2019.05.10

『王朝の陰謀 闇の四天王と黄金のドラゴン』 決戦! 大幻術 しかし……


 ツイ・ハークの判事ディーシリーズが帰ってきました。唐の則天武后の時代に実在した官僚・狄仁傑(判事ディー)が、皇帝から授かった無敵降龍杖を手に、奇怪な術師集団や、唐王朝に怨念を抱く妖術師一族に敢然と立ち向かう、伝奇ミステリ武侠アクション映画の最新作であります。

 日本で言えば大岡越前や遠山の金さん的な存在である狄仁傑。
 前作・前々作にあたる『王朝の陰謀 判事ディーと人体発火怪奇事件』『ライズ・オブ・シードラゴン 謎の鉄の爪』は、その彼の活躍を(題材としたロバート・ファン・ヒューリックのミステリをそのまた題材に)豪快な伝奇武侠アクションミステリ映画として甦らせたものであります。

 そして本作はその五年ぶりの続編――第二作の直後の物語であり、時系列的にはシリーズ二番目に当たる作品であります。

 ディーのトレードマークであり、万物を破壊する力を持つ降龍杖。前作の功績で皇帝からディーに与えられたこの杖が、手にした者に皇帝や皇族をも諫める力を持つという証でもあったことが、本作の発端となります。
 この降龍杖――というよりディーの存在は、王朝の権力を奪取することを狙う則天武后にとっては、目の上のたんこぶ。かくて彼女が、市井の異能者たちを集めた「異人組」に杖の奪還を命じたことから、壮絶な攻防戦が始まることになります。

 しかしこれはほんの序の口――則天武后に取り入って国師の座に就こうとした異人組のリーダー・幻天道士が皇帝に拝謁し、宮殿の中で風雨を起こしてみせた時に、大異変が発生します。
 単なる彫像であったはずの宮殿の柱の龍――これが突然動き出すや、その鋭い牙と口からの炎で道士をはじめとして異人組に次々と襲いかかったのであります。

 皇帝の眼前でのこの怪異の捜査を命じられたディーは、事件を引き起こしたのが、天竺からやって来た強力な催眠術「移魂術」を操る瞻波伽なる民であることに気付きます。
 かつてその術で高祖を助け、封魔族の名を賜ったものの、謀叛の疑いをかけられて弾圧・追放された彼らの復讐の刃が皇帝と則天武后に向けられていることを知ったディー。

 二人を守るべく奔走するディーと仲間たちですが、しかし移魂術を打ち破ることができるのは、三蔵法師の弟子・ユエンツォー大師だけで……


 というわけで奇怪な術師たちとの対決がメインとなる本作ですが、開幕早々からシビれるのは、異人組の勢揃いシーンであります。
 四本の腕を持ち嵐を起こす幻天道士、幾つもの巨大なブーメラン刀を操る幻刀門の幽冥覇刀、火術を操る怪老婆・千手門の花火鬼夜、奇術と毒・暗器の遣い手である仙器門の妙手飛煙、影に潜んで襲いかかる女剣士(ツンデレ)・薊山符隠派の水月――名前も技もビジュアルもグッとくる連中が次々と登場する場面は、好きな人間にはたまらないものがあります。

 一方、封魔族の方は、個々のキャラクター性はさほどでもないものの(刺青を入れられて追放されたという設定故か、全員が奇怪な仮面とフードを身に着けているのがイイのですが)、幻術使いだけあって問答無用にド派手な技が次々と繰り出されるのが楽しい。
 というより終盤の大決戦は幻術合戦というよりもはや怪獣召喚大会(これがまた個性的なビジュアルの連中!)で、ツイ・ハークの趣味の大暴走を、今回もまた存分に楽しませていただきました。


 ……が、正直に申し上げて不満が残るのは、本作にミステリ要素が非常に少なかった点であります。
 もちろん前二作においても、ミステリというのは味付けに近い部分は多かったのですが、しかし全体の世界観を締める役割でディーの推理が用意されていたのに対し、本作は本当に申し訳程度という印象があります。(幻術というのは何でもありになってしまうだけに、ミステリとは元々非常に食い合わせが悪いのですが……)

 これは最初からミステリ抜きの伝奇武侠アクションファンタジーとして楽しめばよいのかもしれませんが、ラストの決戦でディー判事と仲間の活躍を期待していると――というのもあって、釈然としないものが残ります。
 こうして続編が――メインキャラは皆続投で――見られただけでも非常にありがたいのですが、しかしそれだけに勿体ないなあ、という気持ちは否めないのであります。

(ちなみにタイトルの「闇の四天王」はダブルミーニングだと思うのですが、全く「闇」ではないという――中国映画の邦題に今更何を、ではありますが)

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2019.01.20

『どろろ』 第二話「万代の巻」

 百鬼丸につきまとい、ある村に現れる化物退治の話を持ってきたどろろ。村に泊まった晩、さっそく化物が現れるが、百鬼丸はそれを無視したどころか、村長の女・万代に斬りかかろうとする。放り込まれた牢で琵琶丸と出会った二人だが、そこに襲いかかる謎の化物。百鬼丸の「眼」に映る真実とは……

 前回のラストから、百鬼丸と行動を共にするどろろ。といってもどろろの方は百鬼丸という名も知らず(口を利けないので)、一方的に絡むばかりなのですが――百鬼丸の方も完全にマイペース、マイペース同士が組み合わさって、何となくウマがあったように旅は続いていきます。と、ここでナレーションが語るには、百鬼丸はその「眼」で「命の炎」を見て、その色で相手が何者か――その危険度が見えるとのこと。そういえば前回、百鬼丸が泥鬼を捉えたシーンでは赤く表示されていましたが、どろろは白い色のようです。

 さて、とある村で化物が出没して旅人が行方不明になっているとの話を仕入れてくると、礼金目当てに百鬼丸を引っ張っていくどろろ。訪ねた村は田畑も大してない割には裕福そうな様子でしたが――現れた村人は化物を退治するという二人を歓待するのでした。
 その晩、馬小屋で寝る二人の前に突然現れたのは「やろうかぁ」と語りかけてくる頭の大きな不気味な化物。これが件の化物かと驚くどろろですが、百鬼丸はこれを完全に無視し、化物も消えてしまうのでした。

 当然ツッコミを入れるどろろを、百鬼丸がスルーしているところに、村長の万代さまが二人に会いたがっていると呼びにきた村人たち。行ってみれば、そこで待っていたのは、足が悪いと寝所から上半身のみを覗かせた美しい女でありました。
 と、百鬼丸に何やら見覚えがある様子の万代さまに対し、突然刀を抜いて襲いかかる百鬼丸。当然ながら百鬼丸は村人たちに押さえつけられ、二人は牢に放り込まれます。もちろんどろろは怒り心頭、あんた本当に見えてねえ! と罵りますが、そこで語りかけてきたのは先客――琵琶法師の琵琶丸です。

 どろろに対し、自分やどろろにとっての――目明きと異なるものの見え方、先にナレーションが説明した内容を語る琵琶丸。と、そんな時に突然灯りが消え、真っ暗になった中で何者かが襲い掛かってきたではありませんか。しかし百鬼丸は冷静にこれを迎撃し、相手が現れ、再び逃げ込んだ井戸(?)に自らも飛び込んでいきます。そして琵琶丸に引っ張られてどろろもまた……
 一同が表に出てみれば、そこで待ち受けていたのは万代さま。しかし琵琶丸の目に映る彼女の魂の炎の色は――どす黒い血のような赤! 琵琶丸に言わせれば、化物なんてものではなく「鬼神」のそれであります。

 そして隠れていた万代さまの下半身が姿を表してみれば、それは顔の周りに無数の触手を垂らしたおぞましくも巨大な怪物。触手に貫かれながらも意に介することなく相手の巨大な目を叩き切り、怪物を追い詰める百鬼丸ですが、怪物は竹藪に逃げこみます。無数の竹を槍代わりに飛ばす相手に苦戦しつつも、そこに現れた「やろうかぁ」の化物に怪物が気を取られた隙に脱出した百鬼丸は、怪物を一刀両断。そしてその前に再び現れ、アレだけがお前を取れなかった、などと意味深なことを言いながら鬼女に変身しようとした万代さまを、百鬼丸は問答無用で倒すのでした。
 そして明らかになる真実――村に現れた万代さまの力を恐れた村人たちは、彼女が喰った旅人の身につけていたものを奪い、暮らしの糧としていたのであります。そして「やろうかぁ」の化物――金小僧は、かつて万代に食わせた遍路が持っていた金を守っていたのであり、村人たちは金小僧の鳴らす鐘の音に怯えていたのでした。

 そんな村人たちをなじるどろろですが――しかし反省するのはどろろも同じ。さすがにしょんぼりと百鬼丸に謝るどろろに対し、百鬼丸はなだめるように顔に手をやります。名無し野郎のくせに! とヒートするどろろに対し、地面に自分の名を書いてみせる百鬼丸。字を読めないどろろに代わり、琵琶丸が字を触って読むという少々奇妙な形で、どろろは百鬼丸の名を知るのでした。
 そして醍醐景光の所領では、突如国境で隣国な不穏な動きを見せ始めます。そしてそれと地獄堂の鬼神像の一つが崩れ、時を同じくして百鬼丸の体(神経?)にも異変が……


 万代と金小僧という、原作でも非常に印象に残るビジュアルの妖怪二体が登場する今回。物語的には原作を踏まえつつ、村人たちが万代に怯えつつも依存し、利用していたという、戦国地獄絵図が印象に残ります。
 そしてもう一つ印象に残るのは百鬼丸や琵琶丸の「眼」の設定。目で見えたものが真実ではないという今回の物語に巧みに絡められていましたが、後半で琵琶丸が解説するのであれば、前半のナレーションは不要だったのでは、とナレによる解説があまり好きではない私としては思うのでした。


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2019.01.03

『Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀2』 第13話「鮮血の恋歌」

 逃亡中の嘯狂狷を利用して、殤不患に挑戦状を叩きつける婁震戒。それに応えて魔脊山に向かった殤不患は、凜雪鴉と二人で婁震戒に立ち向かうが、七殺天凌の力を得た婁震戒の前に苦戦を強いられる。追い詰められた殤不患に残された起死回生の秘策とは……

 最終回らしくオープニングなしでスタートした今回。冒頭に登場するのは、前回ボッコボコにされて逃走途中の嘯狂狷、そして彼がすれ違ったのは、七殺天凌を背負った婁震戒であります。婁震戒が殤不患を探していることを知った嘯狂狷は、それを利用して復讐しようと彼をけしかけるのですが――嗚呼。
 嘯狂狷を追ってきた殤不患・凜雪鴉・浪巫謠の三人組が見たのは、樹にぶら下げられた上、胸元に挑戦状を留められた嘯狂狷の姿。ここまで生き延びたのにこんな最期を遂げるとは、自業自得とはいえ、あまりに無惨と言うほかありません。それはともかく挑戦状に指定された決戦の地、かつて玄鬼宗が根城にしていた魔脊山に向かう殤不患たちですが――七殺天凌を封印するための筆はあるものの、それを使うためには遣い手に手放させる必要があるわけで、それが難しい。

 その難事のために婁震戒と対峙する殤不患。不思議な因縁の二人ですが、今は(特に勝手に嫉妬に燃える婁震戒にとって)不倶戴天の敵同士、待ったなしで始まる両者の対決ですが――七殺天凌の魅了の力は健在の状況では、殤不患は眼を逸らして戦うほかありません。もちろん殤不患ほどの達人ともなれば、相手の気から動きを察知することは可能ではありますが、それは畢竟受けの剣でしかありません。さらに小技も交えて揺さぶりをかけてくる婁震戒に対し、凜雪鴉もついに参戦しますが、しかしそれでも七殺天凌を手にした婁震戒はあまりに強い。追い詰められた二人ですが――そこで凜雪鴉が取り出したのは、あの魔剣・喪月之夜!?

 そして凜雪鴉の振るう喪月之夜の一撃を受け、半ば異形と化した顔の下から、鋭い瞳を輝かせる殤不患。自分の意志を失った殤不患ですが、既に喪月之夜に操られる彼にとっては七殺天凌の魅了も効果なく――そしてその彼を操るのは、剣を取っては実は天下無双の凜雪鴉であります。無双の達人二人が力を合わせ、何の遠慮もなく戦うのですから、強いのなんの!(そして自在に殤不患を操る凜雪鴉は超ご満悦で、これはこれでまあよかったよかった)。
 さすがに追い詰められた婁震戒は、しかし魔力の源である喪月之夜さえなければ、と凜雪鴉に襲いかかります。激しくぶつかる七殺天凌と喪月之夜――と思いきや、喪月之夜に見えたのは凜雪鴉の煙管! 凜雪鴉得意の幻術にさすがの婁震戒も驚いた隙に、飛び込んできた浪巫謠は本物の魔剣を手にすると、殤不患の心臓を貫いて元に戻すのでした。

 そして凜雪鴉に動きを封じられている婁震戒に、拙劍無式・鬼神辟易を放つ殤不患。しかし敵もさるもの、婁震戒は以前空飛ぶ魔剣をへし折った蹴り足ハサミ殺しを再び放つ! ……が、相手の気を暴発させるのが鬼神辟易、その太刀を受けてしまったことが婁震戒の命取り――さすがの剣鬼もついに七殺天凌を手放して吹き飛ばされるのでした。
 そしてあの筆で中空に記される封印。そこに吸い込まれていく七殺天凌に飛びつく婁震戒――しかし一瞬遅く封印は閉じ、弾かれた婁震戒は深い谷に落ちていくのでした。

 そして無事魔剣目録を守りきった捲殘雲も(勝手に危ない任を引き受けたとおかんむりの丹翡ともども)合流し、封印の筆で魔剣目録に七殺天凌を戻す殤不患ですが――そこに描かれたのは婁震戒の片腕。封印の瞬間、婁震戒が片腕を犠牲にして七殺天凌を取り戻し、共に地の底に消えたのであります。
 しかしさすがにもはや再び人界に現れることはないだろうと(崖落ちは武侠ものでは生存フラグですが……)考えた一同、これで魔剣が2本減ったはずが、ようやく誤解を解いた伯陽候から3本の神誨魔械を託されて数が増えたりもしましたが、まずはめでたしめでたしであります。

 ……が、西幽の闇の中では、今回ほとんど出番のなかった禍世螟蝗たちが、蠍瓔珞など所詮一番の小物、などと悪役らしい言葉と共に敵意を燃やします。そしてそんな彼らに助力を申し出る魔界の者の影。殤不患と凜雪鴉に恨みを持つというその声の主は、かつて彼らと行動をともにした女、刑亥……


 というわけで、まずは大団円の本作。振り返ってみれば、ほとんど通りすがりのキャラがラスボスになったり、舞台の大半が狭いエリアの中だったり、凜雪鴉にいいところがほとんどなかったりしましたが、しかし普段は仲が良くない二人が息のあったところを見せたり、小技のトリックで一発逆転したりと、ラストバトルには十分満足させられました。

 そして第三期決定とのことですが――さてここから何を見せてくれるのか? 何のかんの言って参りましたが、もちろん大いに期待しているのであります。


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2018.12.21

『Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀2』 第12話「追命靈狐」

 魑翼によって鬼歿の地に運ばれたものの、自分以外に七殺天凌を触れさせることがなくなったと歓喜に震える婁震戒。しかしその前に敵意に燃える歿王が現れる。一方、喪月之夜の力で衙門の人々を下僕に変えた嘯狂狷に単身挑む浪巫謠は、相手の奇策の前に苦戦を強いられる。そこに駆けつけた殤不患は……

 前回、凜雪鴉の罠(?)にはまり、魑翼によって飛ばされてしまった婁震戒と七殺天凌。たどり着いたのは鬼歿の地、こんな人気のないところ、エサもないし早く帰りたーい、とむくれる七殺天凌ですが、婁震戒はむしろこれでやっと二人きりになれましたねと、うっとりねっとり囁きます。自分にもいつか老いや病が訪れるだろう、その後に別の男の手に姫が渡るなど耐えられない、それならばこの地で二人ひっそりと永遠に手を携えて眠りましょう――と、谷底ダイブ寸前のヤンデレ全開であります。
 さすがの七殺天凌もこれは真剣にヤバいと焦りながら、己の魔力で彼を引き戻そうとしますが、しかし効かない。それもそのはず、婁震戒は魅了の魔力のためではなく、ガチで七殺天凌にぞっこんだったのであります! 想像を絶する基地外によって、よくわからないうちにラスボス退場か、と思われたその時出現したのは、殤不患に片翼を落とされ、浪巫謠と凜雪鴉に角を折られと人間に対して恨み骨髄の竜・歿王。人間殺すドラゴンと化した彼ですが、しかし修羅場に首を突っ込んだのは、あまりに空気を読まない所行というほかありません……(そもそも、竹光持った奴にナメプで重傷を負わされたのを忘れたのか)

 一方、惨劇の連続に、さすがに人っ子一人いなくなったいつもの街。そこを往く浪巫謠の前に現れたのは、小悪党モードの嘯狂狷であります。衙門の人々を喪月之夜でゾンビに変え、勝ち誇る相手に、傷を押して単身立ち向かう浪巫謠ですが――戦いの最中、突然嘯狂狷が喪月之夜を投げて寄越した!? 自らの最大の武器を手放してきた行動に戸惑う浪巫謠ですが、これぞ恐るべき罠であります。
 自分は喪ブの皆さんがどうなろうとも知ったことではない、むしろ積極的に叩きのめし、吹き飛ばして高笑いの嘯狂狷。しかし浪巫謠にとって彼らを見捨てることができるはずもなく、さりとてコントロールに慣れぬ身では喪ブたちを制御不能、自分も気を取られて棒立ち――そんな彼の状況をあざ笑いながら、嘯狂狷は遠距離からガンガン落ちてる剣やら槍やら投げつけ、浪巫謠はズタズタに。そしてついにトドメの槍が浪巫謠に迫る……!

 が、そこに最高のタイミングで駆けつけたのはもちろん殤不患。浪巫謠を救うや喪月之夜を手にした殤不患に対し、同じ手段で苦しめようとする嘯狂狷ですが――殤不患は滅茶苦茶巧みに喪ブをコントロールして攻撃を躱す、そして逆に攻撃を仕掛けまくる! 喧嘩は手数が大事、というのは殤不患の言うとおりですが、まさかここまで見事に喪ブを操ろうとは、誰も想像できるはずがありません。かくて嘯狂狷は喪ブたちにタコ殴り、メガネは吹っ飛び青あざだらけのギャグみたいなビジュアルとなって、見ているこちらも大いに溜飲が下がりました(凜雪鴉も意地を張らなければこんな愉快な場面を見れたのに……)
 人々を自在に動かすほどの将器(っていうのかしらコレ)を持ち、それどころか35本の魔剣まで持っている。それだけの力を持ちながら、何故流浪の身に甘んじているのか、と愕然とする嘯狂狷に対し、それがそうしたいからだ、とある意味鬼のような言葉で返す殤不患。そんな規格外のトラブルメーカーとこれ以上つきあってはいられないと、嘯狂狷は、ダイナマイトみたいな煙幕を張ってその場から逃げ出すのでした。

 そして喪ブを解放し、衙門おじさんの感謝の声を背に立ち去る殤不患と浪巫謠。そこに、もう誰でもいいからひどい目に遭うところを見たい! と禁断症状が出た凜雪鴉も加わり、三人で嘯狂狷を追うことになります。
 そして鬼歿の地では、可哀想な歿王が婁震戒によって暴力の本当の意味を教えられて惨死。さあ邪魔者もなくなりましたし死にましょう、と言い出す婁震戒に対し、焦った七殺天凌が、最強の剣士である殤不患を倒さないと自分を手にするのにふさわしいとはいえないんじゃないかな、と口から出任せを抜かしたおかげで、嫉妬に燃える婁震戒は殤不患打倒を誓って――最終回に続きます。


 というわけで、前作同様、殤不患が反則級の能力を発揮して大活躍、二つ名がサブタイトルになりながらも嘯狂狷はボッコボコにされて、実に気分が良い展開となりました。

 その一方で今回もヤンデレ絶好調の婁震戒。皆にとって最もよい結末は、(殤不患に敗れた末に)彼が七殺天凌を手に谷底に落ちることではないかと思っていましたが、まさか自分からそれをしようとするとは、さすがに驚かされました。
 しかしまさかそのヤンデレの逆恨みで、ラストバトルが勃発することになるとは、そしてそこに悪人を馬鹿にしたくて仕方がない真の最強剣士が居合わせることになるとは――次回、大惨事の予感であります。


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2018.12.15

『Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀2』 第11話「悪の矜恃」

 決戦に備え、魔剣目録を捲殘雲に預ける殤不患。その頃、悪事が露呈して追いつめられた嘯狂狷をさらに追い込もうとする凜雪鴉だが、思わぬ開き直りを見せた嘯狂狷に当てを外されてしまう。一方、仙鎮城を壊滅させた婁震戒の前に立ち塞がった浪巫謠は、視界を断って七殺天凌を追い詰めるのだが……

 冒頭、森の中で立ち合う二人の男。一人は殤不患、もう一人は短髪に眼帯の――捲殘雲! 槍を捨て、今は妻となった丹翡の家に伝わる丹輝劍訣を操る捲殘雲は、まだ慣れぬ技ということもあって殤不患にはまだまだ及びませんが、丹翡の気持ちもしっかりと慮るなど、殤不患をして親指を立たせしむるほどの好漢に成長した様子です。
 さて、その捲殘雲に殤不患が会いに来たのは、決戦を前に万が一にも敵に渡せない魔剣目録を彼に預かってもらうため。もちろん快諾した捲殘雲は、かつての兄貴分・狩雲霄と行動していた頃の隠れ家を転々として、一週間稼いでみせると請け合うのでした(人間何が役に立つかわからないものです)。

 一方、前回ついに凜雪鴉のトラップに引っかかり、東離では宝剣泥棒の濡れ衣を着せられ、西幽ではこれまで秘宝の数々を横領していたことが露見(予定)となってしまった嘯狂狷。(たぶん凜雪鴉が宝剣を隠していた)洞窟で荒れる嘯狂狷に、凜雪鴉は「そんなことで絶望しちゃだめだよ! まだきっと打つ手はあるよ!(でもやっぱりそんなものはなくて、ガッカリ屈辱顔を見せてね)」いう感じで、助言のふりをしつつトドメを刺しにかかるのですが……
 しかしここで嘯狂狷が態度を一変させます。これまでの慇懃無礼な態度をかなぐり捨てて、微妙に正体が露見した弁天小僧チックに開き直る嘯狂狷の姿に凜雪鴉は愕然。冷徹に悪事を重ねてきたのに、一気に破滅させられて絶望する姿にメシウマしようと思っていた相手が、豈図らんや、悪の矜持など欠片も持たない小物中の小物だったとは! 自分を陥れた奴の勝手な愉しみを粉砕したとも知らず、自分の明日からの身の振り方を算段する嘯狂狷に、凜雪鴉は怒り心頭で――しかしもちろん自分で手を下すなどはできず――去っていくのでした。

 さて、前回七殺天凌ラブが極まるあまり、彼女が嫌がる神誨魔械を滅ぼすべく、仙鎮城に殴り込んだ婁震戒は、城の護印師を皆殺しにし、城にあった神誨魔械を全て破壊。しかし最も強力な三本の宝刀は、先に逃れた伯陽候が持ち去っていた模様で、もうここには用はないと一人と一本は城を離れるのですが――その前に立ち塞がるはやはり一人と一本、言うまでもなく、浪巫謠と聆牙です。
 以前、蠍瓔珞が手にした七殺天凌をあと一歩まで追い詰め、そして諦空=婁震戒の危険性をただ一人見抜いて処断しようとした浪巫謠は、言うなれば七殺天凌にも婁震戒にも因縁の相手。といっても婁震戒が警戒などするはずなく、七殺天凌を手に襲いかかるのですが――もちろん浪巫謠は、再び自らの視覚を封じて立ち向かいます。

 視覚を封じてというのは、前回も祐清か碧樞のどっちだったかがやっていましたが、しかし浪巫謠の場合が決定的に異なるのは、彼には視覚に勝るとも劣らぬ聴覚があることと、何よりも滅茶苦茶に武術の腕が立つことであります。魅了は効かず、近づけば剣となった吟雷聆牙の斬撃が、離れれば琵琶に戻った聆牙の音撃が襲いかかる――遠近に隙なし、これは七殺天凌にとっては最悪の相手かもしれません。
 が、その七殺天凌を手にするのも達人の婁震戒。攻撃を躱しながら密かに石を拾い集めた彼は、宙に飛んで逃れた時にその石を放ち、足音と思わせておいて上から襲いかかるという(冷静に考えれば結構地味な)策で反撃! ああ、浪巫謠もこれで退場か――ということはなく、辛うじて肩を斬られただけですんだものの、しかし七殺天凌は小さな傷でも容赦なく体力を奪う魔力を持ち主。もはや浪巫謠の命運は極まったか……

 と、その時自分目掛けて飛んでくる物体を思わず婁震戒が手で受け止めてみれば、それは魑翼の骨笛――召喚された魑翼に捕まり、一人と一本は天空高くに追放されてしまうのでした(まあ、魑翼が力尽きたら戻ってきてしまうわけですが……)。さてその救いの主はやっぱり殤不患かと思えば、それは何と凜雪鴉。玩具であった嘯狂狷に裏切られて(?)機嫌は最悪のようですが、ナイスアシストではあります。
 そしてその原因である嘯狂狷は、大胆にも衙門に殴り込むや、己の手駒とするべく喪月の夜を振るって――と、ますます混沌とした状況ですが、残りはわずか2話であります。


 サブタイトルから、さぞかし立派な悪の矜持を見せて散るかと思いきや、そんなもの持ってないぜ! というスゴい切り返しを見せた嘯狂狷が全て持って行った気がする今回。玩具を失って暇になった凜雪鴉がようやく物語の本筋に絡むのかと思いますが、一筋縄では行かない物語でありキャラクターであるだけに、まだまだ油断できないところです。


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 『Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀2』 第9話「強者の道」
 『Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀2』 第10話「魔剣/聖剣」

 『Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀』 第1話「雨傘の義理」
 『Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀』 第2話「襲来! 玄鬼宗」
 『Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀』 第3話「夜魔の森の女」
 『Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀』 第4話「迴靈笛のゆくえ」
 『Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀』 第5話「剣鬼、殺無生」
 『Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀』 第6話「七人同舟」
 『Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀』 第7話「魔脊山」
 『Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀』 第8話「掠風竊塵」
 『Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀』 第9話「剣の神髄」
 『Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀』 第10話「盗賊の矜恃」
 『Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀』 第11話「誇り高き命」
 『Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀』 第12話「切れざる刃」
 『Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀』 第13話「新たなる使命」(その一)
 『Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀』 第13話「新たなる使命」(その二) と全編を通じて
 『Thunderbolt Fantasy 生死一劍』 剣鬼と好漢を描く前日譚と後日譚

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2018.12.07

『Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀2』 第10話「魔剣/聖剣」

 七殺天凌を手にした諦空(婁震戒)によって蠍瓔珞が斬られたことを知る殤不患。一方、凜雪鴉と商談をまとめ、西幽の秘宝を売りさばこうとする嘯狂狷だが、意外な陥穽が待ち受けていた。そして七殺天凌を手に虐殺を繰り返す婁震戒は、彼女の天敵である神誨魔械を破壊するため、仙鎮城に迫る。

 前回、非業の死を遂げた蠍瓔珞を浪巫謠が弔っているところにやってきた殤不患。新たな道を行こうとしていた矢先の彼女を斬った諦空に怒りを燃やす殤不患ですが、浪巫謠はそれでも殤不患が可能であれば諦空を助けようとしていると見て、非情になれない奴は邪魔だと、戦場から一時離れるように促します。もちろん浪巫謠は、そんな甘さを捨てきれない殤不患をそのままの彼でいさせるために、あえて冷たい言葉を吐いたのですが……

 その頃七殺天凌と諦空改め婁震戒はといえばイチャイチャの真っ最中。七殺天凌が求めるままに人を斬り、その血を吸わせていく彼は、その前に現れた祐清だったか碧樞だったかのどちらかと遭遇、相手があまりの変わりように驚いて間に(というよりむしろよく同一人物だとわかったな!)バッサリと斬殺してしまいます。そんな婁震戒に対して、「ほかにもっと良い剣が現れたらそっちにさっさと乗り換えちゃうんじゃないの?」と軽くスネてみせる七殺天凌。いやいやそんなことはないですよと返す婁震戒ですが――一体君たちは何をやっているのだ。

 一方、そんな流れはお構いなしに悪巧みを進める嘯狂狷。彼が西幽から運んできた秘宝と、凜雪鴉が隠していた東離の名刀と――ともに売りさばけば後ろに手が回る品を交換して、遠く離れた地でそれぞれ売りさばこうという企みであります。そして互いの品を取り替えた嘯狂狷ですが――ここで凜雪鴉が、西幽のお宝の方が価値が高すぎる、これでは自分ばかりが得してしまうので、君がこれを売ってその中から分け前を渡してくれたまえよ、と言い出すのでした。
 凜雪鴉の言葉に疑いを抱きつつも、自分には破幻のメガネがあるのだから心配はない、と嘯狂狷はその提案を受け入れるのですが……

 そのおそらく翌日、釣りをしている凜雪鴉のところにやってきたのは殤不患(こいつら普通に友達だな?)。と、振り向いた凜雪鴉の顔には、あの嘯狂狷のメガネが!偽物とすり替えておいた、としれっと語る凜雪鴉は、物に頼り切っているからこんなことになると、もっともながらお前が言うな的なことを語るのですが――当の嘯狂狷の方は、そんなことになっているとはつゆ知らず、凜雪鴉に頼まれた通り、商人のもとに、西幽の秘宝の数々を持ち込みます。
 ……が、櫃を開けてみれば、そこに入っていたのは東離の名剣――それも墳墓や宮中にあるはずのものばかり。こんな恐ろしいものを一体、という疑いの目に耐えきれなくなった嘯狂狷は、店主たちを殴り倒して逃走、さらに途中で出会った東離の捕吏たちも殴って逃げるのでした。しかし東離の剣がこちらにあるということは、西幽に送った荷の中身は西幽の宝、すなわち彼の汚職の証拠。東にも西にも逃げ場はなくなり、地団太を踏むしかない嘯狂狷であります。

 さて、殺人バカップルに目を向ければ、スネられたのが悪かったか、婁震戒は姫以外の刀は許せんと、仙鎮城への殴り込みを決意。なるほど、護印師のもとであれば、神誨魔械をはじめ名刀宝剣の類は様々あるかと思いますが――しかし神誨魔械は魔物に近い七殺天凌にとっても苦手な相手。しかし婁震戒は大丈夫大丈夫と、珍しく弱気の七殺天凌にもかまわず乗り込んでいくのでした。
 もちろんたまったものではないのは仙鎮城側。あっさりと突破されていく守りを前に、祐清だったか碧樞だったかの生きていた方は、自分が時間を稼ぐうちにお逃げ下さいと伯陽候に促します。そして目隠ししたまま婁震戒と七殺天凌の前に立つ彼が持つのは――自在に宙を舞い、自動的に「魔」を察知して襲いかかる誅荒劍。なるほど、これであれば目が見えなくとも戦えます。

 婁震戒は体術で攻撃を躱しまくるものの、人間の身であれば限界はあります。そしてついに動きを止めた婁震戒に襲いかかる誅荒劍ですが――ここで婁震戒は身を捻るや、肘と膝で挟み込んで剣を止め、そのままへし折った! 真剣白刃取りどころか、まさかの蹴り足ハサミ殺しを白刃相手に敢行する婁震戒、やはり異常な遣い手であります。
 道具に頼りすぎだ、とどこかで聞いたような言葉とともに相手に止めを刺す婁震戒。一方、ただ一人逃れた伯陽候が向かう先は……?


 突然ものすごい格好になった(しかし一目で見抜く仙鎮城の皆さん)諦空改め婁震戒と七殺天凌のバカップルぶり、そしてついに転落を開始し小物っぷりを見せつける嘯狂狷と、クライマックス間近ながら愉快な展開が続いた今回。こんな楽しい人たちもこれからバタバタ退場していくのだろうなあ――と思っていたら、次回予告に見覚えのある眼帯青年が登場して、思わず真顔に……


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2018.12.02

『ファンタスティック・ビーストと黒い魔法使いの誕生』 当時ならではの、そして現在だからこその悪の姿

 邪悪な魔法使いグリンデルバルドが護送の途中に脱走、パリに潜伏した。一方、恩師ダンブルドアの依頼もあり、仲違いしたそれぞれの恋人を追いかけて、人間の友人・ジェイコブと共にパリに向かうニュート。そこで彼らは再びグリンデルバルドとクリーデンスにまつわる事件に巻き込まれることに……

 ハリー・ポッターシリーズと同一世界の過去の物語であり、その前史とも言うべき『ファンタスティック・ビースト』シリーズの第二弾である本作。
 前作は1926年のアメリカを舞台に、逃げた魔法生物を追うニュートの奮闘と、強大な魔力を持つ青年・クリーデンスの謎が描かれた末、事件の黒幕であったグリンデルバルドの捕縛を持って終わりましたが、本作はその翌年を舞台に、次なる物語が描かれることとなります。

 その物語の中心となるのは、もちろん第1作で活躍した面々顔ぶれ――魔法生物の研究に並々ならぬ熱意と愛情を燃やすもののコミュ障気味のニュート、魔法とは無縁で気のいい中年男性・ジェイコブ、生真面目で活動的な魔法省の役人のティナ、そして彼女の妹で相手の心を読む魔力を持つクイニーの四人。
 そんな彼らの(特に物語前半での)姿は、実に「らしく」楽しく、久々にお馴染みの面々に再会できたという気持ちになれます。

 そしてお馴染みといえば、本シリーズには初登場ながら、ファンの皆が待ち望んでいた若き日のダンブルドアがついに登場。
 初登場シーンの表情一つで、「これはあのダンブルドアだ!」と思わされるジュード・ロウの好演は、登場する場面は決して多くないものの、一筋縄ではないかないこの人物を見事に描き出していたといえるでしょう。

 そして予備知識なしに見れば誰もが仰天したであろう「彼女」が実に印象的な姿で登場し、さらに今まで名前だけが語られていたあの人物の意外な活躍(?)と、ファンにとっては実に嬉しいキャラクターたちが登場。
 何よりも、(過去の時代の姿ではあるのですが)「懐かしの」と形容したくなるようなホグワーツ魔法学校の姿には、誰もが胸躍らせることでしょう。


 このように、心憎いまでのファンに対する目配せを見せる本作ですが――しかしそこで描かれるのは、前作よりも遙かに重く、厳しい物語であります。

 前作ではほとんど顔見せ同然の登場で捕らえられてしまったグリンデルバルド。本作では(予想通り)冒頭であっさりと逃走、故あって――その「故」を、ファンにはお馴染みのあのアイテムを用いて、直接的ではなく、しかしこれ以上ないほど鮮明に描く演出に脱帽――ダンブルドアが彼と戦いを避ける中、彼の影響力が水面下で、しかし着実に広がっていく姿が、克明に描かれることになります。

 そしてその末に――今回もまた様々な姿で登場する魔法生物たち以上に――強烈な印象を残すのは、本作のクライマックスで描かれるグリンデルバルドの姿であります。

 まだ公開されたばかりの作品故に、詳細は申し上げません。しかしここで描かれるグリンデルバルドの姿は、後の世を騒がせることとなるヴォルデモートとは全く異なる「悪」の姿を体現するものである――と言うことは許されるでしょう。
 そしてそれはまた、物語の舞台となる1920年代――先の大戦が終わり、平和な日々への希望を抱いた人々の間に、新たな不安が芽生えつつあった時代――だからこそ生まれたものであると同時に、極めて現代的なものでもあるのです。

 この世に悪の種を蒔くべく、自らの信奉者を煽り立てるグリンデルバルド。しかしその言葉は、表向きは決して悪を為そうというものではありません。そこにあるのは、この世にある脅威や恐怖の存在と、それに対する備えの訴え――そのことのみ。
 しかしその言葉にどれだけの毒があるのか、それがどれだけ危険なものであるか、我々は知っています。そう、ここで描かれる悪は、いま我々が目の前で対峙しているものにほかならないのですから。


 一本の映画としてみた場合、悪の存在感が強すぎるために、歪な印象があるのは否めません(それはあるいは、五部作の二作目だからこそ描けるものであるかもしれませんが)
 しかし個人的には、この時代が舞台だからこそ描ける、そしていまこの時代だからこそ描かれなければならない悪の存在を見事に提示してくれた本作に、大いに満足しています。

 そしてこの先に望むのは、この悪に我々はどう対峙すべきなのか――その答えであります。本作の結末でわずかにその可能性が垣間見えたようにも思えるそれを、この先どのように描くのか――今後の物語が今から楽しみでなりません。


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2018.11.30

『Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀2』 第9話「強者の道」

 辛うじて浪巫謠から逃れたものの、戦意を失った蠍瓔珞に自らの生命を捧げるように命ずる七殺天凌。ついに魔剣を手放した蠍瓔珞は自ら殤不患の前に現れ、最後の戦いを挑む。決着がついても命を奪わない殤不患に強者の道を問うた蠍瓔珞は、その答えに救われた思いで新たな一歩を踏み出そうとするが……

 前回面白悪党コンビの乱入で浪巫謠から逃れた蠍瓔珞は、いつもの納屋で落ち込みモード。しかしそんな彼女を容赦なく七殺天凌は追い込み、手に入れ損ねた人間の命の代わりにお前の血を与えろと無茶苦茶なことを言い出します。一度は逆らえず手首に刀身を押し当てる蠍瓔珞ですが、あまりの仕打ちに耐えかね、七殺天凌を放りだすと、封印の呪符を放つのですが――しかし幾つもの呪符を貼られても堪えることない魔剣に、蠍瓔珞はその場から逃げ出すことしかできないのでした。

 一方面白悪党コンビの方はといえば、いい気になった嘯狂狷は、凜雪鴉に盗品置場に案内するよう強制、その結果によっては捕吏に突き出さないでやらんこともないと上から目線であります。そこで凜雪鴉が案内したのは、前作で追い込みをかけた刀剣コレクターの悪の首領から奪った刀剣置場であります。
 物が物だけに簡単に売り払うこともできないとぼやく凜雪鴉に、嘯狂狷は絶対足のつかない盗品の売り先があると――そう、西幽に持っていって売ればよいと得意顔。もちろん自分がこれまで奪ったブツも西幽から東離に持ち込んで――と、今まで捕らえた相手を殺して盗品を横領していたことを隠しもしない嘯狂狷に、明らかに適当に調子を合わせている凜雪鴉であります。

 さて、視聴者からはポンコツ扱いされ、七殺天凌の魔力の前に薬中→廃人コースを歩む蠍瓔珞。その前に思いとどまり、自分の命運は自ら決めると思い定めた彼女は、その辺を歩いていた殤不患の前に姿を現し、最後の対決を望むのでした。そいてお互い小細工なしの正面からの一刀を放つ二人ですが――しかし殤不患の刀は蠍瓔の刀を珞を粉砕、そのまま彼は刀を蠍瓔珞の細首に――刺さない。

 くっ殺せ! と言う蠍瓔珞に対して刀を収め、殤不患は語ります。弱いから負けて死ぬ。強いから勝って生き残る――世の中そんな単純じゃない、と。勝った奴が生きるのは当たり前だとすれば、負けてなお生き延びた奴はさらに強いのではないか? ……まるでこちらの方が坊さんのようですが、負けても強いという生き方があるということは、ただ強さだけを求め思い詰めていた蠍瓔珞にとって、まさに蒙を啓くものだったと言えるでしょう。
 ならばお前の目指す強さとは、最強の在り方とは? と問いかける蠍瓔珞ですが――これに対して、負けて生き延びた奴の仕返しに怯えない奴が一番強い、と答えて完爾と笑う殤不患。いやはや、親指を立てて賞賛したくなるほどの好漢っぷりであります。

 そして殤不患は七殺天凌を求めて先を急ぎ、蠍瓔珞は、己が勝手に背負っていた重荷を下ろして、足取りも軽く歩み出すのですが――その瞳に、一人佇む諦空の後ろ姿が映ります。自分を見つめ直すきっかけをくれた礼を言い、まだ意味を探して旅をするのであれば、迷惑でなければ一緒に――という彼女に、旅は終わった、答えは得たと振り返る諦空。その手には――七殺天凌が!
 人生は戦うに値する、命は奪うに値する! とよくわからないことを言いながら、凄まじい気を放つ諦空。その気の激しさたるや、毛が逆立つどころか、螺髪がストレートのロン毛に変じるほど(斬新な演出だなあ)。そして彼はあまりの衝撃に立ち尽くす蠍瓔珞に、無慈悲な一刀を放つのでした。

 ついに相応しい遣い手を得たという七殺天凌に、諦空は還俗を宣言、かつて名乗った婁震戒の名とともに、新たな一歩を踏み出します。遅れてその場に現れた浪巫謠は、蠍瓔珞の亡骸の近くに散らばる数珠を見て……


 終盤間近となって、やはりこうなったか、という今回。本作は全般的にスケール――特に悪役のスケール不足の印象が強くありましたが、今回ようやくラスボスに相応しい存在が登場したという印象があります。
 が、それでもいきなり登場感は否めないわけで、果たしてこの先、婁震戒のキャラクターがどれだけ掘り下げられるのかが、大いに気になります。まさか他の作品で描かれたからOKとはしないと思いますが……

 そのスケール不足の悪役のうち、悲しくも今回退場となったのは蠍瓔珞。『生死一剣』の殺無生のような無闇な希望の持ちっぷりからこれは危ないと思いましたが――最期に己の誇りを取り戻せたことを以て瞑すべきでしょう。
 もう一人の悪役の方は、どう考えても簡単には死ねるはずもないのですが――しかしあまりに小物過ぎて、もはや凜雪鴉の獲物に相応しいかも怪しい状態。そもそもこの先話の本筋に絡めるのか、別の意味で心配であります。


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2018.11.24

『Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀2』 第8話「弦歌斷邪」

 蠍瓔珞が手にした七殺天凌を前に窮地に陥る殤不患。七殺天凌の気紛れで命拾いしたものの、そこに現れた凜雪鴉を見逃した殤不患に怒った浪巫謠は、彼と袂を分かつのだった。一方、鬼鳥=掠風竊塵と見抜いた嘯狂狷は、凜雪鴉に七殺天凌と殤不患を噛み合わせるという策を手伝わせようとするが……

 七殺天凌を手にした蠍瓔珞には殤不患が、桃色光線に魅了されてやたらとアクション作画が良くなった嘯狂狷には浪巫謠が挑む場面から始まった今回。しかし嘯狂狷はともかく、まともに相手を見られない状態で七殺天凌と戦うのはさしもの殤不患にも荷が重く、足に傷を受けてしまうことになります。それだけでもエナジードレイン状態になるのですから始末が悪い剣ですが、しかしここで止めを刺すよりもこやつの大事な者たちを先に殺して悲しませてやろう、的なことを七殺天凌が言い出したことで命拾いした殤不患。しかしこれはどう考えても敗北フラグですが……
 と、この場をひとまず去ろうとする蠍瓔珞を後ろから追いかけ、一撃を食らわす嘯狂狷。どんだけポンコツなのか蠍瓔珞、と思いきや、それは嘯狂狷を止めるための凜雪鴉の幻術だったのですが――ここで彼曰く「オモチャ」である嘯狂狷を連れて行こうとする凜雪鴉を殤不患が放置したのに怒った浪巫謠は、彼とは別行動を取ると告げるのでした。

 一方、刑部に運び込まれた嘯狂狷は、実は途中で意識が戻ってましたよ、この眼鏡は真実を見抜くんです的なことを言いながら、鬼鳥=掠風竊塵という秘密をばらされたくなかったら――わかるよね? 的にヘタレ眼鏡から鬼畜眼鏡に変貌、一転攻勢で凜雪鴉を脅しにかかります。その言葉におとなしく従う凜雪鴉ですが――しかしどう考えても素直に恐れ入っているはずもありません。別に正体がばれた程度で彼が困るとも思えず、むしろ利用する気満々にしか見えないのですが……
 何はともあれ、凜雪鴉を屈服させたと思いこんでご満悦の嘯狂狷は、蠍瓔珞は放っておき、殤不患と噛み合わせて互いに消耗させて漁夫の利を得ようと企てるのでした。

 さて、浪巫謠と分かれて蠍瓔珞を追う殤不患が見つけたのは、何やら地面を掘っている諦空。彼は運悪く七殺天凌に行き合って殺された犠牲者を弔おうとしていたのですが――何とこれは、以前毒にやられたのを諦空に救われた老夫婦ではありませんか。お前が救った蠍瓔珞が、以前お前が救った老人たちを殺したと詰る殤不患ですが、それではこの殺されるために老人たちを助けたかと、平然とこの世の無常――というか無意味さを語る諦空に、殤不患も怒りと呆れ半分。しかしさすがに浪巫謠のように斬りかかることもなく、その場を去るのでした。

 そして当の蠍瓔珞は――いつの間にか西幽に戻り、速水奨の声で喋る石板の前に立っているではありませんか。そして任務を果たさなかったことを咎める速水奨に対して公然と反旗を翻した彼女は、七殺天凌でその場にいる者たちを皆殺し(皆壊し)に――というところでハッと目覚めた蠍瓔珞。七殺天凌に煽られて非常に気まずい気分の蠍瓔珞ですが、絶対の忠誠を誓った主に対する反逆心が自分の中にあったことに衝撃を隠せない彼女には、まだまだ武人の心が残っているようにも見えますが……(にしてもまだあの納屋に起居する蠍瓔珞は、気に入ってるのかしら)。

 そんな彼女の葛藤を知ってか知らずか、さあ食事だと促し、街に出て人々を毒牙にかけていく七殺天凌。再び白黒画面の惨劇が始まったその時――駆けつけたのは浪巫謠であります。桃色光線を避けるべく瞳を閉じた彼をあざ笑う七殺天凌ですが――しかし彼はその状態から全ての攻撃を躱し、そして的確に攻撃を仕掛けてくるではありませんか!
 彼は楽士――優れた音感と聴覚の持ち主。そう、彼にとっては音を聴くことで、視るのと同じく周囲の状況を的確に把握できるのであります。ここで久々に登場した(キャラ数が少ないので)念白が最高に格好良いのですが、音のみで周囲を捉えるのを、色を反転させたようやビジュアルで描くのもまた格好良い。これはもう主人公交代してもいいのでは、というほどなのですが……

 そこに割って入ってきたのは、「喪」顔のゾンビたち。奪った喪月之夜を悪用する嘯狂狷と、目を閉じても効果のない幻惑香を操る凜雪鴉――漁夫の利を狙う二人の妨害を受け、七殺天凌と蠍瓔珞を取り逃がした浪巫謠は、「右も左も曲者ばかり」という聆牙の言葉に、「ここは魔境だ!」と吐き捨てるのでした。いやごもっとも。


 相変わらず話は進んでいるようで進んでいない今回ですが、サブタイトルで示唆されているように、浪巫謠の活躍が見れたのは嬉しいところ。いつか必ず殤不患とは袂を分かつと思っていたのですが、その理由が優しすぎる殤不患を慮ってというのがまたらしいところで、どうしようもない利害関係で結ばれた凜雪鴉ー嘯狂狷と七殺天凌ー蠍瓔珞の二組との違いが際だっているのも良いと思います。


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2018.11.17

『Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀2』 第7話「妖姫の囁き」

 諦空との語らいの中で、己の忠義に悩む蠍瓔珞。彼女のもとに喪月之夜以外の魔剣があると睨んだ嘯狂狷は、西に向かう街道に張り込む。その罠にかかり、捕吏たち切り刻まれた末に、蠍瓔珞はついにその手の七殺天凌を抜き放つ。その場に急ぐ殤不患らだが、一歩遅く、恐るべき虐殺が始まった……

 そういえばまだ一緒にいた諦空と蠍瓔珞から始まる今回。悟っているのか無感動なのか、淡々と語る諦空に、いつしか蠍瓔珞は自分の速水奨への忠義のあり方を問いかけるのでした。彼女にとっては、忠義こそが己の存在の証、そのためには魔剣目録を持って帰らなければならないはずが、手に入ったのは二振りのみ――それも喪月之夜は嘯狂狷に奪われ、手元には危険極まりない一振りのみが残ったのみであります。しかも手傷まで負わされた状態で、如何にして忠義を果たすべきか――彼女の悩みは尽きません。

 さてこちらは上で述べたように喪月之夜を奪った嘯狂狷ですが、果たして蠍瓔珞が奪った魔剣がこれ一本なのかはわからない状態――ではありますが、可能性として一本だけとは限らないと睨んだ彼は、蠍瓔珞がそれを手に西幽に逃れることを予想して、街道に網を張る策を巡らせます(こういう所はさすがと言うべきか)。
 と、ここでしれっと掠風竊塵のことを鬼鳥に訪ねる嘯狂狷ですが、凜雪鴉はそんなものは都市伝説みたいなもんですよといなし、そんな刑部の怠慢を糊塗するような話を四方御使のボクの前でされると不愉快ですね――と流してしまうのでした。。

 さて、鬼鳥から今度は凜雪鴉の顔に戻ってのんびり釣りをしている彼の前に現れたのは殤不患。嫌っている相手ながら解毒剤の例を言っていなかったから――とかいう理由で呼び出しに応える彼は本当にお人好しです。
 解毒剤は自分の楽しみのためだったから全然おkと、竜よりもその後に浪巫謠に殺されかけたのも意に介さぬような凜雪鴉ですが、その彼に西幽では皇帝の宝物庫を破ったんだって? と言われて、悪びれずに当然だしと返す殤不患もやっぱり常人と感覚が違う――と思わされます。

 さて、嘯狂狷をハメてメシウマするために奴の情報を教えろという凜雪鴉に対し、嫌な奴が相手でもそんなことをすれば酒が不味くなると答える殤不患。ただし、嘯狂狷が蠍瓔珞に変な追い込みをかけて暴走させるようなことになったら、お前に力を貸してでも奴を止めるという殤不患ですが――時既に遅し。嘯狂狷が蠍瓔珞を待ち伏せしていると聞いた殤不患は、慌てて現場に急ぐのですが……

 そしてただ一本の魔剣を主のもとに持ち帰るべく、西に向かってよろめきながら進む蠍瓔珞ですが、その前に現れるのは嘯狂狷と捕吏たち。一斉に襲いかかるモブ捕吏たちの前に、もはや毒虫を放つ余裕もなくなったか、蠍瓔珞は膾斬りの状態であります。そして地に伏した彼女を、残酷な言葉でいたぶる嘯狂狷ですが――自らの無力さを呪う蠍瓔珞の絶望が、ついに魔剣・七殺天凌に応えた!

 これまで幾度も拒んできた魔剣の誘いに乗り、鞘から魔剣を抜き放つ蠍瓔珞。この段になってようやく彼女が持っていたのが七殺天凌であったことに気付いて慌てる嘯狂狷ですが――さて、彼をはじめ、この魔剣のことを知る者が皆恐れるその力とは……
 と、その刀身から放たれたのは、妖しげな桃色光線、その光を目にした者は、美女に誘惑されたがごとく無我夢中で七殺天凌に群がっていくではありませんか。自ら刃の前に飛び込んでくる者たちを次々と屠っていく七殺天凌と蠍瓔珞――次々と首が飛び胴が断たれるその惨状は、画面が白黒になってしまうほどであります。

 久々の獲物に嬌声を上げる七殺天凌と、魔剣から流れ込む力――犠牲者の生命に恍惚となる蠍瓔珞。魔剣の誘惑の前には嘯狂狷も及ばず、引き寄せられるところに殤不患と浪巫謠が駆けつけますが、彼らとて目にすれば終わりであります。攻撃を躱すのがやっとの有様の殤不患は、かつて封印された怨みを抱えた七殺天凌の猛攻の前に打つ手なしなのか!? というところで次回に続きます。


 比較的動きの少なかった中盤(殤不患と凜雪鴉の会話はいつも愉快なのですが)に対して、終盤は桃色光線飛び交う白黒切株大会という派手な展開となった今回。前作に続き、弱ってる相手に変な追い込みをかけるのはよくないということを教えてくれます。

 それはさておき、ついに今回、魅了効果付きストームブリンガーとでも言うべき厄介すぎる魔剣・七殺天凌が抜き放たれましたが、果たしてこの剣がラスボスとなるのか――まだ物語は折り返し地点、この先どこに転がっていくのかまだわかりません。
 ちなみに七殺天凌が言うには、若造の頃に魔剣を封じたという殤不患。その時は果たして如何なる手段を使ったのか――それはおそらく次回語られるのでしょう。


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