2019.05.20

『鬼滅の刃』 第七話「鬼舞辻無慘」

 三体の沼の鬼のうち、一体を禰豆子に任せて自ら沼に飛び込み、二体を倒した炭治郎。残る一体に鬼舞辻無惨のことを問い詰める炭治郎だが、怯える鬼は答えず、刃の前に散るのだった。そして新たな任務で浅草に向かった炭治郎は、そこで家に残っていた匂いを嗅ぐ。鬼舞辻無惨の匂いを……

 前回ラスト、箱の中から強烈な蹴りとともに飛び出してきた禰豆子。そのまま冷静に考えたらちょっとマズいアングルで痛烈なかかと落としを放って鬼を牽制、沼からの不意打ちも軽々と避けて、身体能力の高さを見せつけます。
 その禰豆子の姿に、和巳とトキエを任せ、自分は攻撃に専念することを決意した炭治郎。自ら沼に呑まれるという思い切った手段に出た彼が飛び込んだのは、犠牲者の遺品が漂うほの暗い水の中。炭治郎は一見不利な水中という環境をもものともせず、襲いかかる鬼(歯ぎしり鬼とたぶん冷静鬼)に対し、「水」の呼吸の利点を生かしたともいえる陸ノ型・ねじれ渦で二匹まとめて粉砕するのでした。

 一方、残る一体と戦っていた禰豆子は、その身体能力で鬼を追い詰めるものの、初陣の経験不足が祟って反撃を受けることに――と思いきや、そこに炭治郎が帰還。鬼の犠牲者を辱めるようなクソ発言にブチ切れた炭治郎は、相手の両手を落として拷いや尋問モードで鬼舞辻無惨のことを問い詰めるのですが――その名を聞いた途端、鬼はこれまでの態度が嘘のように鬼は我を忘れて怯え出すのでした。
 結局、自棄になったように襲いかかってきた鬼の首を斬って戦いを終えることになった炭治郎。和巳に、俺たちは無様に生き続けるしか無いんですよ(違う……けどまあだいたい合ってる)と声をかけた炭治郎は、激高した和巳の手を握り返すと、哀しくも優しい笑みとともに犠牲者の遺品を託し、去って行くのでした。

 ――が、そこですぐに次の依頼が舞い込んでくるのが鬼殺隊の恐ろしいところ。鎹鴉の指令で、早速浅草に向かうことになった炭治郎ですが、鬼が潜んでいる噂、というアバウトな指令に行く宛もなく彷徨う炭治郎は、テリブル東京を前にして右往左往するばかり。うどんの屋台を見つけてそこで一息ついた炭治郎は、非常にうまそうな山かけうどんを食べようとするのですが――しかしそこで嗅ぎ憶えのある匂いが!
 無情にも器ごとうどんを地面に叩き落とし、禰豆子をもその場に残して突っ走る炭治郎。なぜならその匂いこそは、惨劇の現場に残されていた忘れもしない家族の仇・鬼舞辻無惨の匂いだったのですから……

 そして人混みをかき分け、ついに肩に手をかけたその相手は、額に縮れた髪を垂らした小洒落た洋装の伊達男。しかし、その瞳は鬼のそれ――人混みにもかかわらず刀を抜きかけた炭治郎の腕を止めたのは、男が抱いていた小さな少女でありました。そして後ろから現れたのはその母親――夫と呼び父と呼ぶ相手が人喰い鬼の首魁であることも気付かぬ、紛れもなく人間の母親と娘の姿に、炭治郎はショックを受けるほかありません。
 そしてその間に、無惨が自分の傍らを歩いていただけの男の首筋に何気ない風で自らの爪を振るうと、男は鬼に変わって……


 今回もまた、きっちり原作2話分を消化したこのアニメ版。原作でも、沼の鬼との激闘の後にいきなり浅草に行かされるというのは違和感があったのですが、今回1話の中で描かれることでその印象が強調された気もいたします。
 もっとも、相変わらず原作で描かれていない部分、省略されている部分を補う描写は面白く、特に後半の浅草の場面は、当時の浅草の華やかさを様々な形で描いて、文字通り山出しの炭治郎が右往左往する姿をより強調していたのが、楽しいくだりでありました。
(その一方で省かれたのは、最後の沼の鬼を問い詰める炭治郎のホラー顔――精神世界の中の善逸のような顔は、作品初期ならではの描写で、これは忠実に描かなくて正解でしょう)

 そして毎回驚くほどゲスト声優が豪華な本作ですが(今回も岩田光央と皆口裕子が……)、鬼舞辻無惨は関俊彦と、実に納得のキャスティング。この声でパワハラされたら、それはいかな鬼畜でも恐縮するほかありませんから……


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 吾峠呼世晴『鬼滅の刃』第2巻 バディであり弱点であり戦う理由である者

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2019.05.16

『どろろ』 第十八話「無常岬の巻」

 イタチたちが財宝を探しに出た間に、鬼神と化した二郎丸に襲われるどろろ。間一髪駆けつけ、二郎丸を倒した百鬼丸は左足を取り戻す。しかしそこに多宝丸率いる醍醐の兵が襲来、盗賊たちは次々と斃れていく。そんな状況でも財宝に執念を燃やすイタチと、多宝丸と激突する百鬼丸。そしてどろろは……

 中一回おいて、再び舞台は白骨岬に戻った今回。前々回、どろろの秘密を知ったイタチはついに二つの地図を手に入れ、配下の盗賊たちと岬の上を目指します。残されたどろろは海辺の樹に縛り付けられたままですが――そこでどろろが目撃したのは、しらぬいの呼びかけに答え、二郎丸がその姿を変えていく様でありました。体色は白く変わり、手足と幾つもの角を生やした怪物と化した二郎丸は、手始めにどろろに食らいつく――のは体の小ささが幸いして避けたどろろですが、追いつめられるのは時間の問題です。
 が、そこに飄然と現れたのは、見覚えのある急拵えの義足――どろろを追ってきた百鬼丸であります。って、前回ラストの流れから、新しい義足をもらったものとばかり思っていたら、「おかあちゃん」呼びにデレただけか!? というのはさておき、そんな身でも陸に上がった鮫には負けない百鬼丸。突進を躱して平成ウルトラ怪獣チックに生えた角に刀を突き刺してその身によじ登ると、脳天に一撃――二郎丸を案外あっさりと倒すのでした。

 しかし、再会を喜ぶまもなく、真の敵が現れます。それは百鬼丸を追ってきた多宝丸と陸奥・兵庫、そして数多くの醍醐兵――よくこれだけの舟を持っていたものだとも思いますが、この場にいるものは一人残らず討ち取れと言う多宝丸の下知に、次々と上陸した醍醐兵が盗賊たちに襲いかかります。不意を突かれた上に数にも勝る相手を前に、次々と殺されていく盗賊たち。そんな中、ようやく地図の場所にたどり着いたイタチは、しかし仕掛けられた罠にも怖じ気付くことなく、財宝を探し始めます。
 その一方で、再び多宝丸と対峙することとなった百鬼丸。以前とは異なり、明確に百鬼丸を醍醐の敵と見なし、襲いかかる多宝丸を迎え撃つ百鬼丸ですが、しかしそれに加えて大力の兵庫と、遠距離から弓を放ってくる陸奥には、さしもの百鬼丸も大苦戦。ついに片手の刃をへし折られてしまうのでありました。

 そんな各所で繰り広げられる死闘の最中、イタチのもとにたどり着いたどろろ。醍醐兵の猛攻に盗賊たちは皆やられってしまった中、偶然、岬の中腹のお地蔵様に仕掛けられていた罠を作動させて醍醐兵に打撃を与えたどろろですが、しかし頼みの綱の百鬼丸も多宝丸たちに追いつめられている状況では、どろろもイタチも、その命は風前の灯であります。
 が――そこで思わぬ者が状況をひっくり返すことになります。それは三郎丸、そして二郎丸を殺されたしらぬい――自棄になってこの場に集まった者たちを皆殺しにしようとした彼は、自分が吹き飛ぶのも構わず、積み上げられた火薬に点火! 大爆発と土砂崩れに皆が巻き込まれてはもはや戦いどころではなく、多宝丸は撤退を宣言――いつの間にか爆発の中で深手を負っていた兵庫を連れて去って行くのでした。

 ……やがて爆発の瞬間にイタチに庇われたどろろが意識を取り戻した時、目の前にあったのは爆発で露わとなった洞窟の所狭しと積み上げられた財宝の数々――自分が探し求めてきた財宝を目の当たりにしたイタチは、喜悦の笑みを浮かべたまま、息を引き取るのでした。
 そして迎えにやってきた百鬼丸とともに、その場を離れるどろろ。この財宝をどのように使えばいいのか、財宝が自分にとってこの先どのような意味を持つかはわかりませんが――いまはここに残して、再び百鬼丸と旅に出ようと、どろろは心に誓うのでした(まあ、ちょっぴり懐に収めましたが……)


 中盤のクライマックスにふさわしい激しい戦いが繰り広げられた今回、波乱が予想された二郎丸との戦いに序盤であっさりと決着が着いたのには少々驚きましたが、その後に待ち受ける多宝丸主従との戦いは迫力十分であり――そしてそれだけに、理不尽に追いつめられる百鬼丸の叫びが胸に響きます。
 もっとも、それもこれもヤケを起こした猟奇サメ男の自爆テロで水入りとなってしまうのですが……(しかしこの調子だと醍醐を滅ぼす戦犯はサメ男なのでは)

 そしてやはり今回最も印象に残ったのはイタチの姿でしょう。初登場以来、悪党ながらどこか憎めない姿を見せてきた彼もついに退場することになりますが――最後まで改心するわけでもなく財宝への執着を見せつけ、しかし爆発の瞬間にどろろを庇う姿は、誰よりも「人間」臭かったと言えます。

 そんな「人間」たち一人一人が必死に生きようとした末に引き起こされた戦いと、その結末――ここに描かれたものは、まさに無常と言うべきでしょうか。


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2019.05.14

『鬼滅の刃』 第六話「鬼を連れた剣士」

 禰豆子を連れ、初の任務に向かう炭治郎。毎夜娘たちが消える町で、恋人を攫われた青年・和巳と出会った炭治郎は、町に残った鬼の匂いを追い、新たに娘を攫った鬼と対峙する。しかし作り出した沼の中から自在に攻撃し、しかも三体に分身した鬼に炭治郎が苦戦する中、禰豆子が割って入る……

 前回ラストの指令を受けて、ついに隊服に身を包んだ炭治郎。隊服の機能やら黒い日輪刀にまつわる噂やら、非常に説明的な台詞(いや説明ですが)で教えてくれた鱗滝は、禰豆子を入れる箱もプレゼント、炭治郎は「軽い」とえらく喜ぶのでした。
 そして布団から直に箱に潜り込んだ禰豆子に、これからはいつも一緒だよと微妙にサイコパスっぽいことを言いながら旅立つ炭治郎。鱗滝は炭治郎の襟元を直して無意味に頷いたり、肩をポンポンしてやったりと、もはや師匠というよりお祖父さん状態であります(箱プレゼントもランドセル的な……)。

 しかし正確な位置を知らされていないらしく、いまいちアバウトな感じで歩いて大きな川の近くの町にやってきた炭治郎。そこで早速、モブに半分後ろ指を指される感じで噂される青年・和巳と出会った炭治郎は、前回ラストで恋人を鬼に攫われ、彼女の父親には無駄に凄惨に鉄拳制裁されて踏んだり蹴ったりの彼から話を聞き、鬼の追跡を始めるのでした。その追跡方法がいきなり地面の匂いを嗅ぎ始めるというのは完全に不審者ですが、しかし赤い煙のようなエフェクトで描かれる匂いの描写はなかなかユニークであります。

 そんなこんなで日も暮れ、かなり大きなお屋敷の中では、家の娘・トキエが眠りに就こうとしていたのですが――何と布団の下から黒い染みが浮き出し、瞬く間に広がると、突き出た腕が布団から彼女を「下」に引きずり込むではありませんか!
 この何ともホラーな展開を察知して走り出した炭治郎は、屋敷の外にまで駆けつけると、FPS視点で刀を構えるのですが――そこだ! と刀を突き刺したのは地面。そう、今回の敵は異能の鬼、地面や壁など堅い面に沼を自在に作り出し、その中から襲ってくる血鬼術の遣い手なのであります。

 と、沼から顔を出したと思ったら、高速言語みたいな勢いで歯ぎしりをする沼の鬼(人間の頃からの癖だそうです)。炭治郎は和巳にトキエを預けると、匂い頼りに鬼を追うのですが――沼から出現したのは、同じ姿の三人の鬼! さすがの炭治郎も三人相手は勝手が違い、いくら技を放っても浅手を追わせるのがやっとの炭治郎は窮地に陥ることになります。
 さて、ここで現れた三人の沼の鬼はそれぞれ個性に違いがあるらしく、短気な奴・冷静な奴・歯ぎしりしかしない奴とそれぞれなのですが(今見てみると半天狗の原型みたいですな)、うち冷静な奴が、戦利品として喰った相手の身に着けていたもの――残念ながら和巳の恋人のものもその中に――を見せつけたことが炭治郎の逆鱗に触れることになります。

 が、冷静さを欠いた炭治郎に鬼の一人が背後から攻撃を仕掛けたとき――箱の蓋がはじけ飛び、強烈な蹴り一閃! それはもちろん箱の中から現れた禰豆子ですが――彼女は鬼に襲いかかる前に、和巳とトキエを慈しむように、二人の頬にそっと長い爪を生やした手を当てるのでした。
 実は彼女に、人間は皆家族、鬼は敵だという暗示を与えていた鱗滝。炭治郎に剣を教えるよりも凄いことをやった気がするこの暗示に背を押されるように、禰豆子参戦……


 またもや原作の2話分を、ほとんど忠実にアニメ化した今回。きっちりAパートとBパートで1話ずつ消化しなくても――とは思いますが、鬼殺隊としての炭治郎の初陣ということで丁寧に描いたと思いましょう。
 そして今回も原作に忠実な分、冒頭の鱗滝の細かな動きや炭治郎のリアクション、鬼に不安を抱く町の様子やトキエ襲撃の描写等、原作で描かれなかった――あるいは一コマ二コマで処理されていたものを丁寧に描いているのはやはり好感が持てます。

 映画化分が終わったことで少々心配していたクオリティの方も上々で、意味が分からないアップでの鬼の独白や、ベタなBGMの流し方などひっかかる部分はあるものの、まずは安心して楽しむことが出来る内容でした。


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2019.05.08

『どろろ』 第十七話「問答の巻」

 死人の欠損した部位を作り続ける寿海の前に現れた百鬼丸。百鬼丸の成長を喜ぶ寿海だが、戦いのために義足を欲しいという言葉に顔を曇らせる。戦い続ければ傍らには誰もいなくなるのではないかと恐れる寿海に、既にいると答える百鬼丸。一方、景光は多宝丸に百鬼丸討伐を命じていた……

 どろろの方は一休みして、百鬼丸側の物語が描かれる今回。予想通り重苦しい内容となりましたが、ある意味本作のテーマを問い直したともいえる、重要なエピソードであります。

 百鬼丸を送り出した後も、ただ一人、死人の欠損した部位を補っては弔い続けている寿海。戦場荒しの人々の言葉によれば、生きている人間の治療よりも死人を優先しているようですが――そこに突如現れ、人々に襲いかかった獣のような妖は、何故か寿海には襲いかかろうともしない様子を見せます
 と、そこに現れて妖を叩き斬ったのは百鬼丸。しばらく離れていた間に幾つもの体の部位、聴覚や声を取り戻し、笑みさえ浮かべることができるようになった百鬼丸を大歓迎する寿海ですが、戦いのために義足が欲しいという言葉には複雑な表情を見せます。そんな寿海に問われ、旅の中で知った自分の出生の秘密と家族の存在を語る百鬼丸ですが――あまりの無惨な宿命に驚き悲しむ寿海は、戦いの中で百鬼丸が妖だけでなく人も殺めたことを見抜き、足はやれないと答えるのでした。

 自分にはお前を救えぬと、百鬼丸にとっての地雷ワードを口にする寿海と、それでも頑なに足を求める百鬼丸。理由を尋ねる寿海に、百鬼丸は体が欲しいと答え、何故欲しいのかとさらに問われると、俺のものだから、鬼神は全部殺すと答えます。それはある意味もっともとしても、しかし戦い続けた果てに、百鬼丸の周囲には屍のみが在るのではないかと危惧する寿海に――誰とは言わぬまでも――百鬼丸は既にいる、と答えるのでした。
 そんな中、合戦場に生えた樹木の変化・屍木の実から無数に現れる冒頭の妖たち。それを容赦なく叩き斬る百鬼丸の姿に、寿海は川から彼を拾い上げ、体を与えたつもりになっていた自分も、結局は彼を修羅の川に流した鬼神と同じだったと嘆じるのですが――しかし戦いを終えて旅立つ百鬼丸は、いまだに名乗らぬままであった寿海に対し、「おっかちゃん」と呼びかけるのでした。

 一方、醍醐領では、自分の母・縫の方が昏睡状態から目覚めたにもかかわらず郊外に現れた妖怪退治を優先する多宝丸。そこで待ち受けていた、屋敷の人間たちを餌に子供たちを育てる鼠の妖を倒した多宝丸は、非情にも親を慕う子もろとも妖たちを焼き払うように命じるのでした。
 そしてどろろの行方を突き止めた父の命により、軍勢を率いて出立する多宝丸。もう二度と剣を情で鈍らせないと誓う多宝丸と百鬼丸、そしてどろろたちの運命は白骨岬で交錯することに……


 寿海という本作では常識人の部類に入る――しかし極めて悩み多き人物の目を通じて、百鬼丸が戦う理由と、その是非を問い直した今回。
 奪われたものを取り返すのはもっともであり、そして彼に国一つを背負わせた責は景光が負うべきと考えながらも、しかし戦い続けることで百鬼丸が鬼神に――屍山血河を往くだけの存在になってしまうことを恐れる寿海の悩みは、醍醐家の人々とは別のベクトルで、百鬼丸の戦いの危険性を語っていると言えるでしょう。
(同様のことは琵琶丸も以前語っているのですが、親代わりである寿海の方がより切実に感じられます)

 しかし少なくとも百鬼丸が孤独ではないことを我々はよく知っています。そして彼が決して戦うだけの存在でもないこともまた。
 今回のラスト、百鬼丸の言葉が、寿海自身気づかぬままに失われかけていた彼の人間性を甦らせるのは、その現れというべきでしょう(これが冒頭、自分が百鬼丸の何なのか悩む寿海の言葉に対する答えにもなっているのが実に心憎い)。

 そしてその一方で、百鬼丸と対照的に心を失っていくように見える多宝丸。人を喰らう妖とはいえ、何のためらいもなしに親子を(その情を利用するような形で)葬ったのは、その象徴というほかありません。
 その多宝丸と百鬼丸が再びぶつかる時、何が起こるのか。以前は最悪の状況だけは避けられましたが、さて今度は――次回も大いに気になるところであります。


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2019.05.05

『鬼滅の刃』 第五話「己の鋼」

 異形の鬼を倒し、最終選抜の七日間をくぐり抜けた炭治郎。最終選抜を突破した炭治郎を含む四人は、日輪刀を造るための玉鋼を選ぶように告げられる。そして鱗滝と禰豆子のもとに炭治郎が帰って15日後、炭治郎の日輪刀を手に刀鍛治の鋼鐵塚が現れる……

 水の呼吸の壱ノ型 水面斬りで異形の鬼・手鬼の首を断った炭治郎。その瞬間、手鬼の脳裏をよぎったのは、47年前に鱗滝に敗れた瞬間であり、そして鬼になったばかりの自分の姿――誰よりも慕っていた兄を食い殺してしまった自分の姿でありました。その末期の悔恨の中身まではわからぬものの、兄に手を差し伸べたような形で事切れた手鬼から悲しい匂いを感じ取った炭治郎は、その手を握ると、後生の安らかならんことを祈るのでした。

 と、その後も数々の鬼との戦い(その中で禰豆子を元に戻す方法を聞くも収穫なし)をくぐり抜け、「切り抜けた……」と犬塚信乃のようなことを言いながら七日目の夜明けを迎えた炭治郎。そして藤の花が咲き乱れるスタート地点に戻った彼が見たものは、あの双子と自分以外の三人の少年少女――無言で蝶々と戯れる美少女と、異常にネガティブなことをブツブツ呟く金髪と、異常に目つきと態度の悪いモヒカンのみでありました。
 この四人の最終選抜合格者に対して、淡々と新人向けの業務連絡を行う双子ですが、ここでモヒカンの態度の悪さが大爆発、刀を今すぐよこせと、双子の一人を殴りつけて凄むのでした。が、ここで蛮行を見過ごせないのが長男気質の炭治郎――今すぐ手を離せ、さもなくば折る、というこれはこれでハードな二択を突きつけると、応じない相手の手首をバキッと握りつぶすお仕置きを食らわせるのでした(家で弟たちにどのようなしつけをしていたのか……)。

 しかしその騒ぎも流した双子は、一同に刀のための玉鋼を選ぶように命じます。唯一鬼の首を滅することが出来る武器・日輪刀の原材料となる玉鋼ですが、いきなり鉱石の段階で選べと言われてもわけがわからない中、それでも炭治郎は自分の鼻を頼りに一つの鉱石に手を伸ばすのでした。
 さて、日輪刀の仕上がりは約10から15日後ということでその場は注文のみ、文字通り這々の体で狭霧山に帰ってきた炭治郎ですが――到着してみればすでに日も暮れた中で彼を出迎えたのは、よくわからないうちに目覚めた禰豆子と鱗滝であります。涙ながらに彼を出迎えた鱗滝から、炭治郎は、禰豆子が人を喰う代わりに眠ることで体力を回復しているのかもしれないと聞かされるのですが……

 それはさておき、15日後に炭治郎を尋ねてきたのは、三度笠の回りに幾つもの風鈴をぶら下げた異様な風体の男。しかも傘の下の顔はほっかむりとひょっとこの面! と、初登場の時点からインパクト満点の三十七歳児・鋼鐵塚の登場であります。ビジュアルの異常さとは裏腹に非常なイケボの鋼鐵塚ですが、全く相手の言うことを聞かずに一方的に自分の言いたいことだけをまくしたてるというマニア特有のナニっぷりを発揮、空気を読まないことでは結構負けない炭治郎を圧倒いたします。
 何はともあれ、その別名「色変わりの刀」のとおり、持ち主によって色が変わるという日輪刀が炭治郎の手でどのような色に変わるのか、固唾を呑んで見つめる炭治郎・鱗滝・鋼鐵塚の三人ですが――その変わった刀身の色は漆黒でありました。刀身が鮮やかな赤になると思っていたのに、と理不尽な怒りを爆発させてウザ絡みする三十七歳児に辟易していた炭治郎ですが、そこに突如飛び込んできたのは、山崎たくみの声で喋る鴉。北西の町で毎夜毎夜少女が消えているという事件の調査を命じられた炭治郎は、鬼狩りとして最初の仕事に挑むことに……


 冒頭の回想シーンでの鱗滝と手鬼の対決を除けば、アクションシーンはほとんどなしの今回。物語の動きとしては静かでしたが、鬼殺隊の階級や伝達役の鎹鴉などのシステムや日輪刀の説明、血鬼術の解説など、本作独自の様々な概念が説明された回であります。
 そしてキャラクターの方も、まだまだ顔見せ的な扱いではありますが、徐々に各人の個性が表れてきたという印象。三十七歳児はいきなりフルスロットルでしたが……

 ちなみに今回は原作の第8話・9話に該当する内容ですが、上で述べた鱗滝と手鬼の対決、その後の炭治郎と鬼たちの戦い、玉鋼を匂いで選ぶくだり(あと、何気に三十七歳児のウザ絡みを力づくで外す炭治郎)など、原作にないオリジナルシーンが少しずつ追加されているのが面白いところ。原作の流れさえ踏まえていれば、細かいアレンジや補足は大歓迎なので、この調子で進めていただきたいものです。
 もっとも、個人的にはもっとスピードアップしてもよいとは思いますが……

 ちなみに今回までが『兄妹の絆』で劇場公開された部分。この先、作品のクオリティがどうなるか、少々気になるところではあります。


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2019.04.30

『どろろ』 第十六話「しらぬいの巻」

 父が白骨岬に隠した財宝を狙うイタチ一味に捕らわれたどろろ。岬に向かうため、しらぬいという少年に舟を頼むイタチだが、しらぬいはイタチたちを舟を引く鮫・二郎丸と三郎丸の餌にしようとする。イタチと協力して三郎丸を倒し、上陸したどろろだが、ついに背中の秘密を知られてしまい……

 前回のラスト、百鬼丸についていけないものを感じて離れたところで、父・火袋のかつての部下・イタチとその配下に見つかってしまったどろろ。火袋を裏切って侍になったはずが、結局合戦で捨て駒にされてしまったイタチは、野盗に戻ると決め、以前から怪しいと思っていた火袋の隠し財産を見つけようとしていたのです。
 しかしその地図の半分は、今は亡きどろろの母・お自夜の背中にあったはず――と思いきや、墓を暴いて背中を見たというのですからひどい話。その地図から財宝が白骨岬に埋められていることを知ったイタチは、その先の在処を知るどろろを捕らえて強引に岬に行こうとするのでした。

 そして岬に行くには舟が必要と、海辺の村を訪れた一行ですが――しかし村は何者かに襲われ、至る所に血しぶきが飛び散った見るも無惨な有様。もやっていた舟も全て壊されていたのですが――そこに舟を持っているという片腕の少年・しらぬいが現れます。何やら異様な雰囲気をまとったしらぬいに警戒心を抱くどろろですが、イタチはいざとなれば斬ればいいと、どろろを連れ、手下たちとともに二艘の舟に乗ってしまうのでした。
 しかししらぬいは一人、しかも片腕の彼が、どうやって二艘の舟を漕ぐのか――と思いきや、彼が二郎丸・三郎丸と呼ぶ二匹の巨大な鮫が、水中から舟を引くというではありませんか。異様なシチュエーションに引く一行ですが、しらぬいはそこで自分が(原作と違い)片腕の理由を、二郎丸と三郎丸に餌としてやってしまったからだと語ります。おかげで人肉の味を覚えてしまったという鮫たちに、女子供を攫ったり、村を――そう、先ほどの惨劇の村を――襲ったりして人を食わせてきたというしらぬい。相手が完璧にシリアルキラーのサイコパスだったことに気付いた時には既に遅く、イタチの子分たちが乗った舟は鮫に襲撃され、無惨にも餌食にされるのでした。

 と、一度にたくさん食わせると腹を壊すと、三郎丸を見張りに残し、自分は二郎丸とともにその場を離れるしらぬい。しかし舟を漕ぐ手段はなく、そして海中の鮫を攻撃する手段もない状況で、さすがに海千山千のイタチも絶望に沈むのですが――そこで立ち上がったのはどろろであります。自分は両親を亡くしてたった一人になっても、決して諦めずに生きてきたのに、大の男たちが何やってやがる! と、あたかも火袋写しの叱咤が、イタチたちの魂に火をつけます。
 さらに自ら海中に飛び込み、囮になるどろろ。どろろを追って海面に現れた三郎丸に、待ち受けていたイタチたちが一斉に刀を突き込み、さしもの巨大鮫も海を血に染めて浮かび上がります。そしてこういう時はさすがは野盗と言うべきでしょうか――イタチは三郎丸の死体を囮にしらぬいを誘き出し、捕らえて袋叩きにかけるのでした。

 しらぬいを見逃すように制止するどろろ。しかし今度はどろろの方が、イタチに財宝の在処を問い詰められることになります。そして体のどこかに隠しているんだろうと服を引っぺがされるどろろですが――そこで初めてどろろが女だと知るイタチ(てっきり知っていたものかと……)。非常に嫌な感じの絵面ですが、前を押さえてうずくまった彼女の背中が焚き火で温められて地図が浮かび上がったことで、ついにイタチは財宝の在処を知ることになります。
 翌朝、意気揚々と財宝を掘り出しに向かうイタチ一行。その一方でボロボロになった状態で、残った二郎丸に復讐を誓うしらぬい。その言葉に応えるように、黒く輝く二郎丸の目――それこそは妖の証であります。

 その頃、消えたどろろを追う百鬼丸ですが、前回義足を破壊された状態で歩くのもやっと。と、苦労しいしい歩く彼を見かけた僧が、百鬼丸に声をかけます。失われた体の一部を与えてくれる医師がいると……


 百鬼丸は冒頭とラストのみの登場の、実質どろろ主役回なのですが――ほとんど『悪魔の沼』状態のしらぬいの強烈なインパクトがほとんど全て持っていった印象の今回。原作で描かれた過去のあれこれ抜きに、いきなり自分の片腕を鮫に食わせるというサイコパスっぷりにはドン引きであります。
 あるいはしらぬいの過去は今後描かれるのかもしれませんが、次回はどうやら百鬼丸と寿海の再会が描かれる様子。相変わらず悩み多そうな寿海が今の百鬼丸を見てどう思うか、また重い内容になりそうであります。


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2019.04.29

『鬼滅の刃』 第四話「最終選別」

 鱗滝に送り出され、最終選別が行われる藤襲山に向かう炭治郎。鬼たちが幽閉されている山で七日間生き延びるという試験に挑む炭治郎は、早速自分の技が鬼に通じることを確かめるが、さらに無数の手を持つ巨大な鬼と遭遇することになる。鱗滝に恨みを持つ鬼は、錆兎と真菰を喰ったと語る……

 前回大岩を真っ二つにしたことで、鱗滝から認められた炭治郎。岩を斬れると思っていなかったと何気なく酷いことをいう鱗滝ですが、儂がしてやれるのはここまでと、炭治郎に心づくしの具だくさんの鍋と魚を振る舞う姿には、心から炭治郎を案じていることが窺えます。修行中は粗食だったのか、その鍋をご馳走だと嬉しそうにがっつく炭治郎ですが、食べれば食べるだけ力になる成長期の炭治郎を見ながら、鬼も人を食えば食うほど強くなり、様々な術を操るようになると語る鱗滝さんは何気にデリカシーがないと思います。
 そして炭治郎に呪いの――いや厄除の狐面を与える鱗滝。さらに自分とお揃いの羽織を着せてやり、炭治郎を送り出すのですが――別れ際に炭治郎が錆兎と真菰のことを口にするのにギョッとする鱗滝なのでした(一緒の山にいて気付いてなかったのか……)

 さて、無数の非常に美しい藤の花が狂い咲く、その名も藤襲山にやってきた炭治郎。そこには、茫洋とした雰囲気の美少女やら目つきが異常に険しいモヒカンとか、頬っぺたを晴らした金髪やら、いかにも一癖も二癖もありそうな少年少女が集まっております。
 そしてそこに現れたのは、揃いの着物を着た瓜二つの――髪の色のみが白と黒で異なるだけの――二人の子供。彼/彼女は、弱点である藤の花で鬼を閉じ込めたこの山で、七日間サバイバルすることが鬼殺隊入隊のための最終選別であることを告げるのでした。

 まずは最初の晩を生き延びるため、最も早く陽が当たる東側(そういうものか……?)を目指す炭治郎ですが、しかし早速二匹の鬼に遭遇。これは俺の獲物だと争いながら同時に襲ってくる鬼たちを迎え撃つ炭治郎は、初お目見えの水の呼吸の太刀一閃――鱗滝に渡された日輪刀の一撃は、鬼を一瞬のうちに塵に変えるのでした。
 が、己の修行の成果を確認したのも束の間、凄まじい悪臭とともに現れたのは、人間の倍以上の巨体から無数の腕を生やした異形の鬼であります。既に一人犠牲になり、もう一人があわやというところに駆けつけた炭治郎は、鬼の腕の何本かを切り落とすのですが――鬼の方は、炭治郎が身に着けた厄除の面に見覚えがある様子であります。

 実はこの鬼こそは、今を去ること47年前の慶応年間(ということは本作の舞台は大正のごく初期か)に鱗滝に捕らえられた鬼。本来であれば小物の鬼しか入れられず、しかも選別の中で倒される鬼も少なくないだろうこの山で、桁外れの長寿――というよりどう考えても鬼殺隊の不手際としか思えない存在です。
 が、最大の問題は、この鬼が50人は選別に来た子供たちを喰っていることであり――そして何よりも、そのうちの実に14人が鱗滝門下であることであります。さらに頼まれもしないのに、特に印象に残っているのは、宍色の髪の少年と花柄の着物の少女――錆兎と真菰だと言い出す鬼。厄除の面こそが鬼にとっての目印であったというのは皮肉どころではない大問題――というのはさておき、その言葉に炭治郎が怒らぬはずはありません。

 が――怒りに冷静さを欠いた炭治郎は鬼の腕の攻撃をもろにくらって一瞬失神。さらに鬼の手が襲いかかる中、幻なのか亡魂か、死んだ弟の呼びかけで意識を取り戻した炭治郎は、辛うじてこれを躱すことに成功します。そして反撃を開始した炭治郎は、土の中から奇襲をかけてきた腕もジャンプ一番躱すと、文字通り手を尽くしてしまった肉薄。しかし首の周りに幾重にも腕を巻き付けた鬼のガードは、かつて錆兎すら刀を折られた鉄壁なのですが――しかし炭治郎の全集中はその隙を見抜き、壱ノ型 水面斬りが鬼の首を切り裂くのでした。


 原作の第6話・第7話をベースとした今回は、これまで同様に基本的に原作に忠実な内容ながら、諸所にオリジナル――というより原作を補完する要素が描かれた回。その最たるものが冒頭の炭治郎に鍋を振る舞う鱗滝で、その後の揃いの羽織を用意してやるのも合わせて、彼の優しさが窺われる場面であります。
 また、今回初めて本格的に描かれた(炭治郎の)水の呼吸の太刀も、波のエフェクトを絡めた刀の動きが美しく、なるほど動くとこうなるのか、と改めて感心。これは今回のアクションシーン全般に言えることですが、原作初期の比較的書き込みの薄い時期を、きっちりと映像として補完してくれたという印象があり、これまでで最も見応えのあった回だと、素直に思います。

(ちなみに手鬼が喰った鱗滝の弟子の数を勘定するシーン、原作だとそこまで妙には見えないのですが、アニメだとわけのわからない指の出し方をしていて、それがまた逆に異常性が出ていて感心いたしました)



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2019.04.24

『どろろ』 第十五話「地獄変の巻」

 一夜明け、百鬼丸が鯖目を見張る間に村に聞き込みに出かけるどろろ。しかし村の倉に忍び込んだどろろは村人に捕らえられ、幼虫たちの犇めく地下に落とされてしまう。一方、この村を守るために鬼神を受け入れたという鯖目に対し怒りを爆発させた百鬼丸は、襲いかかるマイマイオンバに挑むが……

 一夜が明けて、お互い何事もなかったかのように朝餉の膳を囲むどろろ・百鬼丸と鯖目。鯖目を見張るという百鬼丸を残し、村に聞き込みに出かけたどろろは、これまでに登場した貧しく殺伐とした村とは正反対の、物だけでなく心も豊かな――ちょっと過剰なくらいに和気藹々と暮らす――人々の姿でした。
 見ず知らずの自分にまで団子を振る舞ってくれる老婆に感心するどろろですが、しかしあの廃寺について尋ねた途端に老婆の態度はよそよそしくなり、周囲の村人たちも剣呑な視線を向けてくるようになります。そんな中で更に奧に足を踏み入れたどろろは、村はずれの林の中に蔵を見つけて忍び込むのでした。

 そこに収められていたのは米俵(さりげなくルパン三世のようなことを言うどろろ)だけかと思いきや、床に隠し扉を見つけてその中を覗き込んだどろろ。その彼を待ち構えていた村人たちは下に突き落とし、閉じ込めてしまうのでした。そして闇の中に取り残されたどろろの周囲に無数に光る、あの巨大な幼虫たちの赤い目。襲いかかる幼虫たちから必死に逃げ出すどろろですが――しかしついに追い詰められて絶体絶命のその時、妖しげな光とともに現れたのは――あの妖怪小僧!
 どろろは自分に優しくしてくれたから助けるという妖怪小僧の頭が割れると、そこから飛び出したのは、幾人もの子供の姿をした光。幼虫たちを抑えるその光の一人を通じて、どろろはあの寺で起きた出来事を知ることになります。尼僧は鯖目によって殺された末に寺は焼かれ、そしてマイマイオンバの餌にされた子供たち。無惨な過去に涙するどろろは、やけに説明口調で語る子供の霊に導かれて、地下からの出口に向かうのでした。

 一方、館を出て村を見下ろす高台に向かった鯖目を追う百鬼丸。彼を待ち受けていた鯖目は自分のことを語り出します。祖先が代々守ってきたこの地に生まれ、今に至るまで、この村の中で生きてきた鯖目にとってはこの村が全てであること。しかし戦乱の中で落ち武者や獣たちに荒らされ、村が無惨な状態となったこと。そして村に現れたマイマイオンバの言葉に従い、彼女とその眷属が村に居着くことを許し、外敵は彼女たちの餌食となり、村は平和と豊かさを取り戻したことを(そしてマイマイオンバと結ばれたことを)。
 そして村を守るためと、羽化したばかりのマイマイオンバの眷属を百鬼丸にけしかける鯖目。しかし鬼神に縋り周囲を犠牲にして生きる鯖目の姿が、醍醐景光や多宝丸、母の姿と重なり、思い切りトラウマを刺激された百鬼丸の怒りが爆発します。次々と眷属を叩き斬る百鬼丸は、邪魔だと鯖目を山から蹴り落とし、自分を捕らえて飛び上がったマイマイオンバ(の眷属?)にも斬りつけるのですが――百鬼丸を落として飛び去ったその一匹が、夕刻迫る中、櫓の上で見張る村人の松明に直撃し、櫓は大炎上。そのままよくわからないくらいの勢い(どろろが油の壺をひっくり返しておいたせい、ではないか……)で村に火は燃え移っていくのでした。そして業火の中に村の繁栄が消え去っていく中、呆然と立ち尽くす鯖目の前で、あれほど和気藹々としていた村人たちは醜い争いを始めるのでした。

 そんな村を置いて、どろろが子供の霊から聞いたマイマイオンバの居所――湖に単身向かう百鬼丸。水中から出現し、自分を掴んで飛び上がったマイマイオンバに対し、百鬼丸は壊れた自分の片足に仕込んだ油の袋から放った油に火をつけ、マイマイオンバを焼き払うのでした。
 そして百鬼丸は背骨を取り戻すのですが――しかしその代償に焼け落ちた村の惨状に心を痛め、自分たちのせいではないかと悩むどろろと、関係ないと言い放つ百鬼丸。そんな百鬼丸と文字通り距離を置いてしまったどろろの前には、あのイタチが現れます。どろろの持つ宝の地図を見せろと言いながら……


 子供たちを生贄にして自分たちの繁栄を望む村と、その繁栄が失われた途端に本性を剥き出しにして争う人々。まさに「地獄変」と呼ぶに相応しいものが描かれた今回ですが――しかし結局プチ醍醐景光、プチ醍醐領が描かれただけという印象がないでもありません。
 もちろん、醍醐領では状況を客観的に見れなかった二人が、同様の場所である鯖目の村を訪れその顛末を目にすることで、改めて百鬼丸の所業の是非を問うという意味はあるのですが――その分、鯖目とマイマイオンバの(異常な)関係性がスルーされてしまったのはちょっと惜しいな、という気がします。

 また、鬼神に子供たちを生贄にした村人たちに怒っていたと思ったら、その鬼神を滅ぼしたことで村をも滅ぼしてしまった百鬼丸に怒るどろろも、何だかすっきりしないところであります。これはこれで非常に人間らしいといえばその通りなのですが……


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2019.04.22

『鬼滅の刃』 第三話『錆兎と真菰』

 鱗滝の下で鬼殺隊入隊のための修行を始める炭治郎。厳しい修行の末、もう教えることはないと鱗滝は告げ、巨大な岩を刀で斬るよう命じる。岩を斬れず悩む炭治郎だが、その前に、狐面をつけた少年・錆兎と不思議な少女・真菰が現れる。二人との修行の末、ついに炭治郎と錆兎、最後の対決の日が……

 冒頭、鱗滝の声で説明される鬼殺隊の存在と鬼の生態(柱たちがシルエットになっているのは格好良いのですが、漫画の方ではそれなりに目立っていたのにかえって目立たなくなったしのぶと小芭内)。
 冷静に考えると作中で鬼殺隊の内容がしっかりと説明されるのはここが初めてなのですが、鱗滝の声で、鬼殺隊を率いる者も、鬼を創り出した者も不明と語るのはちょっと違和感が……

 それはさておき、日記をつける炭治郎のモノローグという態で展開していく今回。山下りや刀の素振りといった地道な基礎訓練から、鱗滝による稽古、呼吸法と型の指導、さらには「水」の剣士らしく、水に一体になるための滝行――と、最後の描写はアニメオリジナル。水と一つになるのだ、と滝壺に叩き落とされ、滝に打たれる――とかなり無茶な修行であります。

 そして修行開始から瞬く間に時間は過ぎて一年後、もう教えることはない、と言い出す鱗滝。もちろんこれで免許皆伝ではなく、あとは実践、とばかりに鱗滝が炭治郎を連れていったのは、古びた注連縄がかけられた、二抱えはありそうな巨大な岩――この岩を斬れたならば、鬼殺隊士への最終選別に行くのを許可するというのであります。
 何だかこれを斬ったら悪いものの封印が解けそうで心配――というのはどうでもいいとして、岩なんて斬れるわけがないし刀が折れる、三十七歳児が殺しにやってくる(のはまだ先)という炭治郎の困惑をよそに、鱗滝は一切指導をすることなく、炭治郎は独力で岩に挑んだものの、虚しく半年が過ぎるのでした。

 それでも全く岩は斬れず、自分を奮い立たせるためにガンガン頭を岩に叩きつける炭治郎の前に、うるさい! と非常にもっともなツッコミとともにあらわれたのは、口元から右頬にかけて傷のついた狐面を被った宍色(黄色がかった赤)の髪を持った少年・錆兎であります。
 鼻でも匂いを感じ取れず、突如として現れた錆兎に驚く炭治郎ですが、「男なら」「男に生まれたなら」と、やたらと「男」を連呼する錆兎はいきなり木刀で斬りかかってくるのでさらに困惑。自分は真剣を持っているのに――と躊躇う炭治郎を一笑に付す錆兎は、木刀でもって炭治郎を圧倒、凄まじい打上げで炭治郎の顎を痛打してKOするのでした。

 そして意識を取り戻した炭治郎の前に現れたのは、狐面を横被りした少女・真菰。堅物の炭治郎が頬を赤らめるほどの可愛らしい真菰が語る内容は、炭治郎の動きや呼吸法に対する指摘であります。実践、いや実戦第一の錆兎と、言葉で適切な指示を与える真菰(しかし全集中の呼吸の説明で、結局死ぬほど鍛えるしかない、というあたりは実にアバウト――いや、結局真実だったのですが)の指導を受け、また半年が過ぎることに……
 しかしその中で腕を上げ、ついに真剣を抜いた錆兎と対峙した炭治郎。二人の勝負は一瞬、炭治郎の刃が真っ正面から錆兎の面を打ち、狐面を斬り――そしてなんとも言えぬ笑みとともに錆兎は、そして真菰は消え、そこに残ったのは真っ二つとなった岩だったのでした。


 原作の第4話・第5話を、またもや非常に忠実にアニメ化した今回。しかし細かい修行のディテールはかなり補われていた印象(しかし型の指導、鱗滝さんが何も教えてないのに適当にやらせているように見えてしまう……)ですし、上で述べたように、アニメオリジナルの修行として「水」の流派らしいものが加わっていたのも面白いところであります。
 そして今回のタイトルロールである錆兎と真菰ですが――特に印象に残ったのは錆兎の存在感。原作では炭治郎と比較的年齢が近い印象だったのですが、こちらでは完全に彼よりも上に感じられたのは、これはもう演じた梶裕貴の力によるものではないかと思います。

 しかし冒頭で述べたように日記形式であったから仕方ないとはいえ、錆兎が最後に浮かべた笑顔は、まさにそのものの表情が描けていただけに、言葉での説明は要らなかったのではないかなあ――とは思います。



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2019.04.21

『どろろ』 第十四話「鯖目の巻」

 自分の背中に隠された秘密を知り、複雑な心境での旅の途中、幽霊に巨大な赤子の妖怪を押しつけられたどろろ。途中、焼け落ちた寺の跡で赤子は消え、そこで二人はこの辺りを治める鯖目に声をかけられる。誘われるまま彼の屋敷の客となった二人に、その晩、奇怪な怪物が襲いかかる……

 前回、温泉に入ったどろろの背中に浮かび上がった地図のようなもの。どろろの体温が上がった時に浮かび上がるそれは、父・火袋が蓄えた、貧しい人々が立ち上がる時のための隠し金の在処を記したものだったのであります。お自夜の背中と半分ずつ描かれたものが合わされば、おそらくは莫大な金が見つかるはず――しかし母の背中のそれはどろろの記憶にしかなく、どろろは自分の背中を見られない(そしてその存在を知る百鬼丸と琵琶丸は目が見えない)。
 よく考えられたものですが、琵琶丸はその金が世を動かす大きな力の源になるかもしれないと、微妙に不穏なことを言い出すのでした(初めから見ていないと、どう考えても黒幕な言動の琵琶丸であります)。

 そんな琵琶丸と別れ、また鬼神退治の旅に出る二人ですが、その途中、人気のない道で聞こえてきたのは、買うて下され、という声。そこに現れたのは、巨大な赤子めいた妖怪を連れた、不気味な尼のような姿の幽霊であります。鬼神ではないとスルーの百鬼丸ですが、何故か妖怪小僧にピカピカした感じの声で「まんままんま」と懐かれた彼は、妖怪をおぶって――いや妖怪に抱えられて旅を続ける羽目になります。

 そんな中、焼け落ちた寺の廃墟にたどり着いた二人。そこで百鬼丸は尼の幽霊に導かれて油が撒かれた跡を見つけ、どろろは相変わらず妖怪小僧にまとわりつかれていたのですが――そこで突然妖怪は姿を消してしまいます。と、そこに現れたのは、ここには夜になると妖が出ると語る鯖目と名乗る男――その名の通り、魚のように丸く、瞬きをしない鯖目に厭な印象を受けるどろろですが、この辺りの村を治めているという彼の屋敷に招かれ、歓待を受けることになります。

 その宴席で、あの焼け跡はかつて孤児を集めては牛馬のように働かせた末に人買いに売っていた尼僧の寺であり、ある日雷が落ちて尼僧や子供もろとも焼け落ちてしまったのだ、と語る鯖目。しかしそれであればあの油の跡は、とどろろは疑念を抱くのでした。
 何はともあれ、その晩は屋敷の広い部屋にただ二人泊まることとなったどろろと百鬼丸。相変わらず鉄面皮の百鬼丸に、微妙に怖がってるどろろと、何となく微笑ましいムードの二人ですが、その時、天井の梁に蠢く不気味な影が――それは、人間以上の大きさの芋虫に、人間の手を四本生やしたようなおぞましい怪物!

 二人めがけて襲いかかってきた芋虫を迎え撃ち、芋虫の放つネバ糸に刀を封じられたりはしたものの、すぐに振り払って芋虫を叩き斬った百鬼丸。が、倒したかに思われた芋虫が咆吼を上げたとき、外の戸が激しい風とともに吹き飛び、現れたのは巨大な蛾の鬼神――マイマイオンバであります。その羽ばたきから放たれる鱗粉に二人がたじろいだ隙に、マイマイオンバは芋虫を連れて姿を消すのですが――人間の女に変じた鬼神は、屋敷の外で待っていた鯖目のもとに現れます。どうやら鯖目は彼女の正体を知った上で側に置き、誘い込んだ人間を餌として与えていたようですが……


 これまでで一番ホラームードが強かった今回、妖怪小僧を連れて現れる尼僧の幽霊の、ねじれ細ったような異形ぶりもコワいのですが、夜中に天井から襲ってくる人間大の芋虫というのは、実に実に厭なシチュエーションであります。その一方で、異形ながら赤子の要素を多く持つ妖怪小僧は、見ているうちにだんだん可愛くなってくるのですが……

 それはさておき、どろろたちが先に出会った妖怪が実は敵ではなく、そしてその妖怪を悪役に仕立てようとする人間の側が、実は鬼神と繋がっている――というのは、万代様とシチュエーション的に被るお話。もっとも今回の場合、鯖目とマイマイオンバの間に恋愛感情があるようですが、これはこれで以前に絡新婦の話があります。
 これらのエピソードとどのように差別化してみせるのか――おそらくそれは、マイマイオンバに子供がいるということに繋がるものなのでしょう。そしてそれはどろろと母の関係に重ねられるのでは――という気がしますが、さて。


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