2018.11.09

『Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀2』 第6話「毒手の誇り」

 解毒薬によって復活した殤不患に圧倒される蠍瓔珞と嘯狂狷。蠍瓔珞は嘯狂狷の裏切りによって傷を受けて逃れ、嘯狂狷もその場に現れた鬼鳥(凜雪鴉)の仲裁で撤退する。逃げた蠍瓔珞を追う殤不患と浪巫謠だが、その前に諦空が現れる。諦空と問答を交わした末、不意に襲いかかる浪巫謠だが……

 前回ラスト、浪巫謠と凜雪鴉が不運な竜から奪ってきた角から作られた解毒薬を口にした殤不患。普通こういう薬は効くまで時間がかかるような気がしますが、飲んだと思いきや何かスゴい光ったりしてものすごい勢いで殤不患は回復、毒を調合した蠍瓔珞も、自分でも解毒の方法を知らないのに――と愕然としております(それはそれでどうなのか)。
 しかし同時に、これが蠍瓔珞の魂に火をつけることになります。自分には毒しかない、毒だけに全てを打ち込んできた。その毒を否定されては――と悪役は悪役なりの矜持があることを見せてくれた蠍瓔珞ですが、彼女が放った奥義・毒蠱驟来(毒ガス殺法)も、高速で刀を回転させる殤不患の拙劍無式・黄塵万丈で無効化されてしまいます。さらに卑怯にも後ろから嘯狂狷に鞭でブン殴られて喪月之夜を奪われ、心身ともにボロボロの蠍瓔珞は蹌踉とその場から消えるのでした。

 そして残る嘯狂狷は、殤不患に町人虐殺の濡れ衣を着せて指名手配にしてやったもんね、と煽るものの、殤不患はそれがどうしたと平気の平左。そういえばこの人は好漢にとって大事な面子や名利といったものに、一向に無頓着なのでした――が、結構つきあいは長そうなのにその辺りが全くわかっていなかった、というより自分の物差しでしか人を測れない嘯狂狷には、そんな彼の姿は不可解極まりないのでしょう。
 蠍瓔珞といい、普通に振る舞っているだけで相手の心をへし折る殤不患は、ある意味凜雪鴉なみに厄介な人間なのかも――と思っていたら、そこに思いっきり棒読みで割って入ったのはその凜雪鴉、いや鬼鳥。鬼鳥として嘯狂狷にこの場は退けと語りかける凜雪鴉の姿に悟っちゃった殤不患は、「可哀想に……」という感じで嘯狂狷を見るのでした。

 さて、嘯狂狷は放っておくとしても、魔剣をまだ手にしている(かもしれない)蠍瓔珞を見逃すわけにはいきません。彼女の後を追う殤不患と浪巫謠ですが――その前に飄然と現れたのは、謎の行脚僧・諦空であります。彼に蠍瓔珞の行き先を聞く二人ですが、諦空は例によってそれに何の意味があるのかと問答を開始。諦空がいちいち相手の行動に意味を問うのは、自分自身にとってこの世の何物も意味を持たないからと聞かされた浪巫謠は――次の瞬間、では死ね! と剣モードの聆牙で斬りかかるのでした。

 さすがの殤不患も相棒の突然の凶行にびっくり仰天、さすがに放っておけないと剣を抜いて割って入り、その間に諦空はその場から立ち去ります。そして相棒の行動を問いつめる殤不患ですが――あいつは悪だ、とだけ語る浪巫謠。代わって聆牙が説明するのは諦空の危険性――彼がいま全てに意味を見出せないとして、とんでもない悪事に意味を見出してしまったとしたら? と。なるほど、そうでなくとも彼は、意味さえ聞かされれば、深手を負った蠍瓔珞の行き先を語りかねない雰囲気もありました。何よりも、全てに意味を見出せないということは、善悪の価値基準を持たないということでもあるのでしょう。
 そして倒れた蠍瓔珞を、いつもの納屋に連れてきた諦空。あんなことがあっても相変わらず平然として――いや、己の目的のために戦い、殺し合う蠍瓔珞らがキラキラ輝いてて羨ましい(意訳)とすら語る諦空に引いたのか、あるいは己の来し方行く末に悩んでいるのか、微妙な雰囲気の蠍瓔珞ですが……

 さて刑部に戻ってきた嘯狂狷は、刑部のおじさん官僚に何気ない態で掠風竊塵とは何者なのか尋ねます(殤不患が鬼鳥に何気なく僧呼びかけたのを聞いたのか?)。と、その質問に、刑部のおじさんがあからさまに不自然すぎるオーバーアクトでワナワナ震えるという謎の場面(この辺り、武侠ドラマらしいと言えばらしい)で次回に続きます。


 折り返し地点を過ぎたものの、相変わらず物語の落としどころがわからない本作。既に悪役二人は小者扱いな状況で誰が敵となるのか(やはり諦空……か?)、そして何を以て物語の終わりとするのか。魔剣たった二本を取り戻して終わり、というのは(少なくとも見た目では)あまりにもスケールが……

 という余計な心配をさて置けば、久々の殤不患の活躍が実に痛快だった今回。凜雪鴉との妙な通じ合いも、二人の腐れ縁を感じさせて実に愉快でした。
 そしてそれ以上に印象に残ったのは、己の矜持を粉砕されて嘆き悲しむ蠍瓔珞の姿。『生死一劍』の殺無生が嘆く場面にも思いましたが、派手なアクション以上に人形で感情の表れ――特に悲しみを表現するのは難しいはずで、それをしっかりと見せてくれたのには驚かされました。台湾布袋劇の奥深さを改めて感じさせられた次第です。

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2018.11.01

『Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀2』 第5話「業火の谷」

 業火の谷を訪れた凜雪鴉と浪巫謠の前に現れた龍・歿王。その火炎に苦戦する二人だが、凜雪鴉の口車と浪巫謠の絶技により、無事龍の角を得る。しかし解毒薬の製法を聞いた浪巫謠は意外な行動に出るのだった。一方、隠れ場所を知られた殤不患は、嘯狂狷率いる捕吏の包囲に窮地に陥るが……

 蠍瓔珞の毒に苦しむ殤不患を救うため、はるばる鬼歿之地にやってきた凜雪鴉と浪巫謠。目指す龍がいるという業火の谷に到着した二人の前に龍が現れますが――微妙にサイズが小さい。あっさり凜雪鴉に撃退される龍ですが、その時、巨大な影が現れ、龍を文字通り叩き潰してしまうのでした。
 その影こそは、オープニングに登場していた謎の怪獣――確かに片翼状態の龍であります。何と人語を喋るこの龍、自らを歿王を名乗り、この小龍を食うからお前らは失せろと親切にも二人に語りかけますが――もちろん二人が引くはずもありません。それどころかいけしゃあしゃあとその角が欲しいと言い出した凜雪鴉にもちろん歿王はエキサイト。グワーとひらいた口から炎、あたり一面焼け野原であります。

 もちろん周囲に散在する石柱に隠れてこの攻撃を躱す二人ですが、炎をはき続ける歿王に接近するのはほとんど不可能。さらに凜雪鴉が、お前の片翼を斬った男のために力を貸して欲しいなどとまたもや歿王のヒートを煽るのですが――凜雪鴉は浪巫謠に対し、龍の火炎は気息(ブレス)、すなわち声だから、お前の魔性の声で太刀打ちできるのではないかと無茶振りをするのでした。
 これに応えた浪巫謠は、歿王を前にオープニングのサビを熱唱! 浪巫謠の歌エネルギーは何と歿王の炎を圧倒、炎を出せなくなったところに挑発をかましてきた凜雪鴉を襲おうとして歿王は石柱に激突、そのまま下敷きに。そしてその隙に剣モードの聆牙を手に背中を駆け上がった浪巫謠は、見事に角を切り取るのでした。石柱に押し潰されてジタバタしながらも、二人に対して呪いの言葉を吐く歿王ですが、再登場はあるのかなあ……

 何はともあれ龍の角を手に入れ、凜雪鴉から解毒薬の製法も聞いた浪巫謠。これであとは殤不患のもとに戻るだけ――と思いきや、突如凜雪鴉に音撃を食らわせる浪巫謠。お前は殤不患のためにはならん、お前は悪だ、生かしておいては世に災いをなすのためにならない奴と見た、だからコロス! ――と、実は最初から凜雪鴉を斬るつもりだった浪巫謠の理屈は、好漢的に正しいのか間違っているのか悩ましいところではあります。が、こういう行動に出るところを見ると、浪巫謠は殤不患よりは頭が固い、というか生真面目なのかもしれません。
 もちろん凜雪鴉がここで倒されるはずもなく、魑翼でその場を去るのですが――この展開を彼が予想できなかったとは思えないわけで、それでは今回の行動はなんのためのものであったか、気になるところではあります。

 さて、そんな状況とは知る由もない殤不患は、不眠不休で調息を続けることで毒を抑えてきましたが、常人を遙かに越える内功を持つ彼でもこれは無茶というもの。ほとんど限界寸前の状況ですが――悪いことに、そこに蠍瓔珞と嘯狂狷、さらに彼の部下たちが近付いてきます。自分の作った毒であれば匂いで察知できる――と、蠍の一匹を探知機代わりに使う蠍瓔珞の前には、浪巫謠のカムフラージュ策も通じず、急いで洞窟から逃れる殤不患ですが、しかし弱った身体で遠くまでいけるはずもありません。
 捕吏たちに見つかり、たちまち追いつめられる殤不患。いくつもの傷を負いつつも、その場から何とか逃れようとする彼の姿は、大侠らしからぬものがあるかもしれませんが――しかし自分のために仲間たちが命を賭けている時に、自分が倒されるわけにはいかないという彼の意地は、やはり好漢のそれと言うほかありません。
(そんな殤不患の――江湖の好漢の行動原理をあざ笑う嘯狂狷は、やはり江湖に対する官の側の人間なのだと感じます)

 しかしそんな殤不患の心意気を理解できぬ蠍瓔珞と嘯狂狷は、それぞれ調子に乗った悪役そのものの、余裕こいて油断しきった台詞を吐くのですが――そこに空から駆けつけたのは浪巫謠! しっかり解毒薬を完成させていた浪巫謠から薬を受け取った殤不患が思い切って飲み込むと――何かスゴい光とか飛び出して、一瞬のうちに毒はおろかダメージも回復した様子。さあ、今度は殤不患のターンだ! というところで次回に続きます。


 OP映像を見た時はてっきりラスボスかと思ったら、単なる素材の元だった龍との対決が描かれた今回。その対決の模様や、その後の思わぬ仲間割れなどそれなりに楽しめたのですが、やはり物語は前に進んでいない印象であります。
 そろそろ物語は折り返し地点にさしかかりますが、物語の向かう先がまだ見えないのは、正直に言って不安なところです。


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2018.10.24

『Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀2』 第4話「親近敵人」

 毒に苦しむ殤不患の前に現れた凜雪鴉。相変わらずの調子の良さに呆れる殤不患だが、凜雪鴉は治療を申し出ると、解毒には龍の角が必要と診断を下し、浪巫謠とともに鬼歿之地へ向かう。一方、蠍瓔珞の前に現れた嘯狂狷は、彼女に手を組むことを持ちかけ、彼女もそれを受け容れるが……

 蠍瓔珞の毒を受け、辛うじて内功で抑えてはいるものの行動不能状態の殤不患。彼と浪巫謠が潜む洞窟に、突然凜雪鴉が顔を出して――というある意味一触即発の場面から始まった今回。(嘯狂狷のことはおくびにも出さず)殤不患を探すために刑部に潜り込んでいたという凜雪鴉に露骨にイヤな顔を見せる殤不患ですが、もちろん凜雪鴉が気にするはずもなく、グイグイと懐に飛び込んできます。
 友だから手を借りる→以前お前には散々手を借りた→だからお前は私の友 という謎の逆ジャイアン理論で強引に友人面をする凜雪鴉ですが、何と殤不患の毒を解毒しようと言い出すのは何の企みがあってか……。なるほど、彼も煙管からの幻惑香を操る身、その辺りの知識が豊富でも不思議はないのですが。

 そして殤不患の血を吸わせた布に、様々な種類の毒を垂らしてその反応を見る――という化学実験のような調べの末に、毒は陸に棲む獣の牙からにじみ出るもの、と見抜いた凜雪鴉。細かい種類を調べるよりも、同類でより霊格の高い動物――たとえば龍の力を体内に取り入れて制する方が早いという凜雪鴉ですが、龍なぞそうそう簡単にいるはずがありません。怪物犇めく鬼歿之地ならいざ知らず……
 と、その鬼歿之地を通って東離に来る途中、片翼の龍を目撃したという浪巫謠。片翼ゆえ、簡単に躱すことができたというのですが――実はこれは殤不患の仕業。西幽から東離へと鬼歿之地を通っての旅の途中に、空から狙ってくるのが鬱陶しいのでやっちゃったということですが――その他にも食人鬼の村を壊滅させたりと色々とやってくれたおかげで、鬼歿之地もずいぶんと通りやすくなった模様であります。そのおかげで追っ手たちもまた東離に来やすくなってしまったのは、皮肉以外のなにものでもありませんが……

 と、その追っ手である蠍瓔珞は、森で毒草採集の最中に、禍世螟蝗一党の召集の狼煙を目撃することになります。こんなところで一体誰が――といぶかしみながら向かった彼女の前に現れたのは何と嘯狂狷。捕吏であらば悪党の合図を知っていても不思議ではないと嘯く彼は、同じ殤不患を狙う身として、手を組もうと言い出すのでした。
 彼の目的は殤不患の首、蠍瓔珞の目的は魔剣目録――東離にあるよりも、たとえ禍世螟蝗の手にあったとしても魔剣目録は西幽にあった方が良い、自分の管轄で取り返さないと手柄にならないから――と役人の悪い面を固めたような嘯狂狷の言い草に呆れつつも、蠍瓔珞も手を組むことに合意するのでした。

 さて、龍の方ですが――居所はわかったとはいえどうするのかと思ったら、殤不患を東離に残し、素材ゲットのためにわざわざ鬼歿之地までやってきた浪巫謠と凜雪鴉。浪巫謠はともかく、凜雪鴉が自ら足を運んでくるとは、怪しい以外の何物でもありませんが――何はともあれ、彼の操る魑翼(前作で手に入れたのがよっぽど気に入った様子)で鬼歿之地の入り口辺りまで一っ飛びであります。
 そして龍のエリアまで行こうとする二人ですが――そこに立ちふさがるのは、鬼歿之地の瘴気によってゾンビと化した皆さん。容赦無用の相手に、特撮ヒーローのアイテムチックに聆牙を琵琶から剣に変形させて立ち向かう浪巫謠と、彼に煽られつつも、煙管からの火炎放射で攻撃する(すなわち真の実力は見せない)凜雪鴉と、二人は互いの名刺交換代わりに大立ち回りを繰り広げるのでした。

 一方、再び東離で隠れ家にしている納屋に戻ってきた蠍瓔珞ですが――その納屋に運悪く雨宿りに入ってきたのは、前回登場した謎の行脚僧・諦空。口封じのためと楽しそうに諦空の命を奪おうとする蠍瓔珞ですが、諦空は命を差し出すのはやぶさかではないと言いつつ、今回もまたその行為の意味を問います。もちろん蠍瓔珞がそれに満足に答えるはずもないのですが――だとしたら諦空もまた彼女に従うはずもありません。前回受けた毒はどこかへ消えたのか、蠍瓔珞の攻撃を軽々といなし、諦空は消えるのでした。屈辱に震える蠍瓔珞を残して……


 というわけで、今回も話が動いたような動いていないような展開ですが、やはり凜雪鴉と殤不患の絡みは抜群に面白い。全く以て油断のできない凜雪鴉ですが、浪巫謠とまさかのコンビを組んでの鬼歿之地という展開にはさすがに驚かされました。
 一方、ある意味殤不患以上に色々なキャラと絡んでいる印象もある蠍瓔珞は、悪役としての貫目の足りなさがここに来て露呈した印象。さて、そろそろ彼女はあの魔剣の魔力の前に屈してしまう気もしますが――冷静に考えれば(嘯狂狷を除けば)ただ一人の悪役らしい悪役を務めるだけに、まだまだ彼女の苦労は続きそうであります。


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2018.10.18

『Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀2』 第3話「蝕心毒姫」

 蠍瓔珞の毒を受けた上、魔剣・喪月之夜の力で操られる人々に苦戦する殤不患。浪巫謠の力によりその場を逃れた殤不患だが、そこに現れた嘯狂狷は人々を平然と犠牲にし、蠍瓔珞も撤退を余儀なくされる。一方、いまだ毒に苦しむ伯陽侯の前に、強力な力を持つ謎の僧・諦空が現れるが……

 蠍瓔珞が奪った魔剣目録の切れ端から呼び出された魔剣・喪月之夜――斬られた者は身体に傷を負う代わりに精神を支配されるその力でゾンビ状態となった町の人々に取り囲まれ、苦戦を強いられる殤不患と浪巫謠。しかも殤不患は少女に化けた蠍瓔珞の不意打ちで猛毒状態であります。
 この窮地に、浪巫謠は少々骨を折られるのは仕方ないと、積極的に町の人々に打撃攻撃を開始、その隙をついて何とか殤不患ともども包囲を突破することに成功するのでした。

 と、ほとんど入れ違いに蠍瓔珞の前に現れたのは、配下を連れた嘯狂狷。捕吏であるからには蠍瓔珞とは不倶戴天の間であるはずながら、小物には構っていられないという態度を取る嘯狂狷ですが――蠍瓔珞が黙っているはずがありません。同じ獲物を狙う者同士、激突する両者ですが――しかし嘯狂狷と配下は、操られているだけの町の人々を、容赦なく斬り捨てていくのでした。

 これは殤不患が奪われた魔剣によるもの、ならば殤不患の罪だと言い放ち、むしろ嬉々として無辜の民を惨殺していく嘯狂狷は、陰険眼鏡というより鬼t――いや外道眼鏡。むしろ蠍瓔珞の方がドン引きする有様で、追いつめられた彼女はひとまずその場を逃れ去るのでした。
 そして惨劇が終わった後にノコノコ現れたのは鬼鳥。彼は嘯狂狷を咎めるでも、もちろん無実の罪を着せられた殤不患をかばうでもなく、自分の見ているところではこういうことはしてくれるなと、見るからに事なかれ主義の役人的なことを言うのですが……

 一方、再び潜伏先の納屋(?)に戻った蠍瓔珞は、不首尾に歯噛みせんばかりですが、そんな彼女に甘く語りかけるのは、前回放り出されたもう一本の魔剣――殤不患たちも恐れるその名も七殺天凌であります。己の意志を持ち、手にした相手を支配する力を持つようですが――本当にギリギリのところまでいきつつも、今回も何とか蠍瓔珞は魔剣の魅了の力を撥ね除けるのでした。

 そしてその彼女の毒の後遺症に未だ苦しむ仙鎮城の伯陽侯は、完璧に殤不患が黒幕と思いこんで、恨みの念を高めるばかり。そんな城主を救うべく、仙鎮城の護印師たちは医師を求めて奔走するのですが、先ほどの嘯狂狷らの凶行もあり、町はそれどころではありません。
 と、そんな彼らが出会ったのは、毒に苦しむらしい老農夫に、無償で気功による治療を行う一人の青年。ビジュアル的にとてもそうは見えないものの――一応数珠を持ち、髪はやたら塊の大きな螺髪ですが――僧侶である青年・諦空を、護印師たちは喜んで仙鎮城に連れ帰るのでした。
(しかしこの人たち、もう少し人を疑うべきだと思います)

 さっそく伯陽侯の治療を依頼する護印師たちですが、諦空はその理由は何かと突然拒絶とも思える態度を見せます。相手は仏僧、しかも農夫を無償で治療するほどの相手であれば当然――と思っていたところに突然の問いかけに憤然とする護印師たちですが、そんな彼らの態度と言葉に納得したものか、諦空は伯陽侯に治療を施すことに同意します。
 が、諦空の力は毒を消すものではありません。彼は伯陽侯の毒を自らの体内に移すという(彼自身にとっての)荒療治をやってのけるのですが、さてその行動は慈悲の心から来ているのか、それとも……

 しかしいま一番治療してもらいたいのは殤不患。洞窟に身を潜めた彼は、気の運息によって体内の毒を一カ所に集めて安静を保っていたのですが――しかしそれ以上の行動はほとんど不可能の状態(瀉血はできないのかしら……)。浪巫謠も手を着けかねているその状況に、突如胡散臭い声が響きます。こういう時は友を頼るべきとかなんとか調子のいいことを言いながら顔を出したのは、もちろん鬼鳥こと凜雪鴉……


 放映開始前に公表されていたキャラのうち、まだ姿を見せていなかった諦空が登場した今回。敵か味方か、その正体は全くわかりませんが、色々な意味でただものではない人物であることは間違いありません。

 しかし新キャラも登場した一方で、前作に比べると少々物語のスピードが遅いようにも感じられるのが気になるところ。前作なんて第1話からネームドキャラが盛大に死んだのに――というのはともかく、まだ物語の向かう先がわからないだけに、早く全力疾走していただきたいという印象はあります。


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2018.10.10

『Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀2』 第2話「奪われた魔剣」

 殤不患から魔剣目録の一部を奪い、その中から二振りの魔剣を呼び出した蠍瓔珞。一方、西幽の捕吏・嘯狂狷は、四方御使を名乗る鬼鳥と手を組み、仙鎮城を訪れる。そうとは知らぬ殤不患と浪巫謠の前に、魔剣・喪月之夜を手にした蠍瓔珞が現れる。喪月之夜の恐るべき能力に翻弄される殤不患の運命は……

 はるばる西幽から殤不患を追ってきた陰険メガネ君こと嘯狂狷の前に現れた謎の男()鬼鳥。朝廷から派遣された査察官・四方御使だという彼は、殤不患が西幽の宮廷の宝物庫を荒した逆賊だという嘯狂狷の言葉に、協力を申し出ます。
 東離では特段手配もされていない殤不患ですが、玄鬼宗を壊滅させたという噂(誰が流したのか)もある殤不患を放ってはおけないという鬼鳥ですが、その真意は……

 さて、その殤不患は前回蠍瓔珞に魔剣目録の一部を持ち去られたわけですが――ごく一部とはいえその影響は大きく、魔剣目録の中身を見ることができなくなってしまったのでした。殤不患曰く、これは術を使えない彼でも使えるように巻物の形こそしているものの、その実、一種の宇宙とも言うべき存在。それが一部を切り取られた――巻物の形を失ったことで、その機能そのものが失われてしまったと、わかるようなわからないような理屈ですが……
 と、その一部を持ち去った蠍瓔珞は、どこぞの納屋のような場所に身を隠し、怪しげな魔術を用いて、奪った部分から魔剣を呼び出そうという真っ最中。そしてそこから現れたのは、なんか魂を喰らう剣っぽい有機的なデザインの魔剣・喪月之夜と、豪華な鞘に収められた謎の魔剣ですが――後者の剣は意志があるらしく、危うく蠍瓔珞もそれに支配されかかったものの、ギリギリで手を離すことに成功、その魔剣を雑に放り出してその場を去るのでした(どう考えても後で面倒なことになる予感しかしません)。

 一方、殤不患を追う嘯狂狷と鬼鳥が訪れたのは、前回蠍瓔珞に荒らされた仙鎮城。病床の伯陽侯と言葉を交わす二人ですが、前回殤不患に命を救われた伯陽侯が、どれだけ嘯狂狷が殤不患を悪し様に言おうと、容易に信じるはずがありません。が、そこで口を挟んだのは鬼鳥。丹翡からの紹介状があったと聞けば、丹翡は若輩で未熟者、海千山千の曲者に容易に騙されてもおかしくない――と、なんだかものすっっごく説得力のある言葉で伯陽侯に語りかけます。その結果、ついに伯陽侯は、前回の戦いは殤不患と蠍瓔珞が仕組んだ狂言だと信じ込むことに……

 そんな大変なことになっているとは露知らず、町の宿屋の一室で、一生懸命に糊と紙で魔剣目録を修理している殤不患。この辺りを人形で見せるのはちょっと驚きではあるものの、そんなアバウトな修理でいいのかなあ――と思いきや、大事なのは形らしく、魔剣目録はその機能を取り戻します。そしてそこで初めて喪月之夜が奪われたことを知った殤不患は、屋根の上で待っていた浪巫謠に対して、血相変えて町から出るよう促します。
 というのもこの魔剣の力は――と、時すでに遅し。その場に現れた蠍瓔珞が魔剣で町の人々に次々と襲いかかると、斬られた人々は「喪」の字が描かれた覆面を被ったような姿で立ち上がり、殤不患たちに襲いかかるではありませんか。そう、この魔剣によって斬られた者は、肉も骨も傷つけられぬ代わりに、精神を乗っ取られ、持ち主の思うがままに操られてしまうのであります。

 言ってみればゾンビに襲われるようなものですが、ゾンビと違うのは相手が無辜の生きた市民であること。剣侠たる殤不患としては、相手を殴り倒すくらいはできても、斬り捨てることもできず、無数の敵に取り巻かれて大苦戦を強いられます。とはいえ相手は動きが鈍い上に素人、浪巫謠がマップ兵器的に放った衝撃波で武器を取り落とした隙に、殤不患は蠍瓔珞を探すのですが――そこで目に入ったのは、ただ一人魔剣の犠牲になることなくその場に居合わせた少女の姿であります。
 もちろんこれを見過ごすことはできず、少女を助ける殤不患ですが――どう考えても不自然に見えたこの少女は蠍瓔珞の変身。不意打ちで猛毒の爪を受けて苦しむ殤不患に、トドメの一撃を食らわせようと蠍瓔珞が襲いかかって――と、武侠ドラマにあるまじきキリのいいところで次回に続きます。


 前作同様、本作でも貧乏くじを引きまくる予感しかしない殤不患。誤解と濡れ衣は武侠の華ですが、その上に毒まで喰らうという状態で、この上失恋でもすれば武侠ものの不幸の数え役満状態ですが、さすがにこの方面は大丈夫(?)かな……
 しかしその不幸の原因の一端は、確実に鬼鳥を名乗るアイツにありますが――さて二人がいつ出会うのか、出会った時に何が起こるのか、それが今一番気になることは間違いありません。


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2018.10.03

『Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀2』 第1話「仙鎮城」

 魔剣目録の隠し場所を求め、護印師の砦・仙鎮城を訪れた殤不患。城主・伯陽侯に目録を預けて城を離れた殤不患だが、その前に西幽での旧友・浪巫謠が現れ、仇敵の配下・蠍瓔珞が東離に潜入したと警告する。急ぎ引き返した殤不患だが、既に城内には無数の恐るべき蠍が待ち受けていた……

 世を騒がした恐るべき魔剣妖剣邪剣の数々を集め、封印した魔剣目録。封印されたその数実に36本――から1本減って今は35本ですが、その剣の数々を封印し、それが悪人の手に渡らぬように手に遠く西幽の地から東離までやって来た剣侠こそが本作の主人公の一人・殤不患であります。
 この魔剣目録を封じる場所を求めていま彼が訪れたのは、護印師の一人・伯陽侯が治める仙鎮城。難攻不落と謳われるだけに、門番に早速誰何される殤不患ですが、同じ護印師にして前作で殤不患に助けられた丹翡の紹介状でそこはクリアであります。

 見るからに厳めしい伯陽侯も、さすがに魔剣目録の存在には半信半疑であるものの、しかしここでも丹翡の紹介状がものを言って、殤不患の頼みを聞き入れるのですが――どうも事態を甘く見ている感があるのが気になります。そもそもこういう話で難攻不落を謳うのはフラグであって――というのはさておき、殤不患までもあっさり魔剣目録を預けて去ったのはいかにも油断であります。

 何はともあれ重荷を手放して城を出た殤不患ですが、その前に現れたのは紅蓮の装束をまとった謎の美青年。その手には奇怪な顔のついた琵琶が――と、その姿を目にした殤不患は驚きの表情を見せます。
 そう、この美青年こそは西幽で殤不患の相棒であった吟遊詩人・浪巫謠。極端に口数が少ない(プロの声優さんではないから)のを、手にした喋る琵琶・聆牙が補うという、なかなか愉快な人物であります。

 しかし久闊を叙する間もなく浪巫謠が告げたのは恐るべき知らせ――西幽で殤不患の仇敵であった禍世螟蝗の配下・蠍瓔珞が、彼らより一足早く東離に入ったというではありませんか。蠍瓔珞といえば、毒と忍びの名手と解説してくれながら、一人城に馳せ戻る殤不患ですが――もちろん時既に遅し。
 門番たちが気がつく間もなく、蠍瓔珞の操る恐るべき蠍――一刺しで犠牲者を硬直させ、その命を奪う――の前に城の守備はたやすく破られ、伯陽侯も無数の蠍に囲まれ、その命は風前の灯火であります。

 一歩遅く一刺しを受けた伯陽侯に荒っぽい応急処置をした殤不患ですが、そこに現れたのは真の敵たる蠍瓔珞。無数の蠍を奪って巻物を奪った彼女の術を見破り、相手が美女であろうがかまわず一撃を食らわせる殤不患ですが、力では劣っても、技や奸智では上回るのはこの手のキャラの定番であります。
 隙をついて窓から外に飛び出した蠍瓔珞を追う殤不患の眼前で、目録を開いてみせた蠍瓔珞。明言はされていないと思いますが、おそらくは厳重に術が施され、殤不患以外は魔剣を解放できないと思われた目録の封印をあっさりと破られた殤不患は、さすがに驚きを隠せません。

 が、勝ち誇る蠍瓔珞に後ろから絶技を放つのは駆けつけた浪巫謠。琵琶をかき鳴らすことで衝撃波を叩きつけるという荒技に追いつめられた蠍瓔珞に一撃を放つ殤不患ですが――それが目録を二つに裂いた! やっぱり巻物争奪戦は巻物が破けないと! と喜ぶ一部の視聴者は放っておくとして、敢えて短い方の巻物を取った蠍瓔珞は、その場から消え失せるのでした。

 と、場所は変わって東離の衙門(役所)。ここで東離の役人を前に熱弁を振るうのは、西幽から精鋭を率いてやってきたという眼鏡の青年・嘯狂狷であります。西幽の捕吏である彼は、いかなる理由によってか、殤不患を鬼畜外道の大悪人、残虐非情にして怜悧狡猾な希代の奸賊と呼び、彼を捕らえるために協力を要請するのですが――そこに平然と現れたのは本当の大悪人にして希代の奸賊、本作のもう一人の主人公・凜雪鴉!
 大盗賊が衙門で何をやっているの、と言いたくなるところですが、ちゃっかりと中央より視察にやってきた役人・鬼鳥を名乗る彼は、何食わぬ顔で嘯狂狷との話に加わって――ああ、かわいそうな眼鏡君、と前作からの視聴者が皆思ったところで次回に続きます。


 というわけで始まった、武侠ファンタジー人形劇約2年ぶりの待望の続編。前作では巻き込まれた風来坊という態だった殤不患ですが、本作では彼が台風の目となる様子で、第1話に登場する新キャラが全て彼絡みというのが、今後の展開を期待させてくれます。
 もっとも、前作終盤で呆れるほどの強さ・格好良さを見せてくれた彼にしては、今回はいささか迂闊な場面が多かったような気もしますが――それもまたらしいといえばらしい。ラストに顔を見せただけでその場をさらっていった凜雪鴉ともども、本作での痛快な暴れっぷりに期待するばかりであります。


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 『Thunderbolt Fantasy 生死一劍』 剣鬼と好漢を描く前日譚と後日譚

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2018.09.30

『Thunderbolt Fantasy 生死一劍』 剣鬼と好漢を描く前日譚と後日譚


 この10月から待望の第2期武侠ファンタジー人形劇『Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀』――その外伝として昨年劇場公開された作品がこの『生死一劍』。本編の前日譚である「殺無生編」、後日譚であり続編のプロローグでもある「殤不患編」と、二つのエピソードから構成された作品であります。

 伝説の名剣・天刑劍を巡り、謎の美青年・凜雪鴉と、正体不明の風来坊・殤不患が、邪悪な玄鬼宗頭目・蔑天骸と繰り広げた戦いを描いた本編。
 その中で凜雪鴉を不倶戴天の敵として付け狙ってきたのが、江湖に悪名を轟かせた非情の殺し屋にして無双の剣客――鳴鳳決殺こと殺無生であります。「殺無生編」では、その彼が何故凜雪鴉を憎むことになったかが描かれることになります。

 かつて凜雪鴉の用心棒として雇われ、彼を付け狙う刺客たちの始末を引き受けていた殺無生。そんな彼にもっと別の生き方をしてはどうだと、凜雪鴉は四年に一度開催される剣技大会・劍聖會への出場を勧めます。かつての師である剣聖・鐵笛仙が主催するこの劍聖會に、殺無生は「鳴鳳決殺」の名で出場することになるのでした。
 しかし開会早々に現れたのは、どこかで聞いたような声の仮面の射手・神箭手。彼によって出場者の多くが殺傷されたことから勝ち抜き戦に変更となった大会を、殺無生いや鳴鳳決殺は順調に勝ち上がっていきます。

 この戦いに勝ち抜いて、血塗られた生き方を捨て、新たな生を歩む――いつしかそんな夢を抱いていた彼の前に立ちふさがった鐵笛仙は、しかし彼に意外な言葉をぶつけて……

 本編ではひたすら殺伐とした剣鬼ぶりが描かれつつ、どこか純粋な部分もうかがわれた殺無生。本作では、まさに彼のそんな両面がより掘り下げて描かれることとなります。

 誕生の時から周囲に血の雨を降らせた鬼子たる殺無生。鐵笛仙に拾われた後、本作で登場するまでの生き様はわかりませんが、しかしその鬼子としての出生が、後々まで影響を与えたことは想像に難くありません。
 そんな彼が大会で強敵たちと戦う中、命の奪い合いでなく純粋な技の競い合いに目覚めていく。彼の過去が壮絶であるだけに、その姿は一つの希望を感じさせるのですが――それだけに、その先に待ち受ける運命の悲惨さは、目を覆いたくなるものがあります。
(ここで悲嘆に暮れる殺無生の姿は、本作が人形劇であることを忘れるほど)

 終盤の展開の詳細は述べませんが、まあ凜雪鴉が絡んでいる時点で碌なことになるはずもないのは当然の話。これは確かに殺無生も恨むだろう、いや恨まないのがおかしい(というか本編ではむしろ大人しすぎたほど)という凜雪鴉の行動は、鬼畜の所業というに相応しいと感じられます。(本編終盤で描かれた彼の剣の腕を思えばなおさら……)
 本編では、己の剣士としての業を貫いたが故に散ることとなった殺無生。しかし本作を見れば、その最期はむしろ救い――鳴鳳決殺としてのあったかもしれない彼の生を貫いたものとしても感じられる、そんな物語でありました。


 そして「殤不患編」は、うってかわって明るいムードの後日譚であります。
 放浪を続ける中、酒場で自分の名を騙る男と出会った殤不患。偽物が騙る微妙にリアルな、しかし圧倒的にデタラメ(本編のダイジェストかつパロディとなっているのが実に可笑しい)な冒険譚に呆れた彼は、そのうち玄鬼宗の残党の恨みを買うぞと忠告するのですが、果たして偽物は残党の襲撃を受けて……

 達人の名を騙る偽物というのは、これはよく見るパターンではありますが、その正体に一ひねり加わっているのが面白い本作。
 自分という者を持たず、何にもなれない偽者の姿はちょっとグサリとくるものがありますが、そんな相手を咎めることなく命を救い、むしろ自分自身として生きることの大切さと意味を語る殤不患は、まことに大侠と呼ぶに相応しい好漢であります。
(彼を討つために己の身を投げ出す残党たちとの対比もまた印象的です)

 と、そもそも何で偽物が殤不患の冒険に妙に詳しかったかといえば、それはもちろん(何故か道化師の格好をした)あの男が触れ回っていたからで――この辺り、殤不患を煙幕代わりに自らの存在を眩ましたのか、あるいは単なる殤不患への嫌がらせか、どちらとも取れるのが実に楽しい。
 そしてこうして殤不患の名が評判になったことで、彼を追う者たちが、西幽から東離を目指して続々と集結することに――と、続編の序章となっているのも嬉しいところです。

 本編の世界観を広げ、本編の物語をおさらいした上で、続編の興味を否が応でも煽る――理想的な外伝でありました。


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2017.04.24

霜月かいり『Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀 乙女幻遊奇』 丹翡の目から見た懐かしき好漢・悪党たち

 本編第二期に外伝の映像化と、この先の展開も楽しみな『Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀』。本作にはそれらの映像作品だけでなく、周辺作品にも気になるものが幾つも存在します。その一つがこの『乙女幻遊奇』……霜月かいりの美麗な絵により、「乙女」の視点から描かれた物語です。

 大悪人・蔑天骸により兄を討たれ、先祖代々守護してきた天刑劍を奪われた少女・丹翡。彼女が謎多き美青年・朱鳥こと凜雪鴉、そして西の果てから来た風来坊・殤不患と出会ったことから、この東離劍遊紀という物語は始まります。
 そして本作はその丹翡……すなわち乙女の視点から再構成された物語なのです。

 本来であれば、聖地から外の世界に出ることなく、天刑劍を守って暮らしたであろう丹翡。その彼女のお人好しぶり、世間知らずぶりは、本編でもしばしば描写されていました。
 そんな彼女の目に、海千山千の好漢・悪党が、彼らと共に繰り広げてきた冒険の数々がどのように映るものか……それはなかなか興味深いものであります。

 もちろん、こうした構造ゆえ、基本的な内容は本編のそれをなぞる以上のものはないわけですが(尤も、後半にはオリジナル妖魔も登場する本作独自のエピソードもあるのですが)、それはファンにとってはむしろ望むところでしょう。
 凜雪鴉が、殤不患が、捲殘雲が、あるいは殺無生や刑亥が、丹翡の目から見ることによって、おなじみの、それでいてこれまでとは少しだけ違う姿で見えてくるのですから――
(狩雲霄のみほとんど登場しないのは、凜雪鴉を除けば彼のみ真の顔を隠していたからでしょうか)

 そしてそれを描くのが霜月かいりとくれば、これはもう言うことなし。いや、個人的な趣味を言えば、殤不患はもう少しむさく……いや男臭く描いて欲しかったところですが、それはさておき、原作の賑やかですらある美形キャラの群舞を描くのに、これほど適任はおりますまい。
 そして、決して強くはない者が、傷つきながらも強くあろうとする姿、そしてその傍らに在る者が不器用に手をさしのべる姿は、実に作者の作品らしいと感じるのです。

 ただし、原作に強烈に漂っていた武侠ものの香り――己の腕と剣のみを頼りに江湖を渡り、冒険に命を燃やす連中の心意気とでも言うべきものが、やはりほとんど感じられないのは、これもまた本作の構造上全く仕方ないところですが、やはり少々残念ではあります。


 こうした点を踏まえて考えれば、やはり一種のファンアイテムであることは否めませんが……しかし本編終了から半年が過ぎ、少々寂しくなってきた頃に、またあの連中に会えるというのはやはり嬉しいもの。
 新作までの飢えを和らげる作品として、気軽に楽しめる一冊ではあります。

 そしてこの世界のビジュアルとは相性抜群の作者とは、新作の時にも何らかの形で関わって欲しいとも、強く感じた次第です。


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2016.10.07

『Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀』 第13話「新たなる使命」(その二) と全編を通じて

 『Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀』の最終回の感想の続きであります。蔑天骸を相手に凜雪鴉が妙な追い込みをかけたおかげで復活した妖荼黎打倒の唯一の手段たる天刑劍が喪われ、万策尽きたかと思われた時――

 その時、ただ一人、妖荼黎の前に立つ殤不患。そうだ、我々にはこの男がいる! といっても彼は文字通りの徒手空拳と思いきや、彼は、俺たちは二本の腕と十本の指で道具が扱えると力強い宣言。そして道具には他に代わりがいくらでもあると……!

 そこで彼が取り出したのは一本の巻物。そこに記されたのは、いずれも西幽の名だたる魔剣・妖剣・聖剣・邪剣――なんと彼は蔑天骸も真っ青の剣コレクターだった!? そして妙にタブレットめいたスクロール操作で彼が取り出したのは一本の異形の剣、須彌天幻・劫荒劍であります。
 七支刀状に変形したその剣が生み出したのは平たくいえばブラックホール、その中に妖荼黎は瞬く間に吸い込まれ、あっさりと封印されてしまうのでした。

 実は西幽で争いの原因となる件の剣たちを集めていた殤不患。しかし集めも集めたり36本の剣の目録を付け狙う悪人たちが引きも切らず現れるため、剣の捨て場所を求めて旅するうちに鬼歿之地も超え、東離に辿り着いてしまった――いやはや、まさに大英雄の所業であります(というかレベルカンスト、アイテムフルコンプして追加ディスクに手を出したRPGの廃プレーヤーのような……)

 何はともあれ妖荼黎を飲み込んだ空間の穴が塞がるには百年かかるとのこと。そしてその剣の封印を守るのが、丹翡の、捲殘雲の「新たなる使命」。使命に燃える丹翡と、しっかり丹翡の尻の下に敷かれつつも幸せそうな捲殘雲の二人に別れを告げずに去る殤不患の前に、凜雪鴉が現れます。
 絶っっっ対ついてくんなよ! という殤不患に、第1話のお返しのように傘を差し出す凜雪鴉。その内心では、彼の目録に群がってくるであろう悪党の中にいるかもしれない極上の奸物目当てに、付きまとってやる気満々ですが……

 そんな殤不患の行く先は嵐の予感。彼は傘を路傍の地蔵にかけてやると、念白とともに一人飄然と去っていくのでありました。(完)


 ――というわけで文句なしの大団円を迎えた本作。(個人的には馴染み深いとはいえ)武侠という日本ではあまり広まっていない題材に、さらに馴染みのない布袋劇というメディアという、非常に冒険的な作品でしたが、最後まで非常に楽しませていただきました。
 最初のうちは少々キャラクターが類型的かな、とも思ったものですが、物語が進むに連れて次々に明かされていく彼らの意外な素顔には唸らされてばかりでしたし、特に主人公二人の「正体」が物語を牽引していく終盤の展開は大いに引きこまれた次第です。

 実は武侠ものと一口にいってもなかなか定義は難しいのですが(例えば本作のようにファンタジー世界を舞台にしたものも含まれるか、など)、本作は設定・舞台においてはその辺りをうまく最大公約数的に取り入れていたかと思います。
 そしてキャラクター造形においては、これぞ武侠! というべき、既成の権威権力に依らず、自らの道、自らの真実を貫かんとして江湖をさすらう善魔入り乱れた英雄豪傑たちの姿がきっちりと描かれ、それが最大の魅力になっていたことは間違いありません。
(先に述べたように、蔑天骸はじめとする玄鬼宗は類型的に感じられたのですが、それも計算通りであったと今では理解できます)

 唯一の不満は、まだまだ様々なキャラクターを出して欲しかった、そしてもっともっとたくさんのエピソードを見たかった……という点ですが、そこは続編決定ということで、そちらに期待しましょう。
 本作においてそのキャラクターが確立された殤不患と凜雪鴉、二人の好漢がどんな冒険を繰り広げてくれるのか――何よりもこの二人が再び顔を合わせた時のことを考えるだけで、思わず顔がほころんでしまうのであります。

 まずはその時を楽しみにしておくこととしましょう。


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2016.10.06

『Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀』 第13話「新たなる使命」(その一)

 天刑劍を手にした蔑天骸に対し、真っ正面から剣で立ち向かい圧倒する凜雪鴉。完全に勝利しながらも命を取ろうとしない凜雪鴉に対し、蔑天骸は天刑劍を破壊し、凜雪鴉を嘲笑いながら命を断つ。そんな中、完全に封印から復活する妖荼黎。唯一の対抗策が失われた中、ただ一人、妖荼黎の前に立つ者は……

 遂に最終回、いきなりクライマックスに相応しく、主題歌なしで物語は始まります。

 天刑劍を手にしてご満悦の蔑天骸の前で、物語が始まって以来初めて剣を抜き放った凜雪鴉。真正面からお前の天狗の鼻を折るという凜雪鴉を嘲笑い、蔑天骸は魅翼を召喚して相手をさせようとしますが、凄まじい速度で打ってかかった凜雪鴉が召喚の笛に傷をつけていたことで、逆に魅翼は蔑天骸に襲いかかります。
 もちろんこれはあっさり退けた蔑天骸ですが、この腕を見せられれば、凜雪鴉の剣を認めざるを得ません。しかし「それだけの腕を持ちながら殺無生から逃げ惑っていたのは何故か」と問われて「強者を求める相手を喜ばせてやる筋合いはない」と答え、「なぜ盗賊などやっているのか」と問われて「剣に飽きたから」と完全に舐めきった答えを返されれば、これまで大物ぶっていた蔑天骸もキレずにはおれません。

 美しい月光を浴びながら激しく切り結ぶ両雄。しかしその間も舌戦は止みません……というより一方的に凜雪鴉が攻め立てます。剣の道がたどり着く先は山の頂などではなく大海原のようなもの、極めるほどに果てが見えなくなる……ごもっとも。言うことはまさに達人のそれですが、凜雪鴉の場合、その道に嫌気がさして剣を捨てたというのですから、蔑天骸立つ瀬なし。
 ついにエフェクトで地球がぶっ飛ぶほどの(少なくとも蔑天骸には)最大奥義を繰り出す二人ですが、勝ったのは凜雪鴉――しかも、彼には蔑天骸の命を取る素振りもありません。邪道の輩は断たないでからかった方が楽しいからね、と鬼のようなことを言う凜雪鴉の前に、蔑天骸は完全敗北であります。

 正直なところ、善悪定め難い個性的なキャラクターが次々登場する本作の中では、定型的な悪役、世紀末覇王的なそれの域を出ない印象だった蔑天骸ですが、なるほどそれもこの時のため――凜雪鴉の人となりを示すための踏み台とするためであったか、というのは一面的な見方かもしれませんが、個人的には腑に落ちました。
 しかし視聴者までそんな風に思われては(?)蔑天骸も我慢できません。お前も絶望させてやるとばかりに天刑劍をひねり壊した蔑天骸、折れた天刑劍の刃に貫かれて血笑の中に息絶えます。

 さすがに妖荼黎を封印できる唯一の武器である天刑劍を破壊されて凜雪鴉も焦った――かと思えば、負け犬は負け犬らしく死ね、絶望したくせに笑いながら死ぬな卑怯者! ……と、そこ? とツッコみたくなる怒りっぷりですが、あれだけ小憎たらしいばかりの余裕を見せていた凜雪鴉の仮面を引き剥がしたのですから蔑天骸も以て瞑すべしでしょう。
 しかしそんなことをやっている間にも刑亥の儀式は進み、ついに妖荼黎が復活(そして祠が崩れる中に消える刑亥)し、人間界抹殺を宣言。そこに駆けつけた殤不患らは事の次第を凜雪鴉から聞き出しますが、殤不患の「妙な追い込みをかけたんじゃないだろうな!」というお言葉ごもっとも。

 しかし実際問題として天刑劍がなければ対抗手段がない。別の神誨魔械を持ってきたら、とすっとぼけた提案をする凜雪鴉ですが、道義的に問題があるし、そこにも魔神が封印されていたら洒落になりません。

 万策尽きたかと思われた時――長くなりましたので次回に続きます。


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