2016.06.20

『コンクリート・レボルティオ 超人幻想』の結末を迎えて

 『コンクリート・レボルティオ 超人幻想』が最終回が放映されました。昭和を思わせる文化風物歴史を持ちながらも、幾多の「超人」が存在するという点で決定的に異なる「神化」の世界を舞台とした物語の結末を迎えて、今回は、思い浮かぶままに書かせていただきます。

 世界の裏に潜む何者かの陰謀によって、あるいは己の背負ってきた過去と宿命によって、追い詰められてきた末に、ついに社会に対して宣戦布告するに至った主人公。彼が最終的にいかなる運命を辿ったか……
 その具体的な内容について、ここでは触れません。しかし、一抹の寂しさは否めないものの、物語はこの上ない大団円を迎えたと言うことはできます。

 幾多の超人たちが、それぞれの主義主張や権力や社会との距離感によって二手に分かれ、激しく激突する。あるいは、現実世界の歴史を彩る事件の裏側に存在した超人たちが陰謀に翻弄され、それぞれの形で社会と対峙する。
 本作は、そんな『シビル・ウォー』や『ウォッチメン』と大きく重なる要素、物語構造を(意図的に)多分に持ちながらも、しかし結末において、大きく異なる着地を見せることとなります。

 本作の結末で描かれたもの、それは超人と幻想(物語/虚構)の一つの輝かしい「勝利」の姿であります。それは、人間と現実に対する勝利では、もちろんありません。逆に、それを、その可能性を嗤い、否定するものに対する勝利であります。
 言い換えればこの結末で描かれたものは、まさしくタイトル通り超人と幻想の存在の意味・意義。この点において本作は――いささか誤解を招く表現かもしれませんが――先行する物語より「大きな」ものを描くに至ったとすら感じられるのです。


 確かに表面的な展開や着地点自体は、第一期のクライマックスのような直接的なカタルシスあるものとはまた異なるものであり、その点では不満や違和感を感じる方がいることもわからないではありません。
 しかしこの結末は、間違いなくこの第一期の展開の延長上にあるものであり、そしてそれはついに物語の世界を超え、現実の世界に、我々の世界にまで届いた……そう感じます。

 そしてそこに込められているものは、原作者でありメインライターである會川昇が、これまでその作品の中に時に直截的に、時に間接的に描いてきたものの集大成と言ってよいでしょう。
 虚構の物語(これは「娯楽」と言い換えてもよいでしょう)の中で現実の過酷さを浮き彫りにし、そしてそれと同時に、現実を否定したり逃避するのではなく、それ乗り越える力としての虚構を描くという試みの……


 本作は、鏡合わせの虚構の世界の歴史――それもこれまでのフィクションでは一瞬の空白期であった時代――を描くことを通じて、現実の世界のそれを再構成し、浮き彫りにしてみせてくれました。
 そしてそれと並行して虚構の世界で実在した超人たちを描くことを通じ、現実世界の物語に我々がこれまで見たもの、託してきたもの、言い換えれば(歴史上の事件の表面には表れない)精神性までも浮き彫りにしてみせたと言えるでしょう。

 そしてそれが同時に、物語の力をどこまでも信じ、謳い上げたものであったことが、私は何よりも嬉しく、希望に満ちたものとして感じられました。


 虚構の存在を通じて現実の在り方を描く物語を伝奇と呼ぶとすれば、本作はまさしく伝奇であり、そして同時にその伝奇というものの意味までも見せてくれた極めつきの作品である――些か牽強付会に見えるかもしれませんが、自信を持って言えるところであります。


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2016.05.19

『コンクリート・レボルティオ 超人幻想』 第19話「推参なり鐵假面」

 南極の氷の中から発見された三百年前の人間。それは戦国時代にゼスサタン軍団と戦った鐵假面剱士・影胡摩だった。誤解から爾朗を襲撃する胡摩だが、突然攻撃を止めて、最近発見された古墳に向かう。後を追った爾朗たちの前で、古墳に封じられたある存在を復活させようとする胡摩の真意とは……

 諸般の事情でストップしていた『コンクリート・レボルティオ 超人幻想』紹介ですが、通算第19話の今回の題材は特撮時代劇とくればやらないわけにはいきません。
 今回のゲスト超人は鐵假面剱士……以前、劇中漫画の主人公として登場し、その時に「うわぁ、読みたい!」「この世界の戦国時代・江戸時代も見てみたい!」と思っていたキャラクターであります。

 今回の物語は、その鐵假面剱士こと影胡摩が何故か南極から発見されたことから始まり、彼女を操って宿敵・爾朗を排除しようとする帝告の里見顧問と彼と結ぶ総理大臣の陰謀、それに巻き込まれた爾朗と来人と超人課の呉越同舟、そして思いもよらぬ胡摩の行動……と目まぐるしく展開していくこととなります。

 これまでもちょっと数え切れないくらいのモチーフを以て構築されてきた本作ですが、今回ざっと目に付いただけで「獣面の変身剣士」「強大な力を持つ神に身を捧げる乙女」「西日本を支配する巨大な魔王」「時代劇なのにビームやロケット」「氷の中から発見されるヒーロー」と(最後はちょっと趣が異なりますが)ニヤニヤさせられるものばかり。
 しかしもちろん、これまでと同様に、どこかで見たようなキャラクターや題材を組み合わせたパロディだけに終わらないのが、本作の魅力であり、恐ろしい点であります。


 冒頭で述べたとおり、今回のモチーフとなっているのは、特撮時代劇。それも昭和40年代、特に昭和47年・48年頃に放映された作品でありましょう。

 この時期に特撮時代劇が集中したのは、非常に大まかに言ってしまえば、折りからの変身ヒーローブームと、映画からTVへとその依って立つところを変えつつあった時代劇の幸福な結びつきの産物と言えるでしょう。
 しかしある意味非常に単純明快な足し合わせからスタートしたこのサブジャンルですが、この時代の特撮やTV時代劇がそうであったように、思わぬ化学反応を生み、実にユニークな内容を持つに至った作品もあります。

 その一つが、昭和48年に放映された『風雲ライオン丸』……今回の主なモチーフの一つと思われる作品であります。

 いずれこのブログできちんと全話取りあげる予定ですが、戦国時代を舞台としつつも、ほとんど西部劇的なビジュアルやキャラクターなどの荒唐無稽な部分と並び、その極めて重くドライなストーリー展開が印象に残るこの作品。
 特に、死闘の果てに敵の首領を倒したものの、世に平和が戻ることなく戦乱は続き、主人公は一人笑顔もなく去って行く……という最終回は、今なお語り草であります。

 もちろん、超人百花繚乱だったこの時期において、シビアでハードな物語は皆無ではありませんが、この結末がある種の説得力を持つのは、戦国時代という史実をバックにしているからでありましょう。その意味で、特撮時代劇としての一つの到達点と言ってよい作品かと思います。

 話が遠回りしましたが、影胡摩がかつて味わった想い、そしてそれを引き金とした彼女の暴走とも思える行動は、この作品で描かれたものの延長線上にあると言ってもよいのではないでしょうか。


 本作でこれまで描かれてきたように、単純な正義が失われていく「現代」。それに対し、明確な正義と悪が存在し、正義が悪を滅ぼせば全てのケリがついた「過去」は一種の理想であるかもしれません。
 しかしそれも実は現代の人間からの線引きに過ぎません。そしてその図式は、我々が暮らす平成の時代と、本作のモチーフとなっている時代にも……というより、あらゆる時代を通じて当てはまるものでしょう。

 今回のエピソードは、過去の超人を現代に甦らせるという荒技を使うことによって、過去から現代を、現代からもう一つの現代を俯瞰的に見返したものと言えるでしょう。
 これまで同様、物語を構成する要素の善悪・良否を単純にジャッジするのではなく、同時に徒に相対主義に陥るのでもない、そしてもう一つ、そこに小さくとも一つの希望を見出すという、本作ならではの視点で。

 モチーフとなった作品同様、何処とも知れぬ旅に再び出た影胡摩。しかしあえて善悪の境の定かならざる現代を行くことを決意した彼女の顔に浮かぶものは、決して絶望でも諦めでもなかったと……私はそう感じるのです。


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2016.05.12

『牙狼 紅蓮ノ月』 第24話「討月」

 封印のための記憶を取り戻した赫夜とともに、ルドラに最後の戦いを挑む雷吼・保輔・星明・金時。しかしどれだけのダメージを与えても人々の魂魄を喰らい再生するルドラを倒すためには、ルドラと一体化した道満の陰我を断たなければならない。しかし、長きに渡る戦いの中、雷吼に心滅の時が迫る……

 いよいよ本作も最終回。そのわりには結構作画的に不安になる箇所もありましたが、決めるべき場面ではケレン味効かせまくり、派手に動きまくりの、クライマックスに相応しいアクションを見ることができました。

 保輔が盗み出した晴明の書を手にしたことにより、封印の魔導具としての記憶を取り戻した赫夜。後はルドラを弱らせ封印させるのみであります。小回りの効かないルドラは、闘志満々、二人の魔戒騎士の連続攻撃にダメージを蓄積し、封印も目前かと思われましたが……しかしここでルドラは都中の人々の魂魄を大量に吸収することで全回復。
 被害を抑えるため、ルドラを転送しようとする星明の術も、ルドラの咆哮により粉砕されてしまうのでした。

 ドラクエのラスボスなみのしぶとさを見せるルドラの力は、かつて赫夜が封印した時とは比較にならぬほど。その力の源は、ルドラに呑まれてその額に半身を浮き出させた道満……ならばその道満を切り離せば、と星明の結界の中に閉じ込めたルドラに、雷吼と保輔はド派手なアクションで挑みます。

 そして見事道満を切り離したかに見えたものの、再び再生してしまう道満とルドラ。それでも再び挑む雷吼と保輔の身に異変が……ルドラが暴れたことでひびが入った結界。そこから「時」が流れ込んだことで鎧の活動限界が迫り、心滅の刻限が迫ったのです。
 さらに雷吼を飲み込まんとするルドラ。彼を助けようと、自らの限界も顧みず挑む保輔ですが、しかし吹き飛ばされて変身は解除され、ついに雷吼はルドラの闇の中へ……

 その闇の中で雷吼が見たものは、赤子の時に捨てられ、そして絶望から自らの顔に無数の傷を刻んだ道満の姿。同じ捨てられてた者同士、闇に落ちろと呪いの言葉を吐く道満ですが……そしてルドラの中から現れたのは、黒く、そして獣のように変容した雷吼の、牙狼の姿。たった一人の従者として、鎧を解除すべく決死の戦いを挑もうとした金時ですが、しかし星明は彼を止めます(この辺りの信頼感の現れが素晴らしい)。

 その言葉のとおり、自らの力で正気を取り戻した雷吼。そう、彼は既に一度、鎧に呑まれ、そしてそこから復活したことがあるのですから。そして道満を含め、全ての人を救うという雷吼の宣言に、レオタードから陰陽師姿に変化した星明は「私の魔戒騎士」などと可愛いことを言いつつ、彼に力を与えます。黄金騎士の鎧にしっかりと結ばれた赤い綱、そして背中から生えた純白の翼を――

 これでもかというアクションで飛びまくり斬りまくる雷吼に、自分には光などないと煽る道満。しかしお前がルドラの中で姿を保っているのは、まだ光が残っているからだと返した雷吼は、ついに道満の陰我を両断! 最後のあがきを見せるルドラの猛攻を、復活した保輔ともども雷吼が防ぎ、そして星明の持つ安倍家の血が赫夜の力を発動させ……ついにルドラは封印されるのでありました。

 そして赫夜は天に去り、残された荒廃した都に立つ雷吼たち。その前に現れたのは、生きていた道満――なおも自分には闇しかないと言う道満をついに斬る雷吼。しかし道満を抱き留めた星明の、自分が闇を引き受けるという言葉に、道満は光を感じて消えていくのでありました。まるで、母の胸に抱かれた幼子のような安らいだ表情で――


 と、いささか予定調和のきらいはあるもののまずは大団円……と言いたいところですが、しかし前回その黒々とした、そして矮小とした素顔を顕わにした道長の登場はなし!(ついでに、その道長に堂々と逆らった頼信もなし)
 どう考えても碌な最期を遂げるとは思えない道長の末路が見たかったというつもりはありませんが(というよりこれ以上実在の人物が死んでいくのは勘弁)、道満の陰我が解放されるには、深い因縁を持つ道長の存在が不可欠だったのでは、と感じます。

 今回道満が語ったように、共に親から捨てられて辛酸を舐め、その一方で幸福に育てられてきた兄弟がいるという共通点を持つ雷吼と道満。その雷吼が己の運命を受け入れ、光を選んだ姿は、本作で屈指の名編「兄弟」で感動的に描かれましたが、道満に対してのそれを見たかったと感じます。

 平安京のその後は別に気になりませんし、雷吼や頼信も彼ららしく幸せに暮らしたと思いますが、道満と道長の姿だけはもう少し掘り下げて欲しかった……が、この点だけは強く引っかかり、残念に感じた次第です。


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2016.05.05

『牙狼 紅蓮ノ月』 第23話「嶐鑼」

 星明は救出されたものの、代わりに依代になってしまった晴明。復活した道満は晴明を奪い、ルドラ復活の儀式を遂行、ついに紅蓮ノ月からルドラが出現する。その巨体で都を炎に包むルドラに対して決死の戦いを挑む雷吼・星明・金時。一方、光宮に押し寄せた民衆を閉め出そうとする道長に対し頼信は……

 見たことのない漢字で構成された今回のサブタイトル、嶐は「る」、鑼は「どら」……すなわち、ルドラであります。

 稲荷の計算違いか、あっさりと意識を取り戻してしまった道満。焦る頼信と金時を無視して彼が向かったのは、前回、泰山府君の法により星明からルドラの闇を移して自らが依代となった晴明のもとでありました。
 覚悟を決めた雷吼が晴明を討とうとした時、晴明の肉体を奪った道満は、星明の術で拘束された自らの片腕を断ち切るという、とんだ羅城門の鬼ぶりを見せて異空間に消えるのでした。

 そしてついに復活の儀式を遂行した道満により、紅蓮ノ月を破って出現するルドラ。その姿はあたかも阿修羅像と昆虫を混淆したような奇怪かつ巨大なものであり、牙狼のラスボスとしてふさわしいものでありましょう。
 そのルドラにその身を差し出した道満は、食われたかと思いきや頭部にフェードイン。そのままルドラは怪光線と火炎で、都を焼き払っていくのでありました。

 その恐怖から逃れんとして光宮に押し寄せる都の民ですが、道長は冷酷にも文字通り門前払いを食らわせて自らは光宮に籠もるという状態。怒った頼信が直談判に向かい、都の民を救って欲しいと請うも、民を光に集う羽虫呼ばわりする道長は、民の犠牲を一顧だにしないのでありました。
 しかし頼信は、その道長の命と偽って光宮の門を開けさせ、民を収容。この辺り、兄と違って宮仕え経験のある彼らしいところですが、醜い内心を隠し、民の前では自分の功績を強調し、自分の配下の黄金騎士がルドラを倒すとまで言ってのける道長の狸ぶりの方が一枚上手でしょうか。もっとも、頼信の行動に怒り狂い、抹殺命令を出す姿からは、前回までの落ち着き払った姿が、単なる虚勢に過ぎなかったことがよくわかるのですが……

 一方、久々に三人揃った雷吼・星明・金時は、強大なルドラに対しても一歩も引かず迎撃を決意。久々に登場した星明の母の魔導具・雷獣に雷吼と金時が飛び乗り、星明は闇堕ち時代に手にしていた巨大な筆を獲物に、ルドラの腕に的を絞って攻撃を開始いたします。
 巨体だけに小回りがきかないのはラスボスの常、雷吼たちの攻撃は確実にダメージを与えていく……かに見えたものの、落とされた腕がなおも命を持って暴れるような怪物相手にはさすがに分が悪く、徐々に押されていくのでありました。

 そしてルドラの攻撃が三人を捉えんとした時、竹の封印でルドラを抑えようとする赫夜ですが、しかしいかに彼女とてこれは荷が重く、攻撃に吹き飛ばされる羽目に。しかしその衝撃が、彼女の記憶を――これまでブツブツと思い出していた謎の文言こそがルドラ封印の呪文であり、その文言が全部で12あることを思い出すのでありました。
 しかしまだ2つの呪文が思い出せない……というところでようやく(格好良く)駆けつけたのは斬牙こと保輔。彼が差し出した星明の書物により、赫夜はついに全ての呪文を思い出すことに――

 にこのどこかで見たような書物、よくよく見てみれば、第19話で道長と晴明が向かった光宮の隠し部屋に安置されていた書物であり、今回道長が光宮を護る結界の要として頼りにしていたもの。
 なるほど、ルドラ封印の秘法が記されていたものであればその効果も納得であります。第21話ラストで稲荷が保輔が盗むよう命じたものがこの書物でありましょう(この時、保輔は無視したように見えましたが……)。光宮の中枢からこの書物を奪ってくるとはさすがは袴垂と言うべきか、道長の愕然とする顔が目に浮かぶようであります。


 何はともあれ、封印の手段が整い、役者が揃ったところで次回最終決戦。
 その行方以上に、個人的には、何か考えているようで実は全く考えていなかった小物ぶりが明らかになってしまった道長の去就が気になるのですが――


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2016.04.26

『牙狼 紅蓮ノ月』 第22話「共鳴」

 ルドラの依代となった星明を助ける術が見つかったと語る晴明。しかしそのためには雷吼が星明の精神世界に入り、その中でルドラを滅する必要があった。危険な企てに躊躇いなく乗った雷吼の呼びかけで目覚めた星明は、自分の中のルドラと対峙する。しかしその頃、外の世界では道満が現れ……

 前回、道長の道満を斬れという命を断った雷吼の前に現れた晴明。ついに星明を助ける術が見つかったという晴明の言葉に、雷吼は危険を承知で当然飛びつくことになります。
 毎度の如く彼の前に現れた黒星明を誘き寄せ、赫夜の竹結界で捕らえた雷吼。そこで待ち構えていた晴明は、一枚の鏡を雷吼に示します。それこそは星明の精神世界に繋がる鏡。要するにその鏡から星明にサイコダイブし、直接星明の精神を目覚めさせ、ルドラを叩きだそうというのが晴明の策だったのであります。

 しかし言うまでもなくそれは危険極まりない手段。一歩間違えれば星明はおろか、雷吼も命を落とすことになりますが、もちろん雷吼がこれを拒むはずはありません。勇躍鏡の中に飛び込んだ雷吼は、文字通り闇に縛られた星明を発見。闇を断ち切ってお姫様抱っこで彼女を救出します。
 やけにあっけないのには逆に驚かされますが、再会を喜ぶ二人の前に現れたのは、黒星明――すなわちルドラ。二人を逃さんとするルドラに対し、星明は自ら立ち向かうことになります。……が、さすがに素手では本作最強の星明、自らの中から文字通りルドラを叩き出すのでありました。

 と、作戦が着実に進んでいくのですが……外の世界に(今ごろ)現れたのは道満。事態を察した道満は術を止めんとしますが、その前に金時が立ち塞がります。死力を尽くして挑む金時は(素手では全く当てにならない)道満といい勝負を繰り広げますが、しかしさすがに追い詰められてしまいます。
 その金時を間一髪救った頼信も、格好いいことを言いながらあっさり追い詰められたその時――突如現れたのは三本の赤い柱。そしてその柱の上にいたのは三稲荷!

 普段は憎らしい口を叩く三人ですが、今回その矛先が道満に向かってみれば実に痛快。そして猛然と襲いかかる道満に、狐面を残して消えた三人は、次の瞬間巨大な白い狐に変じ、あまりに強大な力で道満を一撃で叩きのめすと、仕事は終わったとばかりに去るのでした。

 そして現実世界に帰還した雷吼と星明を待っていたのは、倒れ伏した晴明。実は晴明が行った術は、泰山府君の術。陰陽道では最高神とも言うべき泰山府君の力を借りるこの術は、伝説では死者を蘇らせる術と言われていますが、本作においては晴明の命という大きな代償を支払うものでありました。
 そう、晴明のこの術の真実は、星明を依代としたルドラを自分の体に移すというもの。そして晴明は最後の力を振り絞り、自分を討つよう雷吼に告げます。

 ルドラ討滅も目前となったとき、地に伏していた道満に動きが……というところで次回に続きます。


 果たしてどのように救い出されるかと思われた星明ですが、上で述べたように、想像以上にあっさりと救出された今回。
 確かに黒星明であった最中のことは、心神喪失状態ではありますし、彼女にとっては「光」であった雷吼が助けに来たことで闇と決別できた、ということなのだとは思いますが、これまで彼女が生きてきた中で背負ってきたものが、ここであっさり決別できてよいのか……

 とは思うものの、彼女にとってのもう一つの「光」であった晴明と彼女の最後の対話を見ると、声優の熱演もあってそれなりに納得させられてしまったのでありました。


 さて、いよいよ残すところはあと2回。何となく、善悪両サイドの詰めの甘さから面倒な事態になりそうな気がしますが……


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2016.04.21

『牙狼 紅蓮ノ月』 第21話「対決」

 道満との交渉が決裂し、雷吼を呼び出そうとする道長の使者に立った保昌が星明に殺されてしまう。怒りに燃えて星明と対峙する保輔を止めようと二人の間に割って入る雷吼。魔戒騎士二人の激突の結果、雷吼を退けた保輔の刃がついに星明を斬る。しかし星明はその場で復活、姿を消すのだった。

 まだまだ続く闇堕ち星明との対決。しかし状況は最悪の方向に転がり、図らずも二人の魔戒騎士の対決が実現することになります。

 前回、手を組もうとした芦屋道満が自分の弟であると判明し、相容れぬ存在と知った道長。夜中にもかかわらず、雷吼を呼び出そうと我が侭を言う道長に使いに出さされた保昌ですが……その前に星明が現れます。
 星明が闇堕ちしたことを知らなかったものの、しかし彼女の口調から異変を察知した保昌。それはさすがと言うべきですが、しかし刃を向けた相手が悪かった。ただの一撃で血煙に沈んだ保昌は命を落とすのでした。

 さて、雷吼が星明を斬る気を失った状況で、もう一人の魔戒騎士・保輔に魔導火の珠を与え、星明討滅を命じます。その時点ではさすがに躊躇っていた保輔ですが、兄がその星明に殺されたことを知り、男泣きに泣いた末に復讐を誓います。
 星明は再び雷吼の前に現れると考え、後をつける保輔。その見込み通り現れた星明に対し、ザンガに変身した保輔は、伏見稲荷を思わせる千本鳥居を通り抜けた先で、星明と対峙するのですが……その前に雷吼が立ちはだかります。

 星明を元に戻す法があると必死に訴えかける雷吼。しかし保輔がそれに耳を貸すはずもなく、ここにガロとザンガ、二人の魔戒騎士が激突することに……
 いやぁ、倒すべき敵が別にいながら、行き違いと主義主張の相違からヒーロー同士が激突というのは、初代ガロというか一昔前の平成ライダー的で実に懐かしい(?)。吹き飛ばされた雷吼が変身解除されるというのも「らしい」感じです。

 と、ひねくれた視聴者はさておき、雷吼を蹴散らした保輔は、魔導火の力を帯びた刃を手に星明に迫り、その一撃はついに星明を斬るのでありました。
 そして強烈な光を放ちながら消滅したかに見えた星明ですが……星明はその中から変わらぬ(闇堕ちした姿で)復活。しかしさすがに力を使い果たしたか、道満に連れられて姿を消すのでした。

 赫夜の結界により、光の奔流から守られた保輔。星明が去り、戦う理由はなくなったかにも思える彼ですが、しかし生身で雷吼と刃を交えることになります。
 激しい剣戟の末、刀を弾き飛ばされて敗れたのは保輔。彼は星明はもう追わない、その代わり雷吼が全てを背負え、もう犠牲者は出すなと告げるのでした。これもまた、一本気な彼らしいけじめの付け方というべきでしょうか。

 と、忘れた頃に頼信を使いに雷吼を呼び出した道長は、雷吼に対し道満を斬れと命じます。しかし魔戒騎士に人は斬れないと雷吼はこれを拒絶、既に道満は人とは言えぬとなおも言い募る道長に対し、道長も道満も、人を駒にする点では同じに見えると言い放つのでした。
 頼信もそんな雷吼の意思に共鳴したところに現れた晴明。彼は、星明を救う準備ができたと雷吼に告げます。そして稲荷たちも、保輔を前になにやら企む様子ですが……


 またもや史実上の人物が史実とは異なるところで死んでしまい、牙狼平安とはいえ不満の残る今回。保輔と雷吼の激突の動機付けに必要とはいえ、それなりに味のあるキャラだっただけに残念ではあります(和泉式部との関係が描かれる間もなかったですし……)。
 ちなみに、星明が斬られて爆発、復活した場面では、保昌を殺したのはニセ星明かと期待しましたが、さすがにそんなに都合の良い展開はなかったようですね。

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 『牙狼 紅蓮ノ月』 第3話「呪詛」
 『牙狼 紅蓮ノ月』 第4話「赫夜」
 『牙狼 紅蓮ノ月』 第5話「袴垂」
 『牙狼 紅蓮ノ月』 第6話「伏魔」
 『牙狼 紅蓮ノ月』 第7話「母娘」
 『牙狼 紅蓮ノ月』 第8話「兄弟」
 『牙狼 紅蓮ノ月』 第9話「光滅」
 『牙狼 紅蓮ノ月』 第10話「一寸」
 『牙狼 紅蓮ノ月』 第11話「斬牙」
 『牙狼 紅蓮ノ月』 第13話「相克」
 『牙狼 紅蓮ノ月』 第14話「星明」
 『牙狼 紅蓮ノ月』 第15話「心月」
 『牙狼 紅蓮ノ月』 第16話「最低」
 『牙狼 紅蓮ノ月』 第17話「兇悪」
 『牙狼 紅蓮ノ月』 第18話「星滅」
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2016.04.10

『牙狼 紅蓮ノ月』 第20話「依代」

 変貌した星明と雷吼の戦いの最中に現れた赫夜。ルドラ封印の力を持つ彼女が力を発揮するためには、ルドラが完全に復活しなければならない。しかし、番犬所からは雷吼に対し、ルドラの依代となった星明討滅の命が下る。一方、道長は道満を呼び出し、ある取り引きを持ちかける……

 ぼやぼやしているうちに、放送が終了、完結してしまった『牙狼 紅蓮ノ月』。お恥ずかしい限りですが、何ごともなかったように紹介残りを取り上げていきたいと思います。

 さて、闇堕ちしてベアトップ妖女した星明と対峙することとなった雷吼。星明の術を二人の対決に割り込んできたのは、赫夜でありました。番犬所も知らなかったその真相――晴明が語るそれは、赫夜こそがルドラ封印の要となる力を持つ魔導具であるということでした。

 しかし彼女が封印の力を発揮できるのは、ルドラが完全に復活した時のみ。言い換えればルドラが完全復活する前に赫夜の力でルドラを封印し、星明を助け出すことはできないということであります。
 道摩法師の仕掛けた闇に染まり、依代となった星明を救う術がないわけではないが、準備がかかるという晴明。それまで赫夜を守ることとなった雷吼ですが、そこに番犬所からは、冷徹にも星明討滅の指示が……

 一方、晴明に見切りをつけた道長が呼び出したのは、あろうことか芦屋道満でありました。道長は、自分と手を組もうと道満を誘うのですが……その言葉に道満が返したのは、古ぼけた扇。そして、それを目にした道長の顔色が変わります。
 扇が示すもの――それは、なんと道満が道長の弟であったという事実。どうやら双子であったものか、赤子の頃に二人は引き離され、道満は小舟で川に流されたのでありました。

 この辺り、以前の回から道満の意味ありげな態度からある程度は予想していましたが、なるほど「道」満という名前も、史実の上での道長の兄たちにも「道」の字がついていたことを考えれば面白い。(もっとも、四男だったことを考えれば、そこまで双子に神経を尖らせるのかなあとは思いますが)
 それはさておき、この対面で、ともに大きな目的のために手段は選ばぬ男同士でありながら、自らの手は汚さず白くありつづけようという道長(ここで自分は炎羅にはならんと断言する道長のキャラが実に面白い)は、あくまでも自分とは別の人種だと見切った道満は、道長の前から消えるのでした。

 そんな状況とは知らず、黒く染まった星明の式神に誘き出された雷吼の前に現れたのは星明。彼女の容赦ない攻撃の前に、雷吼はついに覚悟を固めます。星明を討つ――多くの命を救うために、一人の命を奪うという覚悟を。
 皮肉にも、以前の自分と同じ覚悟を固めた雷吼の力に追いつめられる星明。しかし、その刃を止めたのは、赫夜の力でありました。そして星明のほうも、己の中で真の星明の意志が目覚めたか、混乱しながら何処かへ逃れ去ります。

 そして番犬所では稲荷たちが、袴垂に星明討滅の指令を……


 幾つかの新事実はわかってきたものの、内容的には嵐の前の静けさといったところの今回。しかし上で述べたとおり、この世の平和を守りつつも、全ての命を守りたいと願っていた雷吼が、自分とは最終的な目的は同じながらも、より現実主義的な星明の道を選ぶ――それもその星明を相手に――という皮肉で、そして哀しい道を選ぶのが印象に残ります。

 それにしても、全部わかっていてやってるのかと思っていた番犬所ですが、意外と間が抜けていたのね……


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2016.04.08

會川昇『神化一九年の塔地火』 戦争でも、悪法でも縛れないもの

 今月から待望の第二期がスタートする『超人幻想 コンクリート・レボルティオ』の原作者によるスピンオフ小説第2弾が、「ミステリマガジン」最新号に掲載されました。神化一九年、戦争の最中に大陸で起きた超人絡みの事件に、アニメでも重要な役割を果たす人吉孫竹が挑むことになります。

 人外魔境を往く冒険家にして、日本最高の超人研究家である人吉博士。超人民俗学者の肩書きを持つ彼が、陸軍駐屯地に招かれたことから物語は始まります。
 満映――満州映画協会東京支社の男・岩永に出迎えられた人吉博士の任務は、一人の超人戦車兵の診断。人吉博士も旧知のその青年・倖田太一は、機械を自分自身の体のように自在に操る超人能力を持っていたのであります。

 大陸で新型戦車の試験に携わっていた最中、満映の国策映画撮影への協力を命じられた倖田。それは、軍に捕らえられた異国の女性超人ウォー・ガールを、彼の砲弾が粉砕する様を、陸軍参謀立ち会いの下で撮影するものとなるはずでした。
 しかし撮影中に何事かが発生し、その場に居合わせた者は参謀以下全滅、ウォー・ガールも姿を消し、残されたのは彼一人であったと……

 その場で何が起こったのか、証言できるのは倖田のみ。しかし彼の証言は信頼できるのか、人吉博士はその判定を依頼されたのであります。そして、調査に当たる中で人吉博士が気づいたある事実とは――


 短編小説ということもあってか、アニメとも、前作に当たる『超人幻想 神化三六年』ともまた少々異なるテイストを持つ本作。
 背景となるのは、この世界でも行われていた大陸での戦争であり、この世界でも存在していた満映の存在であります。
(ちなみにモデルとなる人物が満州に関わっていたアニメの登場人物の名もちらりと……)

 そしてそんな本作で描かれる謎は、一言で表せば『藪の中』を逆転させたようなものと言いましょうか。証言者はただ一人ながら、その証言が聞く度に変わり、「真実」が次々とその姿を変えていく……
 何故そのようなことになるのか、本当はそこで何が起こったのか? 本作はその秘密を中心に展開していくこととなります。

 その秘密の先に孫竹が見たものは何であったか……実にそれは、本作の舞台背景と密接に関わっているのであります。


 現実の世界の歴史とはいささか異なる、「神化」の世界を舞台として描かれる本作。しかしここで描かれるものは、超人の存在とそれに関わる物事を除けば、実はほとんど現実の世界であった事物・出来事であります。

 その最たるものが「映画法」であります。内容の検閲、製作・配給の許認可制、映画関係者への登録義務付け(あたかも超人のように!)……映画を国家が統制し、違反する者は罰せられる。そんなディストピアSFめいた法律は、我々の世界においてかつて確かに存在したのです。
 そして、満州において国策プロパガンダ映画を中心に製作した満映の存在もまた。

 本来は娯楽でありアートであり、つまりは人間の自由な精神活動の発露であったはずの映画。それが国家の名の下に縛られ、操られた時代を、本作は――アニメや『神化三六年』がそうであったように――超人というフィルターを通して描き出すのです。


 しかし、そのような時代において、どのような形であっても、己の節を曲げても、映画を愛し、映画に関わり、映画を作ろうとした人々がいたのもまた事実。
 本作で描かれた秘密は、実にそんな人々にまつわるものであり、そこに浮かび上がる美しい物語は、戦争でも、悪法でも縛れないものの存在と、その価値を描き出すものなのです。
(そしてその美しい物語の象徴に、あの坂本龍馬が使われるのも嬉しい)

 映画の――その根源にある物語の持つ力を、意味を謳い上げた本作。物語の中に現実を見出し、描いてきた作者ならではの物語であります。


 しかし、倖田のモデルを(実はヒントはあるとはいえ)本作を読んだだけで見抜いた人はいるのでありましょうか……


『神化一九年の塔地火』(會川昇 「ミステリマガジン」2016年5月号掲載) Amazon
ミステリマガジン 2016年 05 月号 [雑誌]


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2016.02.21

『牙狼 紅蓮ノ月』 第19話『繚乱』

 番犬所から紅蓮ノ月に封印されていた炎羅ルドラが道摩法師により復活したと知らされた雷吼。しかし頼信、そして保輔が謎の黒衣の女に襲われ深手を負う。晴明の力を借りて星明のもとに向かった雷吼は、その先で道満と黒衣の女――星明と出会う。再会を喜ぶ雷吼に、星明は凄まじい勢いで襲いかかる……

 最後の(?)敵の存在が判明し、ついにクライマックスに突入した感のある本作。今回はある意味予想通りというか、恐れていた星明の闇堕ち宣言というべき展開であります。

 前回散々勿体ぶったわりに、あっさりと雷吼にルドラの存在を雷吼に明かした番犬所の稲荷。道摩の企みによりルドラの封印が解かれ、地上にその依代が現れたと語ります。そしてルドラが完全体になる前に討滅せよと命を下すのですが……

 その頃、新たな検非違使の長として庶民に頭を下げる頼信。その行動はさておき、何故わざわざ夜に庶民を集めるのか……というのはさておき、そこに紅の稲妻が天空から幾本も降り、怪しの黒衣の女が現れます。その後を追った頼信は、垣間見えた相手の顔に驚愕の表情を浮かべたまま、一撃でKOされるのでありました。
 さらに、道摩法師の姿を求めて芦屋道満の後をつけた保輔の前にも現れた黒衣の女。赤黒い蝶の奔流と式神を操る相手に深手を負わされた保輔もまた、相手の顔を見ているようなのですが……

 同じ魔戒騎士である保輔が倒され(番犬所で集中治療に)、さすがに弱音を吐く雷吼は、星明の力を借りるため、こういう時に一番頼りになる晴明のもとを訪れます。孫娘を捜すことを請け負った晴明は、あたかもソナーの如く、安部家の者にのみ反応する波動を放ち、反応のあった先に飛んでいく式神を、雷吼も追いかけていきます。

 と、その先に現れたのは道満。道摩法師は殺したとノリノリで宣言するのがかえって心配になりますが、さらにそこに星明が現れます。
 やけに目つきが鋭かったり、肩が露出したやけにセクシーな黒い衣装に変わっていたり、自分のことを「黄金騎士」呼ばわりしたりとあからさまに怪しいにもかかわらず、雷吼は再会に心躍らせるのですが――

 しかし雷吼に襲いかかる星明。何と(と言うのも正直苦しいですが)頼信を、保輔を襲ったのは星明だったのであります。
 驚き躊躇いながらも、あまりの激しい攻撃に、ついに剣を抜きかかる雷吼を、しかし金時は押し止めます。雷吼に星明を斬らせるわけにはいかない、人を守る雷吼を守るのが自分の務めですと語り、星明に挑む金時ですが――星明の一撃は金時を深々と貫くのでありました。

 ついに怒りを爆発させる雷吼を結界の中に取り込む星明。様々な術で襲いかかる星明に苦戦する雷吼は、ついに黄金の鎧を召還するのですが――その時、強固であるはずの結界を軽々と破り、その場に赫夜が現れます。
 星明の攻撃を消し去り、結界を竹林へと変えていく赫夜の前に、その場から撤退する道満と星明。驚く雷吼に、赫夜は自分が紅い月を封印した者だと思い出したと告げ……


 と、ルドラを巡る様々な構図が明らかになっていった今回……なのですが、印象に残ったのは、これまでも素手ゴロ最強感があった星明が、レギュラー陣を相手にその強さを遺憾なく発揮する姿。

 彼女が依代というのはある程度予想していましたが、しかし赫夜の役割にはそれなりに驚かされましたし、まだまだわからないのは、この大波乱の中でも謎めいた動きを見せる道長の存在でありましょう。

 彼が口ずさむ、あの望月の歌に如何なる意味が込められているのか……それが最後の謎となるのでありましょうか。


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2016.02.17

『牙狼 紅蓮ノ月』 第18話「星滅」

 討滅された炎羅を吸い込んでいく紅の月。その正体は、かつて安倍家の先祖によって作られた封印の結界であり、その鍵が何処かへ失われたことを知る雷吼。一方、道摩の呪詛を消すため熊野に籠もっていた星明の前に晴明が現れる。しかし祖父の力でも解けぬ呪詛に、単身星明は道摩のもとに向かう……

 後半戦に至り天空に出現した謎の紅い月。タイトルともなっているその紅蓮ノ月の正体が、ようやく明かされることとなります。

 火羅たちに力を与え、そして討滅された火羅たちが紅い光となって昇っていく謎の月。その光の中に星明の紋章を見た雷吼は、番犬所の稲荷にその正体を問い質します。そして明かされたその正体とは――月のようで月ではないもの、「紅蓮ノ月」。遙か古に安倍家の者が作った結界でありました。
 しかしその結界の鍵は何処かへ喪われ、それを探すために、都から魔戒騎士や法師たちは姿を消していたのであります。が、その結界が何を封印しているかまでは、稲荷は答えず……(尤も、すぐに語られるのですが)

 一方、雷吼の前から姿を消した星明は、自らにかけられた呪詛を解くために道摩法師を探し、都で凶行を働いていた道満と対決するものの逃げられる羽目に。そして自分の体内の闇に苦しみながら、熊野の山中に向かった星明の前に現れたのは、祖父・晴明……
 星明が熊野に来たのは、安倍家の聖地たるこの場所で身を清めるためですが、晴明が現れたのは、紅蓮ノ月を見張るため。その紅蓮ノ月に封印されていたのは、古の騎士や法師が束となっても敵わなかった火羅・ルドラ……晴明もまた、封印の鍵を探していたのであります。

 が、とりあえず今は星明にかけられた道摩法師の呪詛を解こうとする晴明。しかしその術は晴明の命を削るものであり――それどころか、術が効果を発揮する前に星明の中の闇が暴走、晴明に襲いかかるのでありました。
 辛うじて晴明の身は式神が守ったものの、正気に返ってしまった星明にとってはそれはなお辛い事実。星明はその地を離れ、先に道満と対峙した際につけておいた目印を辿り、道摩のもとに向かいます。

 そこで道満と対決することとなった星明。自分の望みはこの世を無明の闇の世界に変えること、そしてそれこそが道長への復讐だと嘯く道満に対し、雷吼への想いを胸に戦う星明も一歩も引きません。そしてついに星明の渾身の一撃が道満を捉えたかに見えたのですが……しかし道満の逆転の刃が星明を貫きます。

 そして道満の凶行は留まることを知らず、その傷から湧き出た闇は師たる道摩法師をも喰らうことに――そしてついにその時、ルドラが目覚めます。
 それを見つめるのは雷吼や金時をはじめとする都の人々。そしてもう一人、赫夜もまた……


 というわけで、星明主役篇とも言うべき今回のエピソードにおいて、ついにというかようやくというか動き出した物語。星明の闇堕ちは予想通りではありますが(魔戒騎士ではなく、陰陽を合わせ持つ陰陽師だからこそ……という道摩の言葉に納得)、しかし紅蓮ノ月の正体は相当に意外かつ納得の展開であります。
 月の封印の在処は、まあ何となくわかるような気がしますが……

 そしてこれも予想できたとはいえ、ついに師にまで牙を剥いた道満はどこに向かうのか。これまでも散々突っ込んできましたが、言うことの大きさの割りには非常に打たれ弱いキャラだけに、先行きが気になるところです。
(今回も星明の拳にあわや屈するところで……まあ、星明はある意味素手が一番強いような気もします)


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