2018.11.09

『Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀2』 第6話「毒手の誇り」

 解毒薬によって復活した殤不患に圧倒される蠍瓔珞と嘯狂狷。蠍瓔珞は嘯狂狷の裏切りによって傷を受けて逃れ、嘯狂狷もその場に現れた鬼鳥(凜雪鴉)の仲裁で撤退する。逃げた蠍瓔珞を追う殤不患と浪巫謠だが、その前に諦空が現れる。諦空と問答を交わした末、不意に襲いかかる浪巫謠だが……

 前回ラスト、浪巫謠と凜雪鴉が不運な竜から奪ってきた角から作られた解毒薬を口にした殤不患。普通こういう薬は効くまで時間がかかるような気がしますが、飲んだと思いきや何かスゴい光ったりしてものすごい勢いで殤不患は回復、毒を調合した蠍瓔珞も、自分でも解毒の方法を知らないのに――と愕然としております(それはそれでどうなのか)。
 しかし同時に、これが蠍瓔珞の魂に火をつけることになります。自分には毒しかない、毒だけに全てを打ち込んできた。その毒を否定されては――と悪役は悪役なりの矜持があることを見せてくれた蠍瓔珞ですが、彼女が放った奥義・毒蠱驟来(毒ガス殺法)も、高速で刀を回転させる殤不患の拙劍無式・黄塵万丈で無効化されてしまいます。さらに卑怯にも後ろから嘯狂狷に鞭でブン殴られて喪月之夜を奪われ、心身ともにボロボロの蠍瓔珞は蹌踉とその場から消えるのでした。

 そして残る嘯狂狷は、殤不患に町人虐殺の濡れ衣を着せて指名手配にしてやったもんね、と煽るものの、殤不患はそれがどうしたと平気の平左。そういえばこの人は好漢にとって大事な面子や名利といったものに、一向に無頓着なのでした――が、結構つきあいは長そうなのにその辺りが全くわかっていなかった、というより自分の物差しでしか人を測れない嘯狂狷には、そんな彼の姿は不可解極まりないのでしょう。
 蠍瓔珞といい、普通に振る舞っているだけで相手の心をへし折る殤不患は、ある意味凜雪鴉なみに厄介な人間なのかも――と思っていたら、そこに思いっきり棒読みで割って入ったのはその凜雪鴉、いや鬼鳥。鬼鳥として嘯狂狷にこの場は退けと語りかける凜雪鴉の姿に悟っちゃった殤不患は、「可哀想に……」という感じで嘯狂狷を見るのでした。

 さて、嘯狂狷は放っておくとしても、魔剣をまだ手にしている(かもしれない)蠍瓔珞を見逃すわけにはいきません。彼女の後を追う殤不患と浪巫謠ですが――その前に飄然と現れたのは、謎の行脚僧・諦空であります。彼に蠍瓔珞の行き先を聞く二人ですが、諦空は例によってそれに何の意味があるのかと問答を開始。諦空がいちいち相手の行動に意味を問うのは、自分自身にとってこの世の何物も意味を持たないからと聞かされた浪巫謠は――次の瞬間、では死ね! と剣モードの聆牙で斬りかかるのでした。

 さすがの殤不患も相棒の突然の凶行にびっくり仰天、さすがに放っておけないと剣を抜いて割って入り、その間に諦空はその場から立ち去ります。そして相棒の行動を問いつめる殤不患ですが――あいつは悪だ、とだけ語る浪巫謠。代わって聆牙が説明するのは諦空の危険性――彼がいま全てに意味を見出せないとして、とんでもない悪事に意味を見出してしまったとしたら? と。なるほど、そうでなくとも彼は、意味さえ聞かされれば、深手を負った蠍瓔珞の行き先を語りかねない雰囲気もありました。何よりも、全てに意味を見出せないということは、善悪の価値基準を持たないということでもあるのでしょう。
 そして倒れた蠍瓔珞を、いつもの納屋に連れてきた諦空。あんなことがあっても相変わらず平然として――いや、己の目的のために戦い、殺し合う蠍瓔珞らがキラキラ輝いてて羨ましい(意訳)とすら語る諦空に引いたのか、あるいは己の来し方行く末に悩んでいるのか、微妙な雰囲気の蠍瓔珞ですが……

 さて刑部に戻ってきた嘯狂狷は、刑部のおじさん官僚に何気ない態で掠風竊塵とは何者なのか尋ねます(殤不患が鬼鳥に何気なく僧呼びかけたのを聞いたのか?)。と、その質問に、刑部のおじさんがあからさまに不自然すぎるオーバーアクトでワナワナ震えるという謎の場面(この辺り、武侠ドラマらしいと言えばらしい)で次回に続きます。


 折り返し地点を過ぎたものの、相変わらず物語の落としどころがわからない本作。既に悪役二人は小者扱いな状況で誰が敵となるのか(やはり諦空……か?)、そして何を以て物語の終わりとするのか。魔剣たった二本を取り戻して終わり、というのは(少なくとも見た目では)あまりにもスケールが……

 という余計な心配をさて置けば、久々の殤不患の活躍が実に痛快だった今回。凜雪鴉との妙な通じ合いも、二人の腐れ縁を感じさせて実に愉快でした。
 そしてそれ以上に印象に残ったのは、己の矜持を粉砕されて嘆き悲しむ蠍瓔珞の姿。『生死一劍』の殺無生が嘆く場面にも思いましたが、派手なアクション以上に人形で感情の表れ――特に悲しみを表現するのは難しいはずで、それをしっかりと見せてくれたのには驚かされました。台湾布袋劇の奥深さを改めて感じさせられた次第です。

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2018.11.01

『Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀2』 第5話「業火の谷」

 業火の谷を訪れた凜雪鴉と浪巫謠の前に現れた龍・歿王。その火炎に苦戦する二人だが、凜雪鴉の口車と浪巫謠の絶技により、無事龍の角を得る。しかし解毒薬の製法を聞いた浪巫謠は意外な行動に出るのだった。一方、隠れ場所を知られた殤不患は、嘯狂狷率いる捕吏の包囲に窮地に陥るが……

 蠍瓔珞の毒に苦しむ殤不患を救うため、はるばる鬼歿之地にやってきた凜雪鴉と浪巫謠。目指す龍がいるという業火の谷に到着した二人の前に龍が現れますが――微妙にサイズが小さい。あっさり凜雪鴉に撃退される龍ですが、その時、巨大な影が現れ、龍を文字通り叩き潰してしまうのでした。
 その影こそは、オープニングに登場していた謎の怪獣――確かに片翼状態の龍であります。何と人語を喋るこの龍、自らを歿王を名乗り、この小龍を食うからお前らは失せろと親切にも二人に語りかけますが――もちろん二人が引くはずもありません。それどころかいけしゃあしゃあとその角が欲しいと言い出した凜雪鴉にもちろん歿王はエキサイト。グワーとひらいた口から炎、あたり一面焼け野原であります。

 もちろん周囲に散在する石柱に隠れてこの攻撃を躱す二人ですが、炎をはき続ける歿王に接近するのはほとんど不可能。さらに凜雪鴉が、お前の片翼を斬った男のために力を貸して欲しいなどとまたもや歿王のヒートを煽るのですが――凜雪鴉は浪巫謠に対し、龍の火炎は気息(ブレス)、すなわち声だから、お前の魔性の声で太刀打ちできるのではないかと無茶振りをするのでした。
 これに応えた浪巫謠は、歿王を前にオープニングのサビを熱唱! 浪巫謠の歌エネルギーは何と歿王の炎を圧倒、炎を出せなくなったところに挑発をかましてきた凜雪鴉を襲おうとして歿王は石柱に激突、そのまま下敷きに。そしてその隙に剣モードの聆牙を手に背中を駆け上がった浪巫謠は、見事に角を切り取るのでした。石柱に押し潰されてジタバタしながらも、二人に対して呪いの言葉を吐く歿王ですが、再登場はあるのかなあ……

 何はともあれ龍の角を手に入れ、凜雪鴉から解毒薬の製法も聞いた浪巫謠。これであとは殤不患のもとに戻るだけ――と思いきや、突如凜雪鴉に音撃を食らわせる浪巫謠。お前は殤不患のためにはならん、お前は悪だ、生かしておいては世に災いをなすのためにならない奴と見た、だからコロス! ――と、実は最初から凜雪鴉を斬るつもりだった浪巫謠の理屈は、好漢的に正しいのか間違っているのか悩ましいところではあります。が、こういう行動に出るところを見ると、浪巫謠は殤不患よりは頭が固い、というか生真面目なのかもしれません。
 もちろん凜雪鴉がここで倒されるはずもなく、魑翼でその場を去るのですが――この展開を彼が予想できなかったとは思えないわけで、それでは今回の行動はなんのためのものであったか、気になるところではあります。

 さて、そんな状況とは知る由もない殤不患は、不眠不休で調息を続けることで毒を抑えてきましたが、常人を遙かに越える内功を持つ彼でもこれは無茶というもの。ほとんど限界寸前の状況ですが――悪いことに、そこに蠍瓔珞と嘯狂狷、さらに彼の部下たちが近付いてきます。自分の作った毒であれば匂いで察知できる――と、蠍の一匹を探知機代わりに使う蠍瓔珞の前には、浪巫謠のカムフラージュ策も通じず、急いで洞窟から逃れる殤不患ですが、しかし弱った身体で遠くまでいけるはずもありません。
 捕吏たちに見つかり、たちまち追いつめられる殤不患。いくつもの傷を負いつつも、その場から何とか逃れようとする彼の姿は、大侠らしからぬものがあるかもしれませんが――しかし自分のために仲間たちが命を賭けている時に、自分が倒されるわけにはいかないという彼の意地は、やはり好漢のそれと言うほかありません。
(そんな殤不患の――江湖の好漢の行動原理をあざ笑う嘯狂狷は、やはり江湖に対する官の側の人間なのだと感じます)

 しかしそんな殤不患の心意気を理解できぬ蠍瓔珞と嘯狂狷は、それぞれ調子に乗った悪役そのものの、余裕こいて油断しきった台詞を吐くのですが――そこに空から駆けつけたのは浪巫謠! しっかり解毒薬を完成させていた浪巫謠から薬を受け取った殤不患が思い切って飲み込むと――何かスゴい光とか飛び出して、一瞬のうちに毒はおろかダメージも回復した様子。さあ、今度は殤不患のターンだ! というところで次回に続きます。


 OP映像を見た時はてっきりラスボスかと思ったら、単なる素材の元だった龍との対決が描かれた今回。その対決の模様や、その後の思わぬ仲間割れなどそれなりに楽しめたのですが、やはり物語は前に進んでいない印象であります。
 そろそろ物語は折り返し地点にさしかかりますが、物語の向かう先がまだ見えないのは、正直に言って不安なところです。


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2018.10.24

『Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀2』 第4話「親近敵人」

 毒に苦しむ殤不患の前に現れた凜雪鴉。相変わらずの調子の良さに呆れる殤不患だが、凜雪鴉は治療を申し出ると、解毒には龍の角が必要と診断を下し、浪巫謠とともに鬼歿之地へ向かう。一方、蠍瓔珞の前に現れた嘯狂狷は、彼女に手を組むことを持ちかけ、彼女もそれを受け容れるが……

 蠍瓔珞の毒を受け、辛うじて内功で抑えてはいるものの行動不能状態の殤不患。彼と浪巫謠が潜む洞窟に、突然凜雪鴉が顔を出して――というある意味一触即発の場面から始まった今回。(嘯狂狷のことはおくびにも出さず)殤不患を探すために刑部に潜り込んでいたという凜雪鴉に露骨にイヤな顔を見せる殤不患ですが、もちろん凜雪鴉が気にするはずもなく、グイグイと懐に飛び込んできます。
 友だから手を借りる→以前お前には散々手を借りた→だからお前は私の友 という謎の逆ジャイアン理論で強引に友人面をする凜雪鴉ですが、何と殤不患の毒を解毒しようと言い出すのは何の企みがあってか……。なるほど、彼も煙管からの幻惑香を操る身、その辺りの知識が豊富でも不思議はないのですが。

 そして殤不患の血を吸わせた布に、様々な種類の毒を垂らしてその反応を見る――という化学実験のような調べの末に、毒は陸に棲む獣の牙からにじみ出るもの、と見抜いた凜雪鴉。細かい種類を調べるよりも、同類でより霊格の高い動物――たとえば龍の力を体内に取り入れて制する方が早いという凜雪鴉ですが、龍なぞそうそう簡単にいるはずがありません。怪物犇めく鬼歿之地ならいざ知らず……
 と、その鬼歿之地を通って東離に来る途中、片翼の龍を目撃したという浪巫謠。片翼ゆえ、簡単に躱すことができたというのですが――実はこれは殤不患の仕業。西幽から東離へと鬼歿之地を通っての旅の途中に、空から狙ってくるのが鬱陶しいのでやっちゃったということですが――その他にも食人鬼の村を壊滅させたりと色々とやってくれたおかげで、鬼歿之地もずいぶんと通りやすくなった模様であります。そのおかげで追っ手たちもまた東離に来やすくなってしまったのは、皮肉以外のなにものでもありませんが……

 と、その追っ手である蠍瓔珞は、森で毒草採集の最中に、禍世螟蝗一党の召集の狼煙を目撃することになります。こんなところで一体誰が――といぶかしみながら向かった彼女の前に現れたのは何と嘯狂狷。捕吏であらば悪党の合図を知っていても不思議ではないと嘯く彼は、同じ殤不患を狙う身として、手を組もうと言い出すのでした。
 彼の目的は殤不患の首、蠍瓔珞の目的は魔剣目録――東離にあるよりも、たとえ禍世螟蝗の手にあったとしても魔剣目録は西幽にあった方が良い、自分の管轄で取り返さないと手柄にならないから――と役人の悪い面を固めたような嘯狂狷の言い草に呆れつつも、蠍瓔珞も手を組むことに合意するのでした。

 さて、龍の方ですが――居所はわかったとはいえどうするのかと思ったら、殤不患を東離に残し、素材ゲットのためにわざわざ鬼歿之地までやってきた浪巫謠と凜雪鴉。浪巫謠はともかく、凜雪鴉が自ら足を運んでくるとは、怪しい以外の何物でもありませんが――何はともあれ、彼の操る魑翼(前作で手に入れたのがよっぽど気に入った様子)で鬼歿之地の入り口辺りまで一っ飛びであります。
 そして龍のエリアまで行こうとする二人ですが――そこに立ちふさがるのは、鬼歿之地の瘴気によってゾンビと化した皆さん。容赦無用の相手に、特撮ヒーローのアイテムチックに聆牙を琵琶から剣に変形させて立ち向かう浪巫謠と、彼に煽られつつも、煙管からの火炎放射で攻撃する(すなわち真の実力は見せない)凜雪鴉と、二人は互いの名刺交換代わりに大立ち回りを繰り広げるのでした。

 一方、再び東離で隠れ家にしている納屋に戻ってきた蠍瓔珞ですが――その納屋に運悪く雨宿りに入ってきたのは、前回登場した謎の行脚僧・諦空。口封じのためと楽しそうに諦空の命を奪おうとする蠍瓔珞ですが、諦空は命を差し出すのはやぶさかではないと言いつつ、今回もまたその行為の意味を問います。もちろん蠍瓔珞がそれに満足に答えるはずもないのですが――だとしたら諦空もまた彼女に従うはずもありません。前回受けた毒はどこかへ消えたのか、蠍瓔珞の攻撃を軽々といなし、諦空は消えるのでした。屈辱に震える蠍瓔珞を残して……


 というわけで、今回も話が動いたような動いていないような展開ですが、やはり凜雪鴉と殤不患の絡みは抜群に面白い。全く以て油断のできない凜雪鴉ですが、浪巫謠とまさかのコンビを組んでの鬼歿之地という展開にはさすがに驚かされました。
 一方、ある意味殤不患以上に色々なキャラと絡んでいる印象もある蠍瓔珞は、悪役としての貫目の足りなさがここに来て露呈した印象。さて、そろそろ彼女はあの魔剣の魔力の前に屈してしまう気もしますが――冷静に考えれば(嘯狂狷を除けば)ただ一人の悪役らしい悪役を務めるだけに、まだまだ彼女の苦労は続きそうであります。


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2018.10.22

『つくもがみ貸します』 最終幕「蘇芳」(その二) そしてアニメ版を見終えて

 アニメ版『つくもがみ貸します』の最終幕の紹介の後半と、アニメ版全体のまとめであります。江戸に帰ってきたものの行方不明になった佐太郎を、つくもがみや友人たちの協力でようやく見つけだしたかに見えた清次ですが、思わぬ一撃を喰らって……

 と、意識を取り戻してみればどこかの座敷、そこには佐太郎と叔父もいます。聞いてみれば清次を殴ったのはこの質屋の主人、彼を賊と勘違いしてとのことであります。清次には完全にとばっちりですが、これがきっかけで店を訪れた際に誤って倉に閉じこめられ、誰にも気づかれていなかった二人も助かって一件落着、ではありますが……

 もちろん清次とお紅と佐太郎の関係はまだ解決していません。佐太郎などは、もうこれでお紅とは結ばれたものと有頂天になっていますが――そこに当のお紅が駆けつけます。清次が殴られた際に、急を告げるべく出雲屋へ急いだ野鉄から知らせを聞いたお紅ですが、彼女が飛び込んだのは――清次の腕の中。涙ながらに清次の無事を喜ぶ彼女の耳には、後ろから呼びかける佐太郎の声など入るべくもなかったのでした。

 かくて本当に一件落着した物語。勝三郎と早苗は無事に婚礼を挙げ、幸之助とお花もまあ公認の間柄となり――そして佐太郎はお紅にどうしても七曜を受け取ってもらえず、結局叔父が間に入って七曜を半額の40両で買い取り、それを清次たちに渡す、ということになります。その金で件の借金も完済し、めでたしめでたしであります(佐太郎以外は)。

 そして変わらぬ日々を迎える出雲屋。にぎやかに騒ぎ回るつくもがみを捕まえ、商売に向かう清次ですが、一つだけ変わったことがあります。そう、それは清次がお紅を「姉さん」ではなく、「お紅」と名前で呼ぶようになったこと――そしてお紅の簪を褒める清次の言葉に、お紅も嬉しそうに微笑むのでした。


 というわけでめでたく大団円を迎えた、このアニメ版『つくもがみ貸します』。これまでの紹介のなかでも何度も述べて参りましたが、このアニメ版は、原作のキャラクターや設定、物語を踏まえつつも、そのかなりの部分において、オリジナルの物語、オリジナルのキャラクターが描かれてきました。
 これは言うまでもなく、原作が全5話しかなかったことによるものかと思いますが、しかし原作に極めて忠実な内容の、原作そのままと言ってよいようなアニメがほとんどの昨今を考えれば極めて珍しいことで、むしろ快挙と言ってもよいのではないでしょうか。
(もっとも、原作者のアイディアに拠る部分もあるようですが……)

 もっとも原作ファンの目から見ると、人間とつくもがみの一筋縄ではいかない関係性をベースとした時代ミステリ、という原作の構造からは外れるようなエピソードもあり、ちょっとどうかなあ――と思う点は、正直なところ少なくありませんでした。
 しかしその一方で、このオリジナル展開によって、わずか5話だった――それもその半分以上が蘇芳にまつわる物語であった――原作の世界観を大きく広げて見せてくれたのは、非常に大きな意味があったと感じます。
(以前も書きましたが、半助のキャラクターなど、オリジナルでありつつも、非常に原作的な味わいを出していたと感じます。)

 そしてそんな本作の魅力が最も良い形で結実したのが、この最終幕であることは言うまでもありません。人間とつくもがみ(そしてもちろん人間と人間)の関係性が、最もポジティブな形で昇華したクライマックスの展開は、これまでその関係性を様々な形で描いてきた本作だからこそ描けたものであることは間違いないのですから……
 ちなみにもう一つ嬉しかったのは、清次のお紅の名前呼びが最後の最後であったこと。実は原作ではちょっと違うタイミングだったので、上のつくもがみとの関係性も含めて、よりドラマチックな展開となっていたのは、これは個人的には大いに嬉しかったところであります。


 さて、本作はここでめでたく完結ですが、原作には続編『つくもがみ、遊ぼうよ』が存在します(そして第三作も連載中)。
 清次とお紅の子供(!)世代が主人公となるこの続編では、人間と一線を画していたつくもがみたちもすっかり丸くなり、より賑やかな物語となるのですが――こちらもいつかアニメで観てみたいなあ、と願っているところであります。


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2018.10.21

『つくもがみ貸します』 最終幕「蘇芳」(その一)

 佐太郎が江戸に戻ってきたことを知った清次とお紅。しかし佐太郎は翌日からまた姿を消してしまったという。清次は佐太郎が探しているのが蘇芳の兄弟の香炉・七曜であることに気付くが、そのことを聞いたお紅は清次に怒りをぶつける。果たして佐太郎はどこに消えたのか、お紅の想いはどこに……

 いよいよ最終幕の今回、アバンで出雲屋に姿を現したのは佐太郎の母。しかし突然佐太郎の行方を尋ねる彼女に、清次もお紅も当惑するほかありません。彼女が語るには、佐太郎は大坂で叔父を頼り、米相場で一山当てて自分の店を持ったとか――そして叔父とともに江戸に帰ってきたのですが、その翌日から姿を消してしまったというのであります。

 さて、佐太郎の帰還に心中穏やかではないものの、何だかんだで佐太郎の行方を捜して奔走した清次は、佐太郎が探しているものが、蘇芳と一緒に焼かれた香炉の残る一つ・七曜であることに思い当たります。
 同じ職人により三つ作られた香炉のうち、蘇芳は行方不明となり(前回発見されましたが)、以前にお紅が佐太郎のために80両で購った三曜は佐太郎が壊し、残るは七曜のみ。佐太郎は過去のけじめをつけるために七曜を探し出し、それを手にしてお紅に会いに来るに違いない! と、お紅に話す清次ですが――そこでお紅の平手打ちが一閃!

 突然のことに目を白黒させる清次に、「急にぶちたくなったから」と言い放つお紅。さらに、いつまで私を姉さんと言ってるの! と激しく追撃をかけてきます。一見とばっちりに思えますが、しかし、江戸に帰ってきたにもかかわらず過去の約束に拘泥して香炉探しを優先する佐太郎も、そんな佐太郎への引け目か遠慮か、お紅を慕いながらも姉と呼ぶ清次も、己の想いに浸っているばかりで肝心のお紅の気持ちは考えないという点では同様と言えるでしょう。
 この辺り、男性視聴者はむしろ佐太郎たちの方に感情移入していたのではないかと思うのですが――そこに思い切り冷や水を浴びせかけるのは、さすがというべきでしょうか。

 それはさておき、当惑が隠せない清次は一度退散すると、お花の茶屋ですっかり顔なじみとなった面々――勝三郎・早苗・幸之助・お花・半助相手に嘆き節ですが、尋常でないニブチンの幸之助を除けば、皆には清次のお紅への気持ちも、お紅が怒っている理由もバレバレ。挙げ句の果てには勝三郎から、第1話でアドバイスした「綺麗だと言っておあげなさい」という言葉を返される始末……
 と、そこに駆けつけた権平から、佐太郎の母が奉行所に届けたことで大事となってしまったと聞かされる清次。しかしなおも佐太郎の手がかりはなし――と、そこで清次とお紅は閃きます。

 それはこれまでの物語で何度も繰り返されてきたこと――つくもがみたちを貸し出しての情報収集。しかし今までと異なるのは、初めて二人がつくもがみに力を貸して欲しいと頼んだこと――そしてつくもがみたちもまた、人間である二人に話しかけられたのを無視せず、手を貸すと答えたことであります。
 そしてそのつくもがみをあちこちに貸し出すように頼まれたのは、先ほど茶店で会っていた面々。二つ返事で引き受けた彼らの手により、つくもがみたちは江戸の方々へ……

 というこのくだり、実に最終回らしく良い展開であります。実はこの清次とお紅がつくもがみに直接語りかけるというのは原作通りですが、しかしそちらではむしろお紅は飴と鞭でつくもがみを動かそうという展開で、つくもがみたちも意気に感じたりせず、表向きは無視したままという形でした。そしてつくもがみたちを貸し出すのも、清次とお紅自身の手で――と、これはオリジナルキャラが大半なことを考えると当然かもしれませんが、しかし大きな違いと言えるでしょう。
 そう、ここで描かれたのは、本作において清次とお紅がこれまで培ってきた絆が生み出したもの。人であれつくもがみであれ、これまでの二人の想いと言葉に応えて、皆が動いてくれたということにほかならないのであります。

 そしてつくもがみたちの聞き込みで、とある質屋の倉に七曜があることを知った清次は、一緒に行くというお紅を留め、連絡係の野鉄(いつも嫌がっているのが、今回はやる気になっているのもいい)とともに質屋に急ぎます。そして倉まで来た清次は、中から助けを求める佐太郎の声を聞くのですが――そこで後ろから何者かの一撃を受け、意識を失ってしまうことに……


 と、Aパート終了のこの場面で、長くなってしまったので次回に続かせていただきます。


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2018.10.18

『Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀2』 第3話「蝕心毒姫」

 蠍瓔珞の毒を受けた上、魔剣・喪月之夜の力で操られる人々に苦戦する殤不患。浪巫謠の力によりその場を逃れた殤不患だが、そこに現れた嘯狂狷は人々を平然と犠牲にし、蠍瓔珞も撤退を余儀なくされる。一方、いまだ毒に苦しむ伯陽侯の前に、強力な力を持つ謎の僧・諦空が現れるが……

 蠍瓔珞が奪った魔剣目録の切れ端から呼び出された魔剣・喪月之夜――斬られた者は身体に傷を負う代わりに精神を支配されるその力でゾンビ状態となった町の人々に取り囲まれ、苦戦を強いられる殤不患と浪巫謠。しかも殤不患は少女に化けた蠍瓔珞の不意打ちで猛毒状態であります。
 この窮地に、浪巫謠は少々骨を折られるのは仕方ないと、積極的に町の人々に打撃攻撃を開始、その隙をついて何とか殤不患ともども包囲を突破することに成功するのでした。

 と、ほとんど入れ違いに蠍瓔珞の前に現れたのは、配下を連れた嘯狂狷。捕吏であるからには蠍瓔珞とは不倶戴天の間であるはずながら、小物には構っていられないという態度を取る嘯狂狷ですが――蠍瓔珞が黙っているはずがありません。同じ獲物を狙う者同士、激突する両者ですが――しかし嘯狂狷と配下は、操られているだけの町の人々を、容赦なく斬り捨てていくのでした。

 これは殤不患が奪われた魔剣によるもの、ならば殤不患の罪だと言い放ち、むしろ嬉々として無辜の民を惨殺していく嘯狂狷は、陰険眼鏡というより鬼t――いや外道眼鏡。むしろ蠍瓔珞の方がドン引きする有様で、追いつめられた彼女はひとまずその場を逃れ去るのでした。
 そして惨劇が終わった後にノコノコ現れたのは鬼鳥。彼は嘯狂狷を咎めるでも、もちろん無実の罪を着せられた殤不患をかばうでもなく、自分の見ているところではこういうことはしてくれるなと、見るからに事なかれ主義の役人的なことを言うのですが……

 一方、再び潜伏先の納屋(?)に戻った蠍瓔珞は、不首尾に歯噛みせんばかりですが、そんな彼女に甘く語りかけるのは、前回放り出されたもう一本の魔剣――殤不患たちも恐れるその名も七殺天凌であります。己の意志を持ち、手にした相手を支配する力を持つようですが――本当にギリギリのところまでいきつつも、今回も何とか蠍瓔珞は魔剣の魅了の力を撥ね除けるのでした。

 そしてその彼女の毒の後遺症に未だ苦しむ仙鎮城の伯陽侯は、完璧に殤不患が黒幕と思いこんで、恨みの念を高めるばかり。そんな城主を救うべく、仙鎮城の護印師たちは医師を求めて奔走するのですが、先ほどの嘯狂狷らの凶行もあり、町はそれどころではありません。
 と、そんな彼らが出会ったのは、毒に苦しむらしい老農夫に、無償で気功による治療を行う一人の青年。ビジュアル的にとてもそうは見えないものの――一応数珠を持ち、髪はやたら塊の大きな螺髪ですが――僧侶である青年・諦空を、護印師たちは喜んで仙鎮城に連れ帰るのでした。
(しかしこの人たち、もう少し人を疑うべきだと思います)

 さっそく伯陽侯の治療を依頼する護印師たちですが、諦空はその理由は何かと突然拒絶とも思える態度を見せます。相手は仏僧、しかも農夫を無償で治療するほどの相手であれば当然――と思っていたところに突然の問いかけに憤然とする護印師たちですが、そんな彼らの態度と言葉に納得したものか、諦空は伯陽侯に治療を施すことに同意します。
 が、諦空の力は毒を消すものではありません。彼は伯陽侯の毒を自らの体内に移すという(彼自身にとっての)荒療治をやってのけるのですが、さてその行動は慈悲の心から来ているのか、それとも……

 しかしいま一番治療してもらいたいのは殤不患。洞窟に身を潜めた彼は、気の運息によって体内の毒を一カ所に集めて安静を保っていたのですが――しかしそれ以上の行動はほとんど不可能の状態(瀉血はできないのかしら……)。浪巫謠も手を着けかねているその状況に、突如胡散臭い声が響きます。こういう時は友を頼るべきとかなんとか調子のいいことを言いながら顔を出したのは、もちろん鬼鳥こと凜雪鴉……


 放映開始前に公表されていたキャラのうち、まだ姿を見せていなかった諦空が登場した今回。敵か味方か、その正体は全くわかりませんが、色々な意味でただものではない人物であることは間違いありません。

 しかし新キャラも登場した一方で、前作に比べると少々物語のスピードが遅いようにも感じられるのが気になるところ。前作なんて第1話からネームドキャラが盛大に死んだのに――というのはともかく、まだ物語の向かう先がわからないだけに、早く全力疾走していただきたいという印象はあります。


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2018.10.10

『Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀2』 第2話「奪われた魔剣」

 殤不患から魔剣目録の一部を奪い、その中から二振りの魔剣を呼び出した蠍瓔珞。一方、西幽の捕吏・嘯狂狷は、四方御使を名乗る鬼鳥と手を組み、仙鎮城を訪れる。そうとは知らぬ殤不患と浪巫謠の前に、魔剣・喪月之夜を手にした蠍瓔珞が現れる。喪月之夜の恐るべき能力に翻弄される殤不患の運命は……

 はるばる西幽から殤不患を追ってきた陰険メガネ君こと嘯狂狷の前に現れた謎の男()鬼鳥。朝廷から派遣された査察官・四方御使だという彼は、殤不患が西幽の宮廷の宝物庫を荒した逆賊だという嘯狂狷の言葉に、協力を申し出ます。
 東離では特段手配もされていない殤不患ですが、玄鬼宗を壊滅させたという噂(誰が流したのか)もある殤不患を放ってはおけないという鬼鳥ですが、その真意は……

 さて、その殤不患は前回蠍瓔珞に魔剣目録の一部を持ち去られたわけですが――ごく一部とはいえその影響は大きく、魔剣目録の中身を見ることができなくなってしまったのでした。殤不患曰く、これは術を使えない彼でも使えるように巻物の形こそしているものの、その実、一種の宇宙とも言うべき存在。それが一部を切り取られた――巻物の形を失ったことで、その機能そのものが失われてしまったと、わかるようなわからないような理屈ですが……
 と、その一部を持ち去った蠍瓔珞は、どこぞの納屋のような場所に身を隠し、怪しげな魔術を用いて、奪った部分から魔剣を呼び出そうという真っ最中。そしてそこから現れたのは、なんか魂を喰らう剣っぽい有機的なデザインの魔剣・喪月之夜と、豪華な鞘に収められた謎の魔剣ですが――後者の剣は意志があるらしく、危うく蠍瓔珞もそれに支配されかかったものの、ギリギリで手を離すことに成功、その魔剣を雑に放り出してその場を去るのでした(どう考えても後で面倒なことになる予感しかしません)。

 一方、殤不患を追う嘯狂狷と鬼鳥が訪れたのは、前回蠍瓔珞に荒らされた仙鎮城。病床の伯陽侯と言葉を交わす二人ですが、前回殤不患に命を救われた伯陽侯が、どれだけ嘯狂狷が殤不患を悪し様に言おうと、容易に信じるはずがありません。が、そこで口を挟んだのは鬼鳥。丹翡からの紹介状があったと聞けば、丹翡は若輩で未熟者、海千山千の曲者に容易に騙されてもおかしくない――と、なんだかものすっっごく説得力のある言葉で伯陽侯に語りかけます。その結果、ついに伯陽侯は、前回の戦いは殤不患と蠍瓔珞が仕組んだ狂言だと信じ込むことに……

 そんな大変なことになっているとは露知らず、町の宿屋の一室で、一生懸命に糊と紙で魔剣目録を修理している殤不患。この辺りを人形で見せるのはちょっと驚きではあるものの、そんなアバウトな修理でいいのかなあ――と思いきや、大事なのは形らしく、魔剣目録はその機能を取り戻します。そしてそこで初めて喪月之夜が奪われたことを知った殤不患は、屋根の上で待っていた浪巫謠に対して、血相変えて町から出るよう促します。
 というのもこの魔剣の力は――と、時すでに遅し。その場に現れた蠍瓔珞が魔剣で町の人々に次々と襲いかかると、斬られた人々は「喪」の字が描かれた覆面を被ったような姿で立ち上がり、殤不患たちに襲いかかるではありませんか。そう、この魔剣によって斬られた者は、肉も骨も傷つけられぬ代わりに、精神を乗っ取られ、持ち主の思うがままに操られてしまうのであります。

 言ってみればゾンビに襲われるようなものですが、ゾンビと違うのは相手が無辜の生きた市民であること。剣侠たる殤不患としては、相手を殴り倒すくらいはできても、斬り捨てることもできず、無数の敵に取り巻かれて大苦戦を強いられます。とはいえ相手は動きが鈍い上に素人、浪巫謠がマップ兵器的に放った衝撃波で武器を取り落とした隙に、殤不患は蠍瓔珞を探すのですが――そこで目に入ったのは、ただ一人魔剣の犠牲になることなくその場に居合わせた少女の姿であります。
 もちろんこれを見過ごすことはできず、少女を助ける殤不患ですが――どう考えても不自然に見えたこの少女は蠍瓔珞の変身。不意打ちで猛毒の爪を受けて苦しむ殤不患に、トドメの一撃を食らわせようと蠍瓔珞が襲いかかって――と、武侠ドラマにあるまじきキリのいいところで次回に続きます。


 前作同様、本作でも貧乏くじを引きまくる予感しかしない殤不患。誤解と濡れ衣は武侠の華ですが、その上に毒まで喰らうという状態で、この上失恋でもすれば武侠ものの不幸の数え役満状態ですが、さすがにこの方面は大丈夫(?)かな……
 しかしその不幸の原因の一端は、確実に鬼鳥を名乗るアイツにありますが――さて二人がいつ出会うのか、出会った時に何が起こるのか、それが今一番気になることは間違いありません。


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2018.10.09

『つくもがみ貸します』 第十一幕「似せ紫」

 早苗の周りにかつての男の影があるのではと心配する勝三郎に相談された清次。弱った清次は半助に相談し、半助は勝三郎と早苗、さらに幸之助やお花を招いて茶会を開く。その席で男女の間には心の平静を保つことが一番必要と説く半助の話に閃いた清次は、ついに消えた蘇芳の在処を見つけだすことに……

 台風で一週放送延期となったためでもないでしょうが、月夜見が貸し出された先のつくもがみ・猫神に本作の基本設定を語るアバンから始まる今回、その場にもう一人、佐太郎が主人だったというつくもがみ・黄君が現れて――という場面から変わり、またもや勝三郎の相談を受ける清次が描かれます。
 勝三郎との縁談の前、心を寄せた男性がいた早苗。その男性は既に他の女性と結婚したのですが、最近、勝三郎は早苗の屋敷の近くでその姿をみかけてしまったのであります。もしやまだ二人の間に何かが――と気が気ではない勝三郎ですが、それを相談される清次こそいい面の皮。お紅に話しても、早苗と仲の良い彼女に一喝され、弱った清次は第八幕に登場した半助に相談するのでした。

 なるほど、女性の心も男性の心もわかり、恋愛については過去に色々あった半助は適任ですが、彼は清次の相談を二つ返事で引き受けると、勝三郎と早苗、さらに幸之助やお花を招いて茶会を開くことになるのですが――幸之助とお花を呼んでいいの、と気遣う清次に、今は幸之助を鍛えるのが楽しくて仕方ないというようなことを答える半助はまじ神様のような人であります。

 さて清次が出雲屋に帰ってみれば、貸し出されていた品川から帰ってきた月夜見が、黄君から聞いた過去の出来事を語ります。かつて婚約者のお加乃から贈られた蘇芳の香炉が消え、彼女と結婚せざるを得ない立場に追い込まれた佐太郎。そんな彼のために、お紅はかつて佐太郎の母から託された櫛を元手に(清次が懸命にわらしべ長者戦法で)稼いだ80両で、蘇芳と同じ作者の同型の香炉を買い、それを持って帰るように告げたのでした。
 しかしそれは同時に、お紅が佐太郎の母の試験に不合格になるということでもあります。それを受け入れられぬ佐太郎は、二人の目の前でその香炉を割り(当然清次は激高しますがそれもごもっとも)、一旗揚げて帰ってくるので待っていてほしいと告げて、一人江戸を去ったのです。そこから先、佐太郎がどうなったのか――それは路銀を作るために品川で売られてしまった黄君には預かり知らぬことであります。

 それはさておき、半助主催の茶会は終始和やかなムードで進み、半助は清次のフリに答え、男女の仲を壊さぬための大事な方法について、知り合いの話という態で、かつての自分が経験した出来事を引いて語り始めます。
 かつて遊女から煙管(五位)を贈られた男(半助の夫)。妻(半助)からその煙管を隠していた男ですが、いつの間にか煙管はそこから消え、それを知った遊女から男は責められることになります。ついには事を明らかにされたくなければと、半ば脅される形で男は妻と離縁し、遊女と一緒になったのですが――と、何だかどこかで聞いたようなシチュエーションですが……
 実はこの一件、煙管を隠し場所から盗んだのは遊女自身という恐ろしい真実があったのですが、このことから半助は、男女の間で最も大事なのは心の平静を保ち、伝えるべきことを伝えることだと説きます。男を手に入れるために自作自演の挙に出た遊女も、秘密の存在を脅されて離縁に至ってしまった男も、平静さが足りなかった――と、笑って語る半助はもの凄い平静さの持ち主だと思いますが(そしてその言葉を聞いて突然お花に告白する幸之助は相変わらず平静さゼロ)。

 何はともあれ、勝三郎も早苗に平静に問いかけ、向こうの男の独り相撲だと確認して一件落着ですが――ここで清次が閃きます。
 先ほどの半助の話が、平静さを失った女性の自作自演がきっかけだとすれば、蘇芳の件も――と、お加乃の実家に向かった彼は、第九幕に登場した権平の協力で、店の倉から箱が無く袱紗に直接包まれたモノを見つけだします。はたしてそれは佐太郎のもとから箱だけ残して消え失せた蘇芳ではありませんか! そしてその場に現れたお加乃から、佐太郎のもとを訪れた彼女が蘇芳を持ち出し、乳母に密かに持って帰らせていたことが語られ、かつての謎は解けたのであります。

 そしてその晩、料理屋・鶴屋には二人の客が。うち年長の男は、もう一人の若い男を佐太郎と呼んで……


 予告を見ればオリジナルエピソードかと思いきや、実は本作最大の謎である蘇芳消失の謎解き回でもあった今回。本作の裏テーマとも言うべき男女の間柄に絡めて清次が真相に気づくのは面白いのですが、実は原作ではもう一ひねりしてあったトリックが、ここでは非常に単純なものになっていたのが、何とも残念なところではあります(原作ではそこに哀しい人間心理が絡んでいただけになおさら……)。


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2018.10.03

『Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀2』 第1話「仙鎮城」

 魔剣目録の隠し場所を求め、護印師の砦・仙鎮城を訪れた殤不患。城主・伯陽侯に目録を預けて城を離れた殤不患だが、その前に西幽での旧友・浪巫謠が現れ、仇敵の配下・蠍瓔珞が東離に潜入したと警告する。急ぎ引き返した殤不患だが、既に城内には無数の恐るべき蠍が待ち受けていた……

 世を騒がした恐るべき魔剣妖剣邪剣の数々を集め、封印した魔剣目録。封印されたその数実に36本――から1本減って今は35本ですが、その剣の数々を封印し、それが悪人の手に渡らぬように手に遠く西幽の地から東離までやって来た剣侠こそが本作の主人公の一人・殤不患であります。
 この魔剣目録を封じる場所を求めていま彼が訪れたのは、護印師の一人・伯陽侯が治める仙鎮城。難攻不落と謳われるだけに、門番に早速誰何される殤不患ですが、同じ護印師にして前作で殤不患に助けられた丹翡の紹介状でそこはクリアであります。

 見るからに厳めしい伯陽侯も、さすがに魔剣目録の存在には半信半疑であるものの、しかしここでも丹翡の紹介状がものを言って、殤不患の頼みを聞き入れるのですが――どうも事態を甘く見ている感があるのが気になります。そもそもこういう話で難攻不落を謳うのはフラグであって――というのはさておき、殤不患までもあっさり魔剣目録を預けて去ったのはいかにも油断であります。

 何はともあれ重荷を手放して城を出た殤不患ですが、その前に現れたのは紅蓮の装束をまとった謎の美青年。その手には奇怪な顔のついた琵琶が――と、その姿を目にした殤不患は驚きの表情を見せます。
 そう、この美青年こそは西幽で殤不患の相棒であった吟遊詩人・浪巫謠。極端に口数が少ない(プロの声優さんではないから)のを、手にした喋る琵琶・聆牙が補うという、なかなか愉快な人物であります。

 しかし久闊を叙する間もなく浪巫謠が告げたのは恐るべき知らせ――西幽で殤不患の仇敵であった禍世螟蝗の配下・蠍瓔珞が、彼らより一足早く東離に入ったというではありませんか。蠍瓔珞といえば、毒と忍びの名手と解説してくれながら、一人城に馳せ戻る殤不患ですが――もちろん時既に遅し。
 門番たちが気がつく間もなく、蠍瓔珞の操る恐るべき蠍――一刺しで犠牲者を硬直させ、その命を奪う――の前に城の守備はたやすく破られ、伯陽侯も無数の蠍に囲まれ、その命は風前の灯火であります。

 一歩遅く一刺しを受けた伯陽侯に荒っぽい応急処置をした殤不患ですが、そこに現れたのは真の敵たる蠍瓔珞。無数の蠍を奪って巻物を奪った彼女の術を見破り、相手が美女であろうがかまわず一撃を食らわせる殤不患ですが、力では劣っても、技や奸智では上回るのはこの手のキャラの定番であります。
 隙をついて窓から外に飛び出した蠍瓔珞を追う殤不患の眼前で、目録を開いてみせた蠍瓔珞。明言はされていないと思いますが、おそらくは厳重に術が施され、殤不患以外は魔剣を解放できないと思われた目録の封印をあっさりと破られた殤不患は、さすがに驚きを隠せません。

 が、勝ち誇る蠍瓔珞に後ろから絶技を放つのは駆けつけた浪巫謠。琵琶をかき鳴らすことで衝撃波を叩きつけるという荒技に追いつめられた蠍瓔珞に一撃を放つ殤不患ですが――それが目録を二つに裂いた! やっぱり巻物争奪戦は巻物が破けないと! と喜ぶ一部の視聴者は放っておくとして、敢えて短い方の巻物を取った蠍瓔珞は、その場から消え失せるのでした。

 と、場所は変わって東離の衙門(役所)。ここで東離の役人を前に熱弁を振るうのは、西幽から精鋭を率いてやってきたという眼鏡の青年・嘯狂狷であります。西幽の捕吏である彼は、いかなる理由によってか、殤不患を鬼畜外道の大悪人、残虐非情にして怜悧狡猾な希代の奸賊と呼び、彼を捕らえるために協力を要請するのですが――そこに平然と現れたのは本当の大悪人にして希代の奸賊、本作のもう一人の主人公・凜雪鴉!
 大盗賊が衙門で何をやっているの、と言いたくなるところですが、ちゃっかりと中央より視察にやってきた役人・鬼鳥を名乗る彼は、何食わぬ顔で嘯狂狷との話に加わって――ああ、かわいそうな眼鏡君、と前作からの視聴者が皆思ったところで次回に続きます。


 というわけで始まった、武侠ファンタジー人形劇約2年ぶりの待望の続編。前作では巻き込まれた風来坊という態だった殤不患ですが、本作では彼が台風の目となる様子で、第1話に登場する新キャラが全て彼絡みというのが、今後の展開を期待させてくれます。
 もっとも、前作終盤で呆れるほどの強さ・格好良さを見せてくれた彼にしては、今回はいささか迂闊な場面が多かったような気もしますが――それもまたらしいといえばらしい。ラストに顔を見せただけでその場をさらっていった凜雪鴉ともども、本作での痛快な暴れっぷりに期待するばかりであります。


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2018.09.25

『つくもがみ貸します』 第十幕「檳榔子染」

 実は20両もの借金があった出雲屋。清次が一ヶ月後に迫った返済期限に頭を悩ます中、うさぎの櫛をどんな高値でもいいから売って欲しいという侍が現れた。借金の存在を知ったつくもがみたちは、うさぎが売られてしまうのではないかと色めき立つが、そこにおかしな霊媒師が現れて……

 いきなり怖そうなおっさん相手に頭を下げている清次。どうやら清次は父の知り合いだというこの越中島の網元に借金をしているようですが――その額なんと20両というからかなりのものであります。店の品物を売ってはどうかという網元の言葉に首を縦に振らず、頼みに頼んで来月まで待ってもらうことになった清次ですが、網元ももう次はないと最後通牒の状態です。
 清次がそんなことになっているとは知らず、店にうさぎの櫛を返しに来た早苗と楽しく語らっていたお紅。ところがその櫛を目にした一人の侍が、お紅と清次に思わぬ提案をしてくるのでした。

 その侍――高田藩の勤番武士である上川は、故郷に残してきた娘が買い与えた櫛をなくして悲しんでいると知り、土産にうさぎの櫛を買いたいと言ってきたのであります。しかし金に糸目はつけないと言われても、店の品物を、特につくもがみの品を売れるはずもない二人。特にうさぎの櫛は、先ほど早苗が三両で買うと言っても断ったほどなのですが――よほど欲しかったのか、上川は自分の脇差しと交換しても良いと言い出します。
 上川は8両と言っていた脇差しですが、清次の目利きでは15両もの値がつくという品。清次にしてみれば渡りに船の話ですが――お紅に借金のことを切り出すことができません。

 そんな清次の様子を訝しんだお紅は、うさぎの櫛(と、いつものことながら、つくもがみ代表として後をつけることとなった野鉄)を身に着けて外出。お紅は、独り言の態で、先日つくもがみたちが話していた佐太郎との過去の出来事の続きを語りだします。
 蘇芳の香炉が亡くなる直前、大火で店を失い、父親も喪ったお紅。そんな彼女を助けるため、佐太郎が蘇芳の香炉を売ってその代金を与えたのではないか――という疑いのことは以前も語られましたが、そのことを、佐太郎自身がお紅に語っていたのであります。お紅への想いもあってどうしてもお加乃との縁談を受け容れられないが、しかし蘇芳の香炉を紛失したために断るわけにはいかない――板挟みとなった彼は、江戸を出ると彼女に告げたのでした。

 お紅は、清次がわらしべ長者作戦で手に入れた80両のかんざしを売り、蘇芳と同じ作者の香炉を買って佐太郎に渡そうと考えるのですが――いやいや、いくらその前に清次がお紅の望むことに使っていいと言ったからといって、さすがにそれはどうなのかと思いますが、それでもOKを出す清次はマジいい人と言うほかありません。

 そんな清次が自分に隠し事をするなんて――と、冷静に考えれば酷いことを言うお紅。そんな彼女のために清次の隠し事を調べたいといううさぎの願いに応え、つくもがみたちは調べに当たります。そしてついにあの借金のことがバレてしまったのですが――最初1両だったのが20両になっていたとは、網元もとんだ鬼畜野郎であります。
 何はともあれ、清次が借金返済のためにうさぎを売るつもりだと思った野鉄はエキサイト、しかしうさぎはつくもがみである前に櫛でありたいと、悲壮な決意を固めるのでした。

 そしてその翌日、出雲屋を訪れる上川。しかしその傍らには、数日前から店を窺っていた霊媒師を自称する男がついていました。この男、上川やお紅から怪しい気配を感じて店に訪れたというのですから、それなりの能力を持つのでしょうが――激怒したうさぎたちの攻撃を受けてあっさりKOされるのでした。
 事ここに至り、上川につくもがみのことを打ち明ける清次。つくもがみはとても大切な隣人だ、だから櫛は売れないと語る清次に、上川は家族と離れるのは辛いことだろうと快く納得、秘密を守ると語るのでした。

 しかし借金は相変わらず――さてどうするのか、というところで以下次回であります。


 過去話を除いてはオリジナルエピソードだった今回、本作ではこれが定番のスタイルとなった感がありますが、あと今回を除いて残り2話で完結するのか、少々心配になってきました(次回もオリジナルのようですし)。

 それはさておき、今回は清次の本心を探るという展開――借金のことは途中まで伏せておいた方が効果的だったような気もしますが、清次の態度に悩むお紅が、うさぎ(と野鉄)に問わず語りに話す場面は、人間とつくもがみが馴れ合わない本作だからこその味わいがあった、なかなかの名場面だったと思います。

 しかし冷静に見れば、清次に対してお紅は酷いことばかり言ったりしたりしている印象は否めないのですが――さて。


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