2018.09.16

『つくもがみ貸します』 第八幕「江戸紫」

 近江屋の幸之助から、海苔問屋の淡路屋半助のことを調べて欲しいと頼まれた清次。商売は巧みで容姿端麗、人当たりも良い半助だが、何故か幸之助に良くしてくれるのだという。そこで調べてみれば、海苔問屋を始める5年前より前の経歴は謎に包まれている半助。しかし思わぬところからその手がかりが……

 もう完全にレギュラーになった感のある幸之助から、海苔問屋・淡路屋の主である半助のことを調べて欲しいと依頼された清次。丁度損料屋を探していた半助に出雲屋を紹介してくれたということで、早速半助と対面することになる清次ですが――これがいかにも本作らしい面白デザインのキャラながら、お姫やうさぎ、お紅までも頬を赤らめてしまうほどの美形であります。が、そこで五位だけは、怪訝そうな顔で半助を見つめるのですが……

 それはさておき、今度旦那衆で川下りの遊びをする際に、扮装をするための衣装や小道具を貸して欲しいという半助(現代でいうハロウィンパーティーのようなもの、というナレーションの解説がおかしい)。さらに半助は幸之助と仲の良い清次たちも川下りに誘います。そして綺麗どころを集めて賑やかに始まる川下り、花魁(?)姿のお花、盗人姿のお紅の姿が実に可愛い――というのはともかく、自分を「お大尽」と呼ばせてにこやかに遊ぶ半助は、確かにその名に相応しい姿です。
 その川下りの途中、千住名物だというおばけ櫓――角度によって4つの櫓が2つに見えたり3つに見えたりというどこかで聞いたようなもの――が好きだと語る半助に、何気なく五位のキセルを渡す清次。しかし半助はその模様を見て明らかに表情を変えるのでした。

 そんなことはあったものの、その日は楽しく終わり、清次にも相場の倍の価を気前よく支払う半助。こんなにいただくわけにはいかないと、代わりに店の品物を貸すことにした清次ですが――その中にはつくもがみたちが混じっていることは言うまでもありません。そして情報を聞き込んできたつくもがみたちですが――そこには半助の過去の話は一つもなく、聞こえてくるのは今現在の話ばかり。どこから来たのか、これまで何をやっていたのか、親類縁者の話なども何一つないというのであります。
 5年前に浅草に身一つで現れ、海苔を売り始めて瞬く間に身上を築いたという半助。しかしまるで過去がないように、誰もそれ以前のことを知らない――そんな半助が自分に、自分と縁のあった清次にまで非常に良くしてくれることに幸之助が困惑したことが、今回の依頼のきっかけだったのであります。

 そんな中、つくもがみたちに過去の苦い思い出を語る五位。ある芸者に買われた五位は、彼女が懸想していた妻ある男に贈られ、男は妻を捨てて芸者のもとに走る結果になりました。しかし一時の情熱が冷めた頃、男はかつての妻が食卓に出していた海苔が、どれだけ精魂込めて焼いてあったか気付いたと……
 その出来事が5年と少し前のこと、そして妻の行方は誰も知らないと聞いた清次は、何かに気付いたように、五位を手に半助のもとを訪れます。そしてこのキセルに覚えがあるのではないか、と問う清次を、半助は二人きりで川下りに誘うのでした。

 船の上で、自分が女――あの五位の昔話の夫に去られた妻であることを認める半助。親類縁者に合わせる顔がないと姿を隠し、髪を落として男を装った彼女は、生計のために海苔を売り始めたのであります。しかし親が海苔漁師であったためか商売は大当たり、そんな中で幸之助と出会った彼女は、彼に恋してしまった……
 清次に真実を語った半助は、しかしこの先も半助として生きていくと語ります。半助と清次が見つめるお化け櫓の姿は、その時々で様々に姿を変える半助の姿なのか、あるいは人生の有為転変を映したものか……


 オリジナルエピソードだったものの、全く過去がないというちょっとゾッとさせられるような人物や、その人物が抱えた哀しい過去と屈託の存在など、ある意味これまでで最も原作――というか原作者のテイストが感じられる内容だった今回。
 半助のその後の姿が描かれることなく、二人が黙って川を下る姿で終わるのも、何とも言えぬ余韻を感じさせてくれます。

 しかし、いかに海苔に親しんでいたとはいえ、素人が5年で大店の主にというのはやはり違和感が大きいですし、何よりも今回の物語の象徴であるお化け櫓が、あからさまにお化け煙突――すなわちこの時代に存在しないもの、というのは残念ではありますが……

 ちなみにどう聞いても美青年の声にしか聞こえない半助役は、美青年を演じたら右に出る者がいない女性声優・斎賀みつき。なるほど、と納得するとともに、ある意味ネタバレ的キャストなのがちょっと面白いところです。


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 『つくもがみ貸します』 第七幕「裏葉柳」

 「つくもがみ貸します」 人と妖、男と女の間に
 畠中恵『つくもがみ貸します』(つばさ文庫版) 児童書版で読み返す名作

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2018.09.08

『つくもがみ貸します』 第七幕「裏葉柳」

 清次が品物を貸すこととなった料理屋・鶴屋は、幽霊が出る店だった。店の前の持ち主・大久間屋は、かつての大火を機に屋敷を買いたたいて財を成したものの、幽霊が出ると鶴屋を手放したらしい。その幽霊は自分の妻ではと言い出す出雲屋のつくもがみ・裏葉柳だが、清次はあることに気付いて……

 勝三郎から、かつて自分の家で働いていた料理人・徳兵衛が店を出す祝儀代わりに、出雲屋の品を貸してほしいと頼まれた清次。早速、彼の店・鶴屋に品物を貸し出した清次は、帰りしなに徳兵衛の後ろに女性の影を見るのですが――貸し出されたつくもがみたちは、そこで先住のつくもがみから、この家に幽霊がいると聞かされるのでした。
 と、ここで騒ぎ出したのは、出雲屋に最近やってきた香炉のつくもがみ・裏葉柳。元は人間だったという彼は、幽霊が数年前の日本橋の大火が原因で離ればなれとなった妻ではないかと言いだしたのであります。妻は歌舞伎役者の中村菊之丞が女形を演じた時にそっくりな美人だと言うのですが……

 と、日本橋の大火と聞いて清次が思い出すのは、その火事でお紅が焼け出された時のことであります。寺に避難していた彼女を見つけた清次ですが、火傷をおった父の看病と店のことでお紅も暗い表情。そんな彼女に、清次は前回描かれた櫛からスタートした物々交換で手に入れた玉簪を差し出します。目標額である80両の値打ちはあるこの玉簪を売れば、店の再建資金にはなるのですが――それは同時に、お紅が佐太郎の母の試練に失格するということでもあります。しかしお紅は玉簪は売らないと言い出して……(ちなみにこのシーンでお紅の前に寝てたの、彼女の父親だと思うんですが――顔も声も出ず動きもしないのでほとんど物状態)

 そんな中、出雲屋を訪れる徳兵衛。鶴屋を破格の値段で彼に売ってくれたという前の持ち主・大久間屋が店に来るので、もてなしのために品を貸してくれという徳兵衛に、お紅はここぞとばかりにつくもがみの品を押しつけるのでした。一方清次は、店に幽霊がいるのでは、と単刀直入に訪ねるのですが、店にいた女性は自分の妻だと、徳兵衛に一笑に付されます。
 が、その後勝三郎に聞いてみれば、大火の後に長屋から立ち退きを迫られ路頭に迷った徳兵衛は、その時に病がちだった妻を亡くしているとのこと。さらに役者絵を売りに来た浜松屋から、大久間屋が大火の後に日本橋近辺の屋敷を買い叩いて財をなしたこと、そしてそのうちの一軒に幽霊が出たことから、徳兵衛を騙して売りつけたのではないか、と聞かされる清次。と、そこで清次は中村菊之丞の役者絵を見て、鶴屋の幽霊は裏葉柳の妻ではない、と言い出します。

 そして鶴屋に急ぎ、徳兵衛を呼び出す清次。徳兵衛と妻を長屋から追い出したのは大久間屋であり、彼に復讐するために徳兵衛は妻の幽霊が出る鶴屋を買い、そしてそこで大久間屋を毒殺するつもりではないか――そう指摘する清次の言葉を肯定し、徳兵衛は復讐した上で自分も死に、妻のもとに行くことこそが自分の望みであると語ります。
 そんな徳兵衛に対し、過去に生きることよりも、前に進むことを選ぶべきだと懸命に説得する清次。その言葉に徳兵衛の心が動いたのを見て取った清次は、後は自分に任せてほしいと徳兵衛を外に出すと、つくもがみたちに後は好きにしろと語りかけるのでした。

 そしてお墨付きが出たとばかりに、大久間屋をこれでもかと脅かすつくもがみたち。その後の惨状を見た徳兵衛は、妻の幽霊に前に進むことを告げ、幽霊も成仏するのでした。
 さて、清次が鶴屋の幽霊が裏葉柳の妻ではないことを見破ったのは、中村菊之丞の話から。女形を得意としたのは初代の話、当代は荒事専門であることから、裏葉柳が数年前と思いこんでいたのは相当な昔だったと推理したのであります。その話を聞かされて、裏葉柳も(びっくりするくらいの美形姿で)妻を追いかけるために成仏するのでした。


 今回は久々の原作エピソード。日本橋の大火を中心に、清次とお紅の過去(これも原作由来)、徳兵衛と大久間屋の因縁、さらに裏葉柳の物語と、三重に絡めてみせた構成が実に面白いところです。徳兵衛を説得する清次の姿を、一歩間違えれば綺麗事に終わりかねないものを、同じく過去に捕らわれたお紅の存在を描くことにより、文字通り説得力あるものにしていたのもうまいと感じます。

 しかし実は今回、徳兵衛と大久間屋の因縁が原作とは相当異なっております。詳細は伏せますが、徳兵衛が大久間屋を恨んでいるのは共通ながら、原作ではその理由=大久間屋の過去の所業が全く異なり、簡単には白黒付けがたい物語となっていたのですが――こちらではかなりわかりやすい設定となっていたなあ、という印象があります。
 この辺りの人間関係の苦さ、ままならなさが原作の持ち味だっただけに、この辺りは個人的にちょっと残念ではあります。
(あと、大久間屋のキャラデザには絶句)


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2018.09.03

『つくもがみ貸します』 第六幕「碧瑠璃」

 おかしな成り行きで近江屋の若旦那と一緒に大川に転落した清次。その時に若旦那は印籠・焦香を落としてしまい、拾った破落戸から三十両を要求される。とても金を作れない若旦那に代わり、清次はかつて佐太郎がお紅に贈った櫛から大金を作った時と同じように、物々交換で金を作ろうとするのだが……

 朝早く目が覚めてしまい、そこらを散歩していた途中、大川の上の橋でふらふらしている人影を目撃した清次。すわ身投げかと慌てて駆け寄ってみれば、その人影は前々回登場した近江屋の若旦那であります。甘味屋のお花に懸想して、ようやくアタックに至ったはずが、この様子では玉砕した末に世を儚んで――と思いきや、若旦那はせっせとお花の店に通って団子を食べているうちに太ってしまったので、絶食ダイエット中とか……
 確かに清次が内心思うとおり残念な男前(まあ、清次も人のこと言えない)の若旦那ですが、てっきり身投げするのかと→まさかあ(ツッコミ)→勢い余って二人とも橋から転落という漫画のようなコンボを決めて、結局二人とも水も滴る何とやらに。朝からわけのわからないことをしている清次にお紅はおかんむりですが、若旦那は川に大事なものを落としたと青い顔であります。

 若旦那の大事なものといったらどう考えても前々回登場した印籠のつくもがみ・焦香ですが、つくもがみたちが気を利かせて話題に出すまで全く気付かなかった清次とお紅。結局焦香は見つからず、若旦那も行方不明の状況で甘味屋に行ってみれば、そこにやってきたのはこれも前々回登場した、尻に焦香がぶつかったのを若旦那のアプローチと勘違いした芸者さんであります。
 すっかり若旦那の女気取りでお花に噛みつく芸者に、お紅は自分の過去の経験を思い出してムカムカと嫌な気分に……

 前回の回想シーンで、佐太郎と母が帰った後に、お紅と清次の前に現れた娘。佐太郎の縁談相手であり、彼に値80両の蘇芳の香炉を贈った彼女は、佐太郎には自分のような人間が相応しいと上から目線でまくしたてたのであります。佐太郎への気持ちはともかく、さすがに頭に来たお紅は、だったら80両稼いでやろうじゃねえかと闘志を燃やすものの、佐太郎の櫛は見積もって10両。そこでお紅はどうするか――と思えば、佐太郎を恋敵視してる清次を頼ろうとするのですから鬼です。

 ……と、そんなことを思い出しながら町を歩く二人の目に飛び込んできたのは、焦香を手にした破落戸に返してくれと懇願する佐太郎。30両出せば考えてやるよ(返すとは言っていない)的なやりとりがあったものの、お花の店で団子に10両使ってしまった今の自分に、30両はとても用意できないと嘆く(そこは店からちょちょいと――いやいや)佐太郎を見て、またもやお紅は無責任に清次にすがるのでした――あの時みたいにやればいいじゃん、とか何とかいう感じで。

 そう、かつて櫛から80両作るとなった時、清次が取った手段は、わらしべ長者作戦。売っても貸しても足りないのだったら、品物をより高いものと交換していこうと、需要と供給のバランスを掴んで次々とアイテム交換をしていった結果――は今後のお楽しみとして、しかしこの手段には情報収集に時間がかかるという欠点があります。
 急がないといけないのに――とためらう清次に対して、同類を案じる出雲屋のつくもがみを使えばいいじゃない、と悪魔の知恵を出すお紅。そして清次の手腕とお紅の邪知により30両見事に集まった!

 これでどうだと甘味屋で30両を破落戸に突きつける清次ですが、すっとぼけて要求をつり上げようとする破落戸。しかし怒った焦香が破落戸の素肌に噛みついたために、破落戸は焦香を放り出して逃げていくのでした。いや、もっと早くやろうよ焦香――そもそも足があるんだから逃げればよかったものを。
 何はともあれ焦香は帰ってきて一件落着。どさくさでダウンした若旦那も、お花に案じてもらってご満悦、という残念ぶりを発揮してこのお話は終わりであります。


 今回もオリジナル――と思いきや、回想部分のみは原作の一部を使用、というちょっとイレギュラーなスタイルの今回。確かに原作はこの回想だけでほぼ一話使っていたので、この構成はなるほど面白いと感じますが、しかし上で述べたように、焦香が自分で逃げれば良かったのでは――という根本部分がひっかかるところであります。

 ちなみに作中で何回か、月夜見が弘法大師と印籠にまつわるありがたい話というのを語るのですが、これが史実にもギャグにも掠らないのが苦しい、というより視聴者を混乱させる原因となってるのは如何なものか……
(一応、聞いていると眠くなるほどつまらない話→佐太郎が意識を失ったのに清次がそれを引っかける、というオチなのだと思いますが)


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2018.09.02

『つくもがみ貸します』 第五幕「深川鼠」

 麻布のとある神社に願い出れば願いを叶えてくれると評判の怪盗イタチ小僧。イタチ小僧を追う岡っ引きの平蔵も、出来心から神社に出雲屋のお姫人形が欲しいと願掛けしてしまうが、その通りにお姫が盗まれてしまった。イタチ小僧に恋してしまったお姫のためにも、小僧を追うことになる清次だが……

 前回ラストで描かれた清次とお紅、そして佐太郎の過去の回想の続きから始まる今回。佐太郎のところには、縁談話が来ている大店の娘が蘇芳の香炉を贈ってきたようですが、佐太郎自身は縁談に反対の様子。逆にお紅を嫁に迎えたいと言い出しますが、佐太郎の母はお紅に櫛を一つ渡し、これを元手に大金を作ってみせれば認めてやると上から目線であります。
 その後がどうなったかはさておき、前回ラストで浜松屋が持ち込んできた香炉は、単にそっくりさんでした、というオチで、とりあえず今回は過去関連のお話はおしまい。

 さて本筋ですが、浜松屋と入れ替わりに出雲屋にやって来たのは岡っ引きの平蔵。いま瓦版で大評判の怪盗イタチ小僧を追っているというのであります。このイタチ小僧、麻布の居酒屋で役人のセクハラに苦しんでいた店の娘が神社で願掛けをしたら、それに応えて現れ、役人を退治してくれたというのが初のお目見え。以来義賊イタチ小僧の人気はうなぎ登り、麻布の神社も小僧に願掛けしたいという参拝客で溢れている状況です。

 そこで神社に調べに向かった平蔵ですが、「出雲屋で一番値の張りそうなお姫人形が欲しい」などとトンチキな願掛けをしたのはまあいいとして、その後、十手をなくしてしまうという大失態。そこで清次に泣きつく平蔵ですが、さすがに出雲屋にも十手は置いていないのでした(もし置いてあったらどうしようかと思いましたよ……)。
 しかしてその晩、出雲屋に現れたのはイタチ小僧。平蔵の願い通りお姫人形を盗んだ小僧は、神社にお姫を置いて去ろうとするのですが――お姫は神社の神さまのフリをして、何故こんなことをするのか問います。答えて曰く、実はかつて金もなく行き倒れになりかけたイタチ小僧は、神社にお供えされていたサツマイモを囓って命を繋ぐことができた恩を返すため、神社に願掛けされた願いをせっせと叶えているというのであります。

 
翌日、神社にやってきた平蔵に見つけられて出雲屋に帰ってきたお姫ですが、実は彼女には、雑に扱われていた屋敷から盗み出され、その末に出雲屋に辿り着いたという過去がありました。そんなこともあって、義賊に人一倍の憧れを抱くお姫は、イタチ小僧にベタ漏れしてしまったのであります(しかしイタチ小僧はもはや義賊なのか何なのかわからないし、そもそも昔お姫を盗んだ男は普通に盗賊だと思います)。
 そんな彼女を見て、清次に小僧のことを調べるように言い出すお紅。自分も恋する乙女だから、ということかは知りませんが、これはやはり無茶振りではないでしょうか……

 さて、調べを続けていた平蔵ですが、イタチ小僧のおかげで神社が繁盛していたことから、正体は神社の関係者ではないかとなかなか鋭いところを見せます。が、むしろ神社側は芋ばかりお供えされて困惑している様子ですし、そもそも、最初にイタチ小僧に助けられたのは居酒屋の娘ではなくお婆さんであったことがわかります。
 さらにつくもがみを調べに出した清次は、瓦版での評判と実際の事件が異なる――というより、瓦版が現実の事件をことさらに大げさに書いていることに気付きます。そういえばイタチ小僧が出現する前は、瓦版の内容はイマイチで鳴かず飛ばずだったはず――と気付いた清次は、瓦版売りこそが小僧見破り、平蔵は瓦版売りを捕らえるのでした。

 瓦版売り=イタチ小僧の盗みの動機は瓦版を売るため、しかしイタチ小僧の瓦版で荒稼ぎした分は遊興費に消えてしまい、結局イタチ小僧を続ける羽目になったとか――悪いことはできないものです。何はともあれ、お姫の恋の相手は捕らえられてしまいましたが、今や彼女の関心は、新たに現れたという変な名前の義賊に向けられて――なかなか残酷なものであります。


 今回もオリジナルエピソードですが、脚本はベテラン・浦沢義雄。無生物が動いたり喋ったりする話を得意とするだけに、なるほど本作は適材適所――と思いましたが、どうも今回は物語を構成する要素がうまくかみ合ってない印象で、ミステリ要素も今一つであったのが残念なところであります。

 ちなみに何となくホンワカと終わりましたが、十両盗めば首が飛ぶこの時代、たぶんイタチ小僧は獄門だと思います。


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2018.08.27

『つくもがみ貸します』 第四幕「焦香」

 出雲屋に最近顔を出すようになった近江屋の若旦那・幸之助。彼が粋な遊び人として有名なことを知った清次はお紅に近寄らせまいと敵意を燃やし、幸之助の人となりと目的を探るためにつくもがみを宴席に潜り込ませる。しかしそこでつくもがみたちが見たのは、遊び人とは無縁の幸之助の姿だった……

 顔なじみの看板娘・お花がいる馴染みの茶屋で、近頃両国きっての遊び人と名高い近江屋の若旦那・幸之助とすれ違った清次とお紅。その後、幸之助は出雲屋に現れるのですが――何故かお紅に近づくイケメンの若旦那に異様に敵意を燃やす清次は、前々回登場した浜松屋に顔を出した際に、幸之助の人となりを探ります。
 聞けば、幸之助は酒席での金払いもよく人付き合いもいい人物、かといって酒席の女性に手を出すでもなく、金だけ払ってスッと消えてしまう粋さが受けて、行く先々で「煙管の雨が降る」とのこと。しかし一方で、安心させて女性を誑し込むための手管ではないかいう噂もあるというのであります。

 と、お紅一人の出雲屋に現れ、若い娘にはどのような櫛が似合うかなどと尋ねる幸之助。そこに帰ってきた清次がお紅を押しのけて応対するのですが、お紅の脳裏にはかつて自分の前に現れたある男性の思い出が……

 さて、そんな人間たちの様子に興味津々のつくもがみたちですが、五位は幸之助が評判通りの男ではないのではないかと語ります。
 そもそも「煙管の雨が降る」とは、歌舞伎『助六由縁江戸桜』で助六が遊女たちから競って煙管を差し出された時の台詞から来たもの。遊郭などで遊女が気に入った客に自分の煙管を渡し、客もOKであればそれを受け取るというしきたりが由来とのことですが――それはさておき、店で五位を手にした時の幸之助の手つきは、煙管を持ち慣れているとは到底言えなかったというのです。

 そこで幸之助と酒席を共にする浜松屋につくもがみたちを貸し出した清次。酒席を偵察していた五位と野鉄が、粋人とは思えぬ幸之助の態度に、つまらん男だと口走ったら――そこに微妙に良い作画で突然襲いかかる印籠のつくもがみ。しかし躱した野鉄に脚を刈られて転がってった印籠は芸者のおしりに当たって――勘違いした芸者のお姉さんに言い寄られ、目を白黒させた幸之助は、宴席そっちのけで店を飛び出すのでした。

 翌日、道具を返しに来た浜松屋ですが、そこに紛れていたのはあの印籠。焦香と名乗るこの印籠は、幸之助の根も葉もない噂に怒り心頭、実は幸之助は超堅物だとつくもがみたちに語ります。これには興味津々の清次ですが、ここから先は人間には聞かせられないと口をつぐむつくもがみたちに、店を出る羽目になるのですが――そこで幸之助と出会うことになります。
 これまでの非礼を詫びた清次に対して、旦那仲間に付き合いで苦手な酒席に誘われ、角が立たないように金だけ払って先に帰っていたら、こんな評判が立ってしまったと語る幸之助。これでは想い人に声もかけられないと幸之助は嘆くのですが……

 そしてその頃、櫛を磨きながら、お紅は過去の出来事を思い出します。清次とお紅がまだ少し若い頃、店に現れた佐太郎なるイケメンが、店に櫛を持ってきた時のことを。

 と、店に戻ってきた清次と幸之助に、お花に縁談が来ていた(とつくもがみたちから聞いた)と語るお紅。それを聞いて大ショックを受けたのは幸之助であります。そう、彼の意中の女性とはお花――しかしシャイで声をかけられなかった彼は、お花と親しそうな出雲屋に相談しようとしていたのであります。ところが縁談の話を聞かされ、幸之助は一念発起してお花のもとに走って行くのでした。

 しかしこれは実は五位の提案によるつくもがみたちの仕掛け。焦香から真実を聞かされたつくもがみたちは、若旦那を焚きつけるために、わざとお紅にお花に縁談があるなどと空言を聞かせたのであります。煙管は男と女の色恋を焚きつけ、まとめる代物だからな、とキメる五位なのでした。
 ――と、一件落着かと思いきや、ここで浜松屋が、お紅が探す蘇芳の香炉を手に現れます。そう、かつて清次とお紅、佐太郎の前に、佐太郎の母親が持ってきた香炉を……


 またもオリジナルストーリーですが、本作の物語全体に関わる清次とお紅、そして佐太郎と蘇芳の過去が仄めかされるなど、原作を引いた重要な場面も描かれ今回。
 しかし物語の方にはミステリ要素はほとんどなく、清次の一方的な嫉妬と猜疑心が起こした騒動という印象なのがいささか残念であります。

 もっとも、いままでいわば清次たちに利用されていた形のつくもがみたちが、逆に清次たちを利用して――という結末のは実に面白く、本作ならではの人間とつくもがみの関係性が表れていたかな、とも感じます。

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2018.08.19

『つくもがみ貸します』 第三幕「撫子」

 道具を引き取るために訪れた蜂屋家で、勝三郎の許嫁の早苗から母親への不満を聞かされたお紅。何とか早苗と母親の仲を修復したいと考えるお紅だが、清次は早苗から引き取られた簪のつくもがみ・撫子から、お紅が一目惚れをしていると聞かされて気が気ではない状態で……

 婚礼も近い早苗の道具を引き取るため、蜂屋家の屋敷を訪れたお紅。と、ここで早苗の質問という形で、火事が多く地方出身者の多い江戸の人々は道具を持つという習慣がなかった――と、損料屋の客について説明が入ります。こういう形で馴染みのない当時のことが説明されるのはなかなかよいですね。
 それはさておき、今回早苗が大事にしていた道具を売るというのは、母親のおたつが原因の様子。最近、早苗に厳しく接しているようなのですが……
 そういえば、彼女がかつて懸想していた相手がいたことが第1話のエピソードの遠因となったわけですが、早苗はあの時のことは若気の至りの一目惚れだったと既に回想モード。と、そんな彼女に、自分も一目惚れには心当たりがあると漏らすお紅ですが――それを聞いていたのが、早苗の道具の中の簪・撫子であります。彼女はそのことを出雲屋のつくもがみたちと対面した時に漏らしてしまい、清次は心中穏やかではないのですが……

 そこで何も知らぬお紅が、前回触れられた勝三郎の茶会で使うため、早苗に扇子を用意して欲しいと依頼、さらについでのように、早苗と母親の間を取り持ってほしいと無茶振りするのでした。そこで蜂屋家を訪れる清次ですが、今度は早苗の他におたつも現れ、ギクシャクした母娘の関係を目の当たりにする羽目になります。そしてその後少し表に出た早苗に、自分とお紅との関係を語る清次。姉といっても血はつながっておらず、日本橋生まれのお紅の家が大火で焼けてしまい、深川の清次の家に引き取られたと。今回初出の大事な情報ですが、そんな二人の微妙な関係を知らない早苗が、清次もお紅も、それぞれちゃんと結婚するのだろう、などとゴリゴリ清次の精神を削るようなことを言うのですが……
 さて、屋敷に戻ってきた清次の前に再び現れたおたつ。自分が早苗に厳しく当たる(ように見える)理由が、これまで主人のことで手一杯で、これまで早苗に十分に接することが出来なかった分、婚礼前に武家の妻として必要なことを教えたかったから――と、彼女は清次に語ります。これに対して、早苗様もお使いになるうちに婦人向けの道具の良さもわかるでしょう、損料屋はそのための学びの場と思い下さい――などと如才なく答える清次は見事に商売人であります。

 さて、弟が奔走している間、嬉しそうに出かけていくお紅。一目惚れと関係あるのだろうと気になるつくもがみたちは、小芝居でプレッシャーをかけて、唯一自由に移動可能な野鉄をお紅の偵察に送り出します。その後も勝手なおしゃべりを続けるつくもがみたちですが、撫子が何かと話題に上る「蘇芳の人」のことを訪ね、うさぎが説明してしまいます。蘇芳とは高価な香炉であり、その持ち主である日本橋の大店の若旦那のことであると。イケメンで人当たりも良いその若旦那は、お紅に惚れていたにも関わらず、急に彼女の前から消えてしまったと……
 そんなうさぎの無遠慮な語りを耳にして清次は思い切り動揺し、さらにそこに暗い表情でお紅が帰ってきて、店の中はお通夜のような雰囲気に。皆に責められて落ち込んだうさぎは、その晩、自分は(当時の主な用途の)髪を飾るための櫛ではなく、持ち主の母娘が髪を梳かすために使われていたものであり、その際に二人がよく会話していたのが自分がおしゃべりになった理由なのかも、と野鉄に語るのですが――それを聞いていた清次に閃くものがあったようです。

 翌日、蜂屋家を訪れた清次は、おたつと早苗の前で、彼女たちそれぞれの気持ちを語ってしまうというストレートな挙に出るのですが――そこで持参したうさぎの櫛を見せて、その来歴などを語ったことがきっかけで、かつてうさぎの持ち主がそうであったように、母娘は楽しく語らい、お互いの気持ちを通わせるのでした(もちろん、仲立ち役になったうさぎの気持ちも晴れたことでしょう)。
 そしてお紅の一目惚れの相手も、町で見かけた櫛のことだった、とわかって清次も一安心するのでした。


 前回同様、オリジナルエピソードの今回。すれ違う母娘の気持ちとうさぎの抱えた屈託を同時に解決する展開は、いささか直球に過ぎる印象はあるものの、現代とは少々異なる櫛の使い方を軸にした解決はなかなか面白いところ。随所に物語全体に関わる重要な情報が挿入されていたのも印象的に残ります。

 しかし本作、全般的に武家が商人にえらくフレンドリーな印象で、その辺りはもう少し丁寧に描いてもよいのではないか……とはずっと気になっているところではあります。
 あと姉さん、微妙に無神経に見えるので視聴者のヒートを買わないかが心配です。


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2018.08.16

『つくもがみ貸します』 第二幕「梔子」

 古美術商の浜松屋から、店の掛け軸の絵が夜毎入れ替わるという相談を受けた清次。店のつくもがみたちを使って調べた清次は、掛け軸たちがつくもがみであり、美しい女性のつくもがみを巡り、一番を決めるために争っていたことを知る。女性の正体に思い当たった清次は一計を案じて……

 早速オリジナルストーリーの第2話のタイトルは「梔子」――赤みがかった黄色を月の色に見立てたものか、出雲屋のつくもがみの一人・月夜見の主役回でもあります。

 前回登場した佐々木勝三郎の紹介で店を訪れた古美術商の浜松屋から、損料屋の仕事ではなく相談事を受けることとなった清次とお紅。店の掛け軸の絵が、夜毎変わっているというのですが――これは損料屋の仕事ではないと清次が断ろうとするところをお紅がホイホイと引き受けてしまったため、仕方なく清次は浜松屋に行くことになります。

 と、先々代から伝わるというその掛け軸だけでなく絵巻物や絵草紙まで、見てみれば確かに中の絵がおかしなことになっていたのであります。
 源氏物語の中の光源氏は虎と戯れ、その虎と戦っていたはずの加藤清正は鶴と一緒に桃太郎の絵巻物の中に現れ、その絵巻物で犬猿雉を従えているのは源義経で――果たして誰がすり替えているのか、妖の仕業なのか、浜松屋は夜が明けると掛け軸の絵が変わっている原因を突き止めて欲しいというのでした。
 これは面白いと今回はノリノリのつくもがみたちを浜松屋に貸し出して調べようとする清次ですが、その時に合わせ、蘇芳という香炉を探してほしいと浜松屋に依頼するお紅。むしろこれこそが彼女の目的のようでしたが……

 何はともあれ、浜松屋の蔵に潜り込んだつくもがみたちが見たのは、源義経(というか牛若丸)に加藤清正(何だか原作イラストの三木謙次タッチなのがおかしい)、さらに光源氏が、最も優れた男を競い合う姿。どうやら一晩中争った末に、朝になって慌てて戻ろうとして、戻る先を間違えていたのが今回の騒動だったのです。
 日頃掛け軸としての自分に誇りを持っている月夜見は、同胞たちのそんな醜態に怒り心頭、さらに大した事のない掛け軸――というようなことを言われて大爆発を起こすかと思えば、何故か巻物に戻ってしまうのでした。と――そんなところに現れたのは一人の美しい女性のつくもがみ。どうやらつくもがみたちは彼女を巡って争っていたようですが、彼女は周囲の騒ぎに構うことなく、窓から外を見つめて憂いの表情を見せるのでした。

 さて、そんな状況を把握したものの、さすがに浜松屋に真実をそのまま話すわけにいかず、悩む清次。浜松屋から帰って以来、月夜見の様子もおかしいのですが、それをスルーしようとする清次にお紅は不満げです。
 それはさておき、本業の仕事で勝三郎のことを訪れることになった清次。茶会で使う花器を探しているという勝三郎ですが、茶会といえば掛け軸は付き物、清次は満月の掛け軸――すなわち月夜見の正体――の意味合いについて訪ねます。満月の掛け軸は秋の、それも夜にしか使えないが、しかし本物の月が出ているのにわざわざ掛け軸を出す必要もない――と、実は満月の掛け軸は用途に乏しいと語る勝三郎。これまで色々なところで使われてきた自慢してきた月夜見ですが、実はそれは嘘、あまり使われなかったという劣等感の現れであったことを、清次は知ります。

 そして勝三郎の花器を店で探している時に竹の花器を見つけ、あることに気づいた清次は、浜松屋に今晩掛け軸を指定した場所にかけて欲しいと頼むのですが……
 その晩も蔵の中に現れ、窓から外を見る美女のつくもがみ。しかしその晩、窓の外にあったのは輝く満月――の掛け軸。言うまでもなくこれは月夜見、美女の正体が竹取物語の絵物語のかぐや姫であること、そして植木のために窓から外が、空が見えなくなっていたことに気づいた清次の図らいであります。

 果たして蔵のつくもがみたちの争いも収まり、月夜見の面目も保たれて一件落着。そして清次は浜松屋から、満月の掛け軸は実は風流な使い方ができる(その具体例がなかったのはちょっと残念)ものだと説明を受け、さらに月夜見が狩野永徳の叔父のものであったと聞かされ、譲って欲しいと言われるのですが――損料屋はあくまでも品物を貸すもの、お売りできませんということで、今回は一件落着であります。


 冒頭に述べたとおり、原作にないオリジナルストーリーの今回。事件に人間側の事情はほとんど全く関わりなく、品物=つくもがみ側のみで物語がクローズするのは、ちょっと原作の方向性とは異なるかな、という印象はあります。
 ちなみに前回は野鉄、今回は月夜見と、このアニメ版は出雲屋のつくもがみたちの悩みも同時に解決していくという趣向なのかな……?

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2018.02.08

『バジリスク 桜花忍法帖』 第2話「五宝連、推参す」

 駿河大納言忠長に襲いかかる黒鍬者を一蹴する甲賀五宝連。自分の護衛についた五宝連に、忠長はかつての甲賀伊賀の忍法合戦とその結末を問い、語る。同じ頃、高野山で根来転寝と滑婆も、同じことを語り合っていた。そして高野山を出るという八郎と出くわした響は……

 追っかけで恐縮ですが『桜花忍法帖』の第2話であります。今回は予想以上のスローペースで作中の時間はほとんど進まないのですが、それも道理、物語はあの忍法合戦の結末――すなわち『バジリスク 甲賀忍法帖』のラストを語り直すこととなるのですから。

 前回ラスト、刺客の黒鍬者の襲撃を受けた忠長の前に駆けつけた八郎以外の五宝連。草薙一馬の「天竪琴」、口から業火を吐く緋文字火送の「草生炎」、闇の中で燐光を放つ汗を分泌する七斗鯨飲の「蛍烏賊」、周囲に無数の撒き菱を放つ遊佐天信の「千手観音」と、かつての甲賀伊賀の代表選手もかくやという忍法で刺客を一掃した彼らは、忠長を守って江戸に向かうことになります。
 そして渡し船を用意する間に休むこととなった小屋の中で、忠長はあの忍法合戦のことを――弦之介の瞳術や不死身の天膳のことを語り、鯨飲に問いかけます。

 一方、何やら屈託を抱えた八郎は、村を離れることを決意。その八郎と出会った転寝も、それを制止することなく行かせるのですが――それを知って収まらないのは滑婆であります。そんな彼女に対して、転寝は、八郎と響は、弦之介と朧、いやその祖父母の弾正とお幻の悲恋体質を受け継いでしまったのでは、と憂い顔を見せるのでした。

 そして忠長は問います。無敵と言われた甲賀弦之介が伊賀の朧に敗れたのは何故かと。そして転寝は語ります。自害した朧を前に弦之介が伊賀の勝利を記し、自らも後を追ったと。忍びの中でこれらの真相を知るのは、立会役であった服部響八郎のみ……
 そして赤子の八郎と響を連れてきたのは、まさにこの響八郎(そして赤子を見て号泣する鯨飲)。八郎と響が死んだはずのあの二人の子だとしたら、響八郎はどのような役割を果たしたのか?

 そんな中、村を出るところであった八郎と、なんとなく迷子の捜索をした帰りの響が遭遇。八郎は、かつて二人が瞳と瞳を合わせた時に起きた現象を――その時は嵐のように周囲のものを吹き飛ばした現象を――恐れていると語ります。
 これに対して「八郎とならどうなってもいい」と答える響ですが……

 そして忍法合戦の結果について未練たらたらの忠長。あの時を境に彼の運命は天国と地獄が逆転したようなものだったわけで、複雑な想いを抱き続けているのも無理はありませんが――そこに小屋の扉を開けて、天信が現れたものの、どうにも様子がおかしい。
 忠長と鯨飲、火送が唖然と見つめるその前で、天信の首が地に落ちて――次回に続きます。


 というわけで、本当に本筋の方は進まなかった今回ですが、忠長と鯨飲、転寝と滑婆の二組の口から、前作の忍法合戦の結末が語られ、そして我々がよく知るあの結末を知るものが作中にはほとんどいないことが示される――それ以前にあの結末が真実なのかも含め、全ては「藪の中」であることを見せるという演出は実に面白いと思います。(しかし回想シーン、制作会社が変わったために前作の映像が使えない(らしい)のがもったいない……)
 何はともあれ、あれだけ悲劇的な、そして美しい最期を遂げた弦之介と朧が生きていて、子供まで作っていたとしたら、それはそれで涙を返せ案件ですが、それもまた「藪の中」なのでしょう。まあ、甲賀と伊賀であれば、色々な手で本人抜きでも子供くらい作りそうではありますが。

 そして見るからに強豪ムードを出していたにも関わらず、あっさりと倒された天信。いやOPとEDに出てなかったから、予想していた向きも多かったのではないかと思いますが……(この展開、原作初読の時はかなり衝撃的だったのです)

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2016.06.20

『コンクリート・レボルティオ 超人幻想』の結末を迎えて

 『コンクリート・レボルティオ 超人幻想』が最終回が放映されました。昭和を思わせる文化風物歴史を持ちながらも、幾多の「超人」が存在するという点で決定的に異なる「神化」の世界を舞台とした物語の結末を迎えて、今回は、思い浮かぶままに書かせていただきます。

 世界の裏に潜む何者かの陰謀によって、あるいは己の背負ってきた過去と宿命によって、追い詰められてきた末に、ついに社会に対して宣戦布告するに至った主人公。彼が最終的にいかなる運命を辿ったか……
 その具体的な内容について、ここでは触れません。しかし、一抹の寂しさは否めないものの、物語はこの上ない大団円を迎えたと言うことはできます。

 幾多の超人たちが、それぞれの主義主張や権力や社会との距離感によって二手に分かれ、激しく激突する。あるいは、現実世界の歴史を彩る事件の裏側に存在した超人たちが陰謀に翻弄され、それぞれの形で社会と対峙する。
 本作は、そんな『シビル・ウォー』や『ウォッチメン』と大きく重なる要素、物語構造を(意図的に)多分に持ちながらも、しかし結末において、大きく異なる着地を見せることとなります。

 本作の結末で描かれたもの、それは超人と幻想(物語/虚構)の一つの輝かしい「勝利」の姿であります。それは、人間と現実に対する勝利では、もちろんありません。逆に、それを、その可能性を嗤い、否定するものに対する勝利であります。
 言い換えればこの結末で描かれたものは、まさしくタイトル通り超人と幻想の存在の意味・意義。この点において本作は――いささか誤解を招く表現かもしれませんが――先行する物語より「大きな」ものを描くに至ったとすら感じられるのです。


 確かに表面的な展開や着地点自体は、第一期のクライマックスのような直接的なカタルシスあるものとはまた異なるものであり、その点では不満や違和感を感じる方がいることもわからないではありません。
 しかしこの結末は、間違いなくこの第一期の展開の延長上にあるものであり、そしてそれはついに物語の世界を超え、現実の世界に、我々の世界にまで届いた……そう感じます。

 そしてそこに込められているものは、原作者でありメインライターである會川昇が、これまでその作品の中に時に直截的に、時に間接的に描いてきたものの集大成と言ってよいでしょう。
 虚構の物語(これは「娯楽」と言い換えてもよいでしょう)の中で現実の過酷さを浮き彫りにし、そしてそれと同時に、現実を否定したり逃避するのではなく、それ乗り越える力としての虚構を描くという試みの……


 本作は、鏡合わせの虚構の世界の歴史――それもこれまでのフィクションでは一瞬の空白期であった時代――を描くことを通じて、現実の世界のそれを再構成し、浮き彫りにしてみせてくれました。
 そしてそれと並行して虚構の世界で実在した超人たちを描くことを通じ、現実世界の物語に我々がこれまで見たもの、託してきたもの、言い換えれば(歴史上の事件の表面には表れない)精神性までも浮き彫りにしてみせたと言えるでしょう。

 そしてそれが同時に、物語の力をどこまでも信じ、謳い上げたものであったことが、私は何よりも嬉しく、希望に満ちたものとして感じられました。


 虚構の存在を通じて現実の在り方を描く物語を伝奇と呼ぶとすれば、本作はまさしく伝奇であり、そして同時にその伝奇というものの意味までも見せてくれた極めつきの作品である――些か牽強付会に見えるかもしれませんが、自信を持って言えるところであります。


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 『コンクリート・レボルティオ 超人幻想』 第4話「日本『怪獣』史 前篇」
 『コンクリート・レボルティオ 超人幻想』 第19話「推参なり鐵假面」

 會川昇『超人幻想 神化三六年』 超人を求める人々の物語
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2016.05.19

『コンクリート・レボルティオ 超人幻想』 第19話「推参なり鐵假面」

 南極の氷の中から発見された三百年前の人間。それは戦国時代にゼスサタン軍団と戦った鐵假面剱士・影胡摩だった。誤解から爾朗を襲撃する胡摩だが、突然攻撃を止めて、最近発見された古墳に向かう。後を追った爾朗たちの前で、古墳に封じられたある存在を復活させようとする胡摩の真意とは……

 諸般の事情でストップしていた『コンクリート・レボルティオ 超人幻想』紹介ですが、通算第19話の今回の題材は特撮時代劇とくればやらないわけにはいきません。
 今回のゲスト超人は鐵假面剱士……以前、劇中漫画の主人公として登場し、その時に「うわぁ、読みたい!」「この世界の戦国時代・江戸時代も見てみたい!」と思っていたキャラクターであります。

 今回の物語は、その鐵假面剱士こと影胡摩が何故か南極から発見されたことから始まり、彼女を操って宿敵・爾朗を排除しようとする帝告の里見顧問と彼と結ぶ総理大臣の陰謀、それに巻き込まれた爾朗と来人と超人課の呉越同舟、そして思いもよらぬ胡摩の行動……と目まぐるしく展開していくこととなります。

 これまでもちょっと数え切れないくらいのモチーフを以て構築されてきた本作ですが、今回ざっと目に付いただけで「獣面の変身剣士」「強大な力を持つ神に身を捧げる乙女」「西日本を支配する巨大な魔王」「時代劇なのにビームやロケット」「氷の中から発見されるヒーロー」と(最後はちょっと趣が異なりますが)ニヤニヤさせられるものばかり。
 しかしもちろん、これまでと同様に、どこかで見たようなキャラクターや題材を組み合わせたパロディだけに終わらないのが、本作の魅力であり、恐ろしい点であります。


 冒頭で述べたとおり、今回のモチーフとなっているのは、特撮時代劇。それも昭和40年代、特に昭和47年・48年頃に放映された作品でありましょう。

 この時期に特撮時代劇が集中したのは、非常に大まかに言ってしまえば、折りからの変身ヒーローブームと、映画からTVへとその依って立つところを変えつつあった時代劇の幸福な結びつきの産物と言えるでしょう。
 しかしある意味非常に単純明快な足し合わせからスタートしたこのサブジャンルですが、この時代の特撮やTV時代劇がそうであったように、思わぬ化学反応を生み、実にユニークな内容を持つに至った作品もあります。

 その一つが、昭和48年に放映された『風雲ライオン丸』……今回の主なモチーフの一つと思われる作品であります。

 いずれこのブログできちんと全話取りあげる予定ですが、戦国時代を舞台としつつも、ほとんど西部劇的なビジュアルやキャラクターなどの荒唐無稽な部分と並び、その極めて重くドライなストーリー展開が印象に残るこの作品。
 特に、死闘の果てに敵の首領を倒したものの、世に平和が戻ることなく戦乱は続き、主人公は一人笑顔もなく去って行く……という最終回は、今なお語り草であります。

 もちろん、超人百花繚乱だったこの時期において、シビアでハードな物語は皆無ではありませんが、この結末がある種の説得力を持つのは、戦国時代という史実をバックにしているからでありましょう。その意味で、特撮時代劇としての一つの到達点と言ってよい作品かと思います。

 話が遠回りしましたが、影胡摩がかつて味わった想い、そしてそれを引き金とした彼女の暴走とも思える行動は、この作品で描かれたものの延長線上にあると言ってもよいのではないでしょうか。


 本作でこれまで描かれてきたように、単純な正義が失われていく「現代」。それに対し、明確な正義と悪が存在し、正義が悪を滅ぼせば全てのケリがついた「過去」は一種の理想であるかもしれません。
 しかしそれも実は現代の人間からの線引きに過ぎません。そしてその図式は、我々が暮らす平成の時代と、本作のモチーフとなっている時代にも……というより、あらゆる時代を通じて当てはまるものでしょう。

 今回のエピソードは、過去の超人を現代に甦らせるという荒技を使うことによって、過去から現代を、現代からもう一つの現代を俯瞰的に見返したものと言えるでしょう。
 これまで同様、物語を構成する要素の善悪・良否を単純にジャッジするのではなく、同時に徒に相対主義に陥るのでもない、そしてもう一つ、そこに小さくとも一つの希望を見出すという、本作ならではの視点で。

 モチーフとなった作品同様、何処とも知れぬ旅に再び出た影胡摩。しかしあえて善悪の境の定かならざる現代を行くことを決意した彼女の顔に浮かぶものは、決して絶望でも諦めでもなかったと……私はそう感じるのです。


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