2019.07.22

『鬼滅の刃』 第十六話「自分ではない誰かを前へ」

 那田蜘蛛山に潜む鬼に操られる鬼殺隊士たちに襲われる炭治郎と伊之助。卑劣かつ非情な敵に怒りを燃やして進む二人の前に、首を持たない怪物が現れる。炭治郎の的確な指示で怪物を倒した二人は、その余勢を駆って母鬼をも倒すのだが……

 敵に操られる隊士たちの襲撃を受けた炭治郎と伊之助(善逸はへたれて置いてけぼり)が、その敵の居場所を看破して――というところで終わった前回。しかし目の前には操られた隊士たちが立ち塞がって――というところでいきなり男を見せたのは、モブ隊士の村田さんであります。「ここは俺に任せて先に行け!」とやたらと格好良い台詞で二人を送り出します。
 が、すぐに二人の前に立ち塞がったのは、操られるその他の隊士たち。肉体の限界を超え、体を損壊しつつも攻撃してくる者や、既に体中がずたずたになって殺してくれと訴えてくる者と、もう大変な鬱展開なのですが――ここでめげる炭治郎ではありません。

 攻撃できず、そして糸を斬ってもすぐ繋げられてしまう状態――それなら糸を斬らずに動きを封じることができれば、というわけで、相手を捕まえて樹の上に投げ上げ、枝に糸を絡ませてしまおうという炭治郎の策は大成功。こういう変わったことには目がない伊之助も大喜びでチャレンジして成功、これで隊士たちを助けられる――と思いきや、怒った母鬼の手で隊士たちは全員首を捻られて……
 さすがの伊之助も黙るほど怒りのオーラを漂わせる炭治郎。決意も新たに先に進む二人の前に現れたのは――母鬼の切り札、首のない肉体に、肘から先を昆虫めいた奇怪な刃に変えた異形の「人形」であります。冷静に考えれば鬼じゃないのだから首がなくてもまあ何とかなる気もしますが、しかし伊之助は急所が無ェと、ちょっとびっくりするほど大慌て。そこで炭治郎は冷静に、袈裟斬りにしてみてはどうかと提案するのでした(これはこれで怖い子だな)。

 そこまで聞いていきなり突っ込む伊之助。しかし蜘蛛に動きを封じられ、身動きできずに目の前に迫る敵の刃――というところで割って入ったのはもちろん炭治郎。危機一髪のところを助けられて好感度ゲージがホワホワ上がる(まあ、より正確には人間との関係性ゲージなのだと思いますが)伊之助にダメ押しするように、炭治郎は力を合わせた攻撃を提案、さらに自分を踏み台にして跳べと促すのでした。
 そして炭治郎が相手の足を斬れば、大ジャンプした伊之助は相手の巨体を袈裟斬りに――この見事なコンビネーションの源が、俺が俺がではなく、戦いの流れを見ている炭治郎にあるとと、さすがの伊之助もついに認めるのでした。(しかしこの「人形」、斬られるとボロボロになって消えたというのは鬼の死体を人形にしたということなのか?)

 が、ここで素直になれない伊之助は、炭治郎を捕まえると上にぶん投げ、そのまま炭治郎は母鬼のところへ一気に到達。突然目の前に現れた炭治郎に、母鬼は反撃を――しない。もはや奥の手も尽きたのもさることながら、父鬼からことあるごとにDVを受け、他の家族からも白眼視されていた彼女にとっては、もはや死こそが救いだったのであります。
 そして自ら首を差し出した母鬼の動きを察知し、咄嗟に繰り出す技を伍ノ型 干天の慈雨に変えた炭治郎。例によってナレーションが入らないためにわかりにくいかもしれませんが、この型は相手に苦痛を与えない慈悲の剣撃であります。母鬼はむしろ暖かさすら感じたまま崩れ去るのでした。その間際に、この慈悲を与えた炭治郎に対し、十二鬼月がいると言い残して。

 そしてその頃善逸は、ちゅん太郎をお供におっかなびっくり山の中に歩を進めるのですが、その後ろには……


 一話丸々、母鬼との戦いであった今回。上で述べたように、操られて襲いかかる仲間を救えるかと思いきや結局救えない鬱展開の上に、鬼側ではDVが行われている(またこの時の会話が妙にリアリティのある厭な描写)という、冷静に考えると非常に気の滅入る内容なのですが、比較的その印象が薄いのは、炭治郎と伊之助の関係性の変化を丁寧に描いていたためでしょうか。
 考えてみればなし崩し的に行動を共にしているものの、鼓屋敷での蛮行はやはりドン引きものの上に、結局炭治郎とはぶつかってばかりの伊之助。その伊之助が、真に炭治郎と仲間になったのは、今回からと言えるのではないでしょうか。

 まあ、その時暴力を振るった相手の善逸はここにはいないのですが……


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2019.07.15

『鬼滅の刃』 第十五話「那田蜘蛛山」

 先の戦いの傷も完全に癒えた炭治郎・善逸・伊之助に下された新たな任務――それは那田蜘蛛山に急ぎ向かえというものだった。先に派遣された十人もの隊士たちが行方不明になっていたその山で、先発の隊士たちから襲われる炭治郎たち。彼らは皆、蜘蛛の糸に操られていた……

 禰豆子だけでなく、炭治郎まで頭上にお花を浮かべて追いかけ回す善逸の姿から始まる今回。このアニメ版特有の(?)原作のナレーションは再現しない仕様のおかげで、禰豆子が炭治郎の妹だと知ったくだりが描かれず、とうとう善逸が色々と見境がなくなったように見えないでもないのが困りものですが、何はともあれ炭治郎・善逸・伊之助の三人組は、今回も実に賑やかであります。
 そんなこんなで傷も完治したと思えば、早速鎹鴉が指令を携えてやってくるブラックな職場の鬼殺隊、今度の任務地は那田蜘蛛山だそうですが……

 他人に無償の好意を向けられるのに全くもって馴れていない伊之助が、藤の花の家紋の屋敷のお婆さんが手向けの言葉を贈ってくれたことを理解できず炭治郎に絡んだり、うまく説明できなかった炭治郎がダッシュしてごまかしたり――と、相変わらず男子中学生の日常のような微笑ましい三人組なのですが、しかし辿り着いた那田蜘蛛山は見るからにヤバげなムードであります。
 例によってへたれぶりを発揮した善逸が腰を抜かしているところに現れたのは、鬼殺隊の隊士。しかし助けを求めてきたその隊士は、炭治郎たちの眼前で、謎めいた言葉を残して、文字通り山の中に引き戻されてしまったではありませんか。

 かくて、善逸を置いてけぼりにして山中に分け入った炭治郎と伊之助ですが――そこで彼らが出会ったのは、いかにもモブい感じの隊士・村田さん。炭治郎たちの前に、総勢10名でこの山に派遣された村田さんたちですが、突然隊員たちは同士討ちをスタートしたというのであります。
 ……という話が終わるのを待っていたかのように現れるゾンビっぽい隊士の皆さん。早速襲いかかってくる隊士たち(ここで、隊員同士でやり合うのが御法度と知らないなんて馬鹿だぜ、と得意気な伊之助がアホカワイイ)。彼らが何者かに操られていることに早速気付く炭治郎ですが――その正体は、隊員たちの体につけられていた糸だったのでした。

 早速糸を切る炭治郎ですが、しかしこの糸は、周囲に無数に蠢く蜘蛛たちがつけたもの。切っても切ってもすぐにつけ直される上に、炭治郎たちの体にまで隙あらばつけようとするのですから恐ろしい。これではラチがあかないと、伊之助は鋭敏な触覚で遠方の存在をも察知できる獣の呼吸・漆の型 空間識覚――伊之助のわりには攻撃技ではないのが面白い――で、蜘蛛たちを操る鬼を発見するのですが……

 隊士たちの危機にお屋形様の命を受けて出撃する二人の柱・義勇としのぶ、炭治郎が禰豆子を連れていったことを思い出しておっかなびっくり山に足を踏み入れた善逸、操り人形の糸を操る鬼、そしてその鬼を「母さん」と呼び、張り巡らされた糸の上から炭治郎たちの戦いを見つめる少年鬼――かつてない規模の戦いは、まだ始まったばかりであります。


 というわけで、これまでは一対一、せいぜい敵味方二、三人同士の戦いであったものが、敵味方ほとんど団体戦のような様相を呈する那田蜘蛛山の戦い。冒頭のわちゃわちゃと楽しい炭治郎たち三人組の姿からはうって変わった地獄絵図ですが、この落差の激しさこそが『鬼滅の刃』であります。

 そして今回初登場したのは二人目の柱・しのぶさん。冷静に考えれば義勇さんが柱ということがこれまで言及されたのか、そもそも柱って何だっけ? という気もしますが、それはさておき――ほとんどのキャラは初登場の時悪人かサイコパスに見える本作(言いすぎ)らしく、にこやかな態度の中にも昏さが見える瞳が印象的であります。

 今回はもう一つ、善逸の雀・チュン太郎の本名が「うこぎ」だったという事実が判明したのがマニアには嬉しい……か?


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2019.07.07

『鬼滅の刃』 第十四話「藤の花の家紋の家」

 善逸を執拗に痛めつける猪男――嘴平伊之助と激突する炭治郎。素手での激しい戦いは、炭治郎が猛烈な頭突きで伊之助をKOして終わるのだった。その後、指令で休養のために藤の花の家紋の家に向かう三人。騒々しい一日も終わりの夜、炭治郎の箱の中に禰豆子が入っていたことを知った善逸は……

 鬼(禰豆子)の入った炭治郎の箱を必死に守る善逸をボッコボコに痛めつける猪男に激怒する炭治郎、という場面から始まる今回。こちらもいきなりぶん殴ってアバラを折る(しかし腹を殴ってアバラが折れるのか?)というラフファイトに走る炭治郎ですが、彼らしいと言うべきか、怒る理由が禰豆子の箱を刀で突き刺そうとしたからではなく、善逸に暴力を振るったから、というのが素晴らしいところであります。
 しかしこのリアクションに喜んだのは猪男。隊員同士で刀を抜くのはいかんと炭治郎に怒られて、それならばステゴロでいこうともの凄い曲解をすると、今度は炭治郎に襲いかかります。そして繰り広げられる二人のバトルなのですが――この辺り、とにかくやたらとリソースを割いた感のある気合いの入ったアクションが延々と続き、まさかここでこのクオリティのものが見れるとは、と驚かされます。

 そして猪男の、文字通り獣のような下段中心の攻めに苦戦する炭治郎。しかも異常に体の柔らかい猪男は、アバラが折れているというのにキングアラジンの真似までして柔軟アピールであります。体に悪いと心配する炭治郎に、「今この刹那の愉悦に勝るもの無し!」と読み書きできないわりに妙な言い回しを知っている猪男ですが、それはともかくここで炭治郎の隠し必殺技、頭突き炸裂!
 さすがの猪男もよろめいて猪の仮面が外れるのですが――その下の素顔は何と美少女顔。違和感バリバリの中、ここでようやく嘴平伊之助と、これは何となくらしい名前を威勢良く名乗る猪男ですが――そこでようやく頭突きの威力が頭に回り、失神するのでした。

 何はともあれ鼓屋敷での戦いもこれで終了。炭治郎の絶妙の天然ぶりと伊之助の単細胞が噛み合って犠牲者たちの埋葬も終わり、炭治郎たちは清や正一、てる子と別れて山を下りることになります。正一が鬼を倒したと完全に勘違いしている善逸が、正一と離れたくないとダダをこねた末、炭治郎に首筋に手刀を食らう一幕もありましたが……
 そして休息と治療のために三人が向かったのは、「藤の花の家紋の家」。この家紋の家は過去に鬼狩りに命を救われており、鬼狩りに無償奉仕をする家柄ということですが――いざ入ってみれば、異常に手際のよいお婆さんによってこれまた異常においしそうな食事が振る舞われたり、布団が用意されたり医者が手配されたりと、何ともいたれり尽くせりであります。

 しかしおかしいのは、直前まで激しくやりあっていた(というか伊之助が一方的に突っかかった)三人が、一緒の食卓を囲んでわちゃわちゃ騒いだり、布団を並べてうだうだ喋ったりしていることで――君たち修学旅行か! とツッコミたくなる姿なのです。もちろんそれが実に良いのですが……

 しかし、そこでちょっとマジになったのは、善逸であります。(自分がボコられる原因となった)鬼を連れているのは何故か――そう問われて、まずそれを知って箱をかばってくれたことに礼を言う炭治郎は良い子ですが、いい奴と言われて赤面したり、強いと言われたら真顔で正一君と引き離したことは許さないとキレたりたりと、実に善逸は面倒くさい。
 そしてそんなやりとりをしている間に、箱から禰豆子が出てきたのですが――はじめビビっていた善逸も、出てきたのが美少女と知って豹変。お前のリア充生活のために頑張ったわけじゃないとブチ切れると、結婚を止められたのと正一のことも合わせ、炭治郎を粛正すると日輪刀を抜き――という、実にしょうもないオチで次回に続きます。


 というわけで前半のハードな徒手格闘と、後半の修学旅行ぶりと、ある意味実に本作らしい内容だった今回。途中に入る場面転換の演出が非常に気恥ずかしいものがありましたが、やっぱり一人より二人、二人より三人の方が台詞やリアクションに膨らみが出てよいものです。

 そして次回予告はまさかのキメツ学園物語。本編の方ではしばらくお見限りだった(と言ってももうすぐ出番あるんですが)義勇さん、良かったね登場できて――まあ、本編とは別の意味でポンコツですが……


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2019.07.02

『鬼滅の刃』第十三話 「命より大事なもの」

 全力を出した響凱に苦戦を強いられつつも、戦いの中で新たな動きに開眼し、ついに響凱を倒した炭治郎。清たちとともに屋敷の外に出る炭治郎だが、そこに待っていたのは、傷つきながらも禰豆子の入った箱を守る善逸の姿だった。善逸を執拗に痛めつけた猪男に、炭治郎は……

 前回ラスト、いかにも少年漫画の主人公らしく、それでいてちょっとヤケクソ気味に己を鼓舞した炭治郎。しかしあっという間にやっぱダメだ! と気合いだけではどうにもならないことを思い知るのでした(それにしても早すぎないか――と思いましたが、原作では数コマで断念しているのでまだマシ)。
 それでは頭を使うんだ! と言っても頭を使う暇もなく、精々が相手の名前を問うて、響凱であるということを知ったくらいの炭治郎。そんな中、響凱が繰り出してきたのは、」さらにハイスピードに鼓を叩きまくるという、ビジュアル的には面白いものの、色々と洒落にならない攻撃であります。しかしその戦いの最中、部屋の一つの棚にしまい込まれていた無数の原稿用紙が散らばり、床にまき散らされて――そこに何かが書いてあるのを見て取った炭治郎は、とっさにそれを踏まずに避けるのでした。

 それを見て驚いたのが響凱であります。実は彼の前身は作家志望の男(そして趣味は鼓)。しかしなかなか芽が出ずに知人(?)から酷評を受けた上、文字通り原稿を踏みつけにされた彼は、鬼の力で相手を惨殺した過去があったのであります。
 もちろんそうとは知らぬものの、しかし咄嗟に紙を避けたことがきっかけで、怪我が痛まない体の動かし方、呼吸法に開眼した炭治郎。そして響凱の攻撃の予備動作も見破り、水面を飛び跳ねるような動きで回転する部屋もものとはせずに飛び込んだ炭治郎の一刀は――「君の血鬼術は凄かった!!」という言葉とともに――見事に響凱の頸をはねるのでした。

 そして崩れ落ちながらももう一度炭治郎の言葉を確かめる響凱と、それを認めながらも、人を殺したことは許さないと答える炭治郎。不思議な心の交流の果てに、響凱は自分のことが認められた満足感と共に散るのでした。(まあ炭治郎はその間、珠世に言われたとおりに響凱の血を採取したりしていたのですが)
 何はともあれ、屋敷を支配していた鬼が滅び、待っていた清とてる子とともに表に向かう炭治郎。しかしその途中で血のにおいを嗅ぎ、不吉な予感に急いでみれば、そこには猟奇猪男にボッコボコにされた善逸という衝撃映像が待っていたではありませんか!

 実は炭治郎と響凱の戦いの最中、屋敷がグルグル回るのに巻き込まれて屋敷の窓から外に放り出されていた善逸と正一。咄嗟に正一を庇って傷を負うなど、相変わらず人の良いところを見せる善逸ですが――そこで終わればまあめでたしだったところに飛び出してきたのがあの猪男だったのです。
 そして善逸が声を聴いて気付いたその正体は、五人目の鬼殺隊合格者――そう言われてみればお館様が、その場に四人しかいないのに五人と言っていましたが――誰よりも早くやって来て誰よりも早く帰っていったという見かけ通りの猪野郎であります。

 さて、その猪男が狙うのは、鬼の気配がする箱――そう、禰豆子が入った箱。しかし善逸は箱に鬼がいることを初めから知りながら、炭治郎を信じ、そして炭治郎の「命より大事なもの」という言葉のためだけに、箱に襲いかかる猪男を必死に止め、身を挺して庇っていたのであります。そんな善逸に対し、らちが明かぬとついに刀を取り出した猪男。それを目にした炭治郎は……


 前回原作を3話消化したと思えば、1話半という一気にペースダウンした今回。しかし前半は響凱との決着戦、後半は善逸の覚悟と決意というそれぞれ大切な内容だったので、まあ仕方がないところでしょう。
 特に善逸については、原作以上に丹念に善逸の行動を描写することで、これまでどう見ても単なるナニだった彼の中の――これまで少しずつ匂わされていた――内なる善性とヒロイズムの描写に力点を置いてみせたのは大いに好感が持てます。その分、かなり痛めつけられて痛ましい限りですが……

 さて、今のところ単なる戦闘狂の猪男の方はどのように描かれるのか――それは今後に期待であります。


 しかし響凱、伝奇小説家志望だと知って一気に親近感が(もっとも私など、うかつな感想書いてばっさりやられる側かもしれませんが……)


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2019.06.26

『どろろ』 第二十四話「どろろと百鬼丸」

 燃えさかる炎の中、最後の死闘を繰り広げる百鬼丸と多宝丸。ついに多宝丸を追いつめる百鬼丸だが――その時、これまでのどろろたちの思い出が頭をよぎり、刀を止めるのだった。負けを認めた多宝丸から両目を返され、現れた最後の鬼神も倒した百鬼丸。しかし炎に巻かれて倒れた彼の前に現れたのは……

 開幕早々、超絶作画で猛烈な剣戟を繰り広げる百鬼丸と多宝丸。死闘の最中、これは自分の城だ、自分の部屋などと百鬼丸に子供じみた言葉を叩きつける多宝丸ですが――戦いの中で百鬼丸は、多宝丸に欠けたものがある――百鬼丸には胸の部分が黒くぽっかりと空いて見える――のを感じ取るのでした。
 それでも互いの刃が止まることなく、いよいよ激しくなる火勢の中、ついに決着の時を迎える二人。百鬼丸のとどめの一撃が振り下ろされようとした時――百鬼丸の脳裏をよぎったのは、何故かどろろや、彼女との旅の中で出会った人々の姿でありました。

 そしてそれに止められたかのように、刀を下ろす百鬼丸。訝しげな多宝丸に、俺たちは人だと百鬼丸は告げ、多宝丸もついに負けを認めるのでした。そして百鬼丸に最後の身体の一部――両目を返すべく、己の目を抉りだした多宝丸。それと呼応するかのように、崩れつつある城の中に現れたのは十二番目の鬼神――植物とも鉱物ともつかぬような巨体の中核と覚しき部分を百鬼丸の刀が貫き、ついに百鬼丸は全き身体を取り戻したのでした。

 しかし返ってきたばかりの目を開けられぬ百鬼丸の上に落ち掛かる、燃え崩れた城の一部。そこから彼を救ったのは、既に城の中に入り込んでいた寿海と、抜け穴を抜けて戻ってきた縫の方でありました。ついに目を開けた百鬼丸と見つめ合い、母子の名乗りを交わす縫の方と、百鬼丸に最後の授け物として仏像を――人の心を与える寿海。百鬼丸を抜け穴から逃がし、その場に残った二人、いや、ようやく母の心からの愛を受け止めて心の隙間を埋めた多宝丸も入れて三人は、従容として崩れ落ちる城と運命を共にするのでした。
 一方、抜け穴の途中まで追ってきたどろろと出会い、共に外に出た百鬼丸。その目に映るのはどろろの顔と、美しい夕焼けの空……

 そして戦いが終わり、焼け出された人々の村の再建を、青年三人組に提案するどろろ。武士の力ではなく、金の力を使うというどろろに怪訝な表情の青年団ですが、どろろは心当たりがあると――もちろん、父の残した財宝であります――笑ってみせるのでした。

 一方、ただ一人地獄堂に向かった百鬼丸。そこには、朝倉との戦いで数多くの兵を失い、満身創痍で堂の中に端座する醍醐景光の姿がありました。事ここに至っても自分の所業を恥じることなく、今ここでお前に討たれても魂魄ここに留まって鬼神となると嘯く景光。しかし百鬼丸の刃が貫いたのは景光ではなく、傍らに置かれた兜でありました。
 百鬼丸が選んだのは、父を殺してこの先も修羅の道を行くのではなく、人の道を行くこと。そしてあんたも人として生きろと告げて去る百鬼丸の器と生命力の大きさを前に、初めて景光は己の失ったものの大きさを知り、心から慟哭するのでした。そう、百鬼丸を己の欲望の生贄にしなければ手には入ったかもしれないもう一つの未来――父と子で手を取り合って作り上げる国を失ったことを……

 そしてそのまま一人飄然と何処かへ旅立つ百鬼丸。しかしどろろはいつの日にか必ず百鬼丸が自分のもとに帰ってくることを信じて、村を再建するために走り始めます。そして数年後、美しく成長したどろろの前に、凛々しく成長した百鬼丸が……


 まさに大団円と呼ぶに相応しい内容となった最終回。多宝丸も縫の方も寿海も、悲しい結末ではありますが、しかしそれぞれ最後には己の行動に、己の生に満足することができたと言うことができるでしょう。
 景光が最後まで生き残ったのに不満を覚える方もいるかもしれませんが、しかし己以外の全てを失い、そしてその時になって初めて自分の欲望のために失ったものの大きさを知ったのは、彼にとっては何よりも残酷な罰と言うべきではないでしょうか。景光を怪物としてではなく、一人の人間として――そしてそれを百鬼丸の成長を通じて――描いたこの結末、私は大いに感心しました。

 そしてどろろと百鬼丸ですが――すっかり母親似の美人となったどろろと、家族の良いところだけ集めたようなイケメンとなった百鬼丸。二人にとっては最高の結末でしょう。
 最高と断言して良いかって? その理由は、景光が仕えた富樫家が一揆勢に追われ、加賀はその後100年近く「百姓の持ちたる国」となったという史実を掲げれば足りると――私はそう思います。

 そして原作においても景光が富樫家の家臣であったことを思えば、原作の描けなかった結末に、ここでようやくたどり着くことができた、というのはさすがに言い過ぎかもしれませんが……


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2019.06.23

『鬼滅の刃』第十二話 「猪は牙を剥き 善逸は眠る」

 鼓の音で空間を操る鬼・響凱と、謎のイノシシ男に遭遇した炭治郎。見境無く襲いかかってくるイノシシ男と乱闘している間に再び別の部屋に飛ばされた炭治郎とてる子は、そこで探していた少年と出会う。一方、炭治郎とはぐれた善逸と正一も別の鬼と遭遇、追いつめられた末に寝てしてしまう善逸だが……

 小生という小説家みたいな一人称の割には諏訪部声でブツブツ喋るゴツい鬼と、やたらとテンションの高い猟奇イノシシ男と、閉ざされた和風建築で一、二を争うくらい会いたくない連中と遭遇してしまった炭治郎とてる子。鬼――響凱が身体から生えた鼓を叩けば部屋が回転し、文字通り振り回される炭治郎ですが、同様の状態のイノシシ男がてる子を踏みつけにしたことに激怒、足を捕まえて片手でブン投げるという、何気に怪力ぶりを発揮いたします。
 しかしこれが闘争本能に火をつけたか、鬼そっちのけで襲いかかってくるイノシシ男。さらに家の中で騒がれて腹を立てた響凱の攻撃まで繰り出され、大混乱の中、突然炭治郎とてる子は、別の部屋に飛ばされるのでした。響凱は鼓を叩いていないのに――と思いながら屋敷内を探検してみれば、部屋の一つには鼓を手にした少年が……

 一方、はぐれてしまった善逸と正一は、屋敷の中なのに縁の下があるという、冷静に考えたら妙な構造のエリアを(善逸だけが)パニックに陥りつつ歩き回るのですが――四つ目に長い舌の鬼が、縁の下からズリズリ出てくるという、ホラーゲームのような展開が!
 絶叫してわたわたと情けなく逃げまどいながらも、それでも決して正一の手は離さず、彼の身を案じて先に逃がそうとまでするところに人の良さが現れる善逸。しかしついに行き止まりに追いつめられたその時、善逸の中で何かがはじけた! ……と思ったらそのまま寝始めた善逸。正一だけでなく観ている側もどうリアクションしたらよいかわからなくなってきた中、鬼の舌が二人に迫る――と思いきや、いきなり舌の先が吹き飛んだ!

 鬼の舌を切り落としたのは寝ていたはずの善逸の刀――立ち上がった善逸は極端な前傾の抜刀姿勢のまま、口からはなんか蒸気まで吐き出して攻撃開始の構え。と、次の瞬間に繰り出されたのは、雷の呼吸 壱ノ型 霹靂一閃! 走り抜けざまの神速の抜刀により、見事に一撃で鬼の首を切り飛ばした善逸ですが、しかし本人は眠っている=意識を失っているまま……知らぬは本人ばかりなり、正一がやってくれたと思いこむ善逸の途方もないナニっぷりに、再び正一だけでなくこちらも困惑するしかないのでした。
 ちなみにその頃、猟奇イノシシ男は絶好調で屋敷内を突っ走りつつ、出くわした見るからにモブい肥満鬼を一撃で叩き斬ったりしていました。

 そして炭治郎の方に戻ってみれば、彼らが出会った少年こそは、鬼にさらわれたという清。実は彼こそは稀血なる、読んで字の如しの血液の持ち主であり、鬼にとっては貴重な食料扱いだったのであります。そしてそれが災いしてまさに餌食になろうとしていた時、鬼同士の仲違いで響凱の鼓の一つが叩き落とされ、無我夢中でそれを拾って叩いてみれば、部屋をワープしたというのです。
 それを聞いて、何かあったらすぐ鼓を叩くように清とてる子に言いおき、二人を残して響凱退治に向かう炭治郎。そして今度は邪魔抜きで響凱と退治する炭治郎ですが――鼓によって左右前後に部屋が回転させ、さらに衝撃波を放ってくる響凱はやはり強敵です。

 それもそのはず、響凱は元・十二鬼月――と言っても一番下の下弦の陸であり、しかも人間を食べられなくなって無惨様に給食ハラスメントのような感じで地位を剥奪されたりしましたが(これくらいで済んだのは実はすごい幸運だと思う……)、それでも今の炭治郎には強敵であります。
 そう、前回は鬼滅隊公認の戦いでないためかロクに回復期間も与えられていない炭治郎は、体中の痛みに立っているのがやっとの状態。冷静に聞けば泣き言満載のモノローグを延々と続ける炭治郎ですが、しかし最後は半ばヤケクソ気味に自分自身を応援し始めて復活。何はともあれ、炭治郎の反撃はここからであります。


 ようやくペースアップし、原作三話分を消化した今回。三人三様の戦いが描かれましたが、その中で良くも悪くも目立っていたのはやはり善逸でしょう。
 今回観ていて「汚い高音だなあ――そういえば原作で(汚い高音)と書かれたのはこの辺りだったかしら」となどと思っていたら、まさにそのシーンがそれだったのには、声優さんの演技力に驚きましたが、それはさておき、滅茶苦茶なキャラクターの善逸が動き回ると、やはり物語に緩急が出てきて、これまでとはまた異なる楽しさがあります。

 しかし(汚い高音)といい、正一の内心描写といい、原作の面白いナレーション(?)がアニメ版ではことごとくオミットされているのは、やはりちょっと勿体ない……


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 吾峠呼世晴『鬼滅の刃』第3巻 ついに登場、初めての仲間……?

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2019.06.19

『どろろ』 第二十三話「鬼神の巻」

 鬼神から百鬼丸の両眼と両腕を与えられた多宝丸・陸奥・兵庫と対峙する百鬼丸とミドロ号。駆けつけたどろろと縫、琵琶丸たちが見守る中で繰り広げられる死闘の中、ミドロ号と陸奥・兵庫が相討ちとなり、百鬼丸に両腕が戻ってくる。なおも激しく激突する兄弟の戦いは、終わることなく続き……

 災いの子である百鬼丸を倒し、その身を鬼神に捧げることで醍醐領に安寧を取り戻そうと、喪った体を補うようにその百鬼丸の体を十二番目の鬼神から与えられた多宝丸と陸奥・兵庫。対するは百鬼丸と妖怪(鬼神ではない模様)と化したミドロ号――もはや言葉は不要、ただ相手の命を奪うのみとなった両者は、駆けつけたどろろと縫、琵琶丸、そして前回から登場の村の若者三人組が固唾を呑んで見守る中、ぶつかりあいます。
 百鬼丸と多宝丸が激しく切り結ぶ一方で、ミドロ号の動きを封じるべく立ち塞がる陸奥と兵庫――と思ったら、次に場面が変わった時にはミドロ号に踏み潰されている兵庫。しかしそこにミドロ号の子供が現れ、気を逸らしたミドロ号に対して兵庫の、陸奥の刀が突き刺さります。しかし怒ったミドロ号に兵庫は首を引っこ抜かれ、そして陸奥も後ろ脚で蹴り飛ばされ――と、それでも鬼神の力か動き出した兵庫の体は再びミドロ号に一撃! 同時に陸奥も深々と刃を突き刺します。しかし二人の生命力もそこで燃え尽き、そしてミドロ号もついに息絶えるのでした。

 と、百鬼丸自身の手ではなくとも、百鬼丸の体の一部を奪った陸奥と兵庫が命を落とした結果、ついに戻ってきた百鬼丸の両腕。百鬼丸は襲ってきた多宝丸の攻撃を受け止めるため、自分の義肢に刺さっていた刀を素手で掴んだものだから手を血塗れにしつつも、なおも残る多宝丸を討とうとするのですが――そんな彼の前に立ったのは縫の方であります。はたして母の前で血塗れの両手を恥じたのか、はたまた取り戻したばかりの両腕を奪われまいとしたのか、両手と刀を背に回して隠した百鬼丸は、その場から走り去り、多宝丸も後を追って姿を消すのでした。

 その場に取り残され、息絶えた者たちを弔う中、百鬼丸と国を秤にかけるようなことを言い出す青年団に素晴らしい跳躍で殴りかかるどろろ。しかし縫の方は青年たちの発言を肯定しますが――しかし彼女は続けます。何者かに頼って築く平安は脆いと。この平安は百鬼丸ただ一人の犠牲で得られたものを享受していただけであって、自分たちの努力で得ていないものは、守ることもできないのだと……
 ここでどろろの脳裏によぎるのは、これまでの人生で、そして百鬼丸との旅の中で出会い、別れた人々――武士や戦に様々なものを奪われ、それでいて自分たちの力では何も出来なかった人々のこと。守りたいものがあるのなら、自分自身が力を得て強くならなければならないと気付いたどろろは、強すぎることの危険性を語る琵琶丸の言葉にも、大事なのは心の持ちようだと、決然とした眼差しでもって力強く返すのでした。

 そして景光自ら出陣する中、城に残った者たちの前にその異形の姿を現し、百鬼丸がやってくる前に去れと促す多宝丸。城から皆が去り、ただ一人残った多宝丸の前に、百鬼丸が現れます。そして自分たちだけの城の中で、幾たび目かの一騎打ちを始める二人。激しい激突の中で灯火が倒れ、辺りが炎に包まれる中、なおも二人の戦いは続いて……


 かなりの部分を使って、ひたすらバトルが繰り広げられるという、ある意味ラスト前に相応しい今回。全般的に作画は低調でしたがその分アクションに全振りしたかのように、縦横無尽に切り結ぶ百鬼丸と多宝丸の戦いは、まさしく触れれば斬れそうなほどの凄まじい迫力がありました。
(自らの腕を取り戻した百鬼丸が、手で刀を持つことで間合いを伸ばしながらも、しかしそのために屋内の戦いではそれが災いして長押に刀を引っかける場面も面白い)

 しかし気になるのはもちろんこの先の物語。どう転んでも誰かにとっては悲劇しか待っていない状況の中、どのようにこの物語は結末を迎えるのか。今回一気に成長した感のあるどろろは、朧気に向かう先を掴んだようですが、しかしその傍らにはやはり百鬼丸がいてほしい――それはどろろのみならず皆の願いでしょう。
 城が炎に包まる中、何か心に期するところがあったらしい表情を見せる寿海。果たして彼の存在が、どろろが、縫が何かを生み出すのか――ただ観ているしかないこちらとしては、縋れるものには何でも縋りたい気分であります。


 しかしミドロ号、最初の死に続いて、二度目の死も何だか雑な扱いでした。ここまで頑張ってきた陸奥と兵庫も。


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2019.06.16

『鬼滅の刃』 第十一話「鼓の屋敷」

 新たな任務に向かう途中、女の子に抱きついて泣き叫ぶ善逸と出会った炭治郎。善逸を引きずって任務先の屋敷についた炭治郎は、兄が鬼に捕らわれたという兄妹と出会う。不気味な鼓の音が聞こえる屋敷の中に入った二人だが、敵の血鬼術の前に分断されてしまう。さらに炭治郎の前には奇怪な男が……

 本当に鬱陶しいなあ善逸は!(笑顔)

 ……という気分になってしまう今回。冒頭、炭治郎の行く先で女の子にストーカー紛いのつきまといをした上に結婚を迫る(というか結婚して欲しいと泣きつく)という善逸の常軌を逸した行動には、原作初読の時に無言で善逸を見る炭治郎のような顔になりましたが、今回もきっちりそんな顔になりました。

 とにかくハイテンションな後ろ向きとも言うべき善逸の言動に呆れながらも、善逸をなだめて任務先の人里離れた和風建築を訪れる炭治郎。そこでさりげなく善逸の耳の良さが描写されるのですが――それは一旦置いておいて、炭治郎は、屋敷の側で震えていた正一とてる子の幼い兄妹を見つけます。
 怯える二人を(善逸の)雀を使ってなだめて心を開くのはさすがに炭治郎の長男力と感心――というのはさておき、兄が屋敷の鬼に引きずり込まれたという話を聞き出す炭治郎。とその時、善逸の耳にのみ聞こえていた鼓の音とともにズタズタの青年が窓から落下! 運良くと言ってよいのかはわかりませんが、犠牲者は正一たちの兄ではなかったものの、もはや座視は出来ぬと炭治郎は屋敷に足を踏み入れるのでした。……嫌がる善逸を、炭治郎には本当に珍しい般若フェイスで威嚇しながら。

 しかし未だに前回の戦いの傷が癒えていない(本隊もそれぐらい治療させてあげればいいのに――と思えば、そもそもあの戦いの非公式戦のような扱いなのかしら)炭治郎の状態を知って泣き叫ぶ善逸。さらに安全のために屋敷の外に禰豆子の箱と一緒に残してきたお子様二人が(その箱の中からカリカリ音がすると怖がって)屋敷の中についてきてしまい、もはやどうしようもなくグダグダな状況であります。
 そしてそんな中に再び響き渡る鼓。ビビる善逸の尻に跳ね飛ばされるという実にしょうもない形で別の部屋に入ってしまった炭治郎とてる子ですが――気付いてみれば先ほどまでいたのとは全く別の見知らぬ部屋。どうやら鼓の音がする度に、部屋から部屋にワープさせられているようであります。

 そして残された善逸はやっぱり超パニックですが、そんな彼に対して正一の素晴らしい毒舌がヒット。それでも別に反省せず、パニックになったまま部屋から部屋に移動しまくるというホラー映画であれば真っ先に惨殺されそうな行動を取る善逸ですが――ある部屋を開けてみれば、そこには猪の顔を被った半裸の男が! 和風ホラーだったはずが一瞬にしてアメリカのスラッシャーホラーに転じた瞬間ですが、幸いというべきか、猪男は善逸には目もくれず、どこかへ走って行くのでした。

 そして炭治郎とてる子の方は、小生小生連呼しながらブツブツ喋る、体から幾つもの鼓を生やした鬼が目の前を行くのを目撃するのですが――不意打ちができない男・炭治郎が礼儀正しく所属と階級と名乗りを上げて斬りかかった瞬間、鼓の音とともに部屋は回転。鬼はそのまま先に行ってしまい、その次の瞬間、襖だか壁だかを突き破って現れたのはあの猪男! 善逸と違い、炭治郎は猪男が二本の刃が欠けまくった日輪刀を持っていることを見抜くのですが……


 本当に鬱陶しいなあ善逸は! ともう一度繰り返したくなる今回。前回ラストに顔見せしたものの、本格的な登場は今回からの善逸は、声と動きがついてみるとさらに鬱陶しいことこの上ありません。もちろんこれは褒め言葉ですが(本当よ?)、いやよくこんなキャラクターを主人公の最初の仲間として出してきたものだと改めて感心します。
 正直なところ、相変わらずギャグ演出はむしろ気恥ずかしさが漂うくらいなのですが、アニメオリジナルの、炭治郎にもらったおにぎりを炭治郎も空腹なのを知って半分返す善逸という描写は、この先に描かれる善逸の人間性をちょっぴり先取りする形で、なかなかよいシーンであったとは思います。

 そしてもう一人、初登場の猪男ですが――これまたよくこんなキャラクターを(略)と改めて感心するばかり。こちらの活躍(?)は次回からですが、豪快な暴れっぷりに期待しましょう。


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2019.06.12

『どろろ』 第二十二話「縫の巻」

 囚われたどろろを逃がし、自分も百鬼丸に会うために館を抜け出した縫の方。その百鬼丸は、己の身体とどろろを求めるあまり、鬼神と化したミドロ号と一体化して、醍醐の兵を手に掛けながら突き進む。一方、余命幾ばくもない中、自分の身を地獄堂の鬼神に捧げようとするも拒まれる陸奥。しかし……

 いよいよ醍醐と朝倉の間で戦いが始まろうとする中、醍醐に向かう寿海。しかしその彼も、目の前を行く一団が、百鬼丸と共に在ったどろろを捕まえて帰る途中であるとは思いもよりません。そして醍醐の館で牢に閉じこめられたどろろですが――彼女を助けたのは、なんと百鬼丸の母・縫であります。
 どろろを逃がすという縫ですが、彼女のばんもんでの言動をしっかり覚えていたどろろは不満タラタラ。しかしお母ちゃんに滅茶苦茶弱いどろろは、文字通り縫に抱き込まれ、結局彼女とともに行動することになります。

 その縫も初めはどろろを抜け穴から逃がすだけのつもりだったのですが、しかし百鬼丸と行動を共にしてきた彼女と一緒にいるうち、自分も百鬼丸に会いたくなって出奔。二人で小舟で川を下るのですが――しかし急流に捕まって、川に投げ出されるのでした。
 と、どろろが目覚めてみれば、そこにいたのはミドロ号の子供と、相変わらずタイミングの良い琵琶丸。戦や病で住むところを奪われたり、傷を負った人々が寄り集まった集落に、どろろは救われたのであります。そして同様に救われた縫は、自ら人々の助けになろうと働くのですが――意外と醍醐の所業に理解のある人々は、彼女の正体が半ば公然の秘密となっても受け入れているようです(これでは原作の一揆エンドはないか……?)

 さて、そんな中で醍醐の兵がおかしな動きをしていることを知るどろろたち。どうやら向かってくる何者かと戦い、そして敵わず浮き足立っているようですが――さては百鬼丸かと思えば、彼だけではなかったのであります。百鬼丸がまたがるのは、前回可愛い子供から引き離された上、無惨に特攻兵器に使われて爆死し、燃えるたてがみを持つ姿で甦ったミドロ号。まさか百鬼丸が鬼神(とは明言されていないのですが)と行動を共にするとは――と思いつつも、しかし百鬼丸もミドロ号も、醍醐に大切なものを奪われたという点は共通なのです。
 ……が、何の罪もない、醍醐の側にいるというだけの兵を叩き斬り、蹄にかけ、そして火だるまにするというのはいくら何でもやりすぎであります。もはや二匹、いや一体の鬼神と化した百鬼丸とミドロ号は、あの密偵もあっさりと消し炭にすると、ひたすら醍醐領に向かって突き進むのでした。

 さて、その百鬼丸を前回三人がかりで襲いながらも、顔に再び深手を負った多宝丸と、それぞれ片腕を失った陸奥と兵庫。しかも陸奥は疾病を発症し、体中には赤い腫れものが浮かび上がる状態であります。しかしそんな中でも、ある一念から必死に体を動かし、療養中の館から姿を消す陸奥。「姉上がいなくなった!」と驚く兵庫とともに、その行方を探す多宝丸ですが――姉上!?(完全に声の高い青年という設定だと思いこんでおりました)
 その陸奥が向かった先は、あの地獄堂――最後の鬼神が地獄堂に潜むことを知る陸奥は、醍醐を、多宝丸を守るために、自らの身を鬼神の生贄として捧げようとしていたのであります。そして駆けつけた多宝丸と兵庫の前で、鬼神に訴えかける陸奥ですが――彼女は残酷な真実を知ることになります。鬼神が生贄として受け取るのは、あくまでも醍醐の跡継ぎの身体のみ、と。しかし、あくまでも受け取るのはであって、与えるのは……

 そして四度、百鬼丸の前に立ち塞がる多宝丸、そして陸奥と兵庫。しかし陸奥と兵庫には、失われたはずの腕があるではありませんか。そして多宝丸の潰れた目が、そして新たな傷が口を開け、そこから現れたのは二つの目玉――そう、奪われた百鬼丸の身体のうち、いまだ戻ってきていない両腕、そして目は、最後の鬼神によって多宝丸たちに与えられたのです。
 奪われた身体が自分の敵に与えられたことに怒り狂い、襲いかかる百鬼丸ですが……


 残すところついに3回となったところで、寿海までもが醍醐に現れ、ついに百鬼丸に関わる全ての人間が集まった感がある今回。しかし物語の方は予想をはるかに超えた地獄絵図が繰り広げられることとなります。
 ミドロ号に乗る百鬼丸という、ある意味夢のコラボに驚く間もなく、ついに身も心も鬼神と化し、己の行く手に立つ者全てを血祭りに上げる百鬼丸。そして彼の前に立つ多宝丸は、醍醐を守るためとはいえ、その百鬼丸の身体を奪って異形と化すのですから。

 実は多宝丸が片目を失いながら生存した時点で彼が鬼神の力を得ることは予想していたのですが――しかしこの形で、このタイミングで描くとは。もはや希望は百鬼丸のもとに急ぐ縫の方のみですが――しかしそれとて、新たな惨劇の予感しかしないのです。嗚呼!


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2019.06.10

『鬼滅の刃』 第十話「ずっと一緒にいる」

 激闘の末、辛うじて矢琶羽を倒したものの、満身創痍の炭治郎。一方、朱紗丸に挑む禰豆子は互角の戦いを繰り広げる。しかし更なる力を見せようとした朱紗丸の前に、珠世が立ち塞がり、彼女の術によって朱紗丸は無惨な最期を遂げるのだった。そして、禰豆子を預かると申し出る珠世に対し、炭治郎は……

 幾つもの技を組み合わせ、新たな形で繰り出すことで矢琶羽の頸を吹き飛ばした炭治郎。しかしさすがに鬼はしぶとく、矢琶羽は最後の力を放ってとんでもない数の矢印を放ち、モロに食らった炭治郎は四方八方に飛ばされることになります。そんなヒマがあったら別のことをしろ、と言いたくなるような分量のモノローグを吐く炭治郎ですが、辛くも技を連発して矢印の勢いを相殺し、生き延びるのでした。しかしほとんど全ての力を出し尽くした炭治郎はもはや立つこともできない状態。朱紗丸との戦いに参戦するなど及びもつかない状況であります。

 さて、朱紗丸の派手な攻撃で土煙が立ちこめる中、毬を躱して接近しようとする愈史郎ですが、しかし逆に動きを読まれて毬を放たれ――と、それを禰豆子がナイスカット! 前回は毬を蹴ろうとして逆に足を(文字通り)吹き飛ばされましたが、今回は毬の力を受け止めて逆に蹴り返すというパワーアップを見せた禰豆子。これは別に珠世の注射によるものではなく、この短期間で禰豆子がどんどんとレベルアップした結果というではありませんか。
 そして朱紗丸と禰豆子の間で繰り広げられる壮絶なボレー合戦。ついにその反撃が朱紗丸を焦らせるほどになったのですが――しかしここで朱紗丸が本気を出せば禰豆子が危ない、と読んだ珠世が動きます。

 朱紗丸が攻撃に出ようとしたその機先を制して、朱紗丸に無惨の正体を問う珠世。あの男はただの臆病者と、ある意味言っちゃいけない真実を語る珠世の言葉をムキになって否定しようとする朱紗丸ですが――それこそがまさしく珠世の術であります。術で判断能力が薄れ、うっかりと無惨の名を口に出してしまう朱紗丸。そしてそれが呪いを発動させ、無惨にも口を、腹を突き破って鬼の腕が飛び出し――そして炭治郎はおろか愈史郎までドン引きする中、その腕は朱紗丸自身の頭を握りつぶし、そして描写もできないような恐ろしい形で朱紗丸の命を絶つのでした。

 ようやく終わった二つの死闘。しかしそれにも関わらず、朱紗丸たちが十二鬼月というのはフカしに過ぎなかったことが、珠世の口から明らかにされます。結局は捨て駒に等しい扱いだった朱紗丸の、この世に骨すら残さず消える最期に一片の哀れみを感じ、そしてそれをもたらした無惨に怒りを燃やし――屋敷に戻った珠世の後を追いかける炭治郎。その前に現れた禰豆子は、炭治郎だけでなく、珠世や愈史郎にまで、非常に親しげに触れ合おうとするのでした。
 禰豆子が人間を家族と認識して親しむのは鱗滝の暗示によるものですが、しかし今回の行動は、禰豆子にとって珠世や愈史郎が家族に――すなわち人間と感じられることにほかなりません。そんなある意味暗示を超えた禰豆子の心は珠世を涙ぐませ――その涙の理由は、最近になって原作で言及された珠世の過去を思えば、大いに胸打たれるものなのですが――珠世のこと以外には心を許さぬ愈史郎の心をも動かすのでした。

 そして、禰豆子を預かろうという珠世の言葉に心揺れながらも、自分の手を強く握る禰豆子の決然とした瞳に、もう二度と離ればなれにならないと誓った炭治郎。彼は姿を隠すという珠世たちと別れ、新たな任務に向かうのでした。
 が、その炭治郎が目的地に向かう途中、道の真ん中で女性に対して身も世もない態で抱きついて泣き言をわめく金髪が――と、およそBGMに似合わぬ場面で次回に続きます。


 前回に比べるとアクションは少なめなのが残念ながら(折角あの人が絵コンテなのに!)、原作では「毬の女は俺たちと妹で引き受ける」と言いながら何もしなかった愈史郎が前回に引き続いて動きを見せたり(そしてその愈史郎を禰豆子が救うことで、ラストの台詞にもより自然に繋がる印象があります)、何よりも術を使う際の坂本真綾演じる珠世の台詞回しが楽しめた今回。特に珠世様は、原作とは違い片方の鬢がほつれた髪型になっていたのが艶やかでした。

 しかし、結局今回も原作をきっちり二話分消化したわけで、進行ペースがもう少し速くてもよいのではないか――というのは、これはこのアニメ版の冒頭から感じているところ。一クールも終盤にさしかかって、ようやくこれまでOPEDにずっと描かれていた鬼殺隊の仲間(たち)が登場するのですから……
 ある意味、最もこのアニメ版でどのように音と動きがつくか気になるキャラクターがついに登場しただけに、今後の展開に期待したいと思います。


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