついていないという可能性もありますが……(というか、酒を酌み交わしながらこいつは斬れない! とか言ってた殺無生の立場は)

 何はともあれ、そんな連中の態度に丹翡も怒り出して殤不患を連れ戻すために後を追い、絶対こじらせるだけなのに鬼鳥までもそれに同行。殤不患に二人が追いついてみれば、そこでは玄鬼宗の手下がせっせとわかりやすい罠を仕掛けている最中であります。どうやらそれは魑翼――蔑天骸がぶら下がって飛んでいるあの骸骨鳥を捕らえるためのもの、これ幸いと手下を倒した一行は、魑翼を呼び出して一気に七罪塔までショートカットするのでした(そして残された四人は徒歩でナントカの迷宮を抜けることに)。

 さて、首尾良く塔に忍び込んだ三人ですが、その前に早速現れるのは待ち構えていた玄鬼宗の皆さん。全て計算通りとかなんとか、前回と微妙に矛盾することを口にしながら現れた蔑天骸に激高した丹翡に対し、蔑天骸は一騎打ちを受けようと(表面は紳士的ですが実際は猛烈に自分が有利な)申し出をします。
 それを受けて猛然と斬りかかる丹翡、これは前回の捲殘雲との会話が伏線で色々あるのかと思いきや、そうでもなくて普通に蔑天骸を追い詰めます。ついに放った最後の一撃を何とか受け止めた蔑天骸の口から出るのは「一体なんだってんだ!?」と、同じ声ながらキャラ違いのようなセリフ……?

 なんとこれも鬼鳥の幻術、丹翡が蔑天骸と思って戦っていた相手は殤不患だったのであります。本当に蔑天骸と丹翡が戦えば殺されてしまうから、という鬼鳥の理屈はそれなりに正当かもしれませんが、しかしその後に丹翡と殤不患だけは囚われて天刑劍の柄は奪われ、鬼鳥のみ蔑天骸の客分となったのは如何なるわけか?

 と、丹翡ともども牢に入れられた殤不患は頭を悩ませますが、それに答えをもたらしたのは、後から正規ルートで追いかけてきた狩雲霄らでした。
 鬼鳥は天刑劍を利用するために丹翡たちを利用したのだと語る狩雲霄。驚く丹翡に彼が語る鬼鳥の真の名は凜雪鴉、その渾名は掠風竊塵――世間を知らぬ丹翡ですら知る(そして殤不患は知らない)その名こそは天下に名高い大怪盗のものだったのであります。


 というわけでついに明らかになった鬼鳥の正体。いささか意外でしたが、なるほど、死霊術師に殺し屋に盗賊を連れて「義士です!」と言っていれば、それは蔑天骸が鼻で笑うわけです。

 しかし残念なのは、公式サイトでは既に凜雪鴉も掠風竊塵も名前が記載されていたことで、その意味が今回明らかになったとはいえ、意外性を損ねていたのは残念。
 それではサイトを見なければ良いのに、というのも一理ありますが、しかし本作の場合は公式サイトを見ないと固有名詞の意味や字面がわからないケースが非常に多いため、見ないわけにはいかないわけで……

(ちなみに以前も触れたかもしれませんが、「内勁」や「掌法」といった用語も、馴染みのない方には意味はおろか字面もわからないわけで、この辺りはどうにかならないものか、という気はいたします)


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2016.08.23

『Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀』 第7話「魔脊山」

 七罪塔で待つとその場は去った蔑天骸。最初の関門・亡者の谷に辿り着いた一行だが、刑亥の術がうまく働かず、結界からあぶれた殤不患は一人奮闘を余儀なくされる。さらに第二の関門・傀儡の谷でも狩雲霄の矢が通じず、殤不患はただ一人、巨大な傀儡を相手に死闘を演じる羽目に……

 全くキャラが立っていなかった獵魅は本当にあのまま死んでしまったらしく、全く言及もないままスルーされて始まる今回。突然登場した蔑天骸は、流星歩でいきなり丹翡たちの乗る船の上に出現いたします。仇を前に闘志を燃やす丹翡は、ここに集った六人の義士の力で天刑劍を取り戻すと宣言しますが、「義士?(プッ」という感じでこれを嘲笑う蔑天骸。面白い、七罪塔で待つなどと、大物っぽいことを言い残し、呼び出した妖魔の腕に捕まって去っていくのでした(残された連中も慌てて流星歩で消える)。
 鬼鳥は見逃してもらったと言うものの、イベント戦闘もなしに消えられても今ひとつ小物感が拭えないのですが……

 さて、いよいよ明日は魔脊山という晩、念白付きで型の修練に余念がない丹翡のもとに現れたのは捲殘雲。型の流れに不完全な部分があることとその想定される要因、そして丹翡の心の焦りを一目で見抜く辺り、彼もただのお調子者でないことがわかります。そして型を自分流に改めるべきという提案も、それなりに理に叶ってはいるのですが……
 伝統の中で生きてきた丹翡にとっては――ましてや弱点の原因が自分が女であるためと指摘されれば――面白いはずもありません。さらに、子供を産んで云々という捲殘雲の発言に、完全に怒ってしまうのでした。

 そして一行が臨むのは第一の関門、現世に未練を残した亡者が彷徨う亡者の谷。ここはもちろん、死霊術のエキスパートである刑亥の出番であります。丹翡を中心に、捲殘雲と狩雲霄が手にした帯の三角形が作り出す結界の中に守られ、前回も披露した歌声に乗せた術を使う刑亥ですが、しかし術が効かない。この術、死者が死んだ年代によって歌の調子を変えないといけないとのことで、試行錯誤する刑亥ですが……
 ここでモロに割りを食ったのは殤不患。件の結界から外れてしまった彼は、ただ一人亡者に集中して襲われる羽目になってしまったのであります。もちろん亡者相手に引けを取る彼ではありませんが、何しろ相手は無数に近い。結界を維持している三人はともかく、殺無生と鬼鳥は手が空いているはずですが、こいつらが素直に動くはずがありません。鬼鳥などは殤不患の助けを求める声をうるさいという始末で、刑亥の歌に合わせて何か楽しげに指揮を取っております。

 ようやく亡者たちが大戦のあった二百年前の死者とわかり、調律を済ませた歌で亡者を一掃した時には、殤不患は汗みずくに。しかし仲間たちは彼を一顧だにせずに先を急ぐのでした(そもそも、これだけ死者が大量に生まれる可能性が一番高いのは二百年前だとすぐわかりそうなものなのに……)

 そしてあっさりと着いた第二の関門、傀儡の谷を守るのは、身の丈五丈の岩の巨人。首の裏にある弱点を破壊すれば動きが止まるというものの、動き出さなければ弱点も露わにならないため、巨人を動かそうと刺激を与える殤不患ですが……いざ動き出してみれば、弱点を破壊する係の狩雲霄の矢が当たらない。当たらなくても何だか呑気な狩雲霄ですが、殤不患にとってはたまったものではありません。
 動く者だけを狙うという巨人に一人目をつけられ、仲間たちは全く当てにならない状況で、相手が振り下ろしてきた腕に飛び乗るとそのまま駆け上がり、自らの剣で弱点を直接粉砕してのける殤不患。その後、バランスを崩して上から落ちた彼の衣を射抜いて落下を止めたのは狩雲霄ですが、自分の失策を棚に上げて恩着せがましくされても……

 と、自分だけ働かせて余裕こいている連中に対し、俺はピンでやらせてもらう! と殤不患の怒りが爆発したところで次回に続きます。


 その突破のために達人たちを集めたにも関わらず、あっさりと一話のうちに二つもクリアしてしまった七罪塔への関門。てっきり一つ一話ずつかけ、仲間たちが一人ずつ散っていくのかと思えば、拍子抜けであります。
 そして本当に感じの悪い殤不患以外の「義士」たち(特に狩雲霄は前回から株が下がりっぱなし)。余裕こいてますが、刑亥と狩雲霄(あとそもそも役目のない捲殘雲)はいわばもう出番は終わったわけで、いつ惨死させられてもおかしくないのを忘れていませんかね……特によくアクションしていて人形が傷んでそうな捲殘雲。

 と、見ているこちらの性格も悪くなりそうな展開が続きますが、予告を見れば次回はもう七罪塔に到着の様子です。まだ半分を超えたばかりなのですが……ラスボスの座を滑り落ちそうな蔑天骸が心配であります。


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 『Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀』 第6話「七人同舟」

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2016.08.18

『Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀』 第6話「七人同舟」

 七罪塔に挑むべく集結した七人。しかしそれぞれの心がバラバラな状態を危ぶむ殤不患だが、西幽出身を自称することから、周囲からは次々と疑いの目を向けられてしまう。そして船旅の末、塔のある魔脊山近くに上陸しようとする一行を、獵魅と凋命ら玄鬼宗が待ち伏せる。勇躍先陣を切る捲殘雲だが……

 前回、思わぬ成り行きで仲間入り(というか同行)することとなった殺無生も交え、玄鬼宗の待ち伏せを避けて船で魔脊山近くまで行ってしまおうという鬼鳥の策ですが、仲間とは言っても一行七人の思惑はバラバラ、相手の命を狙う者も一人や二人ではありません。
 その筆頭が、いまだに実力差を理解していないのか殺無生を倒して名を上げようという捲殘雲。殤不患は(おそらくは捲殘雲のためを思って)殺無生を殺せばお前は仲間殺しと呼ばれるようになる、といかにも武侠的な江湖の掟を持ち出して説得しますが、そんな配慮を理解できる相手ではありません。

 それどころか、案外性格が悪い殺無生が「殤不患が西幽から来たと言っている」と言い触らしたおかげで、捲殘雲は殤不患をいよいよ不信の目でみる羽目に。さらにその兄貴分の狩雲霄までもが殤不患を疑いの目で見るようになってしまいます。鬼鳥の呼び出しに二つ返事で応じたように見えた狩雲霄ですが、どうやら相当に含むものがある様子、鬼鳥とは何者か尋ねる殤不患を、鬼鳥の回し者と決めつけ不信感を露わにするのでした。
 と、そこに現れた鬼鳥は、殤不患が西幽から来たというのはあり得ないことではないと、(前回私が公式サイトで勉強した)東離と西幽、鬼歿之地のことを語り、使用言語の点から理路整然と殤不患の言葉をフォローいたします。が、武侠ものにおいては江湖の豪傑は物わかりが悪いという定番に沿って、結局狩雲霄は殤不患を鬼鳥と同類扱いするのを止めようとしません。

 船出した後も、せっせと呪符を作る最中の刑亥に鬼鳥のことを尋ねたものの、魔族の彼女にまで、西幽から来たというのはホラだろう、行動原理が理解できないと言われてしまう殤不患。やっぱり鬼鳥のスパイ扱いされてしまい、どれだけ皆疑り深いのか……というより鬼鳥が信用されていないのか。
 唯一、丹翡だけは殤不患も鬼鳥も、誰も疑う様子を見せませんが……彼女の場合は超がつく純粋培養のお人好しゆえ、喜んでよいのかどうか。しかし、旅に新鮮さを感じることに罪の意識も感じるという彼女に暖かい言葉をかける殤不患は、やはり親指を立てて賞賛したくなるような好漢です。とはいえ、やはり過去が謎だらけの人物であることは間違いありませんが――

 さて無事に船は目的地に着いた、と思いきや、そこで待ち構えていたのは獵魅に凋命率いる玄鬼宗の兵隊の群れ。鬼鳥の策も台無しですが、そこは力で物を言わせるのも江湖の習い。殺無生の、自分より先に幹部二人を斃したら負けを認めるという言葉に簡単に乗せられた捲殘雲は、一人軽功でもって岸まで辿り着き、雑魚を叩き伏せていきます。
(ここで「いっそ弟子でも取ったらどうだ」という狩雲霄の言葉に、「見込みのある奴だとわかった途端に斬りたくなる」と応える殺無生の古龍イズム)

 しかし如何に捲殘雲が無駄に力が有り余っているとはいえ、玄鬼宗の数も多い。ここで刑亥の死霊術と狩雲霄の弓術により思わぬ合体技が炸裂――刑亥の呪符を射貫いた狩雲霄の矢が次々と丘の上の玄鬼宗の死体に刺さり、遠距離からの死霊術を可能とします。念白とともに艶やかな所作で術を発動させた刑亥により、哀れ玄鬼宗は、捲殘雲のほか、かつての仲間たちのゾンビと矛を交える羽目に……
 そんなこんなで雑魚も減り、ようやく中ボス格の二人の前に辿り着いた捲殘雲。しかしその前に忽然と現れたのは、軽功の上位バージョンともいうべき流星歩でやってきた殺無生。その存在は情報になかったのか、焦り怯みまくる凋命を残し、ただ一人突っ込んでいく獵魅ですが――しかし殺無生との一瞬の交錯の後、胸を貫かれて地に伏すのでした。

 これで残るは大川透声とはいえ小物感漂う凋命一人と思いきや、そこに爆風とともに出現したのは蔑天骸。余裕を見せながらの登場ですが……


 普通であればヒーロー然とした殤不患が疑われまくるため、些かすっきりしないものが残る今回。しかし呉越同舟をもじったサブタイトルどおり、お互いの思惑が食い違いまくる曲者揃いの連中が好き勝手に暴れ、相手を利用し合ううちに、妙なチームワークを見せるというのはなかなか面白いところです(それを素直に喜ぶ丹翡と、のうのうと信頼と絆の証とか言っている鬼鳥も可笑しい)。
 しかしこんな連中を相手に、こんな前半の段階で絶望的な戦力差をつけられて本当に大丈夫なのか? 悪役の方が心配になるという珍しい展開で次回に続きます。


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