2017.02.20

入門者向け時代伝奇小説百選 忍者もの(その一)

 入門者向け時代伝奇小説百選、今回は剣豪に並び伝奇ものの華である忍者を主人公とした作品の紹介。古今の名作のうち、5作品をまず紹介いたします。
16.『甲賀忍法帖』(山田風太郎)
17.『赤い影法師』(柴田錬三郎)
18.『風神の門』(司馬遼太郎)
19.『真田十勇士』(笹沢佐保)
20.『妻は、くノ一』シリーズ(風野真知雄)

16.『甲賀忍法帖』(山田風太郎) 【江戸】 Amazon
 忍者もの一番手は、忍者といえばこの方、という山田風太郎の忍法帖の第1作であります。

 家光か忠長か、徳川三代将軍を決するためのゲームの駒として選ばれた甲賀卍谷と伊賀鍔隠れ、各十名の死闘を描いた本作は、奇怪極まりない――それでいて医学的合理性を備えた――忍者たちのトーナメントバトルという、忍法帖の一つのスタイルを作った記念すべき作品。
 しかし本作が千載に名を残すのは、忍者たちの忍法合戦の面白さもさることながら、その非人間的な戦いの中で、権力者たちに翻弄される甲賀と伊賀の恋人たちの姿をも描き出した点でしょう。

 近年、『バジリスク』のタイトルで漫画化・アニメ化され、今なお愛されている不滅の名作であります。

(その他おすすめ)
『信玄忍法帖』(山田風太郎) Amazon
『忍者月影抄』(山田風太郎) Amazon


17.『赤い影法師』(柴田錬三郎) 【江戸】【剣豪】 Amazon
 柴錬が昭和30年代の忍者ブームに参戦した本作は、実に作者らしい、剣豪ものの側面も色濃く持つ作品であります。

 三代将軍家光の御前で行われたという寛永御前試合。この十番勝負に出場した二十人の武芸者たちの死闘が本作の縦糸ですが、横糸となるのは、その勝者を襲って拝領の太刀を奪う謎の忍者の存在であります。
 その正体は、伝説の忍者「影」の娘と、服部半蔵の間に生まれた若き天才忍者「若影」。ただ己の腕のみを頼みとし、強者との戦いの中にのみ己の存在を見出す彼の姿は、いかにも柴錬らしい独特の乾いた美意識に貫かれています。

 ちなみに本作には、大坂の陣を生き延び隠棲している真田幸村と猿飛佐助も登場。そのカッコ良さはファン必見です。

(その他おすすめ)
『猿飛佐助 真田十勇士』(柴田錬三郎) Amazon


18.『風神の門』(司馬遼太郎) 【戦国】 Amazon
 その活動初期に伝奇的な作品を発表していた司馬遼太郎。本作は忍者ブームに発表された、天才忍者・霧隠才蔵の活躍を描く長編です。

 徳川と豊臣の決戦が迫る中、どちらにつくでもなく飄々と暮らす才蔵。ある時、人違いから襲撃を受けた彼は、それがきっかけで東西の忍者たちの暗闘の世界に巻き込まれることになります。
 そんな中、才蔵はかつては宿敵であった猿飛佐助の主君・幸村と出会い、己の主と仰ぐのですが――

 才蔵を己の技を売って生きる自由闊達な男と設定し、痛快な活躍を描く本作ですが、そんな彼の自由は孤独と背中合わせ。自由であることの光と陰を背負った彼の姿は、同時に極めて現代的であり、だからこそ魅力的なのです。

(その他おすすめ)
『梟の城』(司馬遼太郎) Amazon


19.『真田十勇士』(全5巻)(笹沢左保) 【戦国】 Amazon
 大河ドラマの題材にもなり、今なお人気の真田幸村と、その配下・十勇士。そんな十勇士を描いた中でも決定版が本作です。

 智将・真田幸村一の臣である猿飛佐助が、幸村の股肱の臣たるべき勇士を求めて諸国を巡る発端から、十勇士集結、豊臣・徳川の開戦、そして凄絶な決戦からその結末に至るまでを描いた本作。
 設定自体は極めてオーソドックスではありますが、しかし十勇士たちをはじめとするキャラクターの個性、そして物語展開は、名手ならでは、というべきさすがの内容。何よりも、十勇士たち一人一人が背負った過去、あるいは彼らが出会う事件それぞれが、みな実に伝奇色濃厚で、さながら戦国意外史の感すらある作品です。


20.『妻は、くノ一』シリーズ(全10巻)(風野真知雄) 【江戸】 Amazon
 市川染五郎と瀧本美織主演でドラマ化もされた作者の代表作にして、一味も二味も違うユニークな忍者活劇であります。

 たった一月の新婚生活の後に姿を消した妻・織江を追って江戸にやってきた、ちょっと変わり者の平戸藩士・雙星彦馬。
 実は織江は藩を探る公儀のくノ一、任務で彦馬に近づいたのですが、そうと知らず彦馬は彼女を探す毎日。そして彦馬を愛してしまった織江も、やがて抜け忍となることを決意して――

 彦馬が出会う市井の事件の謎解きを縦糸に、織江が忍びとして繰り広げる苦闘を横糸に、濃厚な伝奇風味を隠し味とした本作。愛し合うカップルの苦難に満ちた冒険が、どこかユーモラスで、そして暖かい、作者ならではの筆致で描かれる名品です。

(その他おすすめ)
『消えた十手 若さま同心徳川竜之助』(風野真知雄) Amazon
『私が愛したサムライの娘』(鳴神響一) Amazon


今回紹介した本
甲賀忍法帖  山田風太郎ベストコレクション (角川文庫)赤い影法師 (新潮文庫)風神の門 (上) (新潮文庫)真田十勇士 巻の一 (光文社文庫)妻は、くノ一 (角川文庫)


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 「風神の門」上巻 自由人、才蔵がゆく
 「風神の門」下巻 自由児の孤独とそれを乗り越えるもの
 「妻は、くノ一」 純愛カップルの行方や如何に!?

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2017.02.17

滝沢聖峰『WHO FIGHTER』 その恐怖は空の高みから

 最近は江戸時代の出版界を舞台とした時代漫画『二兎物語』を発表しているものの、やはり滝沢聖峰といえば航空戦記漫画の第一人者という印象が強くあります。本作はそんな作者の作品の中でも異色中の異色作……太平洋戦争終戦間際の日本上空に現れた謎の発光体を巡る怪異譚であります。

 昭和19年11月、立川を飛び立ち機載レーダーのテストをしていた陸軍航空兵・北山中尉は、夜空に眩い光を放つ正体不明の物体と遭遇、機体の電子部品が全て焼き切れるという奇怪な状況に見舞われます。

 翌日、北山の前に現れたのは、秘密の研究を行っていると噂される登戸研究所からやってきた軍属の男・尾崎。
 発光体について北山の知らぬ情報を握っているらしい尾崎とともに発光体の墜落地点を北山は訪れるのですが、それ以降、彼の周囲では奇怪な現象が相次ぎます。

 内臓を抜き取られた犬の死体、偶然立ち寄った先にかかってくる電話、無理矢理日本語を喋っているような黒衣の男の来訪……
 そして尾崎の案内で、自分以前に発光体と遭遇し、一ヶ月後に帰還した兵士と対面した北山は、その帰りに蛾を思わせる奇怪な生物と遭遇、直後の記憶を失うことになります。

 北山の身に何が起きたのか。空で何が起きているのか。登戸研究所の地下に隠されたモノの存在を知った北山は、尾崎が計画する発光体奪取作戦に志願するのですが――


 タイトルとなっているフー・ファイターとは、第二次大戦中に世界各地で目撃されたという、未確認飛行物体/発光体のこと。
 実際には戦場の緊張が生んだ錯覚によるものが大半だったのではないかという気もしますが、しかし記録を信じるならば、どう考えても後世に言うUFOのことを指していたのでは……というケースもあり、なかなかに不気味な存在であります。

 本作はそのフー・ファイターを題材に、いわゆるUFO都市伝説――キャトル・ミューティレーション、MIB、ミステリー・サークルなど――を取り込んで描いてみせた、異形の軍記漫画であります。
 これらの題材や、登場する発光体の搭乗者の姿など、多分に通俗的なスタイルではあるのですが、しかしその作中での投入の仕方は実に巧みで、特に先に述べた電話の怪のくだりなど、実にゾクゾクさせられます。

 また嬉しかったのは、個人的に最愛のUMAである――UFOやMIBとの関連も噂される――モスマンまで登場してくることで……というのはともかく、いずれにせよ登場する題材は、いずれも実にツボを心得たものであるのがたまらないのです。


 それにしても、UFO都市伝説に、他の都市伝説や実話怪談の類とは異なる不気味さがつきまとうのは、その「わけのわからなさ」に依るところが大ではないでしょうか。
 因果因縁や怨念といった、ある意味人間のロジックでは図りかねる行動原理で動く存在が蠢く物語……それは裏返せば、対処の手段がない、頼るべき存在がないということでもあります。怪異に晒されても救いの手はない……これほどの恐怖があるでしょうか。

 そしてその理不尽な怪異と、戦争というある意味究極の国家の活動――すなわち極めて論理的に実施される(理論上は、ですが)行為が激突した時、何が生まれるか……
 本作は、作者一流の筆致を以て、すなわちどこまでもリアリティを保ちながら、その異次元の世界を描き出すのであります。

 もちろん、壮大なホラ話として楽しむべきものではあるかもしれませんが……しかし出色の戦争ホラー、UFOホラーであることは間違いありません。


 ちなみに単行本は本作のほか、中編『HEARTS OF DARKNESS』を収録。
 こちらはビルマの密林の奥深くで軍の命を離れ、独立王国を築こうとする部隊を処理するため、装甲砲艇で河を遡上する特務機関の中尉を主人公とした物語であります。

 その部隊長の名が来留津大佐というのを見るまでもなく、『地獄の黙示録』の第二次大戦版……というより、その原作であるコンラッドの『闇の奥』を原作としてクレジットしている本作。
 もっとも展開的には『地獄の黙示録』の翻案の要素がやはり強いのですが、しかし大戦末期のビルマという舞台から生まれるどうしようもなさ、一種の虚無感は、本作を独自の作品として成立させていることは間違いありません。
(もっとも、もう少し王国側の人間に狂気が欲しかった気はしますが……)


『WHO FIGHTER With heart of darkness』(滝沢聖峰 大日本絵画MGコミック) Amazon
フー・ファイター―With heart of darkness (MGコミック)

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2017.02.16

『風雲ライオン丸』 第6話『黒豹よ三吉を助けろ!』

 人間の子供を動物に変える研究のため、子供を狩り集めるケカビーに三吉が攫われてしまった。三吉を助け出すために豹馬を雇う志乃だが、途中で加わった獅子丸の目がケカビーの忍法で見えなくなってしまう。三吉が実験台になる時が近づく中、ようやく目が癒えた獅子丸に豹馬は勝負を挑もうとするが――

 開幕早々、ウェスタンな感じの村を襲撃する地虫忍者たち。何の説明もないので違和感バリバリですがそれはさておき、村の子供・平太と、折悪しく村にやってきた武士の子・信之助が攫われ、大人たちは武士を含めて皆殺しに……実はこれは奴隷にするため人間の子供を動物にする実験(???)のための人間狩り。あと三日の内に実験を完成させろと無茶を言うアグダーの命を受け、実験担当のケカビーが子供たちを集めていたのです。

 そしてその標的にされるビックリ号ですが、いきなり馬車の後ろから自分が発明した竹製の……爆発する水鉄砲? で地虫を蹴散らす三吉が恐ろしい。しかしケカビーの投げ縄に三吉が捕らえられ、志乃も万事休す……というところに、「礼は後でたんともらうぜ」とらしい台詞とともに豹馬が登場、地虫を蹴散らします。そんな豹馬に対し、志乃は、あるだけの金を払うと言って彼を雇うのでした。
 一方、件のウェスタン村を通りかかった獅子丸は、まだ息があった武士の最期を看取り、子供が攫われたことを知ります。

 さて、ケカビーの基地らしい、なんか凄いトーテムポール? が立ったテントに捕らえられていた三吉ら三人の子供。怖がって泣く平太に進之助が説教しているところにやってきたケカビーは平太を実験台に選び、自分のカビを混ぜたらしい液体を飲ませますが……そのシルエットは獣人のそれになったものの、しかし実験は失敗と宣言されます。
 一方、三吉を追う志乃と豹馬を密かに狙う地虫を脇から倒した獅子丸ですが、現れたケカビーが投げつけてきたものを切り払うとそれが爆発。吹き出したカビによるマントル忍法カビ流れで視力を奪われてしまいます。

 豹馬と獅子丸の連携で何とかケカビーを撃退した一行。獅子丸にどんな猛毒にも効くという三吉の薬を塗る志乃ですが、治ると思えば治る、治らないと治らない、しかし三吉は助けようと思えば助けられると、獅子丸は動ぜず先に進みます。
 さて、戻ったケカビーは、先ほどまでの態度はどこへやら、泣き出す信之助を実験台に使いますが、映像にもならず上半身だけ獣人化したと台詞で処理される始末。そして期限の明日、三吉も実験台にされることに――

 その晩、満月に向かって獅子丸の治癒を一心に祈る志乃、その満月に向かって盲目のまま刀を振るう獅子丸、その姿を見て奴は月を斬った!? という驚く豹馬……三人三様に過ごした一行。翌日、目が見えてきた獅子丸の目の焦点が志乃の横顔に合い、そしてその獅子丸を見て嬉しそうに微笑む豹馬というシーンも合わせて、本作には珍しい、仲々珍しい、若者たちの瑞々しい描写であります。
 しかしそこで獅子丸に勝負を挑むのが豹馬。そんな豹馬をなだめるために刀を抜く獅子丸も獅子丸ですが……しかしそこで平然と豹馬の腕に鞭を絡め、あなたは私に雇われているのよ、と言い放つ志乃が一番大人でした。

 そんな三人を迎え撃つケカビーと打ち合い、ケカビーの狼牙棒をはじき飛ばす豹馬ですが、しかし狼牙棒が爆発。そこから赤いカビを撒き散らす忍法カビ隠しにたじろいだものの、変身した獅子丸が志乃と豹馬を先に行かせ、単身ケカビーに挑みます。丁度その時、実験を監督に来ていたアグダーはブラックジャガーが来たと聞いてさっさと姿を消し、三吉は無事に救出されるのでした。
 さて、激しく斬り合う獅子丸とケカビーですが、鍔競り合いの中、ケカビーが口から微妙な角度でカビを吹き出したのに不意を突かれて刀を落とされ、さらにそこで水死体みたいなポーズで空を飛んで来るケカビーに苦しめられます。しかし、そこで豹馬が投げた刀をキャッチ、ケカビーを撃破するのでした。

 そしてピープロ的に助からないんじゃないかと心配した子供たち三吉の薬で人間の姿に戻り、さあ対決を、という豹馬を置いてさっさと獅子丸21歳は姿を消すのでした。


 本作にしては珍しく、作戦内容と怪人の能力が咬み合っていた今回、子供を獣人に変えるというのは仲々忌まわしいのですが、そちらの描写はあっさり目なのが残念。共通の目的のために行動する中で、少しずつ距離が縮まっていく獅子丸・志乃・豹馬の姿の方に重点が置かれていたということなのでしょう。


今回のマントル怪人
ケカビー

 古代の武人のような姿をしたカビの怪人。刀と狼牙棒を武器とし、赤いカビで相手の目を潰す忍法カビ流れ、カビの煙幕を作るカビ隠しを使う。子供を獣人に変える実験を続けていたが、豹馬と獅子丸の連携に倒される。


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 『風雲ライオン丸』 第5話「燃える水を奴らに渡すな」

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2017.02.09

『風雲ライオン丸』 第5話「燃える水を奴らに渡すな」

 犬山村一帯から涌きだした燃える水を狙い、たちまち村を占領した怪人ガー。燃える水を汲み上げるために周囲の人々をさらう地虫忍者に志乃までが攫われてしまった。村に潜入した獅子丸は志乃と村人たちを救出、三吉が仕掛けた爆発の隙に脱出するが、怒りに燃えるガーが執拗に後を追う。

 炭坑か何かの中で地面を掘る村人たち。と、地中から何かが吹き出した……と思えばそれは燃える水、つまり石油。いち早くその価値に気づいているマントル一族はガーを派遣、もの凄い勢いで村一帯を占領すると、村人を使って採掘を開始します。しかしそれでも人手が足りぬと地虫忍者は人狩りを始めるのですが……それに捕まったのが志乃。三吉が水を汲みに行った間に地虫に捕まってしまったのであります。

 そして地虫の魔手は、それとは別の場所で呑気に肉を食っていた獅子丸にも及びますが、獅子丸はからくもこれを退けます。
 一方、単身姉の後を追う三吉は、姿を隠しながら地虫の後を付けるのですが……険しい表情で脇の木に手を伸ばした彼の手がまるでわざとのように掴んだのは、彼の苦手なデンデンムシ。悲鳴を上げたおかげで地虫に追いかけられ、無駄に長い追いかけっこの末に捕まった三吉は、獅子丸に助けられるのでした。そして地虫の一人を生かして木から吊り下げ、「言わなければ黙って地獄へ行け」と手裏剣で脅して行き先を吐かせる獅子丸、マントル殺すマンに容赦はありません。

 さて、村の様子を探る獅子丸と三吉ですが、地虫は闇夜は人間を襲ってはいけないという迷信があるという獅子丸(どこで知ったのか……)は、夜に月が隠れた隙に村に潜入。残された三吉は、燃える水のガスが炎を上げているのを見て、「吹き飛ばしてやる」と、据わった目で物騒な言葉を吐きます。
 そして捕らわれの志乃と村人たちを解放した獅子丸ですが、逃げる途中で雲が晴れ、地虫が活動再開。当たる幸い斬りまくる獅子丸ですが、その時三吉が仕掛けた爆薬(前回の爆弾?)がそこら中で盛大に爆発。夜だけに周囲の闇に映える炎はえらい迫力で、特に櫓が爆発炎上するのはやり過ぎ感が――

 それはさておき、その隙に馬車に飛び乗って逃げる三人ですが、ここまでやられたガーは怒り心頭。「追って追って追いつめて、生まれてこなければよかったという目にあわしてやる!」とスゴい台詞を吐くと、「既知外みたいに」(獅子丸談)彼らを探し回ります。
 そこで馬車を藁を山積みにした荷車に偽装して峠を越えようとする三人。そこに地虫たちとガーが襲いかかりますが、馬車には誰も乗っていません。これはこれで怪しいのですが、深く考えていないのかガーがその場を去ると、藁の下から志乃と三吉、台車の下から獅子丸が顔を出します。間抜けなガーを出し抜いて無事に脱出した……と思いきや、やっぱり待ち受けていたガーと地虫。

 二人を先に行かせて一人戦う獅子丸を苦しめるガーの奥の手・口からの毒粉。しかし獅子丸はガーの頭にマントをかぶせた隙に脱出、ロケット変身! 最近は様になってきたクレーン吊りでの対決は、ガーが蛾モチーフということもあってなかなか面白いのですが……しかし地面に落ちたガーに、上から落下して刀をブッ刺すというライオン滝落としが容赦なく炸裂。
 これで爆破か……と思いきや、ガーの首が分離して飛行! 口からの毒粉でライオン丸に襲いかかりますが、しかし手裏剣で撃墜されたガー首を、今度こそライオン風返しが爆破するのでした。

 そしてまた二人と別れ去っていく獅子丸。以前はかかわりになりたくなさそうだった志乃と三吉も、今回はかなり同情的に彼の戦いの毎日に想いを巡らせるのでした。


 特撮ヒーローもの、特に特撮時代劇には定番の、悪の組織による強制労働ネタの今回。労働の対象が燃える水というのはなかなか面白いのですが、三吉による爆破シーン以外あまり話に絡んでこなかったのは残念。そしてあの後燃える水は……あれで全部爆発して、結局マントル一族の手には渡らなかったということでしょうか。


今回のマントル怪人
ガー

 犬山村一帯で見つかった燃える水奪取を命じられた蛾の怪人。両方に巨大な刃のついた棒と、口からの毒粉を武器とする。獅子丸に出し抜かれて執拗に襲撃するがライオン滝落に倒され、首だけを分離してなおも襲いかかるが及ばなかった。イボや棘のある胴体は、幼虫がモチーフか。


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2017.02.07

入門者向け時代伝奇小説百選 剣豪もの

 入門者向け時代伝奇小説百選、今回は剣豪もの五作を紹介いたします。時代ものの華である剣豪たちを主人公に据えた作品たちであります。
11.『柳生非情剣』(隆慶一郎)
12.『駿河城御前試合』(南條範夫)
13.『魔界転生』(山田風太郎)
14.『幽剣抄』(菊地秀行)
15.『織江緋之介見参 悲恋の太刀』(上田秀人)

11.『柳生非情剣』(隆慶一郎) Amazon
 様々な剣豪を輩出し、そしてそれ自体が徳川幕府を支えた隠密集団として描かれることが少なくない柳生一族。本作はそんな柳生像の定着に大きな役割を果たした作者による短編集であります。

 十兵衛、友矩、宗冬、連也斎……これまでも様々な作家の題材となってきた綺羅星の如き名剣士たちですが、隆慶作品においては敵役・悪役として描かれることの多い面々。そんな彼らを主人公とした短編を集めた本書は、剣と同時に権――すなわち政治に生きた特異な一族の姿を浮かび上がらせます。

 どの作品も、剣豪小説としての興趣はもちろんのこと、等身大の人間として剣との、権との関わり合いに悩む剣士の生きざまが描き出されている名作揃いであります。

(その他おすすめ)
『秘剣・柳生連也斎』(五味康祐) Amazon


12.『駿河城御前試合』(南條範夫) Amazon
 山口貴由の『シグルイ』をはじめ、平田弘史や森秀樹といった錚々たる顔ぶれが漫画化している名作であります。

 暗愚の駿河大納言徳川忠直が己が城中で開催した十番の真剣勝負を描いた本作は、残酷時代小説で一世を風靡した作者ならではの武士道残酷物語であると同時に、剣豪ものとしても超一級の作品。
 片腕の剣士vs盲目の剣士、マゾヒスト剣士や奇怪なガマ剣法…個性豊かな剣士たちとその武術が炸裂する十番勝負+αで構成される本作は、その一番一番が剣豪小説としての魅力に充ち満ちているのです。

 そして、死闘の先で剣士たちが得たものは……剣とは、武士とは何なのか、剣豪小説の根底に立ち返って考えさせられる作品であります。


13.『魔界転生』(山田風太郎) Amazon
 映画、漫画、舞台とこれまで様々なメディアで取り上げられ、そして今もせがわまさきが『十』のタイトルで漫画化中の大名作です。

 島原の乱の首謀者・森宗意軒が編み出した「魔界転生」なる忍法によって死から甦った宮本武蔵、宝蔵院胤舜、柳生宗矩ら、名剣士たち。彼ら転生衆に挑むのは、剣侠・柳生十兵衛――ここで描かれるのは、時代や立場の違いから成立するはずもなかった夢のオールスター戦であります。

 そして本作の中で再生しているのは剣士たちだけではありません。その剣士たちを描いてきた講談・小説――本作は、それらの内容を巧みに換骨奪胎し、生まれ変わらせた物語。剣豪ものというジャンルそのものを伝奇化したとも言うべき作品であります。

(その他おすすめ)
『柳生忍法帖』(山田風太郎) Amazon
『宮本武蔵』(吉川英治) Amazon


14.『幽剣抄』(菊地秀行) Amazon
 剣豪と怪異とは水と油の関係のようにも思えますが、しかしその両者を見事に結びつけた時代ホラー短編集であります。

 本作に収録された作品は、「剣」という共通点を持ちつつも、様々な時代・様々な人々・様々な怪異を題材とした、バラエティに富んだ怪異譚揃い。
 しかしその中で共通するのは、剣という武士にとっての日常と、怪異という非日常の狭間で鮮明に浮かび上がる人の明暗様々な心の姿であります。。

 本シリーズは、『追跡者』『腹切り同心』『妻の背中の男』と全四冊刊行されておりますが、いずれもデビュー以来、怪奇とチャンバラを愛し続けてきた作者ならではの、ジャンルへの深い愛と理解が伝わってくる名品揃いであります。

(その他おすすめ)
『妖藩記』(菊地秀行) Amazon
『妖伝! からくり師蘭剣』(菊地秀行) Amazon


15.『織江緋之介見参 悲恋の太刀』(上田秀人) Amazon
 今や時代小説界のメインストリームとなった文庫書き下ろし時代小説、その代表選手の一人である作者が描いた剣豪ものであります。

 ある日飄然と吉原に現れ、遊女屋の居候となった謎の青年・織江緋之介が、次々と襲い来る謎の刺客たちと死闘を繰り広げる本作。複雑な過去を背負って市井に暮らす青年剣士というのは文庫書き下ろしでは定番の主人公ですが、しかしやがて明らかになる緋之介の正体と過去は、本作を飛び抜けて面白い剣豪ものとして成立させるのです。

 彼を巡る三人の薄幸の美女の存在も味わい深い本作は、その後全7巻のシリーズに発展することとなりますが、緋之介が人間として、武士として成長していく姿を描く青春ものの味わいも強い名品です。

(その他おすすめ)
『闕所物奉行裏帳合 御免状始末』(上田秀人) Amazon


今回紹介した本
新装版 柳生非情剣 (講談社文庫)駿河城御前試合 (徳間文庫)魔界転生 上  山田風太郎ベストコレクション (角川文庫)幽剣抄<幽剣抄> (角川文庫)悲恋の太刀: 織江緋之介見参 一 〈新装版〉 (徳間文庫)


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 上田秀人『織江緋之介見参 一 悲恋の太刀』(新装版) 若き日の剣士と美女の物語

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2017.02.04

上田秀人『織江緋之介見参 一 悲恋の太刀』(新装版) 若き日の剣士と美女の物語

 今や大人気作家となった上田秀人の2番目のシリーズ……それが吉原を舞台に青年剣士の愛と戦いを描いた『織江緋之介見参』であります。その第1弾である本作は以前取り上げていますが、少し前に新装版が刊行され、何よりも現在森田信吾が漫画版を連載中ということで、もう一度取り上げたいと思います。

 ある日ふらりと御免色里・吉原に現れ、おもむろに慶長大判を取り出して登楼を望んだかと思えば、名妓と同衾しても指一本触れず、そして恐るべき剣技を持つ青年剣士。
 名を問われれば、「織江緋之介」と明らかに偽名で答えるこの青年剣士が本作の主人公であります。

 吉原でも屈指の歴史を持つ遊女屋・いづやの主・総兵衛に気に入られて仮寓することになった緋之介ですが、しかし彼の周囲には常に剣難あり。
 幾度となく彼を襲撃する刺客の群れは、いづやにも襲いかかるのですが……しかし、刺客に狙われているのは彼だけではなく、いづやそのものも狙われていたのであります。

 何故緋之介は刺客に襲われるのか。彼の過去に何があり、何故吉原に現れたのか。そしてまた、いづやを狙うのは何者なのか……絡み合う二つの謎に、緋之介を巡る三人の美女、繰り広げられる幾多の死闘。その果てに物語は意外な結末を迎えることになります。


 私は本作の旧版を発表時に手に取り、このブログでも紹介しているのですが、今回再読したのはほぼその時以来――実に13年ぶりであります。そのため大筋はもちろん憶えていたものの、細かい部分は記憶が薄れていたところも多く、新鮮な気分で……いや、大いに楽しみ、テンションを上げながら読むことができました。

 何より、剣豪小説として実に本作は面白い。純粋に剣戟シーンの完成度もありますが、それ以上に、緋之介の正体と過去――そしてそれはそのまま彼が狙われる理由に繋がるわけですが――が、剣豪小説として、そして伝奇小説として実に盛り上がる内容なのであります。(何しろ、緋之介は、ライバルとして描かれることも少なくない○○○○流と○○○○流のハイブリッドであるわけで……)

 そこにさらに、吉原に関わる一大秘事が絡むのですから、面白くならないはずがありません。そしてその秘事だけでも十二分に伝奇的なところに、ラストにはあの大事件が……ときて、もう夢中でラストまで一気に読まされてしまったのです。


 そしてその一方で、逆にじっくりと味わうことができたのは、緋之介の成長を巡る物語……というより、緋之介を巡る三人の女性に関する物語であります。
 いづや、いや吉原きっての名妓である御影太夫、その妹女郎であり緋之介の世話係の桔梗、そして緋之介の許嫁である織江――いずれも極めつけの美女であることは間違いありませんが、しかし美しいだけでは終わらないのが本作であります。

 それぞれに複雑な過去を背負った三人、特に吉原という天国と地獄が隣り合った世界に暮らす御影太夫と桔梗が、緋之介に触れて何を想い、そしてどこが変わっていったのか……
 本作の陰の主人公とも言える彼女たちの想いの発露が描かれる場面は、時に剣戟シーン以上に、こちらの胸を打つのであります。そしてその想いに触れた緋之介の姿もまた。


 そしてもう一つ印象に残るのは――これは今だからこその感慨ですが――その後の、現在の作者の作品とのテンポの違いであります。

 シリーズ最終巻『終焉の太刀』新装版の作者あとがきによれば、この『悲恋の太刀』はまさしく背水の陣で描かれた作品、シリーズ化どころか発表できるかもギリギリの状況だったとのこと。
 そのような背景の作品と、長期シリーズ(が前提となっている)作品を並べるのはナンセンスかもしれませんが、しかしやはり、そこには自ずと違いが……それも想像以上に大きく現れるものだな、という印象があります。

 そしてこうした本作もまた、上で触れた『終焉の太刀』に至るまで、全7巻のシリーズに発展していくことになります。
 その中で本作にあったものが、どのように受け継がれ、どのように変わっていったのか……この先も、新装版で確認してみたいという気持ちが強くあります。


 もう一つ、森田信吾の漫画版が、展開は忠実ながら台詞回しは完全に森田節なのを確認したのも、まず収穫といえば収穫であります(こちらはこちらで単行本化を心待ちにしている次第)。

『織江緋之介見参 一 悲恋の太刀』(新装版)(上田秀人 徳間文庫) Amazon
悲恋の太刀: 織江緋之介見参 一 〈新装版〉 (徳間文庫)


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 待望の続編、なのだけれど 「不忘の太刀 織江緋之介見参」
 「織江緋之介見参 孤影の太刀」 過去と現在を貫く妄執
 「織江緋之介見参 散華の太刀」 真の剣豪ヒーローへの道を
 「織江緋之介見参 果断の太刀」 いまだ続く修羅の宿命
 「震撼の太刀 織江緋之介見参」 一歩踏み出した頼宣像
 「終焉の太刀 織江緋之介見参」 そして新たなる一歩を

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2017.02.03

『風雲ライオン丸』 第4話「シトシト爆弾を守れ!」

 強大な威力を持つシトシト爆弾の秘法書を瀕死の男から預けられた豹馬。その行方を追うシャゴンは獅子丸が持ち主だと思い襲いかかる。一方、志乃と三吉と行動を共にする豹馬だが、三吉は秘法書を読み解いて爆弾を作り上げてしまう。そこに襲いかかるシャゴン。獅子丸も駆けつけ、決戦が始まる。

 この爆弾があれば天下を取ることも夢ではないというシトシト爆弾のデモンストレーションを行い、それを見ていた三人の男たちにアバウトに爆弾の残り与える老人(そのままフェードアウト)。しかしその爆弾を狙うマントル一族はシャゴンを派遣、男たちは地虫忍者に殺され、瀕死の一人が近くにいた深編笠の男に秘法書を預けるのですが……それが豹馬。何故か椿を咥えていた豹馬は襲いかかってきた地虫を一掃して去るのでした。

 一方、旅を続ける志乃と三吉ですが、二人の馬車を狙う怪人シャゴン……と思いきや、彼が待ち受けていたのは秘法書を持つ豹馬。のんびり立ち小便する三吉に、早く行けと焦るシャゴンというのは、本作には珍しいギャグシーンかもしれません。
 ようやく豹馬がやって来たものの、さらに獅子丸もやってきたのでシャゴンはどちらが標的か混乱。両方とも殺せと言いだし、地虫は豹馬を、シャゴンは獅子丸を追うことになります。ちなみにこの時の獅子丸、流れ星が落ちたところに怪人の巣がある……というナレーションとともに馬を走らせていたのですが、そんな設定初めて知りました。

 そして獅子丸をライフルで狙撃するシャゴンですが全然当たらず。ファニングで連射するものの(ライフルでできるのかしら……)、投げられたマントに気を取られた隙に手裏剣を撃たれて銃を取り落とし、さらに秘法書のことを勝手に喋ってしまう体たらく。獅子丸を若造呼ばわりしますが、赤い煙とともに消える姿は何とも格好悪い――
 一方、豹馬の方は志乃たちの馬車と出くわしますが、三吉は彼をあいつ呼ばわり。あいつじゃわからないという志乃ですが、冷静に考えてみれば豹馬は二人に名乗っていなかったかも。いずれにせよ、豹馬を冷たい目で見る二人は、彼からの用心棒の申し出をあっさり拒否します。

 と、馬車の行く先に大きな岩が。岩をどけようと手を貸す豹馬ですが、その間に彼が脇に置いた秘法書に三吉が興味を持ちます。漢字が羅列されている秘法書をまたたく解読し、試作を始めた三吉、豹馬たちの力でも動かせない大岩に爆弾を投げつけると、時間差で大爆発! ……三吉が一番凄い。
 と、そこに何者かの気配を感じた豹馬は二人を徒歩で先に行かせますが、周囲を謎の虚無僧たちが取り囲みますが、もちろんその正体は地虫たちであります。変身し、そこに現れたシャゴンの射撃も軽々と躱す豹馬ですが……着地したはずが落とし穴に転落。捕らえた豹馬の始末を任せてシャゴンは消えます。

 さて、地虫に見つかって追われる二人は、爆弾を投げながら逃げますが、その前にシャゴンが出現。そこに駆けつけた獅子丸は、鞭を使って試作品を奪いますが、テレポートしたシャゴンが再び奪取。今度は爆弾を投げつけてくるシャゴンの前に、動くに動けなくなってしまいます。
 と、そこに地虫をあっさり片付けてやってきた豹馬は、志乃と三吉に先に行こうと薄情なことを言い出しますが、もちろん二人が同意するはずもありません。怖いのね、と言われても動じず、金になるなら何でもするというゲスっぷりを見せる豹馬に、金を渡す志乃。そこで初めて変身した豹馬が攻撃を引きつけている隙に獅子丸は脱出、豹馬は地虫を相手にするとあくまでも省エネ野郎です。

 それはさておき変身のチャンスを得た獅子丸は、その勢いでシャゴンの手の爆弾をキックで叩き落としつつ名乗り! 刀を手にライオン丸に挑むシャゴンですが、だいぶ様になってきたクレーン吊りの末にばっさりとやられるのでした。
 そしてそのまま獅子丸が去って行き物語は幕……第2話の軍資金といい、シトシト爆弾の行方は一体(たぶんこの先も語られない)。


 女子供に嫌われても動じず、あくまでも金を求める豹馬の銭ゲバっぷりが印象に残る今回。普通だったらラストバトルで渋々無償で動くかと思いきや、本当に金をもらって初めて動くという展開は地味に強烈で、金を渡す志乃といい、本当にドライな世界です。しかしマントル殺すマンの獅子丸よりも人間臭くて魅力的に見えてしまうのもどうか……


今回のマントル怪人
シャゴン

 シトシト爆弾の製法を記した秘法書を追う怪人。ライフルを武器とし、赤い煙となって姿を消す。尊大な態度の割にはあまりに強くなく、ラストの一騎打ちでもあっさりと倒される。冷静に考えたらシャコというよりエビっぽいビジュアル。


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 『風雲ライオン丸』 第2話「荒野を走る黒豹」
 『風雲ライオン丸』第3話 「火を吹く亀甲車」

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2017.01.30

入門者向け時代伝奇小説百選 古典(その二)

 入門者向け時代伝奇小説百選、古典の紹介その二であります。
6.『ごろつき船』
7.『美男狩』
8.『髑髏銭』
9.『髑髏検校』
10.『眠狂四郎京洛勝負帖』

6.『ごろつき船』(大佛次郎)【江戸】 Amazon
 大佛次郎といえば『鞍馬天狗』の生みの親ですが、その作者の伝奇ものの名作が本作――松前藩を牛耳る悪徳商人に家を滅ぼされた大商人の遺児と、彼を守って決死の戦いを繰り広げる人々の姿を描く物語であります。

 本作の魅力の一つは、何よりも松前に始まり、舞台は江戸に、西国に、そして遙か遠く異国まで広がっていくスケールの大きさ。しかしそれ以上に心に残るのは、主人公側の登場人物を次から次へと襲う苦難の運命と、それにも負けぬ善き心の存在であります。
 運命の悪意に翻弄され、世の枠組みからつまはじきにされようとも、善意と希望を捨てず戦い抜く……そんな「ごろつき」たちの勇姿には、心を熱くせずにはいられません。

(その他おすすめ)
『鞍馬天狗 角兵衛獅子』(大佛次郎) Amazon


7.『美男狩』(野村胡堂)【幕末-明治】 Amazon
 密貿易の咎で獄死した銭屋五兵衛が残した莫大な財宝を巡り、架空・実在の様々な人々の運命が入り乱れ、やがて伊皿子の怪屋敷に習練していく――銭形平次の生みの親である作者が初めて手掛けた時代小説である本作には、時代伝奇の楽しさが横溢しています。

 しかし印象に残るのは何とも不穏なタイトル。実は本作で大活躍するのは不倶戴天の宿敵である二人の美剣士。そしてそこに魔手を伸ばすのが、大の美男好き、それも美男同士の死闘を観るのを愛するという怪屋敷の女主人なのであります。
 そのドキドキするような要素を、「ですます」調の爽やかな文体で、節度を守りつつ描き出し、波瀾万丈の物語として成立させてみせた本作。作者ならではの逸品です。


8.『髑髏銭』(角田喜久雄)【江戸】 Amazon
 今では知名度こそ高くないものの、紛れもなく時代伝奇小説界の巨人と呼ぶべき作者の代表作がこの作品。莫大な財宝の在処を示す八枚の「髑髏銭」を巡り、青年剣士・怪人・大盗・悪女・奸商入り乱れての争奪戦が繰り広げられる本作は、まさに時代伝奇の教科書ともいうべき先品です。
 特に印象的なのは、髑髏銭を求めて跳梁する覆面の怪人・銭酸漿。冷酷で陰惨な殺人鬼のようでありながら、実は悲しい宿命を背負い、人間的な側面を覗かせる彼には、現代においても全く古びない存在感があります。

 推理小説家として知られるだけに、ミステリ的趣向が濃厚なのも作者の時代伝奇の特徴ですが、それは本作も同様。ミステリファンにも読んでいただきたい作品です。

(その他おすすめ)
『妖棋伝』(角田喜久雄) Amazon
『風雲将棋谷』(角田喜久雄) Amazon


9.『髑髏検校』(横溝正史)【怪奇・妖怪】【江戸】 Amazon
 たとえ異国の存在であっても貪欲に取り込んでしまうのが時代伝奇というジャンルですが、異国の妖魔の代表格である吸血鬼が江戸を脅かすのが本作。

 『吸血鬼ドラキュラ』の翻案と言うべき本作は、異境の吸血鬼に囚われた若者の手記に始まり、都で若者の恋人を狙う吸血鬼の跳梁、これに挑む老碩学たちの死闘――と、基本的に原典の展開をなぞっているのですが、それでいて要素の一つ一つが見事に日本のものとして翻案されているのが素晴らしい。

 何よりも、唸らされるのは、ラストで明かされる吸血鬼・不知火検校の正体。終盤の展開がやや駆け足ではありますが、時代伝奇ホラーの名作であることは間違いありません。

(その他おすすめ)
『天動説』(山田正紀) Amazon
『神変稲妻車』(横溝正史) Amazon


10.『眠狂四郎京洛勝負帖』(柴田錬三郎)【剣豪】【江戸】 Amazon
 古典ジャンルの中で唯一戦後の作品であります。古くは市川雷蔵や田村正和が、近年はGACKTが演じた孤高のヒーローの活躍を描く短編集です。

 異国の転び伴天連と武士の娘の間に生まれたという出生の秘密を背負い、立ち塞がる相手は円月殺法で斬り捨てる異貌の剣士。そんな狂四郎の人物像は今なおインパクトがありますが、しかし本シリーズは、今現在は最終作を除いて絶版という状況。その一方で容易に手に取ることができるのが本書です。

 張り巡らされた陰謀と謎、強敵を斬り払う狂四郎の一刀、むせび泣く女体……眠狂四郎ものの王道を行く表題作をはじめとしてバラエティに飛んだ短編が集められた本書は、眠狂四郎に初めて触れるにも適した一冊でしょう。


(その他おすすめ)
『眠狂四郎無頼控』(柴田錬三郎) Amazon
『運命峠』(柴田錬三郎) Amazon


今回紹介した本
ごろつき船 上 (小学館文庫)美男狩(上) 文庫コレクション (大衆文学館)髑髏銭 (春陽文庫)髑髏検校 (角川文庫)新篇 眠狂四郎京洛勝負帖 (集英社文庫)


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 入門者向け時代伝奇小説百選

 大佛次郎『ごろつき船』上巻 悪事を捨て置けぬ男たちの苦闘!
 大佛次郎『ごろつき船』下巻 今立ち上がる一個人(ごろつき)たち!
 「美男狩」 時代伝奇小説の魅力をぎゅっと凝縮
 「髑髏検校」 不死身の不知火、ここに復活
 「眠狂四郎京洛勝負帖」 狂四郎という男を知る入り口として

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2017.01.27

『風雲ライオン丸』第3話 「火を吹く亀甲車」

 里見城下で蔓延する疫病の特効薬であるモチナシ草を、十五里離れた小沼村から運ぶことになった志乃と三吉。しかしモチナシ草はマントル怪人ドカゲに狙われていた。馬車を走らせる二人に幾度となく襲いかかるドカゲ。二人は豹馬の、獅子丸の助けを借りて先を急ぐが、その前に奇怪な車が――

 馬車(ビックリ号)で旅を続ける志乃と三吉が、途中の小沼村で引き受けることになったのは、村でしか生えないモチナシ草という薬草の輸送。疫病に苦しむ里見城下の人々のため、この薬草を運ぶことになったのですが……しかしそれを奪うべく命を受けたドカゲと配下の地虫忍者が二人を追います。
 途中、草むらに怪しげな岩を見かけた三吉が訝しむ一方で、突然車輪が止まってしまった馬車。志乃が下を覗き込んでみれば、地中から突き出た何本もの腕が車輪を捕らえているではありませんか。

 もちろん地虫の仕業ですが、ホラー的な演出の間に志乃が慌てて馬車を走らせたために置いて行かれることに。と、怒ったドカゲはマントルの掟と称して地虫を一列に並べると、先頭の一人以外が刀を掲げて……と、その後ろの地虫が前の者を斬り、次はその後ろが前を、と繰り返して最後はドカゲが最後の地虫を斬るという、狂気の総括であります。

 そんな間も馬車を走らせる志乃ですが、そこに待ち構えていた地虫の群れが再び襲撃。と、そこに駆けつけた獅子丸が地虫を蹴散らす間に逃れた二人は、敵を撒くために街道を外れ、川沿いの道を行くことになります。しかし、普通の道ですら危なっかしい馬車ですから、岩だらけの河原を走るのは危険極まりない。案の定、大切なモチナシ草の包みが幾つも川に流され、うち一つは手の届かないところに……元気な三吉もさすがに落ち込んで涙がポロリ。それでも志乃の優しい励ましを受けて立ち上がった三吉ですが――

 そんな間に馬車を奪って駆け抜けていくドカゲ。慌てて追いかける二人ですが、再び駆けつけた獅子丸は地虫を倒すと、ドカゲを引きつけて去って行きます。
 しかしなおも追いすがる地虫。密かに三吉が作っていた竹製のランチャーで目潰し弾を打って地虫を撃退していくものの、多勢に無勢、二人とも馬車から引きずり出されて……というところに響き渡る朗らかな若い声。偶然居合わせた豹馬が、退屈しのぎと二人の救援に駆けつけたのです。前回とは違う変身フォーム(しかし途中の微妙なメイクは変わらず)でブラックジャガーに変身し、地虫を蹴散らす豹馬。と、積み荷がモチナシ草と知った彼は金儲けのチャンスを目を輝かせますが、二人が人助けのために働いていると知り、つまらんと去っていくのでした。ちゃっかり今回のことは貸しにしておくと言い残して。

 さて、ようやく里見城下まであとわずかまで来たところで、再び現れた謎の岩。あからさまに周囲から浮いたその姿を怪しむ三吉の前で現れたその正体は――マントル一族の秘密兵器・亀甲車、いわば装甲車であります。そのデザインは亀というよりネズミとアルマジロとカタツムリを足してどうにかしたような不思議な外観ですが、しかし突き出した砲台から次々と放たれる爆裂弾は、この時代特有の本気の爆発連打で馬車を追い詰めます。
 そこに三度駆けつけたのは獅子丸! 二人をかばった獅子丸は、放たれた爆裂弾を拾い上げると爆発前に投げつけ、亀甲車を沈黙させると、残るドカゲと地虫に対し、ライオン丸に変身して立ち向かいます。

 しかし何故かドカゲが額につけている鏡に、殺気マンマンのライオン丸の顔が映る演出はいいのですがドカゲの実力はいまいち。剣を跳ね飛ばされ、ライオン丸が拾えと言っている隙に、左腕につけていた鈍器状の装甲を取り外して投げつけるのですが……爆弾となっている先端も効かず、下の部分を輪投げの要領で投げてライオン丸の刀を封じようとしても投げ返され……ライオン風返しで爆破されるのでした。
 そして志乃と三吉は無事に里見城下に到着し、獅子丸は二人と別れ、相変わらずの硬い表情で再びマントルを探す旅に――


 本作の特徴であるウェスタン風味が全面に押し出された今回、馬車という時代劇では実は珍しい乗り物を使ったチェイスというのはなかなか面白いアイディアだと思います(豹馬のキャラが出ているのも楽しい)
 ただ、志乃は基本的に猪突猛進(迂回路は使いましたが……)なので攻防戦としての楽しさに乏しかったのがちと残念。タイトルに登場する亀甲車も、もう少しケレン味を持たせればいいのに……とは思います。


今回のマントル怪人
ドカゲ

 モチナシ草を狙って志乃と三吉を追うトカゲの怪人。片腕を覆う防具は取り外し可能で、先端は爆弾になっている。亀甲車と連携して二人を襲うがライオン丸に一蹴される。長い尻尾を持つが特に意味はなかった。


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 『風雲ライオン丸』 第2話「荒野を走る黒豹」

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2017.01.20

『風雲ライオン丸』 第2話「荒野を走る黒豹」

 バラチの卑劣な罠にはまった獅子丸を助ける謎の青年剣士・黒影豹馬。一方、父の友人であったという百草寺の住職を訪ねる志乃と三吉だが、バラチは住職が対マントル一族のために蓄えていた軍資金を狙っていた。捕らえられ、窮地に陥った三人のもとに、豹馬が、獅子丸が駆けつける。

 冒頭、川辺で馬に水を飲ませながら自分は鶏もも肉にかぶりつく謎の深編笠。そこに現れた三人の破落戸は、大胆に深編笠の馬を奪おうとするのですが……散々挑発してきた相手を一瞬のうちに倒したその素顔は、総髪白面の青年でありました。

 一方、厳しい表情で旅を続ける獅子丸は、路傍に転がされたバラの花が突き刺さった死体に顔色一つ変えることなく、マントル一族の存在を感じ取ります。そしてその前に現れたのは、バラ+イタチという意表をついたモチーフの怪人・バラチ……いかにも強者めいた口調ですが、獅子丸にライフルをつきつけ、「飛び道具には敵うまい」とそのまま射殺しようとするかなりの卑怯者であります。
 しかし獅子丸はそのバラの花を打ち出す攻撃をマントで受け止め、バラチと対決するのですが……しかしどこまでも卑怯なのか、崖の上に地虫忍者を伏せていたバラチ。上から転がす岩に撹乱され、腕に矢を受けた獅子丸は、それでもライオン丸に変身、今度こそバラチと対決……と思ったらまだ上には伏兵が!

 ここまで来るとむしろ獅子丸が迂闊すぎる気もしますが、しかし彼が気づかぬ間に、地虫は導火線式のバズーカというとんでもない火器で彼に狙いを……と思いきや、その邪魔をしたのは先ほどの青年剣士。地虫を一掃され、形勢不利と見たかバラチが去った後、剣士は黒影豹馬と名乗り、獅子丸の腕が治ったら決闘しようと一方的に語って去るのでした。
 そして一人旅を続ける獅子丸は志乃と三吉に再会。行方不明の父の知り合いだという百草寺の住職を訪ねるという二人と野宿する獅子丸ですが、翌朝早くには別れも告げず、さっさと近くにあるマントル一族の陣地を求めて去ってしまいます。
(ここで志乃がギターっぽい楽器をかき鳴らしながら歌う「志乃の数え唄」が結構イイ)

 さて、百草寺を尋ねた二人ですが、住職は父の行方は知らないとのこと。一方、獅子丸に興味を示した住職は、マントル一族の脅威から人類を守るためには彼のような人間を集めて軍団を作ることが必要と、仏門の人間とは思えぬ発言をいたします。しかもそのための軍資金まで溜め込んでいるというのですが……そこに現れたのはバラチ。
 慌ててすっとぼける住職ですが、バラチの目的はその軍資金。住職を捕らえて鐘の中に立たせ、そのまま鐘をゴンゴン突くという、絵的には間が抜けているものの実際にやられたらかなりキツそうな拷問で痛めつけます。それには毅然と耐えた住職ですが、三吉が鞭打たれ、さらに志乃までも……となっては堪えられず、軍資金の場所に案内することを誓うのでした(ここで住職が見せる打ちひしがれた眼差しがイイというかイヤというか)。

 そしてついに掘り出されてしまった軍資金の櫃ですが……そこに突如踊り込んできたのは豹馬。抜いた刀をブンブンと回転させるポーズから微妙なメイクを経て、その名の通りのブラックジャガーに変身! さらに地虫を痛めつけてバラチの行き先を聞き出した獅子丸も駆けつけてロケット変身、ライオン&ジャガーとバラチ一味の決戦が始まります。
 自分の体を巨大な火の玉に変えて体当たりする火炎変化を繰り出すバラチ。しかし大してダメージを受けないライオン丸は、(今回もちょっと微妙な吊りの)空中戦の末、バラチを斬って落とすのですが……バラチが落ちたのは軍資金の櫃の上であります。あ、もしかして……とこちらの嫌な予感は当たり、そのままライオン風返しでバラチを爆破する獅子丸。その後軍資金のことは全く話が出なかったことを思うと――

 そして戦い終わり、獅子丸との決闘を望む豹馬。遊びじゃないと言われて真剣だ! と刀を抜くのはギャグかと思いましたが、相手にせず、馬に飛び乗ると去っていく獅子丸。そして志乃も、こんな連中と関わっていると命がいくつあっても足りないと言って別に去り、どこまでもドライな幕切れであります。


 ブラックジャガーの初登場以上に、バラチの卑怯っぷりが印象に残った今回。もう一つ印象に残ったのは、モブかと思いきや結構大きなことを考えていた(しかしその後活かされることはなかった)住職ですが……その後語られる志乃たちの父の素性を考えれば、なかなかドラマが感じられます。


今回のマントル怪人
バラチ

 バラを打ち出す銃と、斧に変化する槍を武器とする怪人。自らを巨大な火の玉に変えるバラチ火炎変化も使う。百草寺の住職が蓄えた軍資金を狙うが、獅子丸にあっさり倒される。大物めいた口調だがやることは卑怯。


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